旅行者が目の当たりにしたウイグルの姿

「出国の際、カメラのデータは全てチェックされました。マズそうな写真は事前に外部ストレージにアップロードしていたので、消されることはありませんでした」

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Nov 7 2018, 11:21am

中国の西部に位置する〈新疆ウイグル自治区〉。中国の一部ではあるが、ウイグルには〈人種〉〈言語〉〈文化〉〈食〉〈宗教〉など、さまざまな面において中国本土とは異なるアイデンティティがあるという。2018年、トランプ政権がウイグル問題に言及し、中国政府が国家の法律や規則などの教育を目的とした〈再教育施設〉の存在を公式に認めたことにより、日本でも不安定なウイグルの情勢が報道され、ウイグルに関する情報を目にする機会が増えてきた。しかし、今ウイグルで何が起き、何が変わろうとしていて、そのなかでひとびとはどのように生きているのか、私たちは本当に〈知っている〉のだろうか。その地に立ち、現地のひとと触れ合うことをせずに、ウイグルの今を本当の意味で〈知る〉ことなど、できないのではないか。

自ら体験しなければ、本当の意味で〈知る〉ことができないのだとしたら、実際に体験し〈知っている〉ひとの言葉に耳を傾けたい。2018年11月、Twitterアカウント〈ちゅうさま(@chusama1212)〉は、不安定な情勢にあるウイグルを旅行し、4泊5日の旅で撮影した写真をTwitterで公開した。旅行者としてウイグルの地に立った彼の目には、ウイグルはどのように映ったのだろうか。

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ウイグルを旅行することになった経緯を教えてください。

今回は〈シルクロードを巡り大陸横断〉をテーマとした旅行を計画し、新疆ウイグル自治区も通過点のひとつとしての認識でした。頻繁に海外を旅行しているわけではありませんが、もともと海外旅行は好きなんです。シルクロードそのものに興味があったというより、旧ソ連圏に興味があり、今回の旅行を計画しました。

新疆ウイグル自治区への旅行は今回が初めてですか?

ウイグルは初めてでしたし、そもそも中国旅行自体、今回が初めてです。実際にウイグルの地を訪ね、ウイグルの実態を目にするにつれ、一介の旅行者であるからこそ伝えられる、伝えるべきことがあるのではないかと考え、一連のツイートをするに至りました。

ウイグルの情勢はどの程度知ったうえでの旅行だったのでしょうか?

BBCや産経新聞、西日本新聞の報道で、ある程度は知っていました。旅行直前、ウイグル内の列車の切符販売が突然停止されたこともあり、ウイグルの情報収集はその頃から始めました。

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〈車窓が砂漠だ…シルクロードだ… 辺り一面不毛の地なのに携帯の電波は入っている不思議〉by ちゅうさま(@chusama1212)

夜行寝台でウルムチ入りしたとき、どのタイミングでウイグルにきたんだと実感しましたか?

車窓の風景が一面の砂漠となったとき、違う世界に来た、と感じました。「ウイグルに来た」と実感したのは、ウルムチ駅の構内看板にウイグル語が併記されているのを見たときですね。ウイグル到着当日は雨が降っており、ひたすら寒かったです。ウルムチはバザール周辺以外だと漢人のかたが多い印象でした。

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〈待って新疆めっちゃ寒そうなんだけど〉by ちゅうさま(@chusama1212)
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photo by ちゅうさま(@chusama1212)
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〈交通機関では漢語とウイグル語が併記され、バスや地下鉄でも両言語の車内放送がある。現在のところでは、ウイグル語の新聞も発行されている。警官を含むウイグル人同士の会話はウイグル語で行われており、生活レベルでの言語弾圧はないように感じた〉by ちゅうさま(@chusama1212)

ウイグルに到着して、何をしましたか?

甘粛省の蘭州から夜行寝台でウルムチに入り1泊し、13時頃ウルムチに到着して、その日は地下鉄巡りと夜のバザールの見学をしました。

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〈4日前に開業したばかりのウルムチ地下鉄に乗ってきた ペットボトルは本当に没収されます… 液体がダメらしく、化粧品らしきものも没収されてた〉by ちゅうさま(@chusama1212)
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〈ウルムチ地下鉄の鉄路局駅めっちゃ綺麗〉by ちゅうさま(@chusama1212)

2日目はウルムチの朝のバザールを見学した後、紅山公園をまわり、16時頃ウルムチを出発、夜行寝台でカシュガルに向かいました。3日目、カシュガルに着いたのは11時です。その日は1日老城を巡りました。4日目も同じく老城を見てまわり、バザール見学。最終日、5日目は朝9時にカシュガルを出発し、陸路でキルギスに越境しました。

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〈ウルムチ駅 軍人専座とか書いてあるけど気にせず座るの巻〉by ちゅうさま(@chusama1212)

結構移動時間が多いですね。

移動時間はトータルで18時間ほどあったので、ひたすら寝ていましたね。

旅行者がウイグルに入るのは簡単なのでしょうか? 何か厳重なセキュリティチェックなどはありましたか?

入域自体は簡単でした。ウルムチ駅では形式的な荷物検査のみで、特に職質等はありませんでした。最終日、カシュガル駅から出発する際は「ビザがない」といわれて、15分ほどプチ拘束されましたが、それ以外は特に何もありませんでした。

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photo by ちゅうさま(@chusama1212)
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photo by ちゅうさま(@chusama1212)
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〈ウイグル自治区内の市街地には、異常な数の監視カメラが設置されていた。約20mおきに最新式と思われる数種類のカメラが死角を作らないような形で置かれ、どこに居ても常に監視下にある状態になっていた〉by ちゅうさま(@chusama1212)

旅行者としてカメラを構えていても、特に注意されたりすることはないんですか?

写真撮影を直接禁止されることはありませんでした。モスク内部などは隠れるようにして撮っていましたが…。ただ出国の際、カメラのデータは全てチェックされました。マズそうな写真は事前に外部ストレージにアップロードしていたので、消されることはありませんでした。

写真をみると、ウイグルの街にウイグル人が少ないように感じます。実際どう感じましたか?

ウルムチは漢人が多く、ウイグル人は比較的少ないように感じました。旅行者に関しても、ウイグル内では中国人以外のかたは見かけませんでした。しかし、カシュガルではウイグル人が多く、中国の他の町とは違う印象でした。

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〈市街地においてウイグル人が経営する店舗は、ほとんどが中国国旗を掲げていた。こうして国家への忠誠をアピールすることで、かろうじて生活を続けていけるのかも知れない〉 by ちゅうさま(@chusama1212)
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〈カシュガルでは北九州のゴミ袋が使われていると聞いていたが、ほんとにあって草〉 by ちゅうさま(@chusama1212)

Twitterは中国滞在中に更新したのですか?

香港製のローミングSIMを使用してインターネットに接続していたので、生存報告も兼ねて、Twitterの更新を続けていました。直接に身の危険を感じることはありませんでしたが、モスク前でわれわれをずっと見ている漢人らしき男性が数人いたので、ひょっとすると公安だったのかもしれないな、と。

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photo by ちゅうさま(@chusama1212)
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〈街中では、アサルトライフル等で武装した警官が一定間隔で立っていた。武装警官は無差別で現地民を呼び止め、IDチェックをかけていた。また、1ブロックごとに『便民警務所』が置かれ、その周囲には金網のついた公安の車両が停車して警戒していた〉by ちゅうさま(@chusama1212)
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〈地下鉄のみならず、商業施設やバザールなどに入る際にも手荷物検査が実施される。漢人や我々外国人はそれ以外ノーチェックだが(顔立ちで判断?)、ウイグル人はそれに加えてIDの提示と、機械による顔認証によって初めて入場が許される〉 by ちゅうさま(@chusama1212)

ウイグルを旅行して、いちばん驚いたことはなんですか?

ウイグルでいちばんびっくりしたのは、電動バイクの普及率の高さです。労働者階級のアシとなっているようです。

ウイグルのかたたちとの交流はありましたか?

裏路地にあるウイグル料理屋に入った際に、ウイグル語の挨拶など教えて頂いて、温かさを感じました。リヤカーで果物を売るお爺さんや、街頭でナンを売るおばさんなど、昔ながらの風景が残っていて、旅行するにはいい場所でした。

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〈自由が制限されているとはいえ、そのなかでもウイグル人は日常を過ごしている。こうして写真として切り取れば、それはのどかなシルクロードのオアシスそのものだ。彼らは見ず知らずの外国人である自分にも暖かく接してくれた〉by ちゅうさま(@chusama1212)
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photo by ちゅうさま(@chusama1212)
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photo by ちゅうさま(@chusama1212)
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〈カシュガル裏路地の家庭料理屋 お昼時なのでポロもできたて〉by ちゅうさま(@chusama1212)

個人的にウイグル料理がすごく好きなんですが、ウイグルに到着して最初に食べたのはどんな料理ですか? いちばん美味しかった料理も教えてほしいです。

ウイグルで初めて食べた料理は〈黄面〉という麺料理でした。ラグメン(拉面)という皿うどんのような料理が、いちばん美味しかったですね。

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〈ウイグル料理屋発見!「黄面」というラーメンのようなものらしい。ラグマンの親戚かな?〉by ちゅうさま(@chusama1212)

実際に旅行してみて、ウイグルへの見方が変わった部分はありますか?

ウイグルで生活しているのは、われわれと変わらぬ、至って普通のひとびとであることが強く印象に残りました。〈テロが頻発する場所〉のような固定観念がありましたが、そのようなイメージは払拭されました。

最近、ウイグルに関する報道が増えてきましたが、どこか遠い国の出来事で、関心をもたないかたが多くいらっしゃいます。ご自身のツイートにあるように、「一介の旅行者であるからこそ伝えられる・伝えるべきこと」を発信することは何故必要だと考えますか?

ジャーナリストがウイグルを取材しようとすると、どうしても監視が強くなり、満足な取材ができない現状があるようです。しかしながら、私はジャーナリストではなく〈観光客〉です。だからこそ撮影できた写真や、見ることができた現場もあるはずです。それを何らかの形で共有し、議論を深める必要性を感じ、一連の投稿をしました。

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photo by ちゅうさま(@chusama1212)
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〈イスラム系の宗教活動は非常に厳しく制限されていた。ウルムチのバザール内にあるモスクは「清真寺(モスク)」の看板こそ出ているものの、実態は民俗工芸品市と化しており、宗教的なものは一切排除されている。地下は外資系スーパーとなっていた〉by ちゅうさま(@chusama1212)
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〈カシュガルにおいても、宗教色のあるものは排除されていた。ほぼ全てのモスクが閉鎖され、シンボルである屋根先端の月が取り外されていた。入り口にある「神は偉大なり」との記載も、塗り潰されたり、共産党賛美のスローガンに置き換えられたりしている〉by ちゅうさま(@chusama1212)
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photo by ちゅうさま(@chusama1212)
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〈一応、決まった時間になると「礼拝時間」として観光客の入場を制限している。しかし、アザン(祈りの導入)が流れることも、信者らしき人が寺院に入っていくこともなかった。寺院の前の広場では、どこか浮かない表情のお爺さんたちが寺院を眺めていた〉by ちゅうさま(@chusama1212)

いち〈観光客〉として、これからウイグルを旅行したい、というかたにアドバイスはありますか?

ウイグル情勢は不安定であり、将来チベットのように自由旅行ができなくなってしまうのでは、と危惧しています。少しでも興味があるかたは〈生きた〉ウイグルの文化が現存している今のうちに訪ねてほしいです。

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photo by ちゅうさま(@chusama1212)
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