チャールズ・マンソンを愛してやまないアンクル・アシッド&ザ・デッドビーツ

サマー・オブ・ラブは幻想が生み出した社会現象だった。愛に溢れた夏の次には、当然、フォール・オブ・ヘイトが訪れる。1969年8月に起きた「シャロン・テイト殺人事件」は、脳内フラワー・チルドレン、フリー・セックス・フリークスに秋の気配を伝え、同年12月の「オルタモントの悲劇」はヒッピーたちに夏の終わりを宣告した。夏の終わりとともに、『Fun House』(1970)のなかで日差しを…

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29 mars 2016, 3:58am

サマー・オブ・ラブは幻想が生み出した社会現象だった。愛に溢れた夏の次には、当然、フォール・オブ・ヘイトが訪れる。1969年8月に起きた「シャロン・テイト殺人事件」は、脳内フラワー・チルドレン、フリー・セックス・フリークスに秋の気配を伝え、同年12月の「オルタモントの悲劇」はヒッピーたちに夏の終わりを宣告した。夏の終わりとともに、『Fun House』(1970)のなかで日差しを避けていた犬たちは、憎悪に満ちた秋のストリートを徘徊し始める。

イギリスのケンブリッジから現れたUncle Acid & the Deadbeatsは、そんな時代のヴァイブスを選り好んで吸収して、ストーナー・サウンドを世界中に吐き散らしている。もちろん、彼らのなかでもフロントマンのアンクル・アシッドことケヴィン・スターズ(Kevin Starrs)は、フラワー時代に咲いた徒花、チャール・マンソンへのリスペクトも忘れていない。当初は、アンクルの希望に従い、シャロン・テイトの墓前でのインタビューを予定していたが、ストーナー・エリートの御多分に洩れず、朝寝が過ぎたようだ。「残念だ。本当に行ってみたかった。明日、シエロ・ドライブに行く時間があればいいんだが…」

アンクル・アシッドが訪れようとしているのは、ベネディクト・キャニオンのシエロ・ドライブ10050番地(現在はシエロ・ドライブ10066番地)だ。マンソン・ファミリーは、そこで、1969年8月9日に妊娠中の女優シャロン・テイト、胎児、彼女の友人、合わせて6人を殺害した。この事件は、アメリカ史上最悪最狂の犯罪であり、チャールズ・マンソンをアメリカきってのブギーマンに仕立て上げた。しかも、事件当時、怪人マンソンは殺人現場にいなかったため、事後、伝説はこじれ、独り歩きして現在に至る。

マンソンの「Get on Home」をカバーし、シャロン・テイトとブギーマンが星条旗に包まれて抱擁するデザインをTシャツにあしらい、あらゆるインタビューでマンソンへの愛着を公言して憚らないアンクル・アシッド。そんな彼に、心ゆくまでチャールズ・マンソンについて語ってもらった。

このインタビューはシャロン・テートの墓前で行う予定でしたが、実現しませんでした。どうして、彼女の墓に興味があるんですか。

どんな墓も興味深い。もし場所さえわかれば、ハンフリー・ボガートの墓にも行きたい。単純に興味を惹かれるとだけだ。理由はわからない。

2014年「Maryland Deathfest」のためにTシャツをつくりましたが、そこにはシャロン・テイトとチャールズ・マンソンがアメリカ国旗に包まれながら抱き合っている姿が描かれていました。あれはあなたのアイデアですか。

そう。あれを描いたタトゥー・アーティストとのコラボレーションだ。善と悪が一緒になってアメリカ国旗に包まれて血塗れで抱擁する、というアイディアが気に入ったんだ。すごくドラマチックだ。みんなも気に入ったみたいだし。パーフェクトなデザインだ。

批判もありましたね。

本当の意味が理解できない人もいた。「なんでそんなもの売るんだ?」ってね。でも悪趣味なデザインではない。くだらないモノを期待してるヤツらにくだらないモノをあてがったんだ。みんなが大好きな「セレブリティの死」だ。

即完だったそうですね。

(笑)。その通り。

いつ、チャールズ・マンソンを知ったんですか。

15かそこらだったはずだ。ブギーマン、怖い、って感じでシリアルキラーだとかなんだとか話題になっていた。一時期はそんな噂もある程度信じていたけれど、詳しく調べて、「ちょっと待て、メディアで吹聴されるような男じゃない」って気付いたんだ。もっと別の人間さ。

シリアルキラー、と呼ばれているのに、実際は誰も殺していない唯一の殺人犯かもしれません。それが一般の人には伝わっていないようですが。

その通り(笑)。嘘ばかりだ、本当に。

彼に関する本はたくさん読んだんですか。

(検察官ヴィンセント・バグリオーシの)『ヘルター・スケルター』は読んだ。「みんなが何を信じているか」を知るにはうってつけだった。あの本に書かれている事件が現実に起きた、と信じられているんだ。(ニューエル・)エモンズの『Manson In His Own Words』も読んだ。あと、何年か前に再発された、あの分厚い本、『The Manson File』っていうタイトルか? あれは、素晴らしい。詳しい情報を獲れたし、『ヘルター・スケルター』の戯言も否定されている。

英国育ちマンソンに夢中、というのがアナタたちのアメリカでのイメージを歪めているとは思いませんか。

おそらくそうだろう。「ならず者の集団がいる」ってとこかな。そう勘違いしているのは、「マンソンはシリアル・キラーだ」というメディアを鵜呑みにしている連中だけだ。OK、連中にとって、マンソンはシリアル・キラーでなくてはならないんだろう。そうゆうヤツらには探究心がない。でもアメリカに来てみれば、それが真実ではないとわかる。クソみたいな話だ、と理解しているヤツにも会える。評価もどんどん変わってきている。この国の政治は、おそらく、いい方に向かっているのだろう。

マンソンと連絡をとろうとしたことはありますか。

いいや…

でも考えたことはありそうですね。顔に出ていますよ。

まあな。実は、マーチャンダイズ担当のスタッフが10年くらい手紙を送り続けているんだけど、一度も返事はない。彼みたいにみたいにガッカリしたくない。彼は、(マンソン・ファミリーの)スクィーキー・フロムにも手紙を書いたそうだ。彼女とはそれなりにやりとりをしている。

彼女が出所してから数年たちますね。

ああ。彼はアドレスを手に入れたんだろう。俺は、ファミリーの誰かに連絡しようとしたことはない。

マンソンがこれほど長く、大衆のイマジネーションに影響を与えているのは奇妙じゃありませんか。 事件はもう50年近く前で、実際には誰も殺していない老囚人になっています。

ああ。ただの優しい老人だ…

額に鉤十字を彫ってはいます。

(笑)。そういったことにみんなが気を取られたり、おかしな扱われ方をするのが、俺にいわせればプロパガンダなんだ。『Life』の表紙になった、狂ったような目付きの写真なんかも全部そうだ。誰かをスケープゴートにするにはおあつらえ向きのタイミングだった。権威にしがみつく野郎どもは、60年代の終わりで、思想の自由、自由恋愛、なんて風潮が気に食わなかったんだろう。そういった風潮を止めるのに、いろんな人をスケープゴートにしたんだ。彼を晒し者にして、「コイツこそヒッピーだ。とんでもない連続殺人犯だ。だからヒッピーはすべて悪い」ってな具合だろう。狂っていたんだ。なにからなにまで不条理だった。裁判が始まる前に、ニクソンがマンソンを「有罪」と断じたのがいい例だ。マンソンに関しては、誤解がたくさんある。そうじゃないのに殺人犯にされた。そんな顛末がみんなを夢中にさせるんだ。

実際にやったことよりも、シンボルとして重要な人物になったのですね。

間違いない。それにしても、彼の話は興味深い。自ら「神」とも「悪魔」とも自称する。社会がマンソンを創りだしたんだ。彼は社会そのものだ。

2013年のシングル「Mind Crawler」のB面で、マンソンの「Get on Home」をカバーしていますね。彼について調べ始めるのと同時に、音楽にも傾倒したんですか。

そう、興味を持ち始めてすぐに、偉大なソングライターだ、ってわかったんだ。ニール・ヤングは、とんでもない天才だ、とマンソンを誉め称えた。ビーチボーイズとの繋がりも忘れてはならない。そんな事実からも、彼の音楽は特別なんじゃないか、って気がしたんだ。そしてその通りだった。素晴らしい。振り切れている。

彼の作曲と話し方には共通点があります。理路整然としているときは素晴らしいのですが、問題なのは、ばかげた方向への脱線です。

獄中のドラッグ経験が原因だろう。少しだけイカレているんだ。でも、マトモなときは素晴らしい。いいことをたくさんいっている。

作曲面でもマンソンに影響されているのですか。

例えば「Poison Apple」は、基本的に「ATWA」に敬意を表している。空気(Air)、森(Trees)、水(Water)、動物(Animals)。森羅万象についてだから、いつもチャーリーに捧げる。然るべきオマージュだ。「poison apple(毒リンゴ)」という曲名は、ある意味、大衆のマンソンに対するイメージが反映されている。

ステージ上で彼に曲を捧げるのを、オーディエンスは嫌がらないんですか。

そんなことはないだろう。「チャーリーに捧げる」っていうと、それを受けて「いぇーい、チャーリー!」って叫ぶヤツもいる。額に十字架を付けた客も何人かいた。本当に面白い。みんな魅了されているんだ。

『Mind Control』(2013)は マンソンを髣髴とさせる作風でした。60sアメリカン・ダークサイドのヴァイブスですね。

その通り。「Devil’s Work」という曲はちょっとマンソン風なんだ。「I’m the devil, and I’m here to do the devil’s work」という歌詞は、(マンソン・ファミリーの一員で有罪判決を受けた殺人者)テックス・ワトソンの言葉をちょっといじったんだ。マンソンにまつわるあらゆる事象から強い影響を受けている。

もしマンソンにインタビューできるとしたら、何を聞きたいですか。

音楽面全般について興味がある。彼はどんな約束をしていたのか。アーティストとしてどうなりたかったのか。ビーチボーイズに何て言われたのか。そういった事実の背後にある真実を知りたい。マンソンは、音楽業界人にいい印象を持ってないみたいだろう。まあ、ニール・ヤングは、彼にバイクをあげたみたいだから、唯一の例外だ。とにかく、そういったすべてについて彼の考えを知りたい。

現在マンソンは80歳です。彼の人生や刑務所で過ごしている年月を考えてみると、いまだに生きているのが信じられません。それについてどう思いますか。

実はCIAがすでに殺していて、今いるのはロボ・マンソンとか、エイリアンか何かかもしれない。でもいつもその辺にいて、みんなのあいだを漂っているんだ。

§

2017年11月20日 追記:カリフォルニア州矯正局は、マンソン受刑者がカーン郡の病院で「11月19日午後8時13分(日本時間11月20日午前11時13分)に自然死した」と発表した。

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