Photo by Maija Lahtinen

先鋭的ヘヴィ・ミュージック・フェスティバル〈ROADBURN〉

約20年前に始まった〈ロードバーン(Roadburn)〉は、先鋭的なヘヴィ・ミュージック・フェスながら、オーディエンス、アーティスト双方から熱烈な支持を集めている。出演アーティストは、今をときめく業界のビッグネームではない。ロードバーンのラインナップには、どこまでも実験的で、エクストリームなサウンドを追求する異端児が名を連ねている。

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apr 17 2018, 7:00pm

Photo by Maija Lahtinen

どんなジャンルの音楽ファンも、大規模なフェスを楽しみにしている。なかでも、ヘヴィメタル / ヘヴィミュージック系のフェスは、その名のとおり〈重み〉を増しているようだ。大盛況の〈デス・フェスト(Deathfest)〉や、人気上昇中の〈テラー・フェスト(Terror Fest)〉など、〈チェーン展開〉して開催地を増やしたものから、〈ヴァッケン・オープン・エア(Wacken Open Air)〉のような超巨大フェスまで、あらゆるイベントが開催されている。数多の選択肢のなかで、どのイベントに参加すべきか迷ってしまうファンも少なくない。

約20年前に始まった〈ロードバーン(Roadburn)〉は、先鋭的なヘヴィミュージック・フェスながら、オーディエンス、アーティスト双方から熱烈な支持を集めている。出演アーティストは、今をときめく業界のビッグネームではない。ロードバーンのラインナップには、どこまでも実験的で、エクストリームなサウンドを追求する異端児が名を連ねている。

ロードバーンが異色かつ先鋭的な理由は、このフェスがサブカルチャー界制圧を目指す試みではなく、つつましいウェブマガジンに端を発しているからかもしれない。あるいは、ファウンダーのヴァルテル・ホイマケルス(Walter Hoeijmakers)がラウドで挑戦的な音楽を追求する初期衝動を失っていないからかもしれない。いずれにせよ、同フェスは、今もどこか純粋で美しい。スタート当初は、1会場で1日だけの同フェスも、今や、オランダ、ティルブルフ(Thiburg)の複数の会場を利用した、4日間におよぶ、実験的で革新的な音楽、映画、ビジュアル・アートの祭典に成長した。とはいえ、同フェスの核心でもある、アート・コミュニティとの紐帯は全く損なわれていない。そのアティチュードのおかげか、2017年には、オカルティック・サイケの梟雄〈COVEN〉が数十年ぶりに復活するなど、多くのアーティストがロードバーンだけのレアなライブを披露している。

Photo by Maija Lahtinen

2018年のロードバーンは、初日と最終日に、筋金入りのメタル・エクスペリメンタリスト2組によるパフォーマンスをブッキングし、新たな領域に踏みこもうとしている。初日、4月19日(木)のパフォーマンス《Waste of Space Orchestra》を担うのは、フィンランドのORANSSI PAZUZUとDARK BUDDHA RISINGだ。

また、最終日、4月22日(日)には、アイスランドのMISÞYRMING、WORMLUST、NAÐRA、SVARTIDAUÐIのメンバーが集結し、《Sól án Varma》(大まかに訳せば〈輝きのない太陽〉)という壮大な楽曲を披露する。ロードバーンのキュレーター、ヴァルテル・ホイマケルスと、出演バンドのメンバーたちが、ユニークなパフォーマンスの内容とともにロードバーンの真髄を紐解いてくれた。

インタビューに応えるホイマケルスは、フェスを間近に控えて興奮を隠せない様子だった。しかし、彼は、決して得意になっているわけではない。ロックがどれほど先進的なアートフォームに成長しようと、ホイマケルスは、ロックそのものを愛してやまないのだ。酩酊したてのストーナー・ロック・シーンを発信するウェブマガジンとして1998年に誕生したロードバーンは、すぐにイベントをオーガナイズし、瞬く間にフェスを開催するまでに成長した。ホイマケルスによれば、ロードバーンの急成長は、ごく自然で当然の成り行きだったという。

「何があろうと、私たちは、HAWKWINDやBLACK SABBATHのようなバンドから溢れていた、スリリングな実験性、ロック然とした雰囲気を失いたくなかったんです。最近のアーティストのサウンドは、そういったバンドとは少し違うかもしれない。でも、彼らは、創作意欲に溢れていて、創作の何たるかを体現しています。それこそ、私たちが大切にしているモノです。だからこそ、アーティストに、ユニークなパフォーマンスをオファーするんです。私たちは、彼らの新しい試みを応援したい。私たちがバンドに求めるのは、集客力ではなく、オープンマインドなオーディエンスを惹きつけるポテンシャルなんです」

オープンマインドなオーディエンスや、アーティストたちの創意工夫を重んじるホイマケルスに、ORANSSI PAZUZUのベーシスト、トニ・ヒエタマキ(Toni Hietamäki)は、深く賛同している。2年連続でロードバーンに出演した彼は、このフェスを気に入っている理由として、未知との遭遇を恐れないオーディエンスが集まることを挙げた。3度目の出演となる今年、ヒエタマキは、ORANSSI PAZUZUのメンバーとしてだけでなく、さらなる高みを目指す《Waste of Space Orchestra》の演者としてもステージに上がるのだ。3人のヴォーカリストを含む、総勢10人のミュージシャンによるこのパフォーマンスには、明確なプランがある。

パフォーマンスの内容を尋ねると、ヒエタマキは、情報を共有してくれた。「3人の役柄は、演じるヴォーカリストそれぞれの内面を象徴している。三者三様のアプローチがあり、事象の捉えかたもそれぞれ違う。3人が団結して、全員の力を超越したひとつの生き物に変身する、それが作品のコンセプトだ。これこそ、ロードバーンにふさわしいテーマだろう」

2組のまったく異なる実験的なバンド、ORANSSI PAZUZUとDARK BUDDHA RISINGのコラボレーションは、第3者からすると難行かもしれないが、ヒエタマキは、こんなときにこそ力を発揮する、フィンランドの小さなコミュニティならではのメリットを説明した。「フィンランドのタンペレにある〈ウェイストメント・スタジオ(Wastement studio)〉界隈のコミュニティは、少人数の友達グループで、みんな仲が良いんだ。タンペレは小さな街で、ロック・バンドは多いが、エクスペリメンタル・バンドとかメタル・バンドはとても少ない。だから、同じジャンルのミュージシャン同士がすぐにつながれるんだ」

アイスランドのブラックメタル・レーベル〈Vánagandr〉に所属するバンドにも、小さなシーンならではの協調性がある。MISÞYRMINGのメンバー、ダグル(Dagur)は言明する。「ショーやフェスがあれば、みんなスタッフとして手伝い、夢中になっているうちに、気づくと出演している。小さなコミュニティだから、いつも協力してきた。何かあれば、連絡して助け合う。少なくとも10年は活動してきたヤツらばかりで、長年、ライブなんかをいっしょにやってきた。いいアイデアを閃いたら、誰かに電話さえすれば、すぐに実現できるんだ」

このように、バンド同士が自発的に協力しあう環境なだけに、異なるバンドのメンバーが団結するのは容易い。2016年のロードバーンで、アイスランドのバンド4組が披露した壮大なパフォーマンス《Úlfsmessa》は、観客に鮮烈な印象を残した。今年のパフォーマンスも、大きな反響を呼ぶだろう。

オーガナイザーとして、20年以上ロードバーンに携わってきたホイマケルスですら、《Úlfsmessa》の話題に触れ、彼自身とオーディエンスが受けた衝撃を明かした。「2016年、アイスランドのバンドが《Úlfsmessa》で集結し、深夜2時まで演奏が続きましたが、最後までオーディエンスは熱狂的でした。私は、あの夜のエネルギーを、今でも鮮明に覚えています。オーディエンスの記憶に残ることが重要なんてす」。同年、ORANSSI PAZUZUとDARK BUDDHA RISINGの単独ステージでも、オーディエンスの熱気は凄まじかったという。

いずれのバンドも、遅かれ早かれ、世界中のフェスのヘッドライナーに抜擢されるだろうが、今はまだ、さらなる高みを目指して励んでいる最中だ。しかし、ロードバーンは、若手にスポットライトを当て続ける。ホイマケルスには明確な理由がある。「私たちが目指すのは、未来志向のフェスティバルです。ここ数年、私たちは、コミュニティ全体の成長を目の当たりにしてきました。若いアーティストたちは独自の世界を創り、新たな目標に向かっている。そんな未来のヘッドライナーを担うバンドを、私たちは今、応援したいんです。彼らには、未来を見据え、注目を浴びながら成長する機会が必要なんです。だからこそ、私たちは、彼らのために舞台を用意するんです」

ロードバーンがこだわってブッキングしてきたバンドは、世界レベルで注目を集めだしている。ORANSSI PAZUZUは、最近の米国公演で大成功を収めた。さらに、〈Vánagandr〉のバンドにとっても、ヨーロッパの数々のフェスに出演した2017年は、記念すべき1年だった。それでもなお、小規模ながら、オーガナイザーとバンドの意向を同等に重んじるロードバーンは、アーティストたちを魅了し続けている。

〈Vánagandr〉コミュニティの、ほぼ全てのバンドに所属するトマス(Tomas)は、ロードバーンへの想いを明かした。「このフェスでは、独創的なアイデアを好きなように実現できるんだ。ロードバーンは、特別なパフォーマンスのための、最高の舞台を用意してくれる。いつも素晴らしいラインナップで、出演しているのは好きなバンドばかりだ。アイスランドじゃ、こんなフェス有り得ない」

Photo courtesy of Vánagandr

その後、トマスは、今年のロードバーンに出演する、お目当てのバンドを教えてくれた。多くのアーティストにとって、このフェスは、スプリング・ツアーの途中で立ち寄るだけの場所ではなく、心待ちにしているイベントなのだ。

ロードバーンは、独自の世界観を形成しながらも、外側にも働きかけ、ヘヴィ・ミュージック・シーン全体に影響を与えようとしている。最後に、ロードバーンの未来に何を望むか、ホイマケルスに尋ねた。何十年も自らのヴィジョンと情熱に駆り立てられてきた男にとって、もっとも難しい質問だったようだ。それでも彼の答えは、簡潔で誠実だった。「ロードバーンが〈ヘヴィ・ミュージック〉を、広い意味で再定義するきっかけになれば最高です。ヘヴィ・ミュージックとは、単にサウンドが重厚なだけではありません。未知の領域に挑むスペース・ロック、エクスペリメンタル・ヒップホップ、そしてやダーク・エレクトロニック・ミュージックなど、ヘヴィで感動的な楽曲をつくるアーティストもいる。いちばん重要なのは、私たちが〈ヘヴィ〉の定義を、世間よりもずっと広く捉えていることです。私たちは、偏りなく、この定義を探求しなくてはなりません」

〈ヘヴィ〉の定義を拡大しつつあるバンドによるユニークなパフォーマンスと、サイケデリック・ミュージックやヘヴィ・ミュージックの幅広いラインナップ。このふたつを併せ持つ2018年のロードバーンは、間違いなく新たな伝説になるだろう。ロードバーンは、オランダのティルブルフで、4月18日(水)のプレパーティーの後、19日(木)から22日(日)まで開催される。

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