移民から見たギリシャの影、アテネオリンピックと経済危機を経て荒廃した街で生きる人々

ギリシャへ入ってきた移民がどんな暮らしをしてるのか、想像さえ出来ない。11歳の時に家族とともにアルバニアからギリシャへとやって来たエンリ・カナジュ(Enri Kanaj)が送って来た写真『アテネの影』には、貧困やドラッグや売春に浸る移民たちの姿が映っている。

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05 January 2015, 8:20am

ギリシャへ入ってきた移民がどんな暮らしをしてるのか、想像さえ出来ない。11歳の時に家族とともにアルバニアからギリシャへとやって来たエンリ・カナジュ(Enri Kanaj)が送って来た写真『アテネの影』には、貧困やドラッグや売春に浸る移民たちの姿が映っている。これが移民のすべてだとは思わない。モノクロの演出も少し鼻につく。けれど、自らも移民として育った彼が、アテネの路上で撮り続けてきた人々からは、独特の匂いが滲み出ている。彼へのインタビューとともに、作品の一部を紹介したい。

ー撮影の動機は?
エンリ・カナジュ:『ギリシャの影』は個人的なプロジェクトで、2年前に始めたんだ。2004年のオリンピックの時は大量に観光客が押し寄せたけれど、今はすっかり荒廃してたり。みんな頭を落として肩を強張らせて口をつぐんで、亡霊が街を徘徊してるように見えたんだ。経済危機以降自殺率も上がってる。それぞれの写真に個人的な思い入れがあるんだ。

ー何か撮りたい対象があったの?
プロジェクトを始めた当初は、日常の個人的なレベルで起きてる危機みたいなものを見ていた。けれど事態は急変して、大きなストライキとかデモが起きると、すごく怒っている人がいたり、店が燃やされたりして。初めは明確な目的意識はなかったけど、自分を含めてこの場にいる人が体験していることの大変さに気がついて、撮るべきものが見えてきたんだ。

アテネの中心地はすごく活気があったんだ。オリンピックの前には街が大きく発展した。でもそれが終わると街は徐々に荒廃して、以前のようにジャンキーや街で物を売る人、移民や売春婦で溢れた。僕にとってはそれがありふれた景色だった。11歳でアテネに来たときにも、彼らは街に溢れてた。

それから、小さな部屋を借りて暮らしている移民たちに目を向けるようになった。多くの移民は未来への希望もなく暮らしてる。5ユーロで体を売る売春婦とかと一緒にいることが、僕のルーティーンになったよ。家族の話になるとどうしても敏感になる人が多かった。普段は優しくてもね。よりよい生活を望んでギリシャにやって来た人も、結局は貧困や人種差別の壁にぶち当たる。運が悪ければ、実際に暴力を受けたり、殺されることだってある。今回は強さのある写真を選んだけど、それは僕が彼らの人生を知ってるからかな。

ー子供時代、ギリシャに来た経緯についてもう少し詳しく教えてもらえるかな。
1980年、アルバニアのティラナで生まれた。国境が解放された1991年、家族がギリシャへ移住したんだけど、当時はなぜ大好きなアルバニアを離れなきゃいけないのか分からなかった。持ってたものは全部売って、白黒の家族写真と洋服を詰めたカバンを持ってバスに乗ったんだ。困惑したし、少し怖くもあった。けど、光り輝く街灯や商業ポスターを見て、バーで初めてコーラを飲んだときに、その思いは吹き飛んだね。

最初の2ヶ月は、アテネの中心にある安宿で暮らした。僕たちは3階にいたんだけど、2階が好きだったね。かわいいギリシャ人の女の子たちが住んでたから。彼女たちはそこで体を売ってたみたい。部屋に入れてもらって、化粧をする彼女たちを鏡越しに見ていたんだ。ギリシャ語を教えてもらったりしたけど、そのイメージが今も胸に焼き付いてるね。

ギリシャは辛い場所だった。僕はすぐに戻れると思ってたんだけど、色んな困難に直面して、差別もされた。22年経った今ではギリシャのいいところも悪いところも見えるけど。僕のホームであり、戦場でもある。

ー写真の被写体はアテネで「希望もなく」生きてると言ったけど、写真にはそれが滲み出てるね。
みんな知っていると思うけどギリシャは過去数年間、大きな危機に直面してる。事態はますます悪化してる。そこで生きる人々の辛さを隠したくないと思ったんだ。写真にはそれが映ってると思う。一瞬でも立ち止まって、人の痛みを感じたり考えたりしてもらえればと思う。

アテネの中心地近くの部屋にて

配給を待つ人々

移民証明書の掲示を求める警官

タトゥーを見せてくれた少女、「M」は「ママ」の意味

オモニア広場の路地裏、ジャンキーの溜まり場になっている

街の中心街で見つけた男性、殴られて顔が潰れている

路上でキスをする売春婦

Mi麻薬常習者のミハリス(28歳)とエレニ(32歳)、ホテルにて。2人の子供を養い、麻薬を手に入れるためエレニは売春をしている

アフガニスタンからの移民たち、荒廃した工場にて

Xシア(32歳)は売春婦として働き、麻薬を買うためのお金を稼いでいる。一緒に住んでいる母親は彼女の仕事について何も知らない

ギリシャ正教会から配給された食事をすする男性

アフガニスタンからの移民たち、荒廃した工場にて

路上でヘロインを打つジョアナ(22歳)、夜は売春をして金を稼ぎ、安宿で1人暮らしている

女性の携帯を盗み逮捕される移民、アテネの中心地にて

アフガニスタンからの移民たち、荒廃した工場にて

反政府デモ

大きなデモが行われ、多くの建物が燃やされた

エンリ・カナジュ http://www.enricanaj.com/pages/home