世にも奇妙なAirbnbトラブル体験談

「真っ黒で急な階段を案内され、部屋のドアの前に立つと彼女はいった。『ルールがひとつあります。会話は禁止です』」
Daisy Jones
London, GB
AJ
illustrated by Alex Jenkins
NO
translated by Nozomi Otaki
Airbnb Stories Anecdotes VICE Alex Jenkins Weird
Lead Illustration by Alex Jenkins

2年前のある日、私は突然思い立ち、ひとりでニューヨークに行くことにした。Airbnbの空室はわずかだったので、予約できたのはブッシュウィックのとても安い部屋だった。もちろん、安さには理由があった。私の〈ベッドルーム〉を仕切るのは壁ではなくカーテン。そこに住んでいた女性はひと晩中眠らず、外が明るくなるまで狭い部屋を歩き回ったり、大きなゲップをしたりした。

それだけではない。その女性の息子からは、屋根の上でちょっとだけ私の写真を撮らせてほしい、と頼まれ(自分でもよくわからないが、あっさり引き受けてしまった)、後日メールで写真が送られてきた。ある晩、キッチンに入ると、うつ伏せの男性が大の字になって横たわっていた(一応確認したが、息はあった)。最終的に部屋を出るとき、ホストたちは薄汚れた25.5センチの白いスニーカーをくれた(ちなみに私のサイズは21.5センチだ)。

私のAirbnb体験は決して良いとはいえないが、最悪というわけでもなかった。ホストたちはみんな親切だった。ただ全体的に居心地が悪かっただけの話だ。しかし、休日に見知らぬ誰かの家に泊まる場合、ちょっとしたハプニングは避けられない。それが大きなトラブルに発展することもある。この短期滞在向け民泊サービスは、ホストにほとんど規制を設けておらず、詐欺も多発している。そのことを胸に、いろんなひとの最悪なAirbnb体験談を聞いてみた。

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「翌朝7時、ホストの『火事だ!』という叫び声で目が覚めた」

サム(28歳)の場合

8月に仕事でニューヨークに行くことになり、アッパー・ウェスト・サイドのAirbnbを予約した。この後何が起こるのか知る由もなく、1日中働いて宿に着いたのは夜の10時半頃だった。茶色のレンガ造りの大きな建物で、玄関まで出てきたホストに、静かにするように、と注意された。そのときは、確かに遅い時間だからな、と納得した。真っ黒で急な階段を案内され、部屋のドアの前に立つと彼女はいった。「ルールがひとつあります。会話は禁止です」。どうやら、ひと言も口を聞いてはいけないらしい。「アパート内で平和な雰囲気を保つためです。電話に出たり話をするときは、バスルームに行ってください」。僕はクタクタだったので、「わかりました」とだけ返事をした。

彼女は僕を部屋の中へと案内すると、ベッドを指差した。見下ろすとマットレスが7個並んでいて、7人のオーストラリア人バックパッカーが床が埋め尽くすように眠っていた。僕は自分の目を疑った。ウェウブサイトの画像には〈ワンルームのアパート〉とあり、ベストを着た男たちに挟まれる、なんてひと言も書かれていなかったはずだ。「プライバシーのためにカーテンもあります」と彼女はいった。それはただのシーツで、ベッドの左側にぶら下がっており、右側にピンで留められるようになっていたが、大きめの枕カバーほどのサイズだった。それでは顔と胸しか隠せない。思わず「ふざけてんのか」といいたくなったが、とにかく疲れ果てていたので、すぐに眠りに落ちた。

翌朝7時、ホストの「火事だ!」という叫び声で目が覚めた。彼女は火のついたロウソクをひっくり返してしまい、アパートが燃えたらいったい大災害になる、と怯えて、パニックを起こしたらしい。ロウソクが床に落ちてすぐに火は消えたが、高温の赤いロウがあちこちに飛び散り、壁を汚していた。彼女は床に座り込み、ヒステリックに泣いていた。〈プライバシー枕カバー〉の後ろから顔を出すと、床にあぐらをかいた彼女が、泣きながら靴に付いたロウを擦り取ろうとしているのが見えた。正直にいうと、まるでホラー映画のワンシーンのようだった。部屋の中はまだ暗く、彼女だけが携帯のライトに照らされていたからだ。

起き上がって荷造りをしてから話しかけようとしたが、彼女はすすり泣きながら僕の言葉を遮った。「私…あなたの…ニューヨークの時間を…台無しに…してしまったのでは?」。「そんな、とんでもないです!」と僕は叫んだ。彼女が僕の荷物に気づき、僕もそれに気づいた。「出ていくわけでは…ただ…ちょっと用があって…」

僕は荷物を全部持ち、こっそり鍵を置いていった。料金の払い戻しを申請すると、半日以内に返金された。その申請をするのは、僕が最初だったとは(または最後になるとも)思えない。

「部屋に戻ると、ホストが私の靴下を履いているのに気づいた」

ガブリエル(24歳)の場合

1週間、フィレンツェでひとり旅をしたときのこと。Airbnbの部屋は居心地が良く、大きな窓とバルコニーのある標準的なイタリアのアパートで、私は満足していた。ホストは30代の礼儀正しい男性で、良いひとにみえた。ただ、バッグがベッドの片側から反対側に移動していたり、持ち物の置き場所が変わっていたり、という小さな変化に気づき始めた。

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パスポートとお金は肌身離さず持ち歩いていたし、貴重品は部屋に置いていなかったので、特に気にしていなかった。でもある晩、部屋に戻ると、ホストが私の靴下を履いているのに気づいた。ピンクとブルーの縞模様の靴下で、セント・アイヴス(St Ives:英国コーンウォールの行政教区)の小さな店で買ったので、私のものなのは確かだ。気まずくならないように、「あの、それって私の靴下じゃ?」と冗談めかして話しかけた。すると彼はすごく驚いた振りをして、自分のベッドの後ろで見つけたので自分のものだと思った、などと言い訳をした。彼はその後、靴下を洗って返してくれた。

どうせただの靴下だし、彼は本当に気に入っただけなのかもしれない、とこの件は水に流すことにした。けれど、今度は別の事件が起きた。ある晩、バーから戻ると、Tシャツが数枚バッグから出されていて、白いベストがなくなっていたのだ。酔っ払った勢いもあり、彼を直接問い詰めると、服を洗濯してほしいんじゃないかと思って、などという答えが返ってきた。「それはどうも、でも私の服には触らないでください」と伝えた。

それから彼は何もしなくなり、滞在中は丁寧に接しつつ、私たちはお互いを避け続けた。レビューには、素敵な部屋だけど、ホストが何度も服に触ってきた、と正直に書いた。彼からは、私が嘘をついている、ただの被害妄想だ、という返信が来た。何もかもが奇妙な体験だった。

「『ああ、あれはオサマ・ビンラディン。私のお父さんなの』と彼女は答えた」

ショーン(24歳)の場合

ある女性のAirbnbを利用した。雰囲気の良い部屋で、トイレの壁にはビョーク(Bjork)の写真が掛かっていたし、電子タバコや趣味の良いレコードもたくさんあった。ホストとは、彼女のレコードコレクションについて話をした。リビングにも招かれ、壁に飾られたビリー・ホリデイ(Billie Holiday)やエイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)などの写真も見せてもらった。その後ピアノの上を見た僕は、「…あれは誰?」と訊いた。どう見てもそれはオサマ・ビンラディン(Osama Bin Laden)だった。「ああ、あれはオサマ・ビンラディン。私のお父さんなの」と彼女は答えた。

どうやって父親だと知ったのか尋ねると、彼女は彼の死後にラジオで知ったという。それから彼女は、爆撃があるから滞在中は部屋から出ないように、と警告した。その翌日、彼女が風呂に入っているあいだに、5台のラジオがそれぞれ別の局を家じゅうに響く爆音で流しているところに遭遇した。その後にはなんと、彼女は僕のベッドに潜り込んできた。もう我慢の限界だったし、どうしたらいいかわからなかった。最終的に、彼女に月曜になったら誰かに連絡するよう勧めて、部屋を出た。できれば力になりたかったけれど、何をすればいいのか見当もつかなかった。

「バスルームと救助された鳩についてのルールがあった」

サム(28歳)の場合

1軒目がキャンセルになり、代わりに予約したのが、ウィリアムズバーグのこのAirbnbだった。ホストはエキセントリックな中年女性で、僕が到着したときは、ステレオから最大音量でTHE STROKESが流れていた。「こんにちは! これ消せないの!」と彼女は叫んだ。気分を落ち着けるために、彼女はマリファナたばこをふかしていた。「ごめんなさいね! あなたも吸いたかったらどうぞ!」。「コンセントを抜いてみたら?」と僕が提案すると、音楽は止まった。

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部屋に荷物を置き、シャワーに向かった。「ああ、これだけは守ってね」と彼女はいった。「バスルームには気をつけて。ケガをした鳩の面倒をみてるの。羽が折れてるのを非常階段で見つけて…。猫が4匹いるんだけど、鳩に気づいて狙ってるから、バスルームにはそっと入って。猫が鳩を殺さないように」

冗談じゃない、と思ったが、とにかく猫たちは鳩を殺さず、鳩は完全に回復した。ホストは僕の滞在について、すごく〈魅力的な〉英国人男性だった、という気味の悪いレビューを書いていた。

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Image courtesy of interviewee

「『ベッドの下の黒いバッグの中は絶対に見るな』と彼は警告した」

ヘイリー(25歳)の場合

今から3、4年前、休日に女友達とブリスベンに行った。ホストは40代の独身男性だった。私たちは彼のベッドルームに泊まり、彼はソファで眠っていた。かなり不自然だったけれど、彼にはお金が必要なのかもしれない、と思っていた。部屋を案内してくれたとき、彼はこう警告した。「僕の部屋で寝てもらってかまわない。でも、何があっても、ベッドの下の黒いバッグの中は絶対に見るな」

私たちが到着する前に、そのバッグを片付ける時間はいくらでもあったはずなのに、彼はあえてそれを丸見えの場所に残しておいたのだ。当然、私たちは彼がいなくなった瞬間に、バッグの中をのぞき込んだ。中身はSMの下僕用のラテックスの衣装、マスク、リード、ムチだった。趣味嗜好は人それぞれだが、なぜわざわざバッグを残して、しかも私たちに教えたのだろう? しかも彼は、私たちが外で男性に会ってくるというと、嫉妬するような素振りを見せた。早めにチェックアウトしたのはいうまでもない。

「シンクには汚い、ベタベタのパスタが詰まっていた」

フローレンス(35歳)の場合

元恋人といっしょに、21歳の若者グループに部屋を貸した。チェックアウトで鍵を受け取りにいくと、出てきた彼らは目が真っ赤で、ぐでんぐでんに酔っ払っていた。家のなかはゴミだらけで、安いワインの空き瓶がそこらじゅうに転がっていた。床はタバコの吸い殻だらけで、彼らは煙の臭いを消すために消臭スプレーを20本も使ったらしい。ベッドには妙な茶色のシミがついていて、チョコレートだと思いたいけれど、実際のところはわからない。シンクには汚い、ベタベタのパスタが詰まっていた。目を覆いたくなるような光景だった。部屋を元通りにするのに、彼らは500ドル(約5万円)払わなければいけなかった。

This article originally appeared on VICE UK.