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Q-Tipが語る最後のA TRIBE CALLED QUEST

2016年11月、18年ぶりにリリースされたA TRIBE CALLED QUESTのアルバム『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユアー・サービス』。今作は全米初登場1位を獲得。あらためてATCQの人気と偉大さを表した作品であった。米国大統領選、そしてPhife Dawgの予期せぬ死を経て、Q-Tipがすべてを語る。

by Kyle Kramer
29 May 2017, 9:10am

時間の概念がなくなったかのような作品だ。始まりも終わりもない。メビウスの輪。うねるリズム。空間に響く大勢のフロウ。2016年にリリースされたA TRIBE CALLED QUEST(以下:ATCQ)のアルバム『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユアー・サービス(We got it from Here... Thank You 4 Your Service)』のなかには、いくつもの〈エンディング〉がある。しかし、この作品はいつまでも鳴り続ける。何世代にもわたる、広汎な人類の営みのなかで、これからも再生され続けるのだ。

「様々なアーティストたちのぼんやりとした仲間意識のような空間に、僕も連なっている気がする。それは、ロバート・デニーロ(Robert DeNiro)だったり、21サヴェージ(21 Savage)だったり…。俺たちは、何かしら共通項があって、つながっているんだ。それは〈アート〉だ」

電話越しにそう語るのは、Qティップ(Q-Tip)だ。物腰柔らかにしゃべり、じっくりとこちらの話を聞いてくれる。まあもしかしたら、バスタ・ライムス(Busta Rhymes)とハッパを吸ったり、日本の哲学書を読んだり、アナログシンセを使った古いアナログ盤を探している最中なのかもしれない。見知らぬ人間に〈なぜニューヨークはすばらしい街か?〉なんて説明するよりも、とにかく文字通り〈価値のある〉何かをしているかもしれない(その答えは、その街で生きる人たちが口を揃えていうように〈人種のるつぼ〉だからなのだが、それを答えるQティップは、質問者に「自分はつまらない質問をするバカだ」とは思わせない。まるで、質問者がグローバルな視点を持った賢い人間と勘違いしてしまうような答えを返してくれるのだ)。ジ・アブストラクト(The Abstract)名義でも活動するQティップは、唯一無二の存在であり、彼自身が文化であり、この世界において強い影響力をもち、どんな場所でも寛げる人間だ。ハイ・アートとストリートのスラングを、コンセプチュアルな思索とリアルな政治を、いとも簡単に結びつけてしまう。熟慮して話すが、当意即妙でユーモアたっぷりな気安さも忘れない。冷静に語る彼が語調を強めるのは、つい夢中になってしまったときだけだ。たとえば「僕はヤング・サグ(Young Thug)は好きだ。むしろかなり好きだ」などなど。

彼の〈何かと何かを結びつける役割〉は、アルバム『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユアー・サービス』でも明らかだった。このアルバムは、ATCQの6枚目にして最後のアルバムであり、2016年11月、アメリカ大統領選と同じ週に発売された。今作からのセカンド・シングルカット曲「Dis Generation」では、Qティップ、ジェロバイ・ホワイト(Jarobi White)、ファイフ・ドーグ(Phife Dawg)、バスタ・ライムスが参加し、織り重なるフロウに〈結びつき〉が顕れている。『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア…』のリリックは、際限なく広がるスプロールのなかで展開され、周囲の物語を吸収し、大きなサウンドのなかに包含されながら、力強い音楽になっている。ヒップホップを定義づけるほどのグループでありながら、その世界から逸れていったATCQのストーリーにおいて、このアルバムは再始動、再結成、新たな門出を象徴する作品だ(ヒップホップ界におけるNIRVANAだと捉えてほしい。オルタナティブロックの精神を打ち立て、メインストリームを刷新するほどの成功を収めたバンドと同じく)。Qティップとファイフ・ドーグは古くからの友人だったが、その長い付き合いゆえに関係を悪化させてしまった。しかし2015年、彼らのデビューアルバム『ピープルズ・インスティンクティヴ・トラヴェルズ・アンド・ザ・パスズ・オブ・リズム(People's Instinctive Travels and the Paths of Rhythm:1990)』の25周年を祝し、全国ネットのテレビ番組「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」でふたりは再会を果たしたのだった。

しかし、アルバムの制作過程は、45歳のファイフの予期せぬ逝去により、Qティップが「this is the last Tribe(これが最後のTRIBE)」とラップした通り、意外な結末で幕を閉じた。とはいえ、ATCQのバイオリズムは、時代のうねりと合致した。どちらかというと啓蒙的であったオバマ時代から、恐るべきトランプ時代に移行する、レトリカルな警鐘が必要な激動のさなかにリリースされた『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア…』は、トライブが長年にわたって謳い続けた社会的、人種的進歩主義の新たな顕現なのだ。大統領選の週末には『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』で、「揺れるこの国のために立ち上がろう」とステージで表明し、一層特別な鋭さで、彼らのサウンドは響いた。ATCQは、年頭のグラミー賞でのパフォーマンスでも〈抵抗〉というテーマを再掲し、トランプ大統領によるイスラム教徒入国禁止令を批判した。バスタ・ライムスはトランプを「エージェントオレンジ(枯葉剤)大統領」と皮肉った。

『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア…』は時代を反映しつつも、時代に縛られはしない。ファイフの声は活気に満ち溢れており、さらにATCQの過去作品からのサンプリングにより、耳馴染みのあるフレーズを生き返らせている。アンドレ3000(André 3000)ら、同時代を共に戦ってきた仲間たちだけでなく、アンダーソン・パーク(Anderson Paak)を筆頭に、新しい才能ともコラボしている。シンセサイザーの音色が心拍計のように鳴り、アルバム全編を通しての推進力となっていると思えば、唐突な無音状態が不快な現実の姿を立ち昇らせる「Mobius」(いかにも〈メビウスの輪〉という名の曲が収録されている)、そしてサウンドスケープの合間を自由にラップする「Whateva Will Be」。この曲はブラックスプロイテーション映画* からのサンプリングとダブ、レゲエ、ゴスペルがぶつかり合い、コンシークエンス(Consequence)の声が独特な浮遊感を感じさせている。ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)が参加している「Conrad Tokyo」では、通りの向こうのラジカセから聴こえてくるようなケンドリックのラップが、2分間の超ぶっとんだ即興のシンセサイザーに乗っている。登場人物がシームレスに移行するのは、音楽のなかをのびのびと遊ぶATCQならではのスタイルだ。このアルバムで繰り広げられる、本能に導かれたATCQの音楽的探求は、自我の境界など無視するかのように、ペルソナからペルソナに遷移し、小節という概念を跨ぎ、〈始まり〉と〈終わり〉をも止揚する。ひとつの声が〈ひとつの声〉として完結しないのだ。

* 利益のために同時代の社会問題などを題材に利用したり、ヒット映画を真似たりするエクスプロイテーション映画のなかでも、アフリカ系アメリカ人をターゲットにつくられた映画。

そして、ATCQならではのグルーヴが顕著なのが「Dis Generation」だ。どんな曲かを知るには、ヒロ・ムライ(Hiro Murai)が監督したビデオを観るのが手っ取り早い。アトランタ在住のヒロ・ムライは、どんどん先へと進む無限の景色を映し出す。そこで追求されているのはリズムの流れだ。ATCQがつくり出す宇宙のなかでは、全てがひとつであり、全てがリズムであり、全てが真実。そんな世界なのだ。

ATCQの楽曲では、ひとりのラインにもどんどん他のキャラクターが登場しますが、それが「Dis Generation」のビデオでは見事に映像化されていますね。本当にクールです。現在のヒップホップシーンで、このようなスタイルはとてもレアです。ヒップホップの変化について、何かおもうところはありますか?

ここ数年、ヒップホップ・カルチャーでは、個々のMCにスポットが当たるようになった。もちろん、コラボレーションはたくさんあるから、なくなった、といってるんじゃないんだ。コラボは、ニューヨークから登場したMC、僕たちの時代のMCにとっては昔からの伝統だ。クルーのメンバーだろうとそうじゃなかろうと、ラインをいっしょに叫んだり、最後はいっしょに声を重ねたり…『ボルトロン』* みたいなもんなんだよ。ひとりひとりでも強いけど、協力したらもっと強くなる。僕たちも4人だから、こんなふうに声を合わせるんだ。それに、曲の無駄遣いをしないという意味でもいい。こうすれば全員にまんべんなくスポットがあたる。

* 米国で放映されていたテレビアニメ。日本の『百獣王ゴライオン』と『機甲艦隊ダイラガーXV』を統合してつくられた。

ヒップホップは個人主義が強まっている、とおっしゃいましたが、そのために失われてしまった美学があるのでしょうか?

それはまったくない。個人主義は、ひとつの選択肢としてあるだけだよ。長いあいだ活動しているアーティストや、過去のアーティストが、いまのシーンに対して苦言を呈しているのなんて聞きたくない。僕たちがペーペーの頃も、年上のヤツらにそういわれるのがすごく嫌だった。自分の感覚、自分の好み、その曲に必要なもの、それだけが重要なんだ。僕は、プロデューサーとしてもアーティストとしても、「音楽のエネルギーについていくだけ」「音楽に全部任せよう」と心掛けて活動している。他の誰かが僕とは違う選択をしたところで、それが悪いとも、そのせいでヒップホップが貶められるなんて、まったく思わないよ。

音楽的な流れの話をすると、このアルバムはあるひとつの興味深い問いに対する答えを提示している気がします。その問いとはすなわち、〈ヒップホップは、伝統的なクオリティを保ちながらどう進化するのか?〉です。それについて、あなたはどんなスタンスでいますか? また、あなたにとっては何を追及するのが、いちばんおもしろいんですか?

何をするにせよ、僕にとっては、常に前を向いているのが大事なんだ。もちろん、同じことを繰り返しもするし、これまでの楽しかったこと、かつて心を震わせた何かを、もう1度やりたくなりもする。でも、時間は過ぎていくし、人間性も変化している。世の中、アート、哲学、何だって変化する。だから、変化する環境に適応するか、一緒に変化するのか、あるいは、動かずにじっとしているのか、いずれかを選ばなくちゃならない。もしかしたら、これまでの経験のなかにも何かしらの好機がひそんでいて、再チャレンジすべきなのかもしれない。主義、哲学は貫きながら、微調整したり、アップデートしたり、それに対する新鮮な姿勢を保つにはどうすればいいのか、それは難しい問題だね。それができるようになるには、やはり〈ある程度自我を捨てる〉〈厳しい状況に自らを追い込む〉〈居心地のわるいところに身を置く〉のが重要なんじゃないかな。そして、理性のスイッチを切って、本能を信じる。そのなかに落ちたときに、最終的に良い状況が巡ってくる。

自我を捨てる、直観に従う、そんな境地に至るのに貢献した、具体的な体験、アート、人物はいるんですか?

もちろん。個人的に、プリンス(Prince)と何度かそういう話をした。プリンスと僕は、そういうことを話す仲だったんだ。あとはスティービー(Stevie Wonder)、ラージ・プロフェッサー(Large Professor)、カニエ(Kanye West)。今、パッと思い出せるのはそれくらいかな。

ATCQがシーンに登場して、大勢のファンが、グループの〈アフリカ中心主義的(Afrocentric)〉なメッセージに共鳴しました。当時は、そんなメッセージを打ち出しているアーティストは他にあまりいませんでした。それから25年経った今、世の中のグローバル化は進み、世界中につながり、旅行したり、簡単にできる時代になりました。文化的に異なる、あらゆるものを受け入れる視点が育っています。それでもまだ、人種に関するあまりに大きな、もやもやとした問題はあります。米国においても、当時よりその問題が議論の的として顕在化してきました。あなた自身の思想はどのように変化しましたか?

人種問題はややこしい。とくに、この国の人種問題はね。ウイルスや病気は、適切な対策を施さないと、どんどん伝染してしまう。そんな感じじゃないかな。ウイルスに感染しても対処はできる。どうしてウイルスに感染するか、というと、チーズとパンしか口にしないような食生活を毎日送っているからだろうね。感染して具合が悪くなったら病院で診てもらって、注射してもらって、薬を飲んで、それで治ったような気になる。でも、もしそれまでの食生活を続けるのであれば、絶対にまた感染してしまう。だから、やるからには効果的に、正しく対処しなくてはいけない。残念ながらこの国は、これまでちゃんと対処してこなかった。あらゆる主義、主張がどんどん拡散してしまっている。だから問題が消えずに残っているんだ。

あなたは、そういう主義や主張に立ち向かうアーティストですが、全てを変えるのがあなたの役割なんですか?

個人的にいろんなものに触発され続けるのが、僕のアーティストとしての役割だよ。率直に、正直に語る。知らないことに関心を持てば、芸術的に、創造的に、率直に問いを立てる。僕は人間だ。何よりまず、ひとりの人間なんだ。それ以外の〈アーティスト〉、〈息子〉なんて肩書は、だいたいリストの下のほうにある。僕は、自らの道を、自らを複雑に構成するさまざまな要素とともに歩もうと決めている。僕の歩幅で、啓示に導かれて歩むんだよ。人生に対して鋭敏でなくてはならない。理解するためにね。成功するアーティストは、鋭敏でなければいけない。最高に極悪であろうと、 リーン(lean; テキサス発祥のドリンク。処方箋のせき止めシロップとアルコールやソーダを混ぜたドラッグカクテル)を飲んでようと、銃を携帯してようと、売人で犯罪者であろうとね。そして、歩みを止めないこと。僕はそうやって歩みを進める。それが役割なんだ。

もし僕が、たとえば人種差別、性差別、ホモフォビア、過剰な愛国主義、階級差別、エリート主義、そんなのに出くわしたら、ハッキり物申さなければならない。僕が行動しなければならない。もし有罪になる可能性があってもね。しっかり向き合わなきゃいけないんだ。クールに聞こえるだろうけれど、古い諺と同じだよ。「ソーセージづくりはすごく醜悪だけど、食べるとおいしい」。アーティストとして、泥もかぶらないといけない。僕もそう。例外じゃないんだ。

あなたがそうに語るのは興味深いです。というのも、このアルバムはファイフ・ドーグの追悼作品であり、ポリティカルなアルバムである、という評価が多いからです。でも、もう少し距離をとり、改めて作品を俯瞰すると、参加する全てのメンバーをはっきりと表現した作品のような気がします。つまりあなたは、先ほどのコンセプトをこの作品で完成させている。そういう意味で、このアルバムが、このタイミングで発表されたことについて、あなたがどう考えているのか知りたいのです。大統領選直後にリリースされ、さらに『SNL』でのパフォーマンス、グラミーでのパフォーマンスもありました。その結果、大勢にとって、この作品はさまざまなことを考えさせる、政治的シンボルになりました。現在の政治状況があったからこそ、そうなったのでしょうが、どう感じていますか?

人それぞれの解釈を許す作品だろうから、そうなったのも大歓迎だよ。こうなる可能性は常にある。つまり、僕たちが何か計画していたわけじゃなくて、偶然なんだ。多くの人は、これは今世紀の革命的アルバムだ、ヒップホップを変える、なんて評価する。でも、僕たちは、そんな評価を狙って創ってない。僕たちにとって重要な、僕たちにとっての真実を語っただけなんだ。だから大歓迎だよ。僕たちは何も頼んでいないし、計画したわけでもない。だからといって、責任逃れはできないし、みんなのイメージを放棄するわけにもいかない。僕たちは幸運な状況にいるんだ……いや、幸運というより、すばらしい状況だ。なぜなら芸術と表現、その他にも、いろいろな媒介を扱えるんだからね。医者でも、政治家でもない。僕たちは、額面通りの〈キツい仕事〉を〈義務〉でしているわけじゃない。でも、奥の奥まで覗くと、神秘的なモノに取り組んでいるんだ。僕たちが扱っているのは、人間らしさの源でもある、見えないもの、感情、思考なんだ。

グラミーでのパフォーマンスについてですが、メンバー全員で話し合い、誰が過激な発言をするのかを決めたんですか? それがバスタ・ライムスになったのかな、なんて想像をしていたんですが、どうでしょう? あれはどうやって決めたんですか? 話し合いましたか?

(笑)。いや、ホント何もなかった。僕は、「ここのパートに何秒間かあるから、オマエさ『これが俺らの感覚だ、ウィー・ザ・ピープル、俺らはひとつだ』的なことかましてよ」って提案しただけ。そしたら本番で叫んだのがあの〈エージェント・オレンジ大統領〉。皆には聴こえなかったかもしれないけど、コンシークエンスがそれに続けて、確か〈チートスの責任者〉(Cheeto-in-charge)ともいってた。

このアルバムで私が好きなヴァースは、「Black Spasmodic」で、ファイフの声をあなたが代弁しているところです。非常に感動的です。

ああ、「my nigga be talking to me let me explain, not through evil mediums(アイツの魂が俺に語りかける/俺が説明しよう、霊媒なんていらない)」……。

そうです、このヴァースはどうやって書いたんですか?

僕なんていないみたいだった! ホントに僕は書いてないんだよ。スタジオで声を発しただけ。あまり考えすぎず、とにかくフロウに身をゆだねようと意識していたんだ。そしたらあの歌詞が出てきたんだよ。

まるでファイフがあなたに乗り移ったかのようですね。

鳥肌が立つね。この作品全体がそうだったんだけど、特にこの曲は……ホント……。アイツが恋しいよ。すごく会いたい。

再結成してからのレコーディング体験はどんな感じでした? おふたりは本当に昔からの知り合いですが、再結成したからこそ改めてわかるファイフのステキさもあったのでは?

クールだったよ。初日は、スポーツについて話したり、ジョークを飛ばし合ったりしたんだ。ファイフは俺の近所に引っ越そうとしている、とも話していて、奥さんといっしょに僕の近所に家を買おうとしてたね。ネットで車を見たり……ベントレーとかね。バカみたいな時間を過ごしてたんだ。僕たち18歳でもないのにね。楽しかった。アイツといっしょに過ごせてよかった。いまだに信じられない。こうなるなんて想像もしてなかったからね。でもこれが現実なんだ。とにかく、アイツと過ごせたことに感謝しているし、この作品をいっしょに創れたのにも感謝してる。

制作中、何かファイフの様子がおかしいな、と感じたりはしませんでしたか?

ちょっとはあったけれど、考えないようにした。目の前のタスクに集中するようにしてたんだ。

ファイフが今作のタイトルを決めた、と語っている記事を読みました。彼に贈る、あなたたちのメッセージみたいですね。

そうだね。いや、俺がタイトルに悩んで、迷走していたんだ。そのときアイツが「じゃあこうしよう、これがタイトルだ。もうこれ以上変えるなよ、ティップ」とね。笑ったよ。アイツが、「わかってんだろ、お前は絶対何かしら手加えようとする。ほっとけよ!」というんだからね。アートワーク、音楽、タイトル、すべてファイフといっしょに創ったんだ。

ファイフは、自分が死んだらこのタイトルがより深い意味を持つのをわかっていたんでしょうか。

そうかもしれない。ジェロバイもいってたけれど、アイツは、このレコードをつくりながら死んだんだ。オークランドで透析をしてたから、約5000キロの距離を毎週、あるいは2週に1回は移動してた。アルバム制作のためだ。アイツはすごく喜んでたんだよ。スタジオにいられて幸せだったんだ。だからアイツがくたくたになって、悲しみのなかで他界したとは思ってほしくない。アイツは希望を抱いていたし、プライドをもってやってた。アイツは最後まで〈トリニダード・トバゴの戦士〉だった。いつでも闘う気まんまんだったし、いつでも最高のビートを探してたよ。

「まだお前らとは闘うぜ、お前ら全員クソMCだ!」。そんな勢いでしたよね。そこが好きでした。常にそこにいて、ビートに乗っているような。

まさにそう。ホントそう。でも、今はクソMCどもの相手は僕だよ。

どんなふうに、ファイフがみんなの記憶に残ればいいと思いますか?

「Black Spasmodic」で俺がラップしているように、「全世界のちっちゃいヤツら、世界を回すナポレオンのような、超人的なヤツらの味方」。アイツは強い人間だった。

ファイフは背の低い人たちの代表でもありました。

そう。それに、トリニダード・トバゴも背負っていた。アイツの母親の家族も、アイツのおばあちゃんの家族も背負っていた。アイツは家族を愛してた。自分の祖先、自分の民族を愛してた。地元も、両親も愛していたんだ。夫としてのファイフ、息子としてのファイフ、そしてファイブ・フット・アサシン(Five Foot Assassin、ファイフは160センチで米国の平均よりだいぶ身長が低かった)としてのファイフを、みんなにはずっと忘れないでほしい。

ファイフ以外のメンバーについてはどうでした? グループが再集結して、コンシークエンス、バスタ、ジェロバイ、そのほかのメンバーたちとまた曲を創るのは、どうでしたか。これまで以上に強く結びついているのでは。現在のグループをどう捉えていますか?

今でも、僕たちの繋がりは強いと信じている。TRIBEのアルバムはもう出ないだろうけどね。ほら、ファイフがいないと創れないから。でも、バスタのアルバムにも僕たちが参加してるし、ジェロバイのアルバムも創ってる。コンシークエンスのもそう。でも、もし僕たちが集結して何かやるとなったら、違う名前で活動するだろうね。A TRIBE CALLED QUESTは終わったんだ。僕はそう捉えている。

「Dis Generation」で、あなたは「Joey, Earl, Kendrick, and Cole, gatekeepers of flow(ジョーイ、アール、ケンドリック、コール。フロウの管理人)」と歌っています。名前を挙げた彼らは、何が違いますか? そして彼らの何を楽しみにしていますか?

彼らがどんなヒップホップをつくろうと、その世界を広げていくのを観るのが楽しみだ。語彙を広げ、拡大し、新しい解釈を加え、違う角度から光を当てる。そして、もし万事滞りなく進めば、いつまでも健康で、彼らの活動を注視していられるし、彼らを成長させられる。そうやって続けたいし、お互いを刺激し合っていきたい。それを喜ばしいことだ。誰にだってバックグラウンドがある。ポッと出なわけじゃない。僕もそう。いろんなものを吸収して、それが今の自分を形造っている。今もいいラッパーはいるんだよ。さっきもいったけど、俺は年上のヤツらが新しい世代について文句をいって、何の解答も示さないのが嫌いなんだ。僕は、今も自分みたいなラッパーがいるのもわかってるし、昔だっていた。そうおもわないヤツらは嫌だね。

今の状況に、ご自身のどんなところが反映されていると感じますか?

さっきもいったけれど、4人のMCとか。俺だって偶然聴いた曲を気に入ったりするんだよ。クラブにいったときに流れている音楽は、結構好きなのが多い。もちろん嫌いなのもある。だけど80年代、90年代にも、嫌いな音楽はあった。皆もそうだよね。

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