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Health

糞尿後の手洗いについて

「手を洗わないで死んだヤツなんて誰もいないのに、なんで貴重な水をムダにするんだ? 俺たちはもっと水を節約すべきだろ?」

by Maggie Puniewska
01 October 2017, 3:52am

Sean Murphy/Ulrich Baumgarten; Getty Images

考え得るシナリオ

あなたには、普段から、排泄後に洗面台に立ち寄らず、トイレから軽やかに出てくる友人がいる。もちろん、周囲には無数の雑菌が漂っているのだが、あなたの友人はこうのたまう。「手を洗わないで死んだヤツなんて誰もいないのに、なんで貴重な水をムダにするんだ? カリフォルニアも日照りになったばかりじゃないか。俺たちはもっと水を節約すべきだろ?」

懸念事項

水資源の問題を考える以前に、あなたが友人の個人的な衛生習慣の欠如に顔をしかめるのは当然だ。トイレは雑菌の巣窟だ。ある研究では、77000種のバクテリアとウイルスが公衆トイレには潜んでいて、そのバクテリアのうち約45%が便に由来するものだとわかっている。犬の糞やネズミの糞ではなく、人糞だ。

しかし、この事実も人々に手を洗わせるほどの影響力は持っていないようだ。あなたの友人には、まだまだたくさんの心強い仲間たちがいる。2010年、ニューヨークのグランドセントラル駅など、利用者が多いトイレ5ヶ所で6000名以上を調査した結果、6人に1人がトイレ後に手を洗っていない事実が判明した。更にもっとガッカリさせる他のデータもある。2015年の報告によると、トイレで石けんを使っている米国人は、たった66%しかおらず、単なる水で洗っている人も70%だけ。ちなみに水で洗っても、細菌除去に全く効果はない。

また、女性のほうが手洗いにうるさい傾向がある、との報告もされている。長年の研究によると、女性は少なくとも88%の割合で手を洗っていた。一方で男性は、4人に1人が洗面台を素通りしていた。実のところ、これらの数字はひどく低いものではないのだが、皮肉なのは、どうやら私たちは「自分はあんな人よりもずっとマシです」と誇張するのが大好きなようだ。同じ2010年の報告書のなかで、研究者たちがトイレ後の手洗いについて電話調査してみると、96%という桁外れの数の人々が、いつも手を洗っていると答えたという。手洗いは社会的に望ましい行為であるため、調査対象は自らの衛生観を誇張して返答した、と研究者たちは考えている。

起こり得る最悪の事態

そういうわけで、あなたの友人は衛生に対する反逆者コミュニティのメンバーなのだ。確かに彼は、だらしない衛生習慣のせいで死んではいない。しかし、雑菌を完全に避けながらトイレを利用するのは不可能なのだ。

アリゾナ州立大学の微生物学者チャールズ・ジェルバ(Charles Gerba)氏は語る。「排泄物にはサルモネラ菌が含まれている可能性があり、尿にはジカに加え、気管支炎、肺炎、さらには髄膜炎の原因となるウイルスが潜んでいるかもしれません。便座、洗浄レバー、トイレットペーパー・ディスペンサー、個室トイレのドアなど、あらゆるところに触れ、なおかつ手を洗っていないのであれば、すぐさま何かに感染する可能性があります」

しかし、「糞も尿も便器の中にあるじゃないか」「便器に手を突っ込んでるわけじゃない」と友人は抗議するだろう。だが実は、同じ行為をしているようなものらしい。ジェルバ氏の研究には〈糞は便器から出てきてしまう〉と記されている。便器の中のものが何であろうと、水を流せば、細かい水の粒子は、空気中、最大約1メートルも飛散する可能性がある。バクテリアたちも全部一緒に飛び散るのだ。

おそらく起きること

「手洗いをしないのは、シートベルトを着用しないようなものだ」。そう語るのは、手指衛生学研究者で、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院名誉教授のサリー・ブルームフィールド(Sally Bloomfield)氏。「ほとんどの場合は、元気でいられるでしょうが、風邪をはじめ、あなたを2週間ダウンさせるノロウィルスなど、厄介ものを拾う可能性もあります」。実際に起こる確率を数値化するのは難しいものの、トイレ直後だけでなく、帰宅直後、食事前、オムツ交換後、動物を愛でた後、ゴミに触れた後、くしゃみや咳などを手で抑えた後など、要所ようしょで石けんを使って手洗いをすれば、胃腸感染症 (ノロウィルスに加え、その他の胃腸感染症も含まれる) にかかるリスクを57%減らせる、とブルームフィールド教授は付け加えた。また呼吸器感染にかかるリスクも半減できるという。

あなたの友人に伝えるべきこと

そう、確かに私たちにも環境保護への関心を高める余地はまだまだあるのだが、トイレは節約できる場所ではないのだ。病原菌は瞬く間に広まる。あなたの友人は、自分自身だけでなく、みんなが病気になってしまうような、糞尿アイテムを携行しているのだ。ジェルバ氏は更に加えた。〈雑菌と一緒に家のなかへ入ると、その後どうなるか?〉という調査をしました。4時間以内にウイルスは、家中の90%に存在していました。さらにそのほとんどが、最低でも2時間、生き延びていました。ですから、すぐさま感染しなかったとしても、あとで感染する可能性もあるのです」

そのうえ、あなたの友人は、手洗いによって、人類としての良識ポイントも稼ぐことができる。ブルームフィールド教授は次のように語る。「人々は些細なものだと考えますが、手洗いは細菌の抗生物質耐性* に対する防衛法のなかでも、最も重要な手段に数えられます。考えてもみてください。もしあなたがウイルスを誰かに移してない、感染させていないとすれば、それはつまり抗生物質を必要とする人々、苦しんでいる患者たちが減少する世界につながるのです」。環境保護に関心をもつあなたの友人に、新たな生きがいを教えてあげたらどうだろうか。