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〈老人化〉する若者たち

無鉄砲だったあの時代と違い、今の若者が望むのは、暖炉の前で親友たちとケーブルテレビ局の特番について語り合う日々。
今クールなのはこういう男子. Stock photo via Getty 

ミレニアルズの勢いが止まらない。彼らはどの分野においても、慣習を覆し、規範を否定する。ミレニアルズ・パワーで大穴候補者が大躍進した結果、米国大統領選を混迷させたり、〈ホヴァーボード〉なるセグウェイに乗ったり、自画自賛なミレニアルズ考察記事を書いたりする、そんな世代だ。とかくせわしないこの世の中で、ミレニアルズは自由に生きている。そして、ミレニアルズは、夜遊びに出るのを面倒くさがる初めての世代らしい。

2016年6月8日の『New York Post』では、ミレニアルズについて「ソファでゴロゴロするのが大好きな世代」と説明されていた。確かに私たちは、いわゆる〈X世代〉よりもたくさんの時間をテレビ番組のストリーミングやスマホに費やしているし、人間関係にも及び腰だ。『New York Post』の記事が的確に指摘している。「家で静かな夕べを過ごすのを好む若者が増えている」。さらに私たちは酔っぱらったりもしない。「ハイネケン社による2016年の調査によると、75%のミレニアルズは、外出しても、ほどほどのアルコールしか摂取しない」そうだ。

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『New York Post』の記事では、ミレニアルズが外出したがらない理由が検証されている。まず、とある神経学者は、疲労困憊した若者が増えていること、そして、特にニューヨークなどの大都市では、夜遊びが高くつくことを理由に挙げている。しかし、金欠でなくても、疲れていなくても、いわゆる〈夜遊び〉を忌避するミレニアルズはたくさんいる。ここでいう〈夜遊び〉とは、例えば、暗いバーに集まって、どうにかなるまでショットを飲み続ける、といった遊びだ。そうなったのは、もしかして、SNSと関係があるのだろうか? 気になるのはデートだ。現在のデート事情はどうなっているのだろう?

『New York Post』で、ある男性がミレニアルズを代弁している。「やっぱり、〈Netflix & Chill〉(本来「Netflix観てゆっくりしない?」という意味だが、セックス目的で家に誘うことを意味するスラング)みたいなのが流行りで」

また、家にいるのを好むミレニアルズの性向については、〈世代〉にもとづく解釈もある。考えてみれば、9.11と世界的金融危機とのあいだに成人を迎えた世代が、その前の世代に比べて質素倹約、控えめなカルチャーに傾倒するのは当然の流れな気もする。その前の世代は非常にデカダンで、浮世離れしていた。だからこそネルシャツが流行ったり、『フレンズ』なんていう、6人の男女がコーヒーショップに集ったり定期的にセックスしたりするドラマが人気を博したのだ。サルみたいなエキゾチックな動物をペットにするような、『フレンズ』的な堕落した快楽主義者とは反対に、ミレニアルズは、節約志向で、リスク回避型で、土曜の夜から日曜朝まで遊ぶような性向はない。

また、ミレニアルズのカツカツな経済状況は、誰もがご存知だろう。だから、ひと晩で1万円も出費して、朝方に裸足で帰宅して頭痛にもだえる、なんて散々な夜を過ごしたがるほうが不思議な気もする。あるいは、ミレニアルズにはアラサーも含まれるので、もう確定拠出年金(401(K)プラン)についても考えるようになる年齢だ。そうすると、もう男女共用トイレで手に入れた何かを吸ったり、それから7時間ぶっ通しで踊り、ケネディ大統領の暗殺事件について議論するような週末を過ごしたいとも思わなくなる。

しかし実際のところ、『New York Post』の記事で指摘されていたとおり、「ミレニアルズは規範を打ち破る」、これに尽きるだろう。人類の歴史においては、若者は人生の多くの時間を〈夜遊び〉に費やしてきた。主に酒かハーブ、あるいは、両方でぐでんぐでんになり、ワンナイト・ラブをかまし、野外で目覚める。それが〈夜遊び〉だ。そんな若者を、いつだって上の世代は「自分たちの時代にはハーブはもっと安全だったし、野外プレイだって普通だった」などといってバカにする。もちろん、野放図な若者たちも、いずれ結婚し、どんな経済状況でも生き抜くために努力するようになる。そんな日々を過ごしているうちに、「ああ、自分の青春時代も終わったんだなあ」と突然気づく。無鉄砲だったあの時代と違い、今の若者が望むのは、暖炉の前で親友たちとケーブルテレビ局の特番について語り合う日々だ。ひと昔前だったら、悪友ひとりが自慢げに持ってきた質の悪いハーブで盛り上がる夜もあっただろうに……。

一方、ミレニアルズはそもそも、20代後半をそんなふうに過ごさない。野外で目覚めたくはないのに、そうしないと仲間として認められないという恐れから懸命にぐでんぐでんになっては、もし今後、自分が酒とハーブをいっぺんにやろうとしていたら止めてくれ、と友人たちにメッセージを送信しまくって、それからようやくブランチを食べる、なんて日々は送らない。夜遊びなんてファックだ。金はかかるし、人は多いし、不潔だし、バンドの演奏は基本最低。クラブなんて、ほとんど地獄と変わらない。

それに比べて家とテレビは裏切らない。ぜひ試してみてほしい。まず着心地のいい部屋着に着替える。食べたい料理をスマホで注文し、手づかみで食べる。眠くなったらベッドに向かう。それだけ。過去のどんな世代に比べても、ミレニアルズの〈夜遊び〉は贅沢の極みだ。人間は、干ばつ、飢饉、敵対勢力の侵攻などにおびえて暮らしてきたし、今でもその懸念はなくなっていない。そうなると、屋根に守られながら、ワイングラスを片手に、何でも映し出してくれるスクリーンを目の前にして過ごすシンプルな贅沢をバカにはできない。

というわけで、今夜は家で夜遊びだ。そこそこおいしい赤ワインのボトルを1本、あるいはレモンピールが配合されたちょっとオシャレなビールを用意して、プリンスのコンサートを最初から最後まで観よう。『ピープ・ショー ボクたち妄想族』(Peep Show)を飽きるまで観たっていい。古き良き良書を読みふけってもいい。疲れたら眠ればいい。無理に起きる必要なんてない。外に出なくてもどうにでもなるし、素敵な仲間たちといっしょにいられる。その満ち足りた時間に驚くことだろう。