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豪雨の中を濡れずに歩ける『Rain Room」を手掛けたアーティスト・グループ「rAndom International」。

ロンドンのアーティスト・グループ「rAndom International」。MoMAに企画展で話題となったインスタレーション『Rain Room」

話題のインタラクティブ展『Rain Room」

2012年にロンドンの総合文化施設バービカン・センターにてはじめて発表され、2013年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)より招待を受け展示を行ったインタラクティブ展『Rain Room/レインルーム』。当時、アート誌をはじめとするメディアに多数取り上げられ、その後、ユニークなインタラクティブ展として各地へ話題が広がった。ここThe Creators Project(以下、TCP)にてもこの『Rain Room』とその制作チームについての紹介をしている。

土砂降りの雨の中でも傘いらず

『Rain Room』とは、屋内空間に豪雨の状態を人工的に再現。その雨のなかを通ると、自分の場所だけ雨が自動的によけてくれるインスタレーション。降らせた雨は1分間に1000リットル、入ることを躊躇させるほどの激しい雨のなかを実際に、来場者に歩かせる試み自体もこの展示の大きな魅力となった。MoMAでの展示時には駐車場に特別にコンテナを建て、この空間を作り出したという。

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なぜ豪雨の中で自分の場所だけ雨がやむのか?この仕掛けは、天井に設置された3Dカメラが人の動きを捉え、感知したポイントの降雨口のみ水を止めるという仕組み。実際に中に入ったTCP編集者によると「まるで自分が雨を止めているかのような錯覚を起こす」とコメントしている。

本映像では、豪雨のなかを濡れずに歩くという通常では体験することができない感覚を楽しむ入場者の様々な反応がとらえられている。加えて『Rain Room』の美しい全体像や、「雨以外の要素は出来る限りシンプルにした」と語る制作チームのインタビューも収録されている。「このプロジェクトは初期の印刷技術を使うものだったーー」、この『Rain Room』が完成されるまでの制作背景についても聞くことができ、作品の面白さをより感じることができる。

制作を手掛ける「rAndom International」

ロンドンを拠点に活動するアーティスト・グループ「rAndom International(ランダム・インターナショナル)」。ハナス・コー(Hannes Koch)、スチュワート・ウッド(Stuart Wood)、フロ・オウトクラス(Flo Ortkrass)の3名によって2002年に設立、現在は11名のアーティストがこのグループに在籍している。彼らは世界的に権威のあるデザイン賞のひとつ<iF design award (iFデザイン賞)>を2005年〜2006年と2年に渡り受賞。その後も英オブザーバー紙にて「UKを代表するデザイナー・トップ10」に選出されるなど、テクノロジーとアートの分野において高い評価を獲得してきた。

グループを代表する3人は、話題を呼んだ『Rain Room』について「単に不思議な体験を提供したかっただけでない」ことを語る。「多くの人は日常的な出来事について考えることはほとんどない。当たり前と思っていることが変わったとき、人々はどう受け止め、どう行動するのか。それを知りたかったんだ」。制作者自らにとっても、リアルな雨音に包み込まれる来場者たちを外から眺めることで、本展示から大きな収穫を得たようだ。

その後新たに発表された彼らのプロジェクトは、毎分3万リットルもの水を降らす装置をつくり「即席の建造物」を出現される大掛かりなプロジェクト『Tower:Instant Structure for Schacht XII』(20013年8月)。今年の3月には、無数のLEDが周辺の音や動きに合わせて生き物のような反応を起こす光のインスタレーション作品『Swarm Study VI/Small Swarm』がある。

『Tower:Instant Structure for Schacht XII』