ロンドンの違法レイヴをとらえる写真家クレア・マッキンタイア

違法レイヴシーンを追う写真家が、イーストロンドンの会場で出会ったパーティ仲間について語る。
Nana Baah
London, GB
NO
translated by Nozomi Otaki
east london techno rave
Sergio and Soul. All photos by Claire McIntyre.

レイヴの写真を撮ったことがあるなら、その出来栄えが悲惨なものであることは想像がつくはずだ。汗で透けたTシャツ、虚ろな目、なぜかしゃくれている顎…。Instagramに投稿するなら、24時間しか残らないストーリーで〈親しい友達〉に公開するだけに留めておいたほうがいい。たとえあなたが思い切り楽しんでいたのだとしても、申し訳ないが、見るほうとしてはかなり不快だ。

しかし、写真家のクレア・マッキンタイア(Claire McIntyre)は、そんな汗まみれのレイヴを不思議と美しくみせる方法を心得ている。クレアは約2年かけて、イーストロンドンの2ヶ所のレイヴで過ごす夜を記録してきた。ロンドン芸術大学の調子に乗った学生たちから、パーティでひとりの時間を満喫する3児の母まで、クレアは「いつか自分の子どもたちに見せるもの」として、これらのアーカイブを撮り溜めたという。

レイヴでいかに階級の壁が取り払われるのか、そしてひとびとが普通のクラブナイトよりレイヴを好む理由を、クレアが語ってくれた。

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—違法レイヴを撮るようになったきっかけを教えてください。
最初は普通のテクノクラブを撮っていたんです。こういう場所はたいてい撮影禁止で、携帯やカメラを持ち込めないので、小さなアナログカメラを持っていきました。そのなかで倉庫でレイヴを主催しているひとたちに出会い、それを撮るうちに夢中になったんです。

—暗闇でフラッシュをたいて捕まらなかったんですか?
私が撮っているのは、いわゆるダンスフロア的な写真ではないので。「ねえ、ちょっと廊下に出てくれない?」って声を掛けるんです。無視して踊り続けるひともいますが、少し離れた場所までついてきてくれるひともいます。

ClaireMcIntyre Illegal Raves

People doing balloons in Bow. 2019

—このようなレイヴはどうやって運営されているんですか?
たいていはグループによって開かれます。彼らはフルタイムで働いているんですが、それと並行して自分たちで企画しているんです。みんな音楽文化を愛してやまないひとたちです。倉庫やレンタルできる場所を探すのを手伝ってほしい、と頼まれることもあります。警察に立ち退きを要求されたりもしますが。

—警察に見つからないようにイベントを広める方法は?
すべてFacebookのイベントページやメールで告知しています。会場の住所は事前には知らされません。夜10時頃になると、郵便番号か会場を示す地図が送られてきます。

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Coke-boys-Waves-2

—イーストロンドンのレイヴにはどんなひとが多いですか?
いろんなひとがいますよ。とても面白いです。地元イーストロンドンの若者もいますが、弁護士と会ったこともありますし、私のパーティ仲間の小児科医もいます。客層は本当に多様です。難民らしきひとも、国会議員もいましたね。本来ならこんなところに来るべきじゃない、と私に打ち明けるようなひとたち。誰でも受け入れてくれる場所なんです。

—会場の雰囲気はどんな感じですか?
本当にすばらしいと思います。普段の生活では絶対に会えないようなひとと出会える場所で、階級の壁を完全に取り払っている。いまだに階級による分断が根深いロンドンという街では、とても貴重な場所だと思います。

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Walking from one rave to another in Hackney Wick.

—こういうレイヴはテクノが中心なんでしょうか?
ひとつは、ヘヴィなテクノよりです。一般的なテクノパーティに近い感じ。もうひとつはもっと実験的で、あまりクリーンじゃない感じ。あまり集中力が続かないというか。ケタミン・ハウスみたいな感じですね。こういうパーティで使われるドラッグはさまざまですが、音楽はいつもエレクトロニックです。

—普通のクラブよりレイヴが好まれるのはなぜだと思いますか?
入り口に警備員もいないし、入るだけで10〜15ポンド(約1300〜2000円)とられることもないからでしょう。ドラッグなんかも関係してると思います。こういうレイヴでは、トイレでこっそりドラッグを使わなくてもいい。隠し事はありません。もちろん、ドラッグの使用を推奨してるわけじゃないですよ(笑)

—ドラッグを安全に持ち込める環境、ということですか?

そう、その通りです。みんながお互いに気を配っていて、警備員につまみ出されるんじゃないかと怯えることもない。運営側が雇っている民間の警備員は、DJのギャラが盗まれないように見張っているだけです。

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—今まで行ったなかで最高のレイヴ会場は?
正直、どこもかなりひどいです。倉庫ばかりなので。でも、何度か行ったハックニー・ウィックのボートは良かったです。ある年配の夫婦が船を開放して主催しているんです。

—こういうパーティで会った、もしくは撮影したなかでいちばん印象に残っているひとは?
マフィアのメンバーだという年配のイタリア人男性ですね。彼はグレーのスーツにボーラーハットを被っていました。それから3児の母だという女性も。すごくクールで、私が行っている全部のパーティに顔を出しています。不思議に感じるかもしれませんが、彼女は本当に普通の生活を送りながら、自分だけのナイトライフを満喫しているんです。とても安全な空間で、みんながお互いを尊重している。他のナイトスポットよりドラッグを目にする機会は多いかもしれませんが。

@clairemmcintyre

This article originally appeared on VICE UK.