LGBTQ

〈GOLD or JUST A STONE〉03.ニュートラルな〈ジェンダー〉〈ボーダー〉〈アイデンティティー〉ー王穗&劉希衍ー

中国出身の同性愛カップルに聞いた中国と日本での暮らし、そして、これからの人生。ここでは、4月19日にリリースした『EXTRA VICE』より、ニュートラルすぎる価値観を持った王穗&劉希衍のインタビューをお届けする。

by Yuichi Abiko; photos by Yuri Manabe
01 May 2019, 3:25am

インターネットやマッキントッシュ、スマートフォンなど、様々な科学技術の開発と呼応するように、新たなカルチャーが生まれ、新たな価値観が築かれてきた昨今。その真価が問われるのは、数年、あるいは数十年後の評価でしかない。
2020年、東京で開催されるオリンピックに向けて、どこもかしこも工事中。一足早く完成した豊洲市場、東京都で施行された受動喫煙防止条例など。古いものから新しいものへ、汚いだろうものを排除し、ますますクリーンな外装だけができあがっていく。
同時に、社会の監視と規制が強まるなかで、それならそれで、と軽やかに社会の闇をも受け入れ、自身の表現としてさらけ出す、若き心を持った人々を取材した。
金だろうが、ただの石ころだろうが、自分自身のジャンルのない道を進むものたちの心の声を聞いた。

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中国浙江省出身の2人。上海と並び、経済発展が進んだ地域から渡日。同性愛、家族、中国、日本、アイデンティティーなど、王穗(ワン・スイ)&劉希衍(リュウ・キエン)が歩んできたなかで得た、ニュートラルすぎる感覚に驚かされた。何かを定義づけすること自体が無意味で古く感じるほど、まっすぐな生き方に魅了された。そんなカップルへのインタビュー。

日本にきたきっかけは?

Sue(以下S):わたしは元カノを追いかけてきたの。ちょうど上海の大学を卒業して、何しようか悩んでる時期に元カノと出会って。その子は日本に行くことが決まってたから、じゃあ私も一緒に行こうかなって。

Kien(以下K):わたしは高校卒業して、大学行くなら海外がいいなって思ってて、ちょうど宮崎駿とか日本のアニメにハマってて、人と人のあたたかさみたいのを感じるよね。それに憧れてたし、友達からも日本のこと聞いてて日本はすごくいい国だよって。すごい綺麗だし、みんな平等だし。あとは、家族と離れたいっていうのもあった。

なんで?

K:私の故郷はすごい保守的な地域で、みんな結婚するのもすごく早い。だいたい20歳で子供いる。そうすると、自分の人生を自分らしく生きられないから。みんなが思ってるような普通に育って、男の人と結婚したいという人ではないから。女の子が好きで、格好も中性的だし、趣味とか考え方とか全然合わない。だから一緒にいるのが、つらい。

説明しても難しいの?

K:親は親で考えてる世界があるんですよ。私が話しているのは、そこの世界の外にあるものだから、どういうものか、全然概念がつかめないんだと思う。理解不能みたいな。わかってて知りたくない、ではなくて、どういうことなのか、本当にわからないんだと思う。会ったことも聞いたこともないし、みたいな。

自分のジェンダーのこと打ち明けたことはあるの?

K:1回冗談で、女の子が好きだったらどうするって、お母さんに聞いたら、「そんなの聞いたことないよ。それって病気じゃないの?」って。

女の子が恋愛対象って気づいたのは何歳くらいなの?

K:幼稚園のときから、女の子と遊ぶのと男の子と遊ぶ感覚が全然違って、そのころから男の子みたいな格好が好きだったし。中学生のときに、同性同士の恋愛があるって知って、自分はこっちかもって思って。そのときは全然恋愛のことを考えたことはなかったけど。

S:中国は勉強の妨げになるって高校生の恋愛を支持しないから。もちろん、守ってる子もいれば、こっそり恋愛してる子もいるけど。一般的な感じだと、結婚できる年齢になったら恋愛していい。でも、ちょっとへんですよ。大学の前は、まだ恋愛しちゃダメよって言われてて、大学を卒業したら早く結婚しろって言われて。

じゃあ、割と20歳くらいで結婚するのが一般的なんだね。

S:もし結婚するとなると、親が、車と家、何を買うかも見るし、女の子の出身も見ちゃうし、それを見て、こんなの買う相手なら、やめておきなよ、みたいな条件が、就職みたいにつく。

男性が結婚と同時に、家と車を買うの?

S:男の子が家を買ったら、女の子が車を買う感じ。

じゃあ、お金持ちじゃないと結婚できないね。

S:だから、親が頭金をだして、あとは、銀行からローンして結婚生活をやっていく。

K:お金がない人は、お金がない人と結婚する。別に家も車も贈らない。そういう生活は、絶対に嫌だから帰りたくない。

S:自分の人生と自分で作った生活が、中国にはないから。そんな生活が楽しいとは思わないし。

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経済的に発展している地域の出身だよね?

K:ビジネス的思考はあると思うんだけど、考えかたはとても古典的。

S:上海はちょっと違います。多文化都市で外国人も多いし。植民地だったから、フランス・エリアとか、日本っぽいところもある。

植民地って話がでたけど、日本も中国を侵略した国のひとつですよね。日本に来るのは嫌じゃなかったの?

S:全然。だって私たちは、その体験をしてないから、わかるわけないじゃん、みたいな。聞いてて大変だったんだなっていうのはわかるけど、どういう感覚かはわかんない。それに、植民地だったから海外の知識とか得て、それで大きくなってるっていうのもあるし。それに、私たちが生きてる今の時代は、みんなフレンドリーだし。

K:私たちが会った日本人の人たちはみんないい人だし。

中国人としてのアイデンティティーについて考えたことある?

S:特に真剣に考えたことないけど、普段の生活、とくにインターナショナルな環境にいると、たまに、中国っていうと、どう思われるか一瞬不安になります。

なんで?

S:日本にしても、ヨーロッパにしても中国に対する印象って、まだあんまりよくない。でも、みんな私たちのことを国籍で判断しないって、わかってるんだけど、口にするときは一瞬、不安があるんですよね。はじめてあう人に自己紹介するときとか。

K:最近思ったのは国に関係なく、人によって考えかたが違ったり、自分にあうかあわないかで、国を聞く前に、その人を知ることを大事にしてる。

S:私もそう思う。私にとっての生活だから、どこでも一緒だと思います。慣れたら、どこでも一緒。自分自身がどう考えるかが一番だと思う。日本に住んでもヨーロッパっぽい生活もできるし、ヨーロッパに行っても、周りが全部中国人だったら中国にいるみたいだし、自分の考え方が大事。

同性愛と中国人であること、カミングアウトするとき、どっちが不安に思う?

K:同性愛は逆に嬉しい。楽しくて言っちゃう。だって同性愛はどうしょもないし、これが自分だもん。

ちなみに日本の情報とか、どうやって知るの?中国ではインターネットの制約もあるんだよね?

S:ネットフリックスもグーグルも使えない。あとLINE、インスタ、フェイスブックも使えない。

どうして?

K:暴力やドラッグのドラマがあったり、中国の政治のドキュメンタリーがあるし、海外の人たちが、中国の悪口をいってるやつとか見えちゃって、真実が分かっちゃうからだと思う。

S:若い人たちは、グーグルが禁止されていて使えないっていうのをわかってるから、VPNっていうITのテクニックを売ってる人がいて、その人たちにお金払って海外のインターネットにつなげたら、全部使える。政治の情報はカットされてるんだけど、日本のファッション誌とかは、値段が高いけど売ってたんです。特に、昔、日本のアニメがテレビで見れたから、みんな日本の文化を知ってるんだよね。

お父さんお母さんもやってるの?

S:やってない。みんな政府が教えてくれたことが、正しいって、疑ったことさえない。ニュースみたり、仕事行って、子供育てて、それが生活の全部。別にそれ以外のことをしようとは思ってないけど、私の母は、全部自分で自由に決めても、あまり何も言わなかったし、子供のころから携帯を使って遅くまで遊んでたし、上海にいるときも駅まで見送ってもくれなかったし、日本に来るときも、空港まで送ってくれなかった。言語が大丈夫なら行ってもいいよみたいな。

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とても理解のあるお母さんだったんだね。

S:でも矛盾しているかな。本当はそばにいたいけど、そうしたいなら行かせるしかないみたいな。だから帰るたびに泣いたりとか。この前『キエンのことが好きだよ』ってお母さんにいったら泣いてて、もちろん同性愛のことも知ってるけど、うちの娘がそうなるとは思わなかったって。

K:泣いたの?

S:泣いたよー。どうしてかわからないけど、私も泣いたよー。だからね、感謝してるけど悲しませてもしょうがないし、ごめんなさいってしかいえない。

じゃあ、結婚したいってなったら親にはいうの?

S:言わない言わない。

でも、家買ってもらえるかもよ。

K:大丈夫。中国にずっといる人たちは、家や車を何買おうかなって、結婚するときのことを、すごい楽しみにしてる。

S:そうやってくれるけど、代わりに自分の人生を、全部親にあげてる気がする。

K:少し助けてくれるのはいいことだけど、全部セットされて、決められちゃうから。

S:私自転車でいい(笑)。テントでもいい(笑)。上野公園か代々木公園で、めっちゃアウトドア!! 今花見もできるし新宿御苑でもいい(笑)。

(笑)。そもそも、結婚については、どういう概念をもってるの?

S:してもしなくてもいい。ただ、結婚しようっていわれたらなんかドキッとする。

恋愛より結婚のほうが、本当の愛みたいなイメージがあるってこと?

S:愛情についてはどっちも本当だと思うけど、恋愛だと口約束、結婚だとペーパーの約束だから。それに、私にとっては儀式を盛大にやることによって、すごく嬉しくなる。お祭りみたいに。

自分の誕生日パーティーを開いてもらうのも嬉しいよね。

S:それと近い。やらなくてもいいけど、やってくれたら、今日が私の誕生日だって実感できる。そういうお祝いが必要かもね。人生には。

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こちらの記事は、2019年4月19日、約2年ぶりとなるフリーマガジン『EXTRA VICE』に掲載。今号は〈GOLD or JUST A STONE〉をタイトルに、〈ユースフルなマインド〉をテーマにした1冊。移りゆく社会に呼応するように、新たな価値観で生きる人々をクローズアップ。 通常のVICE MAGAZINE同様に、書店、レコードショップ、アートギャラリー、ホテル、そして今号で特集している全国のフレッドペリーのショップでも配布している。