写真家 マツモトダイスケは標高2000メートルで全裸の神々によるお告げを写真で代弁する

「写真はアートだ、芸術だ!」ー。息巻く熱い熱気が感じられる近ごろの写真界、ぶっちゃけマーケティングに専念しすぎてタイクツ極まりないんじゃない? そんな疑問が膨れ上がる今日に現れた1人の男を紹介しよう。マツモトダイスケ、27歳。

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sep 27 2013, 1:00am

「写真はアートだ、芸術だ!」ー。息巻く熱い熱気が感じられる近ごろの写真界、ぶっちゃけマーケティングに専念しすぎてタイクツ極まりないんじゃない? そんな疑問が膨れ上がる今日に現れた1人の男を紹介しよう。マツモトダイスケ、27歳。写真家。

わざわざ標高2000メートルの山肌まで男2人を連れていったかと思えば、全裸にさせたうえに猿のマスクを被せ、その流れでマツモトはフォトストーリーを撮る。アイデアそのものは誰もが考えるような悪フザケだが、都会の電線が散りばめられた道ばたでやるよりはよっぽど手が込んでいて、ぶっちゃけタチが悪い。もしかすると万に一つでも「おや? これはなかなかのアートですね」と引っかかる成金が現れてもおかしくない。

そんなマツモトが紡ぐ物語を紐解けば、神だ、平和だとなにやら意味深なメッセージ。正直なところ、マジメなのかフザけているのか、なかなか判断がつかない。バブル時代を知らない世代特有の白けた感覚がそうさせているのかもしれないが、そもそも業界自体がウサン臭い今、もしかしたら〝同アホ踊損〟なのかも。

さ、ここらでマツモトの「お告げ」に耳を傾けてみようじゃないか。


『SEKAINOHEIWA』より

VICE:マツモトさん、初めまして。今日お邪魔したご自宅があるのは高円寺ですけど、出身は鳥取みたいですね。僕も両親が鳥取の米子と境港出身で。
マツモトダイスケ:ホントですか! 思いっ切り、あの辺で遊んでましたよ。皆生は海水浴しによく行きましたけど、海近くのソープランドが1番の思い出で。

17の時、先輩がパチンコですげえ勝って。そのとき居合わせた数人でジャンケンして、負けたヤツがソープに行くことに。それで俺が負けて、2万握らされて、ソープ前で降ろされた。日曜なんで、待合室に『ガキ使』が流れてたんですけど、全然笑えなかった。

カラダ洗ってもらってる時、つい「俺なにしてるんだろう? なんで知らない人と風呂入ってるんだろう?」とか考えちゃったりして。終わったあと、天井眺めてたらちょうど有線でウルフルズの『それが答えだ!』が流れて。そういうことか!みたいな。

僕が鳥取で話したかったのはそういうことじゃなかったんですけど、まあいいや。鳥取の写真家っていうと植田正治さんを思い出す人は多いと思うんです。マツモトさんの写真にも砂丘が出てきますけど、その辺りは意識してます?
俺、植田さんと家が近所だったんです。だから〝ご近所の写真屋のおじいちゃん〟って感じで。すごい人だとは知らなかったけど、店の前とかでよく日向ぼっこしてた。それで知ってましたね。

初めて自分の金でカメラ買ったのも植田カメラ屋でした。今はもう多分ないですけど。自分の写真では(植田さんのことは)1ミリも意識してないですね。全く影響受けてない。だけどもしかして「影響受けて写真始めました」って言った方がドラマチックなんですかね。


『SEKAINOHEIWA』より

さあ、それは分かりませんけど。じゃあ、どういうきっかけで『SEKAINOHEIWA』みたいなスタイルの写真を撮るようになったんですか?
それまでずっとモノクロでプリントをやってきて、新作を作っても自分で納得いかない時期が続いて。で、当時写真を見てもらっていた人にこう言われたんですね。「なんでお前、写真撮るとカッコつけちゃうの? お前、そんなんじゃないじゃん」って。それで吹っ切れて思いついたのが『SEKAINOHEIWA』だったんですよね。好きなもので好きにやろうと。

あの作品では特撮とか怪獣がキーワードみたいですけど。
そうですね、まず出てきたのがそれでした。ウルトラマンとゴジラって製作会社こそ違いますけど、日本を代表するヒーローと怪獣。で、圧倒的な正義感でゴジラをボッコボコにしたら面白いかなって。


『SEKAINOHEIWA』より

勧善懲悪ってヤツですね。小さい頃はどんな作品を観てたんですか?
僕の小さい頃って、『ウルトラマン』がやってなかった。それこそ『ウルトラマングレート』とか『ウルトラマンパワード』みたいな一発モノばかりで。だけど、ばあちゃん家から通ってた水泳教室の日だけは特別で。ばあちゃん家では衛星放送が観れたんです。その時やってたのが『ウルトラマンエース』でした。

それから、うちのオカンが『仮面ライダー』とか『ゴジラ』が好きだったんで、人生初の劇場作品は『ウルトラQ』でしたね。

〝マスクにハダカ〟ってかなりギャグ路線ですけど、マツモトさん〝らしさ〟を辿っていったらそれが答えだったと。
そうですね、面白いのがいいかなって。小さな頃からアートに触れてきたワケでもない。むしろテレビ番組のコントとかからの方が、影響を受けてると思ってて。笑える写真もあんまないなと思うし、笑ってもらうのもアリかなと。面白いことやればいいじゃん、って感じですかね。ヘンに詳しい芸術ジジイより、若い人に面白いって言ってもらった方が嬉しい。

撮影のロケーションはとりわけ男子ウケが良さそうです。
男に「いいね」って言ってもらえるのが1番嬉しい。ライブに行っても、女ファンが多いバンドってあんま信用できないんですよ。男が盛り上がってるバンドの方が、やっぱカッコいいバンド多いですからね。男に「やべえな」って言ってもらえるのが1番嬉しいですね。もちろんモテたいし、女子にキャーキャー言われたいんですけど。


『TSUMITOBATSU』より

少なくとも僕には十分響きましたよ。ところで『TSUMITOBATSU』のロケ地って山の上みたいですけど、かなり標高高くないですか?
長野の美ヶ原高原ってところで、標高2000メートルです。4月に行ったんで、まだ雪が残ってて超寒くて。モデルをしてくれたのは友達で、それも昼飯奢るとかその程度の報酬でお願いしてるんで、早く終わらせないと怒られちゃう。しかも撮影後のレタッチで、モデルの脚に擦りキズ出来てるのとか見つけちゃって。悪いことしたなと思いましたね。


『TSUMITOBATSU』より

『TSUMITOBATSU』の途中で神様がビショビショになるじゃないですか。あれはもしかしてローション?
そう、ローションです。友達が風俗で働いてたんで、業務用のものを教えてもらいました。ギネスブックに「日本で最も高いところまでローション持っていく」って部門があったら、たぶん俺が記録保持者じゃないですかね(笑)。神様やってくれたモデルには顔にも白いカツラを被せてたんで、その上からローションかけたら息できなくなってました。


『TSUMITOBATSU』より

『SEKAINOHEIWA』のテーマがヒーローとか正義で、『TSUMITOBATSU』が宗教的な感じじゃないですか。続く新作は?
考え方としては全て一緒で、人間の話、正義の話なんです。新作には金の斧が出てくるんですけど、寓話に出てくる「金の斧」が元ネタで。金の斧は正直者しか持てない斧だから、コイツは正直者なんです。正しいことしてる人間で。

やっぱ「正義」が関係してくるんですね。
ですね、『少年ジャンプ』好きなんで。友情・努力・勝利っていう三大原則があるじゃないですか。男子はそれを忘れちゃダメだと思いますね。


マツモトダイスケのホームページでは全ての作品が公開中

LINK: マツモトダイスケ ホームページ

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