あなたのパートナーはあなたの親に似ている

私たちが親に惹かれる、ということを裏付ける証拠は発見されていない。しかし、おどろくなかれ、私たちの惹かれる相手が親によって形づくられる、と結論づける研究が増加している。『Evolution and Human Behavior』2018年1月号に掲載された新しい研究もそのひとつだ。

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mar 15 2018, 6:55pm

性に関する、フロイトのほとんどの研究が不愉快だ。何よりも不愉快なのは、私たちがひそかに親への性的欲望を抱いている、というコンプレックス論だ。男子の場合は、エディプス・コンプレックス(Oedipus Complex)とフロイトが名付け、女子の場合は、エレクトラ・コンプレックス(Electra Complex)とユングが名付けた。

ありがたいことに、現在の心理学者や精神科医は、フロイトの見解から距離を置いている。それに、私たちが親に惹かれる、ということを裏付ける証拠は発見されていない。しかし、おどろくなかれ、私たちの惹かれる相手が親によって形づくられる、と結論づける研究が増加している。『Evolution and Human Behavior』2018年1月号に掲載された新しい研究もそのひとつだ。

この研究では、チェコ共和国の女性異性愛者769名、男性異性愛者149名に、様々な体格の裸体男性のシルエットを提示し、(1)現在、もしくは直近のパートナー、(2)理想のパートナー、(3)記憶にある幼い頃の父親の姿、3つのそれぞれにもっとも近いシルエットを選ぶよう、被験者に指示した。

結果、実験参加者の父親の姿と、理想のパートナーの姿とのあいだに、僅かながら、統計的に有意なつながりが現れた。女性異性愛者の場合、父親がガッシリしていようと、瘦せていようと、筋肉質であろうと関係なく、父親の体型と似たシルエットの男性を理想のパートナー像として選ぶ傾向にあった。その傾向は、特に、父親と前向きな関係を築いてきた、という女性に顕著だった。

男性同性愛者の場合、その傾向は、父親が痩せ型だったときにしか現れなかった。つまり、父親が筋肉質、あるいはがっしりしていたとしても、理想のパートナー像と関連性がなかったのだ。さらに、男性同性愛者の場合、女性異性愛者と異なり、父親との関係性が結果に影響していないようだ。

幼いころ世話してくれた誰かの特徴と、恋愛感情を抱く相手の特徴とのあいだにある関連性を探る研究は、近年、この研究以外にもたくさんある。例えば、2013年、『Journal of Research in Personality』に掲載された研究は、親が年をとってから生まれた子どもは、成人してから年上に惹かれる傾向が強いという。

それで終わりではない。その他数々の研究で、親(多くの研究が異性愛者を対象としているのため、ここでも異性の親)の特徴と、現在のパートナー、あるいは、理想のパートナーの特徴には、似通う点があると報告されている。例えば身長、髪色、瞳の色、体毛の量などだ。

つまり、これはどういうことか。どうして私たちは、親と身体的に似ている相手に惹かれてしまうのか。答えはこう、と明示できないが、いくつかの見解がある。

ひとつは、人間も他の動物と同じく、幼少期に性的〈刷り込み〉期を経る、とする見解だ。臨界期に、世話人の特徴と好ましい相手の特徴を結びつけるようになるという。大学で心理学入門の授業を受けたことがあるなら覚えているだろうが、動物行動学者のコンラート・ローレンツ(Konrad Lorenz)博士による、ハイイロガンの雛鳥における刷り込みプロセスの研究がこの見解の根拠だ。

ローレンツ博士は、ハイイロガンの雛鳥が孵化して最初に目にした動くモノを、母親として認識するよう刷り込まれることを発見した。ローレンツ博士について書かれた記事に、必ずガンの群れを率いる博士の写真が使われるのはそのためだ。彼の研究のなかで、いちばん興味をそそられるのは、博士を母親として刷り込まれたガンが、のちに博士と似た人間の男性に求愛行動をとった、という事実だ。

刷り込みは、親と類似点をもつ相手に惹かれる理由を説明してくれるだけではなく、フェティッシュが形成される理由も教えてくれる。例えば、脚フェチであれば、フェティッシュを幼少期の経験に結びつける。

刷り込みの背景にはなにがあるのか。進化論的説明が一般的だ。例えば、親の特徴に惹かれる、という特性を発展させると生殖に役立つ、といった具合だ。もちろん、あまりに遺伝情報が近い相手に惹かれてしまうと、近親相姦の可能性が高まり、先天異常につながるので、そうならない程度ではある。アカの他人のなかから、少しでも血のつながった個人を選べるのであれば、望ましい生殖の機会が増える。受精率は、三いとこか四いとこが最も高い、との研究もあり、刷り込み説を補強している。

とはいえ、安直に鵜呑みにしてはいけない。まず、この分野の研究で発見された親とパートナーの関連性は、非常に弱い。さらに、研究結果の不一致もある。例えば、今回、身体つきについて調べた『Evolution and Human Behavior』の新研究を含む、いくつかの研究で明らかになったのは、親と理想のパートナーの特徴についてのみで、現在のパートナーの特徴との関連性は、明らかになっていない。

ただ、私たちがパートナーを獲得するには、好きな相手から想われない、選択肢がないなど、あらゆる制約があり、矛盾、関連性の弱さは当然生じるだろう。

さらに、この関連性は、親との関係の質にもよる。先ほど述べたように、親との関係性が大きく影響するのは、異性愛者だ。おそらく、同性愛者は、男女ともに、親に受け入れてもらえない傾向があるからだろう。さまざまな条件により、この関連性は、さらに複雑化している。しかも、私たちは見た目だけで誰かに惹かれるわけではない。恋愛パートナーを探すさい、知性やユーモア、誠実さや優しさなど、心理学的な特徴も非常に大きな要素だ。

つまり、親に似た相手に惹かれる、という仮説には、ある程度、理があるようだが、親に似たパートナーといっしょになる、とは決して断言できないのだ。

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