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ふたつの祖国が対立している今、イラン系米国人の私が伝えたいこと

自分が成長期に感じた不安が次の世代に引き継がれていることほど、悲しいことはない。

by Mana Mostatabi; as told to Leila Ettachfini
11 February 2020, 7:00am

Courtesy of Mana Mostatabi (pictured on the right)

ワシントンD.C.を拠点に、イラン系米国人の声を広めるべく活動する非営利団体〈National Iranian American Council(NIAC)〉。同団体でコミュニケーションディレクターを務めるマナ・モスタタビが、自らの生い立ち、二国間の緊張が高まっている現状について語る。

私は、イラン・イラク戦争(1980〜1988年)中のイランの、アフワズ(Ahwaz)という国境近くの町で生まれた。家族は幼い私を連れてサンフランシスコに移住したが、ほとんどの親戚は今もイランで暮らしている。戦時中、祖父は私の両親にイランを出るよう強く勧めた。ここでは子どもたちが安心して暮らせない、米国ならもっと良い暮らしができる、と。今の私があるのは、私のために多大な犠牲を払ってくれた祖父と家族のおかげだ。

ずっと苦労してきたイランの家族を思うと、最近のイラン情勢には不安を覚えるばかりだ。彼らの多くは市民として生活していて、大学にも進学した。もし戦争が始まったら、博士課程に進んだいとこたちは徴兵され、私たち世代は再び家族を喪うことになるのだろうか?

ここ米国への影響も心配だ。9.11以降、ミレニアル世代が子ども時代から十代までを過ごしたのは、イスラムフォビアや外国人嫌悪が横行し、トップに立つ指導者たちが立場の弱いコミュニティへの恐怖心を掻き立てる世界だ。その結果、私のアイデンティティはめちゃくちゃになり、イラン人であることを恥じるようになった。

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マナ・モスタタビ

自分が成長期に感じた不安が次の世代に引き継がれていることほど、悲しいことはない。コミュニティの仲間からも、多くの中学生が危険に晒されているにもかかわらず、学区ではそれほど問題視されていないと聞いている。指導者たちが私たち住民全体へのヘイトを当たり前のものとして見過ごせば、このコミュニティが不公平や差別に立ち向かう手段はなくなる。そうなれば、私たちのコミュニティは内側から崩壊するだけでなく、米国社会から完全に孤立してしまうだろう。

私たちはこの国の一部なのだということを、もっと多くの米国人に知ってほしい。明確な境界線なんていうものは存在しない。私たちはみんな心からこの国のためを思うと同時に、祖国の遺産を愛し、大切にしている。

母は、アフワズの病院で帝王切開で私を産んだ。当時は戦時中で、あらゆる物資が兵士のために確保されていたので、麻酔は使われなかった。その後、肝炎が流行し、大量の輸血が必要だった母への感染を防ぐため、私たちは早めに退院しなければいけなかった。家に帰ってそれほど経たないうちに、イラクのミサイルが近所の家に落下した。一家は9人家族で、生存者はひとりもいなかった。アフワズを含め、多くの町がまだ完全には復興したわけではなかった。私はあらゆる面で、戦争による破壊を逃れることができて幸運だったと思う。だからこそ、私は今、この悲劇を繰り返さないために全力を尽くしている。ここ米国の友人にも、故郷にいる家族にも、決してこんな悲しみを味わってほしくない。

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マナと妹

戦争によるトラウマをじかに体験した両親は、今回の米国とイランのあいだの緊張の高まりに、それぞれ私とは違うかたちで向き合っている。母はとても進歩的なひとだ。2017年、ムスリムの入国制限が決定したとき、彼女は真っ先に街に出て集会への参加を呼びかけた。母は米国が進歩的な政策を打ち出し、戦争から手を引くことを望んでいる。いっぽう、父はイランを壊滅状態に陥らせたイランの最高指導者アリ・ハメネイ政権打倒を掲げて活動している。私は両親ともに愛しているが、両親の活動によって家族に亀裂が生まれなかったといえば嘘になる。重要なのは、過激な思想やイデオロギーの違いは、すべてトラウマから生まれるということだ。残念ながら、これは私や私の家族に限ったことではない。これまでに多くの家族が、思想の違いによって対立するのを何度も目にしてきた。

イラン系米国人が教室、政界、ネット上のプラットフォームなどで声を上げることが、今まで以上に重要になっている。イラン系米国人のコミュニティには良心的な支持者も多いが、いつも自分たちの主張を伝える場を与えてもらえるわけではない。彼らがジャッジされることなく考えや想いを共有できる場をつくれるよう、ぜひ協力してほしい。

This article originally appeared on VICE US.

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