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インドに生きる先住民族〈アディヴァシ〉の今

インド人口の8.6%を占めながら、メディアや社会からは忘れ去られている先住民族、アディヴァシの姿を収めた写真プロジェクトを公開する写真家にインタビュー。

by Meera Navlakha
27 September 2019, 5:15am

The Red Aryan Tribe, residents of Ladakh. Photo courtesy of Aman Chotani.

急速な都市化、西洋化のただなかにあるインドだが、いまだに多数の部族や、同族集落が存在し、それらの部族は総称して〈アディヴァシ〉と呼ばれる。〈原初の住民〉といった意味の言葉だ。何世紀にも及ぶ伝統を今でも守りながら暮らすアディヴァシは、インド政府や社会からはほぼ見捨てられている。インドじゅうを旅して、その事実に気づいた写真家のアマン・チョタニ(Aman Chotani)は、彼らを守るために何か方策を考えようと決意した。そして2018年3月、写真プロジェクト〈The Last Avatar〉をローンチする。

「このプロジェクトが未来の世代、研究者、あるいはアディヴァシに関心がある、あらゆるひとのためのアーカイブになれば、と思います」とチョタニはインタビューに語る。「残念なことに、彼らの文化は徐々に消え、忘れ去られようとしています。失うがままにするにはあまりに惜しい」

チョタニは当初、写真集としてアディヴァシの姿をまとめようと考えていたが、最終的にデジタルプロジェクトとして結実。現在はウェブサイトとInstagramのアカウントで展開している。彼は、共同創始者で製作チームとして参加しているヴィシャル・バリ(Vishal Bali)、スタンジン・チョクフェル(Stanzin Chokphel)の両名とともに、このプロジェクト内の、様々なコンテンツを製作。さらにルーハニ・サーニー(Roohani Sawhney)とヴリンダ・ヴァイド(Vrinda Vaid)が、ライターとしてプロジェクトに協力し、アディヴァシのひとびとの物語を発信している。

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A woman from the Raikas tribe. Photo courtesy of Aman Chotani.
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A member of the Konyak tribe. Photo courtesy of Aman Chotani.

いっぽう、写真集のプロジェクトも現在進行中だ。また彼らは、アディヴァシの集落でワークショップやアートのレッスンなども開催している。

645にも及ぶとされるインド国内の部族をリサーチしたチョタニと彼のチームは、その中から候補リストを作成。第1段階の候補として選んだ25の部族のうち、これまでにグジャラート州、ラダック州、オリッサ州、ラージャスターン州、ナガランド州、ヒマーチャル・プラデーシュ州、アルナーチャル・プラデーシュ州の計15の部族を撮影した。

ひとびとがカメラの前でどれほど心を開いてくれるかは、それ以前の写真との接触の有無によって違うという。チョタニによると、チームが訪ねた大半の先住民族は温かく迎え入れてくれたが、最初は恥ずかしがる部族もあったそうだ。

「でもそれよりも、自分とひとびととの関係性が重要ですね」と彼は語る。「写真を撮ってもいいか、と相手に訊く前に、彼らと関係性を築き、彼らをよく知ることが大切だ、と僕個人は考えています。そこをちゃんとしていれば、基本的にみんなよろこんで写真を撮らせてくれます」

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A woman from the Red Aryan tribe. Photo courtesy of Aman Chotani.

チョタニはこの経験から多くを学んだという。特に、部族が選んだ自分たちの生きかたは、インスピレーションを与えてくれるそうだ。

「彼らには、僕らも知らない広範な知識がある」とチョタニ。「それぞれの部族が、唯一無二の存在なんです」

彼の写真は、それぞれの部族の特徴を鮮やかに捉えている。音楽、ダンスのフォーム、彼らが使う道具。彼はそれらすべてを、アディヴァシが私たちに与えてくれる「文化の多様な贈りもの」と呼ぶ。

彼によれば、アディヴァシの生活様式の形成には、各部族が暮らす土地の特徴が影響しているそうだ。

たとえば、ナガランドのコニャック(Konyak)族は、伝統的な〈長〉が率いる、強い絆で結ばれたコミュニティで暮らす。ラダックに暮らし、〈赤いアーリア人〉と呼ばれるドログパ(Drogpa)族は、かつて他の地域との関わりを断ち、外の人間との婚姻を禁じていた。ヒンドゥー教修行者の一団、アグホリ(Aghori)は、シヴァ神などヒンドゥー教の神々に扮し、死者と積極的に関わり合う。

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A head hunter from the Konyak tribe. Photo courtesy of Aman Chotani.
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An Aghori man. Photo courtesy of Aman Chotani.

「生と死のあいだを生きる。それがアグホリです」とチョタニ。「彼らは摩訶不思議で、凄まじい人生を生きていると思います」

その他、彼がプロジェクトを進めてきた部族は、アヒール(Ahir)、アパタニ(Apatani)、ビール(Bheel)、バンジャーラ(Banjara)、ガディ(Gaddi)、ライカ(Raika)、コンダ(Kondha)。

彼の写真において核となるテーマは、各部族が有する多様な美意識だ。それは、ドログパ族が頭につける華やかな飾り物、ラージャスターンの部族が身につける堂々たるターバン、コニャック族の顔に施されたタトゥーなどに表れている。

彼の写真は、インド国民の大半が知らない部族に光を当てる。2011年に実施された最新の国勢調査では、先住民族や指定部族は約1億400万人で、インド人口の8.6%を占めるとされている。先住民族の数としては世界最多だ。しかし、これらの部族の権利については、インドの政治においても社会においても、しばしば論争の的となる。国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルは、アディヴァシの権利獲得や彼らの保護を長年訴えてきた。

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Girls from the Ahir tribe. Photo courtesy of Aman Chotani.
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Women from the Banjaras tribe. Photo courtesy of Aman Chotani.

アムネスティのウェブサイトには、「一連の先住民族保護法はあっても、インドの先住民族は土地の収奪、周辺環境の破壊、ビジネスによる権利の蹂躙などの被害に遭っている」と記載されている。

このプロジェクトは、急速に変化していく部族の今の姿を収めた〈タイムカプセル〉としての役割も果たす。チョタニはインド全土の旅のなかで、伝統が失われている部族もあることに気づいた。たとえばラージャスターン州の部族はいまだに伝統的な衣服をまとっているが、その他の地域の部族の多くが、今は現代的な服装をしている。

先住民族たちの変化は衣服だけでなく、テクノロジー、なりたい職業、食生活にも表れている。チョタニによると、「かなり辺鄙な地域」に暮らす部族でも、テレビや携帯電話が使用されていたそうだ。

「(それらの部族の)若い世代は、都会の文化にかなり影響を受けています。その結果、部族の伝統の多くが滅びることになっています」とチョタニ。「彼らは伝統文化を捨て、都会的な生活様式に急速に染まっていっています」

だからこそ、〈The Last Avatar〉が重要なのだ、と彼は断言する。「このプロジェクトで僕たちは、忘れられゆくものを守ろうとしています。(それぞれの部族の姿を)記録することは、感動的な旅ですね」

This article originally appeared on VICE ASIA.