パナマ文書の主役「モサック・フォンセカ社」について

『南ドイツ新聞(SZ)』が入手し、「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」と共有した機密データは、世界中を大混乱に陥れた。72人の現職および元国家元首が、モサック・フォンセカ社が設立したシェルカンパニーと関連していたのだ。シェルカンパニーの設立は合法であるものの、シェルカンパニーそのものは、経済制裁回避、脱税、マネーロンダリングなどの不正にも利用される。

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apr 19 2016, 7:11am

パナマのパナマシティに本社を置く法律事務所「モサック・フォンセカ」社は世界中の富裕者たちの隠れた資産運用を、過去40年にわたりサポートしてきた。2016年4月3日、日曜、同社の取引を暴露する「パナマ文書」と呼ばれる機密文書1,150万点、データにして約2.6テラバイトがリークされた。

『南ドイツ新聞(SZ)』が入手し、「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」と共有した機密データは、世界中を大混乱に陥れた。72人の現職および元国家元首が、モサック・フォンセカ社が設立したシェルカンパニーと関連していたのだ。シェルカンパニーの設立は合法であるものの、シェルカンパニーそのものは、経済制裁回避、脱税、マネーロンダリングなどの不正にも利用される。

「現在、モサック・フォンセカ社は、オフショア取引に関わる企業として世界でも5本の指に入る」とICIJは記載した。「500人以上の従業員と関係者がスイス3ヵ所、中国8ヵ所を含む世界40以上のオフィスで働いており、2013年、同社の売上は4,200万ドル以上である」

モサック・フォンセカ社とクライアントの関係は、例えるならこうだ。「50フィートのヨットをあるオーナーがサントロペに停めている。彼は自らがヨットのオーナーであるのを世間に知られたくない。オーナーはいったいどんな人物なのか。恐らく彼は、暢気にクルージングでもしようものなら世界中から非難されるような、政情不安で知られる「とある国家」の政府高官だ。彼は、自身の名義でヨットを登録せずとも、モサック・フォンセカ社がタックスヘイブンで登記したシェルカンパニーの名義を利用し、ヨットの購入と登録が可能になる」

もし、誰かがヨットの船主を突き止めようとしても実質的には不可能だ。同様の手続きでプライベートアイランドの所有権、現金1,000万ドル、数多くの資産や資金の隠蔽も可能になる。

そういった手続きが可能になるには要因がある。クライアントの信頼が篤い弁護士や代理人がタックスヘイブンにシェルカンパニーを設立し、クライアントと資産の関係を曖昧にして税務調査を阻む。タックスヘイブン=租税回避地とは、シェルカンパニーの法人税、所得税、相続税など、租税回避が可能になる税率の低い国、州などで、これもまた重要な要因だ。ICIJによるパナマ文書の分析によると、モサック・フォンセカがタックスヘイブンとして利用したのは、主に、英国領バージン諸島、パナマ、バハマ、セイシェル、南太平洋上にある小島のニウエらしい。

厳重な金融プライバシー法も大きな要因のひとつだ。モサック・フォンセカ社の本拠地であるパナマでは、一般的に、テロやドラッグ取引に関する犯罪捜査のいち部として命じられないかぎり、銀行による顧客情報の開示は違法だ。脱税捜査に対して、パナマの各銀行が情報を開示しなければならない法的義務はない。

創設者の1人であるラモン・フォンセカ(63)は、パナマの報道機関によるインタビューに応え、例え話を交えながら不正疑惑を否定した。ICIJによると、クライアントが海外のシェルカンパニーを1度購入すれば、クライアントがシェルカンパニーで何をしようが同社は責任を負わない、とも述べたそうだ。報道によると、彼はモサック・フォンセカを「車工場」に例え、顧客の会社の業務に関してモサック・フォンセカが非難されるのは、「例えば、強盗に使用された車」の製造メーカーが非難されるようなものだ、と例えたそうだ。

モサック・フォンセカ社のウェブサイトには、同社は公式に信託業務、法律業務、企業設立、知的所有権を専門に取扱う、と記載されている。「いかなる国でも」ビジネスを展開し、「選択した通貨による取引」が潜在的なクライアントに約束されている。

モサック・フォンセカ社は、著名なパナマ人ビジネスマンのフォンセカ、ドイツ移民を父に持つユルゲン・モサック(68)により1977年に設立された。モサックの父は第2次世界大戦中、ヒットラーの武装親衛隊Waffen SSに所属した後、家族でパナマへ移住した。ICIJによれば、モサック はレックス・マリスと名付けたヨット、金貨コレクション、チークプランテーション、ヘリコプター、その他あらゆる資産を保有しているらしい。

フォンセカは今月初めまで、パナマ大統領フアン・カルロス・バレーラの最高顧問を務めていたが、ブラジル国営石油会社ペドロブラスの汚職疑惑、マネーロンダリングに同社のブラジルオフィスが関与したのを理由にフォンセカは休職を発表した。

驚くべきことに、フォンセカはベストセラー作家としても活動している。彼には4冊の著書があり、そのなかには、「最近のパナマにみる、歴史的文脈のなかで培われた権力と道徳の密接な関係」について掘り下げた『ダンス・オブ・バタフライズ(Dance of Butterflies)』、「権力に巣食う恥知らずな役人が、自らの薄汚れた欲望を満たすために利用する複雑なプロセス」を探求した『ミスター・ポリティクス(Mr. Politics)』がある。

1987年、モサック・フォンセカ社は初の海外支店を英国領バージン諸島に開設した。それ以後、世界のオフショアカンパニーの約40%、9万社以上が英国のカリブ海領内で法人化されている。同社のファイルに記載されている企業の半分が英国領バージン諸島で法人化された、とICIJは報告した。

モサック・フォンセカ社はバハマ、キプロス、香港、スイス、ブラジルなど、44ヵ国にオフィスを構え、米国にもワイオミング、フロリダ、ネバダに支社がある。1994年、太平洋上にあるサモアの南400マイルに位置する島国、ニウエを同社は支援し、その結果、同国ではオフショアカンパニー設立を促進する特別法が施行された。この取引により以後20年のあいだ、ニウエにおけるオフショア・カンパニー登録を独占する権利を同社は獲得した。

人口が2,000人以下のニウエには、2000年までに6,000社のオフショアカンパニーが登録され、それにより、年間約50万ドルが生み出された。翌年、米国の銀行は、ニウエへの送金禁止を発令し、米国国務省はモサック・フォンセカ社と同国の関係について調査を始めた。その一方、オフショア・バンキングに立ち向かう政府間イニシアチブにより、マネーロンダリングの共犯疑惑がある、との理由でニウエと他の南太平洋の諸国家はブラックリスト入りした。

2003年までに、モサック・フォンセカ社は南太平洋での運営を、米国の銀行が課したドル通商禁止に苦闘していたニウエから、近隣のサモアへ移した。「このような転換は、文書上で明らかになるパターンの1部である」とICIJは指摘した。「法的取り締まりにより同社の顧客に対するサービスが滞ると、彼らはすぐに反応し、ビジネスの可能な他の地域を探しだす」

リークされた文書により、モサック・フォンセカ社はねずみ講運営者、ダイヤモンド取引業者、大物ドラッグ・ディーラー、ウクライナの独裁者、サウジアラビアの王、そしてウラジミール・プーチン大統領の側近との取引が明らかになった。文書は、同社と1983年に英国で発生した「ブリンクス・マット強盗事件」との関連も暗示している。その事件で、6人の強盗が警備員たちを縛り上げ、ガソリンを浴びせて着火し、その隙に7,000本近い金の延べ棒、現金、ダイヤモンドが入った金庫を奪い去った。同社の代理は、この強盗事件にまつわる金を扱っているのに気付いていたはずだ、ともICIJは報告している。

リークに応えて、モサック・フォンセカ社は「パナマ、その他の業務管轄区域で非難の余地なく」40年にわたって業務を続けてきた、と声明のなかで断言している。「弊社は犯罪行為への関与を疑われて、非難や告訴されたことは決してない」

「弊社が提供する主なサービスは租税回避や脱税であると示唆するような」申し立てには断固反対する、とモサック・フォンセカは強調した。「常に国際的慣習に従い…弊社の法人化した企業が、脱税、マネーロンダリング、テロリストの資金源、その他不正目的で利用されていないことを断言する」

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