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ランチのついでにTシャツのPRにやってきたキース・モリス

BLACK FLAG、CIRCLE JERKS、そしてOFF!に続き、今度はファッション業界にダイヴした超御大キース・モリス。彼のホームタウンである南カリフォルニア/ロサンゼルスのストリート史をとらえたフォトグラファーの作品を大胆にプリントしたTシャツブランド〈IMAGE CLUB LTD.〉を立ち上げたのだ。わざわざVICE JAPANまでPRに来てくれたのでインタビュー。

キース・モリス(Keith Morris)がアパレルで暴れ始めた。ご存知の通りこの超御大は、BLACK FLAGの初代ヴォーカリストであり、CIRCLE JERKSの創始者であり、現在もスーパー・ハードコア・パンクバンド、OFF!で暴れまわっているドレッドの62歳だ。そんな彼がスタートさせたのは、ホームタウンの南カリフォルニア/ロサンゼルスのストリート・ヒストリーを語るフォトグラファーの作品を大胆にプリントしたTシャツブランド〈IMAGE CLUB LTD.〉。キースのパートナーを務めるのは、ハリウッドのブランド〈Teenage Millionaire〉の創始者であり、RED HOT CHILI PEPPERSのフリー(Flea)のプロデュースによるベースブランド〈Fleabass〉なども手がけているダグラス・ウィリアムス(Douglas Williams)で、AMERICAN RAG CIE によるIMAGE CLUB LTD.のエクスクルーシブ・ローンチに合わせ、ふたり揃ってこのたび来日した。弊社オフィスにもアイスコーヒーをチューチューしながらお越しいただいたのだが、キース・モリスは、PR業務にも長けていましたね。完全にアチラさんのペースで時は進む。まあ、喋る! 喋る人だなあ! ハードコア界のアイドルが、一瞬だけ高田純次に見えました。あとルー大柴にも。

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IMAGE CLUB LTD.を始めたいきさつを教えてください。

キース・モリス(以下キース):その前に俺からいっておきたいことがある。さっきランチで生のビーフを食べた。しかし、生のビーフは好きじゃない。俺は日本のメシにうんざりし始めている。ヴィーナー・シュニッツェル* が食えればいいのだが。

申し訳ありません。

キース:まぁ、いいだろう。俺たちはこのブランドを2年ほど前から手がけている。ロサンゼルスを拠点にして、そこでの出来事をTシャツにプリントしている。今回は、エド・コルヴァー(Ed Colver)とゲイリー・レナード(Gary Leonard)というふたりの非常に素晴らしいフォトグラファーと組んで、彼らの写真に少しだけ手を加えてつくった。ふたりとも俺の友だちで、南カリフォルニアのフォトグラファーのなかでも、トップ25、いや20に入るな。

まずエドから紹介しよう。彼はこれまでに500枚以上のアルバムジャケットの写真を撮影してきた。ヘンリー・ロリンズ(Henry Rollins)が鏡をパンチしているBLACK FLAGの『Damaged』や、野郎どものブーツにチェーンやフランネルが絡まっていているBAD RELIGIONのベスト盤『80 – 85』もそう。あとは俺たちが大好きなオレンジカウンティーのバンドだな。ADOLESCENTSもCHANNEL 3もやっている。更にいうとAEROSMITHやR.E.M.などのジャケットもやった。そんな仕事が彼の家賃になったってわけだ。CIRCLE JERKSの『Group Sex』のジャケもやってくれたが、そのときは、俺たちのことをすごく気に入ってくれたから、好意で撮ってくれたんだ。

続いてゲイリー・レナード。ヤツは遊び人だ。だから、いろんな種類の写真を撮っている。ロックバンドやライブ写真だけではない。今回のTシャツにもあらゆる写真がミックスされている。スポーツ選手から燃え上がるアルファロメオの新車なんかの写真もある。

巷にロック系の写真はたくさんあるが、IMAGE CLUB LTD.はロックンロール・ブランドではない。俺たちがやっているのは、大まかにいえばインディペンデントのレコードレーベルのようなものだ。メジャーレーベルではボスがいろんなバンドを勧めてくるだろ? 彼らは何百万枚もレコードを売っているが、どれもクソバンドばかりだ。アートギャラリーに例えるなら、俺たちは素晴らしい絵を展示したい。自分たちのギャラリーをゴミでいっぱいにはしたくないんだ。…おい、ここまでついてきているか? もう1回話すか?

いえ、大丈夫です。では、なぜそれらの写真をTシャツにしようと考えたのですか?

キース:その前にもういち度いわせてくれ。最も重要な俺からの質問だ。うしろに立っている長髪のジェントルマンは手術用のマスクをしているが、なぜ日本人は手術用のマスクをしているんだ? バイ菌がうつらないようにするためか? それとも、バイ菌をまき散らさないようにするためなのか?

(長髪のジェントルマン)私は花粉症なんです。

キース:OK。じゃあ、もうひとつ質問だ。俺たちのロゴをマスクにプリントして発売できるか? IMAGE CLUB LTD.の花粉症マスクだ。

(長髪のジェントルマン)できます。最近は黒いマスクが流行っていますよ。

キース:米国で黒いマスクをしているヤツらはアナーキストだ。極右か極左だ。窓に石を投げつけたり、ケンカを始めたりするトラブルメーカーだ。お前もトラブルメーカーなのか?

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(長髪のジェントルマン)たまに人を殴るくらいです。

キース:そうか。で、Tシャツの話だな? 最初は女性の下着にしたかった。しかし、どういう訳だか、女性の下着に写真を印刷するのはうまくいかなかった。

実際に試したんですか?

キース:いや、俺はただ話を面白くしているだけだ。

ダグラス・ウィリアムス(以下ダグラス):キースと俺は長年にわたって一緒に仕事をしてきたんだけど、1999年にロサンゼルスのダウンタウンの倉庫で、大量のロックTシャツを手に入れたんだ。キースと俺はそれらのTシャツを整理して、URBAN OUTFITTERSや日本の業者に大量に売った。いろんなバンドのTシャツがあったよな?

キース:ああ。ツアーで大量に余ったJUDAS PRIESTとか、ZZ TOP、ブルース・スプリングスティーン (Bruce Springsteen)とか。

ダグラス:IRON MAIDENもな。

キース:あとあれだ、DURAN DURANのTシャツが3種類あった。おい、DURAN DURANだぞ!

ダグラス:ああ、DURAN DURAN、BEASTIE BOYS…クレイジーだったよ。俺たちは約1年で5万枚も売ったんだ。

キース:「Hungry Like the Wolf」だ(笑)。

ダグラス:当時は今みたいにTシャツをライセンスしている人なんて誰もいなかった。アリス・クーパー(Alice Cooper)でさえもね。そのあと俺は自分のブランド〈Teenage Millionaire〉を立ち上げてうまくいった。そこから早送りすると、キースと俺は「良いバンドがいっぱいいて、良いイメージもたくさんあるから、Tシャツにしよう」と話し始めたんだ。

キース:イメージ。それは写真のことだ。

ダグラス:それで、Tシャツを大量に手に入れたときのチャンスを思い出した。あれほどのTシャツをライセンスしていたら、すごく成功していただろうってね。今ではいろんな会社が死ぬほどライセンスしているからね。それで、キースの友だちのフォトグラファーの話になった。すごく昔のダービー・クラッシュ(Darby Crash:THE GERMS) が、スターウッドでやった最後のライブ写真とかね。あれは素晴らしい写真だよ。今回も使用しているやつだ。

フォトグラファーたちはキースとすごく仲が良いから、俺たちは自由を行使して、写真にちょっとだけ手を加えた。フォトグラファーの許可を得てフォーカスを絞り出し、印刷するときはベストな品質を保った。新しい機械でデジタルプリントしたものもあるし、伝統的なスクリーンプリントを施したものもある。キースがいったように、NBAのスターであるコービー・ブライアント (Kobe Bryant) の写真もあるし、セレブリティだけではなく、ロサンゼルスのいろんな場所の写真がここには含まれている。サンセット・ストリップで起こった暴動の写真とかもね。俺たちのブランドに非常にふさわしいイメージばかりの写真なんだ。

キース:おい、俺は今気付いたぞ。このオフィスには、レイモンド・ペティボン (Raymond Pettibon)* が描いたレコードを飾っているな。彼は俺の親友だ。遊び仲間だな。俺たちは将来的にヤツが写っている写真もフィーチャーする予定だ。ゲイリーが撮った写真で、一緒にふたりの男も写っているんだが、残念ながらふたりとも亡くなってしまった。ひとりはブレンダン・ミューレン(Brendan Mullen)** 。この男こそロサンゼルスパンクの原点だ。それからサンペドロ出身で、俺たちのヒーローであるデニス・ブーン (Dennes Boon)だ。MINUTEMENのフロントマンだぞ。ゲイリーは偶然パーティに居合わせて、朝6時にみんながストリートにあふれ出たときにこの写真を撮った。3人は大きな白いガレージの前に立っているんだが、3人とも拷問を受けたかのような、パーティにあったすべての酒を飲んだかのような、ボロボロの顔をしていて本当に最高の写真なんだ。

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あとはTHE GUN CLUBのジェフリー・リー・ピアース (Jeffrey Lee Pierce) がスターウッドでパフォーマンスしている素晴らしい写真があるんだが、これらはフォトグラファーからの使用許可や、手を加える許可をもらえればいいってわけじゃない。撮影したときの出来事や、撮影した理由を説明してもらう必要がある。また、フォトグラファーが乗り気でない場合は使わないようにしている。

ダグラス:彼らは俺がこれまで出会ったなかでも最もリアルでクールな人たちだ。一緒にいても最高なんだ。この前もイベントで使う写真の話をするために、朝7時半にゲイリーに会いに行ったよ。ロサンゼルスのダウンタウンにあるデニーズの駐車場で会ったんだけど、彼はビルの建設予定地で写真を撮っていた。「見ろよ、あと数ヶ月もしたら、もうあの空は見えなくなる。この風景は変わってしまうんだ。彼らは地面に巨大な足場を埋め込もうとしている」とね。彼いわく、ここ数年のロサンゼルス警察の不祥事の際に襲われた象徴的な警察署もなくなるそうだ。歴史的なものがなくなるんだよ。彼は、「これらは街の宝だ」といっていた。彼らと一緒にいると、ロサンゼルスについて学べるんだ。非常に興味深い歴史的な出来事がたくさん収められているんだ。

おふたりにとって、特に80年代のロサンゼルスは特別なものだったのですか?

キース:いや、70年代もだ。エドもゲイリーも70年代から撮っている。大半の写真はもちろん80年代のものだ。いろんなことが起きていた時代だからな。しかし、俺たちは特定の時代にこだわっているわけではない。それがいつであろうが、何であろうが、構わない。

ダグラス:実際に撮影されたいくつかのライブには、あまり客がいなかったらしい。オルタナティブなカルチャーだったから、参加した人は少なかったんだよ。エドもゲイリーもそれを目撃した数少ない人たちで、そのときのエッセンスやエネルギー、フィーリングをカメラでとらえていた。自分はその場にはいなかったから、彼らから多くを学んだよ。俺は* を体験していなかったからね。82年だっけ? そのころだよな?

キース:ああ、80年代初頭だ。でもな、俺たちのブランドは音楽に特化しているわけではない。バンドが関係している写真はいっぱいあるが、他にもいろんな出来事があったことを強調しておきたい。電車にひかれて片足を失った友人の写真もある。彼は砂漠の真ん中でプラスチックのミルクの箱に立って、エジプシャンみたいなポーズをとっているんだ。あと俺が気に入っているのは、バス停のベンチで撮影されたホームレスの女性の写真。すごく混み合ったストリートで、芝刈りのときに枯れ葉を入れるようなゴミ袋を着ているんだ。着ているのはそれだけ。たぶんロサンゼルス・タイムズと思われる新聞を丸めて女性器に突っ込んでいるんだ。

ダグラス:いろんな場所の写真もある。俺たちはこの活動をもっと広げて、進展させたい。大量の写真のなかには、たくさんのチャンスが眠っているからね。ゲイリーは過去40年間にロサンゼルスで撮影した写真を何万枚も持っているんだよな?

キース:ああ。彼のガレージにはネガを入れた箱がいっぱいある。でもラッキーなことに、彼はそれぞれのネガに写真の内容と撮影日をメモっていたんだ。一方のエドときたらなぁ…。以前彼とミーティングをしたのだが、俺が飯を食いながら彼の奥さんと喋っていると、エドはiPadだか何だかをスクロールしまくって、何か見つけるたびに「キース、これを見ろよ!この写真を使うべきだ!」とかいってくる。それからまたスクロールしまくって、俺が奥さんと喋っていると、「これもあった!これはチェックするべきだ!」とかいうんだ。俺は「もう止めろ!一体その中に何枚の写真が入っているんだ!?」と尋ねたよ。そしたら、「5万5000枚くらいかな」だとよ。

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ダグラス:俺たちは今回Tシャツに使用した数十枚を選ぶために、1000〜2000枚の写真をチェックしたんだ。非常に洞察力が必要な作業で、キースが最終的なキュレーターだ。俺も喜んでキュレーションを手伝うけど、最終的な決断はキースが下す。キースのアイデアやヴィジョンを信用しているからね。俺には彼ほどの洞察力はない。彼らの写真はどれも素晴らしいと思うよ。でもキースが「これだ」って選ぶんだ。後になって、彼が正しかったと気づく。「確かにこれだったな」って思えるんだ。

キース:俺にとって最悪な写真ってのは、4、5人の男たちによるキメショットだ。

ダグラス:(笑)

キース:最も使い古されたイメージだ。バンドがいて、リードシンガーは必ず前にいる。ドラマーは写真に収まらないほど、なるべく遠くに立たせる。でもなぁ、世界はそんな男たちの以外の写真を見たいはずだ。

ダグラス:コービー・ブライアントの話に戻すけど、使用したのは彼の顔の写真ではない。試合前の国歌斉唱のときに、胸に当てられた彼の手の写真なんだ。それがゲイリー・レナードの写真の撮り方なんだよ。彼は試合の冒頭だけ撮影して、他のことをやるために帰ってしまう。こういった写真こそが、俺たちにとってふさわしい、特別な何かを持っているんだ。最近はみんなのクローゼットにもバンドTシャツが入っているだろ? でも俺はIMAGE CLUB LTD.がロックTシャツじゃないのが気に入っている。ロックTシャツのライセンスをしているわけではないんだ。俺は本当にリアルな写真が好きで、彼らはそういった写真を持っているんだよ。それぞれが違ったやり方でね。ゲイリー・レナードは〈ストリートフォトグラファー〉だ。エド・コルヴァーは…エドはどう説明しようか?

キース:エド・コルヴァーはアルバムジャケットをたくさん撮影した。クラブでもたくさん撮影した。だからエドは〈クラブの男〉だ。ヤツがライブをクラブで撮影しなくなった理由は、オーディエンスが変わって、彼が撮りたいような写真を撮るのが難しくなったからだそうだ。オーディエンスが若くなり、よりエネルギッシュになって、パワフルになって、突然スケーターやサーファーもやってきて、フットボールチームのクオーターバックがモッシュピットの真ん中でみんなをボコボコにし始めた。手に負えなくなったんだ。ただそこへ行き、素晴らしい時間を楽しみながら写真を撮影することができなくなった。「あそこに立てないなら、他に撮影できる場所はある?」ってな。彼はバンドが大好きだけど、だからこそライブには行っていない。いや、まてよ。JESUS & MARY CHAINのライブでは見かけたな。…ところで、お前は2、3問くらいしか質問してないよな? 俺たちはもう6時間分くらい話してるぞ。

本当にたくさんお答えいただきましてありがとうございました。それでは最後の質問にさせていただきます。IMAGE CLUB LTD.の今後の夢や展望をお聞かせください。

キース:おい、もう終わりなのか? 答えはもっといっぱいある。「エレベーターに閉じ込められたとしたら、どんな動物と一緒に閉じ込められたい?」とか、「死んだセレブとデートできるとしたら、誰とデートしたい? どこへ行きたい?」とかあるだろ。

ダグラス:良い質問だね(笑)。

キース:まぁ、いい。お前の質問に答えよう。他にも使いたい写真がたくさんあるから、どんどんTシャツにする予定だ。でもその前に今やっていることを片付ける必要がある。まだ何枚か準備が整っていない写真があるんだ。写っている人たちに、「Tシャツに君の顔を載せても大丈夫カナ?」と聞く必要があるんだな。

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俺たちは何十億枚もTシャツを売ろうとしているわけではない。世界征服をしようとしているわけでもないし、ビバリーヒルズに大豪邸を建てたいわけでもない。俺たちはただ、この小さなアートギャラリーを続けたいだけだ。Tシャツをつくりたい。スクリーンプリントにするかデジタルプリントにするか、そんなのを検討したり、いろんな楽しいことをやるのさ。

ダグラス:まだ最初の通過点に過ぎない。米国や英国のディストリビューターも決まっていないんだ。セント・マーチンズ* に通っているキッズや東京のキッズが、俺たちのやっていることを気に入ってくれるとうれしいね。まぁ、気に入らなくても俺は構わないよ。ニューヨークやパリにいる同じようなマインドを持つキッズたちが、「ワォ、クールだね」というかもしれないし、いわないかもしれない。どうなるかはわからないけど、アパレル業界出身の俺の任務は、ニューヨークに持っていって、米国でのふさわしいディストリビューターを見つけること。それから英国でも同じように進めることだ。

キース:トーゴにも行くのか?

ダグラス:トーゴってどこだよ?

キース:アフリカ。

ダグラス:わかった。トーゴに行こう(笑)。トーゴから始めよう。

キース:カタリナに行こう。

ダグラス:彼がいっているのは南カリフォルニアの島のことだよ(笑)。サンタカタリナだ。ああ、カタリナにも行こう。

キース:TシャツをVICEにずっと載せ続けよう。俺は米国のVICEに行ったこともあるんだが、こんなチンケなオフィスではなかったぞ。お前ら、もっと頑張れ。

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