UKドリルの中心アーティストたちが選ぶ最強チューン9選

PressplayからリリースされたUKドリルミュージック初となるコンピレーションテープを祝し、RV、スケンド&AM、ジャックス、V9、クウェンフェイスをはじめとするドリルアーティストたちが最高のドリルチューンをご紹介。
Ryan Bassil
London, GB
AN
translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
YK
translated by Yasushi Kishimoto
UKドリルの中心アーティストたちが選ぶ最強チューン9選
Pressplayのコンピレーション『The First Drill』のアートワーク

最新かつ最高のUKドリルチューンを探しているなら、Pressplayをチェックすれば間違いない。このYouTubeチャンネルは、UKドリルの数々のヒット曲をより広いオーディエンスへと届けており、週200万にも及ぶビュー数を獲得。ヘッディー・ワン、67、スケンド&AMなど、UKドリルの顔と呼べるアーティストたちの新曲が絶えず公開され、ラスの「Gun Lean」は全英シングルチャートでトップ10入りを果たした。

そしてPressplayは2020年6月、UKドリルシーン初となるコンピレーションテープ『The First Drill』をリリース。本作には、V9、クウェンフェイス、スケンド&AMなど、UKドリルで今もっともアツいアーティストたちが名を連ねている。

本作のリリースを祝して、私たちはできる限り多くの収録アーティストにインタビューをし、好きなドリルチューンを尋ねた。インタビューにはPressplayの代表、ダニーも参加。彼自身の好きな楽曲を挙げるだけでなく、他のアーティストが挙げた曲にコメントを加えてくれている。「選ばれた曲は全部、カルチャーにとって重要な役割を果たしている」とダニーはいう。「影響力が強いという意味だけじゃない。耳馴染みの良いサウンドじゃないと思うひともいたかもしれないけど、そういう曲が今のドリルシーンを形づくったんだ」

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RVが選ぶ最高の1曲:ヘッディー・ワン×RV「Know Better」

RV:究極的にオーセンティックなドリルだよ。この曲の裏話を聞けばわかるかも。俺たちOFBは、ドリルカルチャーのため、ガチのドリルファンたちのために本物のドリルをつくってる。誰もが楽しめる楽曲だけど、誰もが理解できるわけじゃない。わかるヤツにだけわかる。

ダニー:「Know Better」は世界的にヒットしたし、世界のドリルシーンにとってもめちゃくちゃ重要な1曲になった。米国でも、ポップ・スモークをはじめとする大勢のアーティストにリミックスされた。この楽曲の裏にあるストーリーを知れば、さらに深く理解できると思う。これはドリルカルチャーのための曲なんだ。きっと、曲を聴いたりMVを観たりするだけじゃわからないひとも大勢いるだろうけど、ドリルカルチャーにとってはかなりインパクトがあった。世界的にヒットしたし、ラジオでもパワープレイされたし。ヘッディー・ワンとRVも、この曲がきっかけで売れるようになった。この曲がなかったら今の彼らはいないよ。ドリルがカネになるってこと、ラジオでもプレイされるってこと、1000万回を超える再生回数を稼げるってことを世間に示すうえで重要な役割を果たした曲。(ダニーも、自身が選ぶ最高の1曲の一つとして、この曲を挙げている。)

カーマが選ぶ最高の1曲:PS×カーマ「Riding」

カーマ:知る人ぞ知る、今までもっとも売れた、もっともリアルな俺らの曲。

ダニー:PSとカーマにとっては重要な1曲だと思う。今や再生回数は100万を超えてるし、ふたりのペッカム出身のキッズ(確か当時ふたりは15歳くらいだったんじゃないかな)の曲がここまでバズったんだから。彼らが住んでた団地で制作されて、カネもかかってない。だけどここまでヒットした。すごいよ。

スケンド(410)が選ぶ最高の1曲:チーフ・キーフ「Faneto」

スケンド:候補曲は山ほどあるけど、この曲はマジでファンデーションだし、俺にとって全ての始まりだった。

AM(410)が選ぶ最高の1曲:G・ハーボ(リル・ハーブ)×リル・ビビー「Kill Shit」

AM:選べないほどあるけど、あえて挙げるならG・ハーボ×リル・ビビーかな。

ダニー:知っての通りふたりは米国人だ。ドリル発祥の地はもちろん米国で、英国はそれを真似て自分たちのシーンをつくりあげた。UKドリルシーンのサウンドは、USドリルとはまったく違う。だけど多くのドリルラッパーは米国のラッパーを聴いて育ってるし、今の彼らがつくる音楽にはUSドリルの影響が色濃いと思うよ。

ジャックスが選ぶ最高の1曲:ビッグ・グロックス×ジャックス「Zulu Man」

ジャックス:やっぱり「Zulu Man」だね。自慢するようだけど。でもいちばん好きな曲といえばこれ。俺とグロックスが組んだ。お互いが完全にかみ合っているうえに、それぞれ自分らしいスタイルでカマしてる。もし自分の曲を選んじゃいけないなら、M1llionzの「Y PREE」かな。構成が完璧だから。ドリルソングのお手本だよ。

ダニー:ある意味で、UKドリルアーティストが自分たちのバックグラウンド、伝統、祖国、自分たちのルーツを曲にした初めての曲が「Zulu Man」だと思う。彼らはルートン出身だけど、「Zulu Man」というタイトルを付け、ズールー的なバイブスを取り入れてる。まさに、それこそがドリルだよ。みんなが自分にしかない要素を加えてる。ドリルをひとくくりにして扱うひともいるかもしれないけど、ドリルっていうジャンルはもっと多様なんだ。ドリルのヒットソングにおいては、それこそが重要。自分の生い立ちとか、育ってきた環境とか、何が好きかとか、それぞれ、自分の曲に自分らしさを加えるんだ。自分自身のかけらを曲に入れ込むことで、ドリルミュージックに大きな変化が生まれるかもしれない。

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V9が選ぶ最高の1曲:V9「Charged Up」

V9:史上最高のドリルソングっつったら「Charged Up」一択だろ。理由なんて聞くなよ、聴けばわかる。

ダニー:ドリルカルチャーにとってこの曲がなぜ重要か、なぜ特別かというと、V9のビジュアルが特異だったから。よくある黒い覆面が一般的だけど、V9はデッドプールの赤い覆面を着けて登場した。ひとびとが彼のブランドに惹きつけられたきっかけはそれだと思う。でも、違うのは見た目だけじゃない。「Charged Up」という曲自体も唯一無二だ。高速テンポで力強くて、曲中で使用されている全てのサウンドが調和してる。「Charged Up(盛り上がってる)」というタイトル自体が、曲への賛辞になってるとも思うよ。MVは今、400万回再生に迫る勢いだ。間違いなく重要な1曲だね。

クウェンフェイスが選ぶ最高の1曲:SJ(OFB)「Youngest In Charge」

クウェンフェイス:「Youngest In Charge」だね。リリックも、ビートも、フロウも最高。完璧なドリルチューン。

ダニー:これも重要なヒット曲。新人アーティストがまったく新しいフロウを武器にシーンに登場した。この曲で、UKドリルシーンは予算がなくても、立派な制作会社や大企業の後ろ盾がなくても、1700万を超える再生回数(2020年9月時点)を稼げるんだ、自分たちの力でそれを実現することが可能なんだと世界に示したと思う。新人ラッパーはたくさんいるけど、その中で目立つためには自分をどう演出するか、フロウ、リリックはどうか、それら全てが重要だ。「Youngest In Charge」は俺も大好きな曲。全てが完璧だ。ビートも、SJのフロウも最高だよ。ドリルってのは、ビート、インストゥルメンタルがいかにオーディエンスをひとつにして、興奮させ、盛り上がらせ、飛び跳ねさせるかにあると思う。完璧なリリックで完璧にフロウすればヒットする。

ダニーが選ぶ最高の1曲 ①:Zone 2「No Censor」

ダニー:この曲はドリルミュージックの中でも群を抜いて凶暴な1曲。剥き出しで提示してる。言っていいこと悪いことを気にせずに、とにかくそのまま表現してる曲だよ。

ダニーが選ぶ最高の1曲 ②:ディガ・D「No Diet」

ダニー:街頭ビジョンでも、とにかく至るところで流れてた。広告も打たれてたし。それでいてこの曲をつくったディガ・Dは、発言やつくる音楽に法的な制限がかけられてる。音楽に関してはかなり条件が厳しくて禁止事項ばかりだけど、それでも彼は何百万ビューもいくようなヒット曲をガンガン生み出してる。そうやってやりたい活動を制限されたり禁止されたりしていても、注目されヒットする音楽をつくる方法を見つけてるアーティストたちは本当にすごいと思う。