ロシアに息衝く女性シャーマンの智慧

ロシア連邦共に属するトゥヴァ共和国では、今でもシャーマニズムが日常のなかに息衝いている。そんなトゥヴァ社会のあり方は、国に伝わる伝統や自然保護について意識を高め、シャーマニズムが現代社会の中でどうしたら生き続けられるか、という手本を示している。

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17 februari 2016, 12:37pm

ロシアの広大な自然が広がるトゥヴァ共和国には、今もシャーマニズムが息衝いている。この地で祈祷師に伺いを立てるのは、海辺で休日を過ごすのと何ら変わらない。

ロシア連邦に属するトゥヴァ共和国は、シベリア南部に位置し、モンゴルと国境を接している。ここには、古より続くシャーマニズムの伝統が、男女問わず、人々の日常に根付いている。サヤン山脈の奥深くに広がる独特の景観を求め、大宇宙のエネルギーを我が物にせんとし、秘儀参入を欲する訪問者が後を絶たない。ロシアの写真家アナスタシア・イヴァノヴァが初めてトゥヴァを訪れたのは、ロンドンで、シャーマンまたは祈祷師を名乗る芸術家についての研究に従事していたときのこと。そこで目の当たりにした雄大な景色、かがり火、聖なる歌に魅了されて以来、たびたび彼女はトゥヴァに訪れるようになった。

All photos by Anastasia Ivanova

「三回、トゥヴァに行きました。初めはシャーマンの撮影が目的でしたが、シャーマンたちに会ったり、気に入った場所に行ったり、祈りの歌を聴いたりするために、再びトゥヴァを訪ねました」。「アクセスは良くありません。サヤン山脈に囲まれているため、隣接するハカス共和国を通らないとトゥヴァには辿り着けません。ロシアから首都クズル市に向かう直行便もありませんし」

「シャーマニズムは公的に認められていて、異端やカルト扱はされない」とイヴァノヴァは説明してくれた。「ソ連時代、儀式は禁じられていたけれど伝統は引き継がれ、90年代中盤に、モングーシュ・ケニン・ロペサン(Mongush Kenin-Lopsan)のおかげで完全に復活しました。彼は現在、トゥヴァ共和国のシャーマンの長を務め、歴史家、著作家、詩人として評価されています。彼は、今年90歳になります」

トゥヴァでは儀礼が日常のなかで重要な役割を担っているので、シャーマンはコミュニティにとって欠かせない。超自然的能力と日常生活は切っても切り離せない関係にある。イヴァノヴァによれば「シャーマンを訪ねるのは、ごく当たり前」だという。「遠くの村から、懇意にしているシャーマンを訪てくる人もいる。彼らは健康、富、幸福、子供や家族の繁栄祈願、あるいは、邪気を払うため、儀式を依頼する」

「あるとき、ケニン・ロペサンに会うために列に並んでいると、小さな村から来た2人の女性に出会いました。数日前、一方の家に鳥が迷い込んだらしく、その意味を尋ねるためにわざわざ遠くから足を運んだそうです。地元の人は、食べものや乳、肉など自分の持っているもので対価を払うこともできるけれど、最近はかなり組織化されていて、価格表も用意されているし、事務所もあります。シャーマンは、携帯も使えば、コーラも飲むみます。どこにでもあるような5階建てのアパートに住んでいたり、ごく普通に村で暮らしています。何ら特別なことはありません」

しかし、どうしても、シャーマンの文化に神秘的な何かを感じてしまう。「私が最も惹かれるのは、リズミカルなドラム、祈りの歌、自らで仕立てる衣装です。鷲の羽や熊の手、キツネのしっぽを着ける人もいます。シャーマンは正真正銘のパフォーマーで、それについて書かれた本も多いんです」

トゥヴァでは、男性も女性もシャーマンになれる。イヴァノヴァがトゥヴァで初めて会ったシャーマンはティティアナという女性で、その後何度も彼女を撮影している。「ティティアナは、ロシア語もトゥヴァ語も話せるし、神話や伝説、民話を知っていて、ありとあらゆる東方の叡智に精通しています。彼女にどんな質問を投げかけても、予想だにしない答えが返ってくるんです。素敵な場所に連れていってくれて、その地の言い伝えを教えてくれました」

「シャーマンの世界では、どんな岩も、山も、川も、それぞれの物語と意味を持っています。トゥバでいちばん神聖な山、ハイウィラカンでティティアナの儀式を撮影しましたが、その雰囲気は、この世のものとは思えませんでした。山の土壌に含まれる特別なミネラルや鉱石が磁場をつくり、そこには、別世界かのような時間が流れていました」

トゥヴァ社会のあり方は、国に伝わる伝統や自然保護について意識を高め、シャーマニズムが現代社会の中でどうしたら生き続けられるか、という手本でもある。シャーマンの儀式や共同崇拝のために用いられる神聖な場所が国のあちこちにある。「どのシャーマンにもとっておきの場所があります。木、岩、山、小川、なんであれ、シャーマンになろうと決意したときに出会った象徴があり、大事な儀式を執り行うたびに、そこに立ち返るのです」

「それぞれの用途に応じて祈りを捧げる、公共の場所もあります。例えば、女性のエネルギーが流れている場所には、不妊に悩む女性が子宝に恵まれるよう、おもちゃや食べものを携えて訪れます。他にも、富、健康、勇気を授かる場所もあります。おもちゃの車がたくさん置いてある場所を見かけたのですが、あれはおそらく、新しい車が欲しい人の集まる場所なのでしょう」

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