カキは性欲を高めるのか

カキは性欲を高めるのか

カキには催淫効果がある、という都市伝説を実証するため、VICEのライターが自ら〈1週間カキ生活〉に挑戦。ある量を超えると、性的興奮が高まることがわかった。

数週間前、私はシーフード嫌いのイケメンとデートをした。カキを12個注文したものの、彼に丁重に断られてしまったので、私はひとりで食べ始めた。彼はそれを半ば嫌そうに、半ば戸惑った様子で眺めていた。

「どうしたの?」ようやく彼の表情に気づき、私は尋ねた。

「カキを食べるとムラムラするんだろ?」

思わず呆れてしまった。このひとと寝るのはやめておこう。いったい何を根拠にこんなことをいったのだろう。その夜、さっさとデートを切り上げた私は、家に帰ると、〈カキは性欲を高めるのか〉を検索してみた。しかし、確かな答えは見つからなかった。カキに豊富に含まれる亜鉛がテストステロンの生成を助け、男女ともに性欲を高めるということはわかったが、それ以外のネットの科学文献は、かなり信憑性が低いように思えた。

そこで私は、科学に貢献するため、〈1週間カキ生活〉を始めることにした。毎日昼にカキを食べ、だんだん食べる数を増やしていく計画だ。それ以外は普通に生活し、自分の性欲を記録しながら、カキと性衝動に相関関係があるのか、もしあるなら、カキを何個食べれば性的興奮を覚えるのかを探っていく。

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月曜日:1個

1日目はカキ1個から始めた。お腹を満たすにも性欲を刺激するにも全く足りない。私が夜働いているカクテルバーには、Tom Fordの香りを振りまき、高級な靴を履いたイケメンが大勢やってくる。その日も普段どおり出勤したが、特に何も感じなかった。いつものように何度か誘われたけれど、私は男性よりも靴のほうに気をとられていた。

参考までに、私が見つけた文献によると、カキと性欲にまつわる最初の文献は、紀元前69年、ローマ皇帝アウルス・ウィテッリウスが、宴の席で1200個のカキを食べたというもの。これもキュートなエピソードだが、カキの都市伝説を広めたのは、ベネチアの有名なプレイボーイ、ジャコモ・カサノヴァだ。彼自身の日記によると、カサノヴァは、毎朝精力剤としてカキを12個食べていたという。さらに、カキを使った淫らな遊びの記述もある。

「彼女の唇の端に貝殻を置くと、彼女は大笑いして、カキの身を吸いこみ唇に挟んだ。私は、すぐに唇を重ねてそれを吸い上げた…」

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火曜日:2個

今日はどんよりとした1日で、気分は最悪だった。ホルモンの影響でイライラしていたので、ワインバーで飲みながらカキを食べることにした。バーに立つ男性が番号をくれた(たぶん店のルール違反)。職場でそんなことをしていいのだろうか? とにかく、店を出る頃には少し気分が良くなっていたが、その原因がアルコールなのか、彼の番号なのか、それともカキ2個なのかはよくわからない。

夜は友人の誕生日パーティに出かけ、元恋人とキスをした。私たちは今でも同じ仲間と遊んでいるけれど、私はずっと彼女を避けていたので、予想外のハプニングだった。最悪な別れかたをして、それ以来彼女を性的な目で見たことはなかった。それなのに、私たちはセックスしてしまった(あなたのことは嫌いだけど、やっぱりタイプだし、ちょうどそういう気分だったから、というよくあるケース)。面倒なことになるとわかっていたのに、どうしてあんなことをしてしまったんだろう? これもカキのせいなのだろうか?

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水曜日:4個

今日はまず、アデレードにあるRCNSクリニックで、主任栄養士を務めるエミリー・カリーという女性に話を聞いた。エミリーによると、興奮とカキの相関関係は気分によるもので、薬理作用がある可能性は低いという。

「私たちは、食べ物に対する自分のイメージに大きく左右されます。値段、味、食感、見た目、あなたのなかでのその食べ物のステータスが、興奮をもたらすのかもしれません」

たしかに、エミリーの指摘は的を射ている。カキは見た目からして女性器にそっくりだ。丸い貝柱を囲む塩辛い身と柔らかいひだは、明らかにヴァギナを連想させる。しかもカキは高級だ。私がカキに抱くこういうイメージが、私の性欲を刺激したのかもしれない。

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「私たちは高級な食べ物に価値やステータスを見出すので、よく味わって食べます」とエミリーは説明する。「時間をかけてじっくり味わえば、その体験が強く印象に残り、満足感も高まります」

彼女の意見を踏まえ、ワインバーに向かった私は、シャンパンと4個のカキをゆっくり味わった。たしかに満足感は得られた。けれど、ムラムラはしなかった。シャンパンと面白い本さえあればいい、そんな気分だった。すると、しばらく片想いしていた彼が、店の前を通り過ぎるのが見えた。呼び止めて座らせると、ちょうど彼も予定はないという。そうして私たちは飲み始めた。

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そのあとは当然ベッドインし、私の興奮も高まった。でも、私たちは結局、最後まではしなかった。したくなかったわけじゃないけれど、そういう夜もある。残念!

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木曜日:8個

今日はクイーンヴィクトリア市場に行き、カキひと皿を全部ひとりで平らげた。とても美味しかった。新鮮でジューシーだったけれど、二日酔いが治るわけではない。家に帰り、セックスで二日酔いを治すか、気を逸らそうかと思ったが、そんな気分でもない。1週間でいちばん惨めな1日だった。

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金曜日:16個

今のところわかっているのは、カキの効果は気分に左右されるということだけだ。自分の機嫌の良い日には、カキは日常にちょっとした興奮をもたらしてくれるが、最悪の日には食事の満足感しか得られず、性欲は刺激されない。

金曜日は後者だった。私はバーでリキュールをひと口飲み、16個のカキを食べ始めた。ふと顔を上げると、男性に囲まれていることに気づいた。みんな知り合いだったが、別に私が誘ったわけではない。彼らはただ、偶然そこにいたのだ。私は周囲を見回し、空になった殻が並ぶ皿を眺めた。けれど、私は何も感じなかった。脚の間が熱くなることもなければ、誰かの顔にキスしたい衝動も、身体が疼くような感覚も生まれない。その瞬間、私はこう結論づけた。カキの効果は、食べる前の気分によって決まるもので、カキ自体に催淫効果はない、と。

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土曜日:32個

この日は朝食を食べる時間がなかったので、最初に口にしたのが、カキ32個だった。そう、32個だ。公園で平らげたあと、かなり気分が悪くなった。たぶんカキが新鮮すぎたからだ。磯の香りを和らげるトッピングを添えるべきだった。食べたあとは、しばらく横にならなければいけなかった。けれど、昼寝から目覚めると、予想外のことが起きた。私はものすごくムラムラしていたのだ。

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昼寝のあいだ、私はカキの効果で不思議なセックスの夢を見た。私は裸で砂漠を転げ回りながら、誰かとセックスしている。相手は思い出せないが、彼はしきりに、私がカキみたいな味がする、と言っていた。目が覚めると、私はお楽しみに向けて準備万端だった。

その夜のバーのシフトで、私は2人から番号をもらい、ついに数週間想い続けた彼(水曜日の日記参照)と結ばれた。カキの妖精、ありがとう! ずっと片想いしていた相手とわずか数日で距離が縮まったのは、決して偶然じゃない。ここ数ヶ月で最高のセックスをした私は、疲れ果てていたが、解放的で満ち足りた気分だった。

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日曜日:たくさん(気持ち悪くなったので64個は食べ切れなかった)

翌朝も、悶々とした気分で目が覚めた。ベッドに転がり、性欲を高めようと決めたこの1週間を振り返ってみた。毎日カキとその栄養素について考え、結果として、自分の身体やセックスについて考えることになった。つまり、いつも以上にセックスが私の頭を占めていた。このように、セックスについて考えれば考えるほど、それまでの流れで積極的になれるため、結果的にセックスの回数が増えるらしい。

例えばこの日。私は山盛りのカキを食べ始めたが、気持ち悪くなったので、途中で諦めた。食欲よりも性欲が勝っていたので、外に出てカクテルを飲み、昨夜の彼の家に戻った。

私の1週間におけるセックスの平均回数を割り出すのは難しい。今は付き合っている相手がいないので、週によって大きく異なるからだ。この〈カキ週間〉で、私は2人の相手と3回セックスしたが、これは特別多いわけではない。相手も回数も、もっと多かったときもある。とはいえ、これはセックスの回数ではなく、どれだけ性的興奮を覚えるかを調べる挑戦だ。今振り返ってみると、かなり過酷な実験だった。でも、明らかに効果はあった。私はほぼ毎日、悶々とした気分で過ごしていた。

カキの催淫効果は、大量に食べた場合にのみ現れる。10個以下では意味がない。16個を超えると、だんだん効果が出始める。でも、もし調子の良い日に32個以上食べる場合は、夜の相手を確保しておいたほうがいい。

This article originally appeared on VICE AU.