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Health

眠りに恐怖を感じる「睡眠恐怖症」。難病患者の苦しみに見る社会の闇。

眠りにつくことを恐れ、寝ることについて少しでも考えてしまうとパニックを引き起こす「睡眠恐怖症」。安眠を奪われた男へのインタビューから、難病に冷たい社会の風潮を垣間見る。

by VICE Japan
31 July 2014, 3:00am
昼寝をするムンバイのバス運転手。Photo by Pedro Elias via

人生の中で最も心地よい瞬間、睡眠。
だが、ある日突然その睡眠が悪夢へと変わってしまったらどうなるだろう?
今回ここで登場する、J氏は「睡眠恐怖症」、眠りにつくことに恐怖を感じるという珍しい病気に苦しんでいる。少しでも睡眠のことを考えてしまうと、パニックで発作が起こる。J氏の発作はインタビュー中にも起こり、不安を沈めるために取材は度々中断した。下記で紹介する安眠を奪われた男の苦悩から、難病者に厳しい社会の風潮が見えてくるだろう。

まずは睡眠恐怖症がどんな病気なのか教えてください。

眠りにつくことに恐怖を感じる病気で、最もセンシティブかつ理解が得づらい恐怖症のひとつ。発症する確立はとても低いけど、僕の身体・精神の両面の健康に影響を及ぼしている。

どんな風に影響があるのでしょうか?

それはもう、人生のあらゆる場面に影響があるさ。寝ている間に心臓発作のような命に関わる事故で死んでしまうのではないかと怖くなって、なんとしてでも眠らないようにしようとしてしまう。そして次の日には元気も希望もなく目覚め、身体はどっと疲れている。この最悪な疲れが僕の人生を台無しにしていると思う。とにかく、日常のどんな些細なことにも影響があるんだけど、他の人にはきっと理解できないだろうね。

発症のきっかけは?

小脳虫部損傷(めまいやバランスを失う脳の損傷)という事故から全てが始まった。2010年8月のある夜、テレビを見ながら食事をしている時に、突然意識を失ってイスから転げ落ちたんだ。意識が戻ってすぐに自力で病院まで行ったんだけど、そこでの手当ては酷かった。なんでも医者は僕がでっち上げたか、躁病だと思ったらしい。精神科医の診断は「心因性疼痛」(脚注①)。この出来事が全ての始まりだった。

その後、どうしたのですか?

大小あらゆる病院に行って、数えきれない回数の検査を受けるハメになった。診断は様々。ある医者が癌だと言えば、腫瘍があると言った医者もいたし、聴覚の異常と診断されたこともあったな。…もう、そう言われればその病気になるって感じ。
予想していたことではあったけど、こういう支離滅裂な診断でさらに恐怖は増してしまった。俺の身にはいつ何が起こっても不思議じゃないんだ、ってね。睡眠の問題に加えて、激しい頭痛やめまいにも常に悩まされて、原因は分からない。それが2年も続いて、日を追うごとに恐怖は増していった 。やがて眠ることにも恐怖を感じるようになり、これはマズい病気だと自覚したんだ。

死が怖いとのことですが、 死についてはどのように考えているのでしょうか。

僕は無神論者だ。神がいるとは絶対に思わない。死んだらそれでおしまい。でも、それが怖いんだ。誰も僕に死の心構えをさせてくれない。家族や医者でさえも。

眠らないために、どんな対策を?

まず、眠ろうとしたら、心の中の不安が徐々に増してきて苦しくなる。そして身体が「寝てはダメだ!」とパニックを起こし、息が詰まってくる。この苦しみを説明するのはとても難しいし、実際に感じないと分からないことだと思う。脈は早くなり、体は震え、何もすることが出来ない自分の無力さを感じ、潜在意識に支配された状態になる。時にはベッドから起きて、死に物狂いで助けを求めて外に出たりもする。
精神科にも行ったけど、彼らの薬は僕を助ける代わりに悪化させてくれたよ。「もうこんな目には遭いたくない 。俺は強い人間だ、あんなやつらの手なんか借りなくても自分の力でなんとかできるはずだ」と思った。

眠ることで疲れは取れますか?

僕が眠るのは眠りに落ちたときだけ。眠っている間も自己防衛機能のようなものが働くのか、安らかに眠ることはできない。

一日何時間眠るのですか?

3~5時間。その日の「パニック具合」によって変わる。

今は何らかの治療を受けていたり、薬を飲んだりしていますか?

薬による治療法はない。特殊な精神療法でコツコツ対処していくしか方法がないんだ。この種の病気を治療できる病院はとても少ないし、治療費は一般の人には手が届かないくらい高い。いつも散歩したり、他の事を考えたりしてやりすごしている。自分自身を紛らわして症状が少しでもマシになるようにね。

朝、無事に目覚めたときの気持ちを教えてください。

起きた瞬間からとても疲れているのと同時に凄まじく眠くて、何もする気が起きない。この恐怖症に勝つなんて不可能さ。なるべく症状を抑えながら共に生きていくしか無いよ。

社会的生活にはどのように影響を及ぼしていますか?

社会との関わりなんてない。僕の人間関係はとても限られていて、それに僕の家族だって…いや、なんでもない。僕がどれだけ辛い思いをしてきたか誰にも理解できないだろうね。みんな「狂ったやつ」の一言で片付けるさ。まともに仕事することすら僕には出来ないのだから。

「狂っている」と言われたときにはどう思いますか?

人に共感の感情を持てないやつらのほうが狂っていると思うね。

睡眠恐怖症について、もっと知ってほしいことはありますか?

サポートが必要な病気だってこと。でも、僕らが今生きているこの資本主義社会って、身体や精神に障害を持った人間は排除して罵る、偽善者たちの集まりだろ?奇人のように扱われ、自分の病気で他人の邪魔をすることは許されないのさ。

Translated & Edited by Kentaro Okumura