宇宙人向けの大使館開設を目指すラエリアン・ムーブメントの会議

1974年、フランスのモータースポーツ・ジャーナリスト、クロード・ラエル・ヴォリロンが運動を始めて以来、ラエリアン・ムーブメントは世界各地でエロヒム大使館開設に向けて活動してきた。最近は、ラエルがプーチン大統領に傾倒しているようで、ロシアでの大使館開設の可能性を模索している。

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02 May 2016, 12:04pm

2016年4月2日、『エイリアンが研究所で人類を創りだした』と銘打った会議がモスクワで開催された。冗談のようなイベントだが、4月2日はエイプリルフールではない。

ロシア外務省の向かいにある「黄金の輪ホテル(Гостиница Золотое Кольцо)」で、『ラエリアン・ムーブメント』のスイス人とロシア人メンバーたちが真剣に団体の信条について意見を交わした。その内容は、「地球上の生物はすべて『エロヒム』というエイリアンの遺伝学者が創りだした」「エイリアンは、2035年までに地球への帰還を望んでおり、実現した暁には、人類を労働から解放してくれるロボットなど、現在のわれわれよりも25,000年以上先をゆくテクノロジーをもたらしてくれる」「平和と安泰に満ちた新時代が到来する」「われわれ人類は『エロヒム大使館』を開設し、地球外から訪れる友好的な創造者をきちんと迎えなければならない」などなど。

1974年、フランスのモータースポーツ・ジャーナリスト、クロード・ラエル・ヴォリロン(Claude “Rael” Vorilhon)がこの運動を始めて以来、ラエリアンたちは世界各地でエロヒム大使館開設に向けて活動してきた。最近は、ラエルがプーチン大統領に傾倒しているようで、ロシアでの大使館開設の可能性を模索している。

スイス代表のジャン=マリー・ブリオー(Jean-Marie Briaud)は、ロシアがシリアのアサド大統領を支援すべく実行した最近の爆撃は、米欧諸国が戦争を望んで仕掛ける挑発への『対抗措置』である、と推測する。ラエリアンによれば、大使館開設に加え、他国への武力侵攻、環境破壊を止めなければエイリアンは地球を訪れてくれないそうだ。

「何事も、決定するのはアメリカであり、オランドは操り人形に過ぎない、キャメロンもそう、とフランスでは信じられています」。ブリオーはフランス大統領とイギリス首相を指していう。「アメリカが『リビアを爆撃しろ』と命じれば、彼らは実行します。現にその通りだったでしょう。だからラエルはプーチンの行動に非常に興味を持ちました。ロシア人は他の国民よりも平和志向で、戦争でなく外交手段で紛争を解決しようとします。シリアのケースがいい例です」

ロシアがシリアを爆撃したのが本当に平和的アクションなのか否か、と問いかけるとブリオーは、ラエリアンは「プーチンが完璧だ、とはいっていない」と応えた。しかし、ロシアの介入がなければ「シリアは存続していなかっただろう」と彼は加えた。別のラエリアン、フィリップ・シャブロ(Philippe Chabloz)はプレゼンテーションで、3月22日にプーチン大統領の故郷、サンクトペテルブルク上空をUFOらしき物体が飛行していた様子が記録された、と発表した。

プレゼンテーション中に聴衆から、プーチン大統領は『エロヒム大使館』プロジェクトを知っているのか、と質問されるとブリオーは、プーチン大統領とメドベージェフ首相にラエリアン名義で手紙を送り、4平方キロメートルの土地、エイリアンの地位、そのふたつを保証するよう嘆願し、イベントにも招待した、と返答した。

当然、両者の姿は会場になく、彼らはラエリアンの要望には応えないだろう。しかし、土曜日のイベントは、大使館開設よりも賛同者集めが目的らしく、目論見はある程度成功したようだ。

モスクワの会場に貼られたラエリアンのポスター。Photo by Alec Luhn/VICE News

1990年代、無神論的ソビエト体制の崩壊と経済的困難に見舞われ、ロシアはカルトの温床となった。特に終末論を説く日本のカルト「オウム真理教」は、ロシアで日本国内の信者数を超える、数万もの信者を獲得した。1995年、オウムはロシアで禁教となり、同年、東京の地下鉄でサリンガスを撒き13人の犠牲者と何百人もの被害者を出した。その後オウム真理教は、ロシアでは地下に潜り活動を続け、最近、モンテネグロでは4ロシア人43名を含む58人の外国人がオウム信者の咎で国外退去を命じられた。

1990年代以降、カルトの活動は鎮まったかにみえたが、ロシアでは再び活発化している、とサンクトティーホン聖教大学で宗教セクトを研究するアレクサンドル・ドヴォーキン(Alexander Dvorkin)教授は分析する。ドヴォーキン教授は、ロシアには70万人の「セクト信者」がおり、毎年、15~20のカルトが政府の命により活動停止に追い込まれるが、それは「大海の一滴」に過ぎない、とインタファクス通信に見解を示した。

「ここ2年で活発になった他のカルト同様、(ラエリアンの)活動は新たな展開をみせています」とドヴォーキンは語った。「この2年で、様々なカルト運動が活発になりました。つまり、これはまさにトレンドです」

ラエリアンのメンバーたちによると、預言者ヴォリロンが1993年にモスクワを訪れ、約1,200人を相手に講演したそうだが、現在、この運動のメンバーは、具体的な人数は明かされていないが、数名しかロシアにいないようだ。しかし、昨今のロシア国内事情はカルト勧誘にうってつけだ、とドウォーキン教授はいう。

「世界は危機的状況にあり、ロシアも危機に瀕している。世間は、国際関係や、以前より低くなった生活水準に頭を悩ませている」とドヴォーキン教授は説明する。「人々が世相を憂い、生活にストレスを感じだすと、情緒不安定になり、カルトは勧誘に勤しむ」

また、ロシア人は伝統的に陰謀論を受け入れやすい傾向がある。ニューヨーク大学でロシア・スラブ研究を専門にするエリオット・ボレンシュタイン教授は、最近の著作で、この傾向の根源はソヴィエト時代にあり、真実が隠蔽されプロパガンダが氾濫したせいで、「公式表明に対する猜疑を生んだだけでなく、憶測と噂で知識の欠落を補うようになってしまった」と自説を著している。

ウクライナ危機発生当初から、ロシア国営メディアは、真実は相対的である、との哲学を強力に押し出し、ユーロマイダンによる抗議やマレーシア航空機17便がウクライナで撃墜された事件が陰謀である、と報じた。

土曜に行われたラエリアン会議に、プーチン大統領とメドベージェフ首相は出席しなかったものの、興味本位の来場者が100人以上集まった。会場には、グループのシンボルである「鉤十字があしらわれたダヴィデの星」グッズを手に入れようとしたり、「エロヒム大使館にはバーがあるのか、バーテンダーはいるのか」といった質問をするために訪れた参加者もいた。

その他の参加者は、ラエリアンに純粋な興味を抱いているようであった。ブリャンスクから娘と友人とともに参加した心理セラピスト、アレクサンドル・クプリヤノフ氏もその中の1人だ。イベント後、ラエリアンに対する彼自身の見解はまだまとまっていない、としながらも、ラエリアンが「金を稼ぎ、何かを壊し、私腹を肥やそうとするような連中と違って、何かを創ろうとしている」のに好感触を得たそうだ。

クプリヤノフ氏は、ラエリアンが一般的にカルト扱いされているのは気にならない、と明言した。「政党だって似たようなもので、カルトと言えなくもない。キリスト教も初期はカルトだった」

ナターリャとだけ名乗った生物学者も、ラエリアンの信念に理解を示した。

「どんな分野、科学、分子生物学でさえ独断的な考えがあります」と彼女は断じた。「新しい知識に対してはオープンでなければなりません。だからといって、神秘主義やナンセンスに心酔するのもダメです」

ナターリャは、地球外生命体が地球上の生物を創りだした、というラエリアンの考えも「否定はできません」と付け加えた。「可能性はあります」