ヴァギナのニオイを考える
Brandon Bird

ヴァギナのニオイを考える

どんなニオイが〈普通〉なのか、専門家に聞いた。
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP

「すべての幸福な家庭は似ているが、すべてのヴァギナはそれぞれのニオイがある」と言ったのはトルストイだっただろうか。

そう、ヴァギナは本来ニオイのするものだ。とある研究によると、ヴァギナのニオイを構成する〈臭気分子〉と呼べるものは全部で2100種類も存在しており、つまり、その極小の〈ニオイ物質〉が合わさって、それぞれのヴァギナ独自の、香りのブーケが生み出されている。

そのニオイ物質の原因となるのは細菌だ。

「それぞれのヴァギナのニオイは、人間が代謝するものと細菌が代謝するものが融合して発生しています」と説明するのはマヨ・クリニックのマリア・メンデス・ソアレス(Maria Mendes Soares)博士。人間は自分が食べたものでできており、ヴァギナのニオイも然り。Redditには、タマネギやニンニクを食べたときはヴァギナもそれと同じようなニオイがする、という女性からの投稿もみられる。これは誰も公にしていないだけで、まったく普通のことだ(ただ、タマネギやニンニクなどのニオイはヴァギナからの排出物ではなく、尿に混入している可能性のほうが高い)。

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我々のヴァギナのふだんのニオイはどうだろう?

ヴァギナには腸や口内と同じく、何十億もの細菌が生息している。博士によれば、その〈膣内フローラ〉と呼ばれるマイクロバイオータは、ヴァギナのpHを4.5程度、すなわち弱酸性に保っており、そのため若干酸っぱいようなニオイがするという。また、身体のなかでも隠れた場所のため、カビ臭いようなニオイもする。どちらも強烈に香ることはない。ヘザー・ループ博士はWebMDのブログで、ニオイが届く範囲は30cm程度、と言及している。それが普通だ。

しかし、どんなニオイがしても普通、というわけではない。魚のようなニオイがするなら細菌性腟炎が疑われ、医者に診てもらうべきだ。あるいは腐ったようなニオイがするなら、タンポンやタンポンの破片が膣の奥深くに入ってしまっているのかもしれない。こちらも、まずは医者に診てもらおう。珍しいケースではない。

メンデス・ソアレス博士によると、膣内微生物の主要な細菌はラクトバシラス属で、プロバイオティクス(善玉菌)の一種。病原体の定着を阻害するので、腸や膣のなかには必須の菌だ。膣内微生物叢には他の細菌も含まれている場合もあるが、5人中4人のヴァギナにおいては、「ラクトバシラス属の細菌1種が90〜95%を占める」と博士は説明する。「ラクトバシラス属は、糖を発酵させ乳酸を産生します。そのおかげで、ヴァギナは常に弱酸性を保てるのです。ラクトバシラス属で発酵されるビールやヨーグルトもあります。ビール好きたちは、乳酸の味を〈やわらかく心地よい酸味〉と表現していますね」。また、乳酸で発酵されたビールは、独特のカビ臭さを特徴とする。

ここで、「ラクトバシラス属の菌がビールやヨーグルトの発酵に使用されるのであれば、ヴァギナの細菌を使ってそれらを作ることも可能なのでは?」と考えるひともいるだろう。そして当然のごとく、ヴァギナの細菌を使ったビールやヨーグルトは、すでに存在している

たとえば、2015年にはウィスコンシン大学の博士課程の学生が、自らの膣内フローラに生息していたプロバイオティクスをスターターとして使用し、ヨーグルトを発酵させた(ただ、善玉菌と悪玉菌をしっかり分離させるには、微生物学研究に適した実験設備が必要なため、家庭での同実験は推奨されない)。

また、〈The Order of Yoni〉というポーランドのビールメーカーは、ヴァギナの細菌を使用して発酵させた〈Bottled Instinct〉という酸味のあるエールを発売。この細菌は、チェコ人モデルのアレクサンドラ・ブレンドロヴァ(Alexandra Brendlova)のもので、彼女の清潔や純潔は保証されている。〈IndieGogo〉において、クラウドファンディングも行なった。

というわけで、もしビール好きの彼氏がクンニに乗り気じゃなかったら、バドワイザーのボトルで抜いてろ、くらいのことは言ってもいいはずだ。

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Image via Flickr/bec.w

This article originally appeared on VICE US.