UHA味覚糖がコロッケをつくったワケ

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UHA味覚糖がコロッケをつくったワケ

日本のお菓子メーカー〈UHA味覚糖〉は、きのこやごぼうなどの素材を活かした〈Sozaiのまんま〉シリーズを販売している。きのこやごぼうに次いで発売されたのは〈コロッケのまんま〉だ。なぜ素材をお菓子にしたのか?そもそもこれはお菓子なのか?大阪まで開発者を訪ねた。
kumpei kuwamoto
Tokyo, JP

「おいしさはやさしさ」を理念に掲げる〈UHA味覚糖〉は、〈純露〉〈ぷっちょ〉〈シゲキックス〉〈コグミ〉など、アメやグミを中心に、数々のお菓子の定番、名作を販売し続ける日本の老舗お菓子メーカーだ。

UHAは〈Unique Human Adventure〉の頭文字であり、そこには、食で遊ぶ波を広げていく〈遊波〉、という思いも込められている。

そんなUHA味覚糖から、まさに〈遊波〉を感じる〈コロッケのまんま〉というお菓子が発売された。〈コロッケのまんま〉は、素材を活かした〈Sozaiのまんまシリーズ〉の商品だ。実際に食べると、想像以上のコロッケ感に驚かされる。

なぜ、きのこやごぼうに続いて、コロッケのスナック菓子をつくったのか? どうして素材をお菓子にしたのか? そもそもこれはお菓子なのか? 〈コロッケのまんま〉、謎多き〈Sozaiのまんま〉シリーズについて、大阪のUHA味覚糖本社を訪れ、開発者の佐藤喜哉さんに話を訊いた。話題は、現在のお菓子事情にまで広がった。

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まずは、〈Sozaiのまんま〉を商品化したキッカケについて教えてください。

弊社は30年近く前から〈おさつどきっ〉のような素材を活かした、美味しく食べられるスナックを販売しており、常に面白くて新しいお菓子をつくりたい、と願っています。どうすればより多くのお客様に〈おさつどきっ〉などが受け入れらたのかを踏まえ、〈Sozaiのまんま〉をつくらせていただきました。私個人として〈Sozaiのまんま〉シリーズは〈おさつどきっ〉の発展系と捉えています。

〈Sozaiのまんま〉シリーズは、いつ始まったんですか?

〈Sozaiのまんま〉シリーズの発売が2016年で、その前身の〈茸のまんま〉は2014年発売です。使っている物をそのまんま美味しく食べてもらおうということで〈Sozaiのまんま〉という名称に結びついています。

〈Sozaiのまんま〉シリーズには様々な種類がありますね。きのこやごぼうは素材ですが、コロッケや海老焼売は素材ではありませんよね。

実は素材と惣菜をかけて〈Sozai〉とローマ字表記になっているんです。私ではないのですが、気が付いたスタッフは鼻高々だったでしょうね(笑)。

本当だ!ちゃんと〈Sozai〉に素材・惣菜とふりがなが振ってありますね。では〈Sozai〉を、あえてお菓子にしたのはなぜでしょうか?

最近は、お菓子を食事代わりにするお客様もいらっしゃり、お菓子と食事の境界が曖昧になっています。ですが、お菓子を食事代わりに食べることで、罪悪感を抱くお客様が多いとお訊きしました。そこで、おかずをお菓子にすれば、おかずを食べるように、お菓子を罪悪感なしに食べられるのではないか、と考えたんです。お菓子を食事代わりにするとしたら、どういった商品が受け入れられるか、というのがSozaiを選ぶ基準になりました。お菓子を食事にするのって、すごく楽しいですよね。

確かにどれもお菓子の域を超えている気がします。一番、最初に発売された〈Sozai〉はどれですか?

しいたけと白しめじです。芋やごぼうのような、スナックにして面白い素材を探していました。きのこは好き嫌いが非常に分かれる素材でしょうが、きのこの写真集や、キーホルダーのガチャガチャもあるんです。良くも悪くも注目されている部分と、面白い商品をつくりたい、というところが合致して決まりました。もちろんきのこマニアのお客様だけに向けてつくった訳ではないのですが、やはり、きのこが好きなお客様には喜んでいただけました。

きのこやごぼうはスナック菓子として違和感を感じませんが、コロッケのスナック菓子は初めて見ました。なぜコロッケを選ばれたのでしょうか?

何がお菓子になると面白いか、と考えました。誰も聞いたことのない料理に、〈まんま〉と名付けてもよくわからないでしょうが、コロッケはコンビニやお肉屋さんでもスナック感覚で売っている、メジャーな惣菜ですよね。目にしたときに「コロッケのスナックってなんだろう?」「本物のコロッケとどう違うんだろう?」というのが手を伸ばしていただくキッカケになると考えています。そもそも、コロッケを食べればいいだろう、と思う方もいらっしゃるでしょうが(笑)。

確かにいちどは食べてみたくなりますよね。実際に食べたらとても美味しいし、本当のコロッケみたいで驚きました。

コロッケのスナックなら受け入れられやすいのでは、と考えました。でも実際のコロッケとは全然違うモノに仕上がっているはずです。例えば、町の定食屋さんでこれが出てきたら、「アレ?」となりますよね(笑)。コロッケらしいけれど、実際のコロッケとは違う、いい意味で期待を裏切れた商品だと思っています。

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〈コロッケのまんま〉をおかずにご飯を食べられる気がします。

弊社にも、〈コロッケのまんま〉をおにぎりのお供や、カップラーメンに入れたりして、足りないおかずを補うスタッフもいますし、お客様も、われわれが想像しなかった食べ方を提案してくださっています。例えば、きのこの炊き込みご飯にしたり、お湯で戻してスープにするなど、実際の料理に使っていただくけるとは、想定外でした。お客様が、まんまシリーズの世界を広げてくださっています。私たちも勉強になりますね。

パンに挟んでコロッケパンには?

それは初めて聞きました。私はこのまま食べるのが一番好きですね。

〈コロッケのまんま〉の開発にあたり、参考にしたコロッケはありますか?

世間で話題のコロッケ屋さん、行列の出来るコロッケ屋さん、いろいろリサーチさせていただきました。ある店舗のコロッケが、われわれの狙いに非常に合う味付けでしたので、参考にしましたね。

〈鶏肉とナッツ炒めのまんま〉は、ピーナッツ、カシューナッツ、唐辛子、花椒、鶏肉、ネギ、パクチーの7品目で構成されていますね。パッケージ裏に「四川料理の定番宮爆鶏丁(ゴンバオジーディン)をイメージ…」とあります。ゴンバオジーディンという料理を知りませんでした。

ゴンバオジーディンのまんまでは伝わらないので、〈鶏肉とナッツ炒めのまんま〉と表記しました。ゴンバオジーディンを大好きなスタッフがパッケージをつくり、パッケージ裏でゴンバオジーディンについて説明をさせていただいてます。開発時、味付け、メインはナッツ、ということはすんなり決まりました。それをどんな料理にするのがいいのか、と数パターン試した結果、〈鶏肉とナッツ炒めのまんま〉になりました。

舌が痺れるくらい花椒が効いていました。おつまみとして食べることを想定されていましたか?

例えば、お菓子といっても、ポテトチップスでビールを飲まれる方もいらっしゃいますよね。われわれも〈鶏肉とナッツ炒めのまんま〉はビールに合うと想定しており、おつまみとして食べていただくのもアリだと思っております。弊社のお菓子づくりのコンセプトは、楽しさと美味しさをどう兼ね合わせるか、というところに重点を置いています。

〈茸のまんま パクチー味〉も遊び心が感じられますね。こちらはお店で見たことがないのですが、どこに売っているのでしょうか?

他のシリーズと同じように、コンビニやスーパーで販売しています。ただ、パクチー味は尖っているので、お取り扱いが少ないのかもしれないです。

開発者 佐藤喜哉さん

〈Sozaiのまんま〉シリーズがどのように商品化されるのか教えてください。

例えば〈コロッケのまんま〉の開発が決まり、実際に商品としてお客様の元に届くまでには、かなり時間がかかります。今までつくったことのないお菓子であれば、どのようにつくるのか模索するところから始まります。どの機械なら対応出来るか、などを検討するのに非常に時間がかかりますね。まずは手作業で数袋つくります。

最初から工場でつくるのではなく、手作業から始まるんですか?

そうですね。まずはコロッケ自体がつくれないといけないので、コロッケをつくりました(笑)。キャンディーなどに関しても、まずは手作業でつくってから、工場での作業になります。

どのくらい試作されるのでしょうか?

商品化されたお菓子の試作回数は多くなりますよね。開発者だけのエゴにならないように、たくさんのみなさんに試食してもらい、反応を見ながら調整します。試食されたみなさんの意見に合わせるべき部分、尖らせておくべき部分を判断したりします。基本的にお菓子は終売するまで調整が続きます。常に改良できるところはないか、と研究していて、お客さまが気付かないレベルで少しずつ変わっているんです。パッケージが変わったら中身も変わっていることが多いですね。

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〈コロッケのまんま〉も発売されてから調整されていますか?

実は変わっています。全国発売前にエリア限定で発売させていただいて、店舗での売れ行き、SNSの反応をみながら調整しました。エリア限定で発売すると「どこで売っていますか?」というお問い合わせが増えますね。

〈Sozaiのまんま〉シリーズでいちばん人気なのはどれですか?

やはり〈コロッケのまんま〉ですね。でも、残念ながら発売前にお蔵入りになってしまったアイディアもあります。試食してもらった結果、酷評を受けたり、賞味期限を保たせられなかったりするんですよね(笑)。今後、お蔵入りになってしまったアイディアも、改良を加えて発売する可能性があります。カリッとした物から、しっとりした物までありました。

〈Sozaiのまんま〉シリーズは、スーパーやコンビニの、どのコーナーに置いてもらいたいですか?

私個人としては、お客様の目に付きやすい場所、というくらいですかね。スナック菓子やおつまみ、というジャンルに捉われない商品としてつくっている自負があるので、どこのコーナーに置いていただいても構いません。あるお店では、お酒のコーナーに置いいただいたり、別のお店では〈コロッケのまんま〉を本物のコロッケと並べて置いてくださっています(笑)。ベストは〈Sozaiのまんま〉という新コーナーをつくっていただくことですかね。

〈Sozaiのまんま〉シリーズ以外にも〈おさつどきっ〉や〈コロロ〉など、素材そのものを活かした商品を多く販売していますね。なぜ、リアリティーにこだわるのでしょうか?

リアリティと楽しさは紙一重だな、と感じています。全く想像出来ない商品をつくっても、キワモノで終わってしまいますよね。今、世の中は体験型アトラクションなど、リアリティーを求めていると感じています。お菓子も、「どこまでリアルに迫ることができるか?」というのが面白さのポイントな気がしますので、それをどう追求していくかは日頃からの課題ですね。ですので、リアリティーという部分に触れていただいたのは嬉しく思いました。〈Sozaiのまんま〉シリーズほど、食事をお菓子化した商品は他にないはずですから。

お菓子にも流行り廃りはあるのでしょうか?

時代の流れと合わなくなってしまった商品もありますね。最近は、ガムやキャンディーを食べるお客様が少なくなったといわれています。私が小さいころに食べたお菓子もシェアが縮まっているんですよね。今は手軽に食べられる商品、量の多い商品などが受け入れられてるのかな、と思っています。本当にこれが流行りだ、とわかれば、われわれも仕事がしやすくなるんですけどね(笑)。

お菓子は今後どうなっていくと思いますか?

この先もお菓子がお菓子としてあり続けるのだろうか、とは思っていますね。例えば、〈ごぼうのまんま〉は、食物繊維がたっぷり入っています。健康を意識しています。健康がキーワードになってきたり、お菓子にも多様化が進んでくるのではないでしょうか。インターネットも普及して、スナック専門のサイトに取り上げていただき、そこで興味を持っていただいた、という話もよく聞きますね。

グミ型サプリなども発売されていますよね。

それも多様化のひとつですね。わざわざお菓子で栄養素をとる必要があるのか、という意見もあるでしょうが、日常的に食べているモノから栄養がとれたらいいのではないか、と考えています。弊社には精密工学研究所がございまして、お菓子とは関係のないリップスクラブや、ドレッシングを開発させていただいたこともあります。やはり面白そうなことはやってみる、というのが企業の意志としてありますね。

〈Sozaiのまんま〉シリーズもUHA味覚糖ならではの商品ですね。

新しいことには挑戦し続けたいです。弊社は、面白いアイディアをひらめいたら、かなり提案しやすい環境にあると思っています。ちなみに何品か、〈Sozaiのまんま〉の新作も用意させていただいています!

肉・たけのこ・ピーマンで構成されている〈チンジャオロースーのまんま〉なんていかがでしょうか?

そこは楽しみにしていてください(笑)。これからもスナックに限らず、楽しさと美味しさに重点を置いた、お菓子をつくり続けたいですね。