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「エイリアンが人類を救う」:UFOに救済を求めるタイ人グループ

エイリアンとの交信の場である「宇宙への入口」が強制捜査を受けても、メンバーたちは諦めていない。

by Jamie Fullerton
18 October 2019, 3:16am

Ajarn Wassana Chuensumnaun and friend. Jamie Fullerton

〈UFO Kaokala〉の創立者、アジャーン・ワッサナ・チュエンサムナン(Ajarn Wassana Chuensumnaun)は、タイ中部のナコーンサワンの自宅で、彼女が定期的に交信しているというエイリアンについて教えてくれた。

ワッサナの家の居間には、宇宙船の精巧な模型に続き、仏教モチーフの作品、額縁に入ったエイリアンの絵が壁を埋め尽くように飾られていた。玄関には人間大の〈宇宙人グレイ〉の人形が置かれており、この生気のない生き物のシルバーのブーツに、サビ猫が時折鼻をこすりつけている。渦巻銀河が描かれたシャツを着た10名ほどのメンバーたちがソファを占領し、ワッサナが語る別世界の存在との21年に及ぶ交流の話に相槌を打っていた。

他にも、エイリアンには決まった性別がない、とか、「口が小さいので」食べるのはエネルギーカプセルだけ、など、にわかには信じがたい話が続いた。しかし、その場にいた20代から60代のメンバーたちは、それを疑うような素振りは一切見せなかった。UFO Kaokalaの主要メンバーは約50人で、他にもFacebookの数千人のフォロワーたちがエイリアンの存在を信じている。UFO Kaokalaは『インデペンデンス・デイ』のようにエイリアンを侵略者と恐れているのではない。彼らが人類を絶滅から救ってくれると信じているのだ。

現在47歳のワッサナは、地球外の友人の話に耳を傾けることに人生を捧げ、彼らの人類を救う計画を待ちわびている。しかしつい最近、ワッサナと彼らの〈対話〉に邪魔が入った。2018年8月、エイリアンとの交信に使われていた郊外にあるUFO Kaokalaの聖地で、地元当局が強制捜査を行なったのだ。

UFO Kaokalaのメンバーたちは一旦解散を余儀なくされたが、彼らが逆境に屈しないことを示そうと、しきりに捜査の現場へと私を案内したがった。「エイリアンは地球上の人類の力になってくれるということを、みなさんに知ってほしいんです」とワッサナは2体の灰色のエイリアンの真っ黒な目がこちらを凝視する下で語った。

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ワッサナと彼女の60歳の姉、ソムジット・レペス(Somjit Raepeth)は、1998年から冥王星と〈ロクカタパカディコン〉と呼ばれる惑星、それぞれのエイリアンと交信を続けているという。ふたりによれば、ロクカタパカディコン星のエイリアンは、標準的な人間と同じくらいの頭をもつグレイ型。『X-ファイル』に登場するような超知能体だ。いっぽう冥王星のエイリアンは身体がなく、ガスに近いという。

21年前、姉妹の父親が唐突に、瞑想中にエイリアンと接触したと主張した。ふたりは疑い半分でいっしょに瞑想したという。「父が〈波〉を受け取り、それを私に渡したんです。まるで電話の回線を切り替えるみたいに」とワッサナは回想する。「〈やる気のエネルギー〉に突き動かされるのを感じました」

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カオカラ山近くの湖畔に立つユークリン・サオナクナシフィサック(Ukrin Thaonaknathiphithak)。UFO Kaokalaはこの湖の底に宇宙への入口があると主張している。 IMAGE: JAMIE FULLERTON

この宇宙人との〈ホットライン〉が開かれて以来、姉妹は宇宙人たちといずれ始まる第三次世界大戦、核による世界の終末について話し合ってきた。姉妹によれば、宇宙人たちは人類と交信し、〈新世代〉の人類が生まれる前に、脅威を生き延びるための技術を提供したがっているという。彼女たちはその話を聞いて、このメッセージを広めるために信者たちのコミュニティをつくろうと決心した。

信じられないような話だが、彼女たちの真面目な表情には説得力があった。口コミでナコーンサワンに広まったあと、UFO Kaokalaはネット上での存在感を強め、パブリックミーティングを開催し、メディアを通して全国的な注目を集めている。

コミュニティは着実に成長していった。地方公共団体のコミュニケーション責任者を務めていた65歳のマノップ・アンパン(Manop Ampan)は、UFO KaokalaのSNS運営に協力している。バンコク出身の30歳のグラフィックデザイナー、クリッタヤ・ケカウスワン(Krittaya Ketkaewsuwan)は、SFが好きでUFOを見てみたいという理由でこの団体に加わった。彼女は団体の主張を「半分くらい」信じているという。

UFO Kaokalaのもうひとりのデザイナー、29歳のプロイ・ブラナシリ(Ploy Buranasiri)が団体に加わったきっかけは、もっとスピリチュアルだ。ワッサナによると、エイリアンがタイを地球との交信地点に選んだのは、この国には仏教徒が多く、彼らと瞑想を通して交流できるからだという。UFO Kaokalaで9年活動してきたプロイは、瞑想を通して、エイリアンと会話するだけでなく「ひとのカルマを見る」こともできると信じている。「母は最初の頃、この団体はまともじゃないと思っていました」と彼女は回想する。「でも、私たちは何も悪いことはしてない、と説明しました。ひとびとを助けようとしてるんだ、って」

Ann Thongcharoen, a core UFO Kaokala member, in Nakhon Sawan.
UFO Kaokalaの主要メンバー、アン・ソンチャロエン。ナコーンサワンにて撮影。 IMAGE: JAMIE FULLERTON

ワームホールのさらに奥深くへ進んでいった者もいる。バンコクの家族経営のレストランで働く28歳のアン・ソンチャロエン(Ann Thongcharoen)は、エイリアンが目撃された場所を、歴史的建造物のツアーのような気軽さで案内してくれた。「ここが冥王星からのエイリアンに会った場所。彼らは地球用の合成繊維のスーツを着ていました」と彼女はカオカラ山をのんびり登りながら説明した。カオカラ山は豊かな森が広がる険しい山で、ワッサナの自宅から車で30分ほどの場所にある。

UFO Kaokala(正式名称はKaokala Coordination for Disasters Warning Group)という団体名は、このカオカラ山からつけられたものだ。エイリアンたちは、この山に別次元への入口がある、とワッサナに語ったという。メンバーたちは6年前から山頂にある仏像のもとに集まり、キャンプをして瞑想し、UFOを探し続けている。

彼らがUFOを目撃したという証拠はといえば、カオカラ山にそびえ立つ金色のブッダ像の上空に浮かぶ、鍋の蓋のような物体のぼやけた写真数枚だけだ。しかし、アンは山を登りながら、エイリアンの存在をしきりに主張し続けた。「ここで誰かがエイリアンのロボットを見たの」。森が深くなり、蚊が攻撃を仕掛けてくるなか、彼女はこう訴え、空の写真を撮ってあとで宇宙船が写っていないかズームしてみるといい、と私に勧めた。

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私がカオカラ山を訪れたとき、ゴツゴツとした岩肌の上で蝶が舞い、穏やかでのどかな雰囲気が漂っていたが、この場所ではつい最近、騒動が起きたばかりだ。今年8月中旬、警察と森林省の職員たちが山頂で強制捜査を行なった。当局によれば、UFO Kaokalaは仏像の周りにトイレや倉庫をつくり、違法にキャンプをして保護林を荒らしているという。「もしUFOが降りてきてここに着陸するなら、もっといい」とある警官は地元メディアに語った。「そしたら宇宙人もまとめて捕まえますよ」

山頂の仏像の前で警官に身元確認されたUFO Kaokalaのメンバー、チャロン・レイペッチ(Charoen Raepetch)は即刻起訴されると告げられ、団体は最高15万バーツ(約53万円)の罰金を科されるという。ワッサナは、もしそうなったらメンバーたちでお金を出し合って罰金を支払う、と語った。彼らは強制捜査以来、山には泊まっていない。彼らの持ち物の多くは当局によって持ち去られてしまった。

Walking up to the peak of Khao Kala mountain.
カオカラ山の頂上を目指す。IMAGE: JAMIE FULLERTON
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カオカラ山の瞑想の場に立つユークリン・サオナクナシフィサック。IMAGE: JAMIE FULLERTON

UFO Kaokalaが圧力をかけられるのは、今回が初めてではない。なかには、団体のSNSに、彼らが仏教をエイリアンにまつわるおかしな主張に結びつけて仏教を冒涜したとして、批判的なコメントを投稿するタイ人もいる。また、チャロンが山頂の施設への寄付を募ることを疑問視する声もある。アンによれば、UFO Kaokalaのメンバーには会費はないという。私が実際に会った団体上層部のメンバーたちも、とても悪人とは思えなかった。

「仏教は他の文明と何の関係もない、と考えるひともいます」とアンはいう。「でも、仏教は宇宙にまつわるものです。祈りと瞑想がすべてだと思うひともいますが、仏教は宇宙についても説いている。批判的なコメントは見かけますが、あえて見ないようにしています。彼らと争いたくないので」

強制捜査による影響はあったが、メンバーたちはその後も週末の登山をやめることはなかった。山頂では、マノップが金色の立派なブッダ像の横に設置された石版の宇宙船の絵に向かって手を振っていた。黒いピラミッドの小さな模型が、地面や木の枝のあいだなど、あちこちに置かれている。ワッサナは捜査が行なわれた場所のチリを掃き、アンとプロイは静かな森に囲まれた仏像の影でリラックスしていた。

その場に漂う空気は、世界の終焉を信じるカルトというよりも、週末のバスツアーに近い。地元には、エイリアン好きなひとびとを取り込もうとしている、団体とは無関係なビジネスも行われている。下山したあと、私たちはナコーンサワン市場に立ち寄り、1990年代のレイヴからタイムスリップしてきたかのような、けばけばしいエイリアンが描かれたオーバーサイズのTシャツをどっさり買い込んだ。

Some Kaokala touches remained on Kha Kala mountain, despite authorities forcing the removal of much equipment.
当局はUFO Kaokalaにカオカラ山に置かれた持ち物を撤去するよう命じたが、いくつかのオブジェはそのままになっている。IMAGE: JAMIE FULLERTON

続いて私たちは、セルフィー撮影用のグラフィティが壁一面に描かれたカフェに向かった。ウエハースが刺さったアイスクリームを前に、姉妹はUFO Kaokalaの意欲は今も強いままで、強制捜査については心配していない、と語った。また、地球外生命体との交信が行なわれているのはひとつの場所に限ったことではなく、そこが宇宙への入り口かどうかは関係ない、と彼女たちは説明する。「家にいても彼らからのメッセージを受け取ることがあります」とアン。「第三次世界大戦が始まる頃には、自分がどこにいるかなんてわかりません」

UFO Kaokalaの計画は、エイリアンが人類に技術を与え、アルマゲドンを生き延びる術を教えてくれるまで瞑想を続けることだ。「彼らは何世代にもわたって人類のもとにやってくるでしょう」とワッサナは言明する。「それは核戦争の前、最中、後、それか人類がそこから立ち直る時期かもしれない。核戦争がいつ始まるかはわかりませんから」

核による惨劇が訪れるまで、UFO Kaokalaの楽しい週末の旅は続く。カフェの店員がテーブルに6つの大盛りアイスクリームをドスンと置き、私たちは一斉にスプーンとスマホに手を伸ばした。

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This article originally appeared on VICE US.