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ビデオゲーム『Grand Theft Auto V』の仮想世界がMVやアート作品に

ビデオゲーム『Grand Theft Auto V』の仮想空間は、ミュージックビデオを始めとする様々な次世代アート作品に応用されている。このゲームに登場する暴力的な世界は、ミュージックビデオや戦場の接写写真に最適なのだ。

Dead End Thrills

ゲームの仮想空間が、新たな映像を作り出す

ビデオゲーム『Grand Theft Auto V(グランド・セフト・オートV/以下:GTA V)』(※1)のゲーム内では、広大な仮想世界が広がっている。その仮想世界は、ゲームを楽しむための表現用途だけでなく、様々なアートプロジェクトにも使われている。例えばビデオゲームがベースのプログラムを使って作られたCGI映画=マニシマ(※2)は、いまはもう、そんなに目新しくはない。しかし、『GTA V』のゲーム空間は、次世代の創作・表現手法に期待できるものがある。

『Coraline』や『ParaNorman』などのアニメ作品を手掛けるフィルム編集者、クリストファー・マリー(Christopher Murrie)は、『GTA V』の仮想空間を作るために「Media Lens」というチームを結成し、制作に挑んだ。それはまるでジャーナリストさながらの働き。実際に、銃撃戦を追いかけたり、紛争地域へ出向き直接現場を撮影することが最大のミッションだった。これらが『GTA 5』でのプログラミング・アニメーションとして反映され、本編で登場するカリフォルニア州ロサンゼルスをモデルとした架空都市「サンアンドレアス州ロスサントス市(※3)」を作り出しているのだ。電子掲示板サイト「/r/GTAVMEDIA」では、このチーム「Media Lens」の活動を追うスレッドが存在し、多数の画像が投稿されている。

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この掲示板でも紹介されている人物で、素晴らしい仮想空間、映像を作るダンカン・ハリス(Duncan Harris)。彼は、ゲームの登場人物やエンジニアなどを紹介するウェブサイト『Dead End Thrills』を運営し、ゲーム・ジャーナリスト兼ヴァーチャル・フォトグラファーである。この記事のメイン画像として掲載しているものがハリスによるものだ。その他、『GTA V』の世界を超現実的にアピールしたものや、白黒のモンタージュ写真を作成した画像もみられる。

ゲーム上にある架空都市だからこそ作れる過激な映像

最も新しいところでは、『GTA V』の舞台が、LAのバンド、ノー(NO)の最新ミュージックビデオに使用された。監督と編集を行ったのは、ジョニー・アグニュー(Johnny Agnew)。サングラスに髭面のボーカリストがゲームの舞台である架空都市、ロスサントスをぶらつく中、彼の背後では車やヘリコプターが次々にクラッシュするという映像だ。ビデオにはストーリーとしての盛り上がりもあり、最後には主人公も車のクラッシュの巻き添えを食う。映像に大規模な爆発やスタントマンが登場することを考えると、アクションフィルムの制作に『GTA V』を利用すれば、コストが安く済むとのこと。

ゲーム情報サイト「Digital Foundry」では、架空都市ロスサントスを静かに描くアプローチの映像がある。低速度撮影された場面には、アメリカの西海岸らしいヤシの木が並ぶ光景や、日夜を問わない都会の喧騒が描写されている。記事、最下部に埋め込まれているロスの街を同じく低速度撮影された映像、「CITY LIGHTS」と比べてみると、『GTA V』のゲーム内でどれだけ忠実に仮想世界が構築されているのが分かる。普段、ゲームをすることがない人にとっても、『GTA V』にあるような制作プロセスとそこから生まれた表現方法を知ることで、より興味深い創作物として楽しむことができるのではないか。

脚注:

(※1)『Grand Theft Auto V』:2013年に発売したビデオゲームで『Grand Theft Auto(GTA)』シリーズ12作目の最新作。GTAは、2008年にアメリカのロックスター・ゲームズ社から発売され、日本でも大ブレイクしたゲームのひとつで。2013年9月には、全世界でシリーズ累計1億5,000万本の売上を記録した大ヒット作である。

(※2)マニシマ:シューティングゲームで使われるグラフィックのプログラムや、ゲームプログラムを使って作られたCGI(CGを使った3Dアニメーション)映画。

(※3)サンアンドレアス州ロスサントス市:『Grand Theft Auto V』の舞台。カルフォルニア州のロサンゼルスをモデルとした架空都市。