要素分解すると浮かび上がるのは、明らかに歪な経路を辿るチャート。かつてなく〈ロックバンド〉の体裁でありながら、ハイコンテクストに〈ノイズ〉でしかない存在感は、ENDONならではのエクストリーム。

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ENDONがそれでも〈バンド〉である理由

要素分解すると浮かび上がるのは、明らかに歪な経路を辿るチャート。かつてなく〈ロックバンド〉の体裁でありながら、ハイコンテクストに〈ノイズ〉でしかない存在感は、ENDONならではのエクストリーム。

ENDONは、ノイズ要員2名とヴォーカルにドラム、ギターという特異な編成のため、非常階段を想起させながらも、ノイズ・ミュージックが〈ノイズ〉ではなく〈ミュージック〉となった1990年代以降の感覚を明確に体現し、かつ〈極端〉という意味性を欠いて平板化したエクストリーム・ミュージックのフィールドにおいて、〈あたらしい極端〉の発明を音楽的にもロジックにおいても実現させてきたノイズバンドである。鉄壁のドラム&ギターがつくるフレームに合わせて、かつて〈非音楽〉の象徴として用いられたノイズを緻密に構築することで、〈ロックバンド〉の輪郭を描き、意味を伝えるシステムとしての言葉を排した叫びを乗せるスタイルがトレードマークの異形であったが、約7週間にも及ぶ2017年のUSツアーを経て、BLACK SMOKER RECORDSから発表したアルバム『BOY MEETS GIRL』では、一見、非常にシンプルな〈ロックバンド〉と化してしまったのかと訝しむだけのテクスチャを纏っている。しかし、要素分解すると浮かび上がるのは、明らかに歪な経路を辿るチャートだ。かつてなく〈ロックバンド〉の体裁でありながら、ハイコンテクストに〈ノイズ〉でしかない存在感は、ENDONならではのエクストリームといえる。同時に、その回りくどさに対する疑問が深まる内容でもある。

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那倉太一(vo)、宮部幸宜(g)、横田 慎(dr)、愛甲太郎(electronics)、那倉悦生(electronics, samples)の5名でわざわざ〈バンド〉を構成する理由と目的とは? バンド結成の理由として名高い〈モテたい〉or〈売れたい〉が原点なのであれば、バンドというフォームがポピュラー・ミュージックにおける勢力分布や、スタジオ代やギャラ等分の頭数、機材の保管といった現実的な側面からしても、現在においてはあまりに非合理的だ。真っ先にAbletonとマイクを手に入れるべきだろう。しかしENDONはそうしない。そもそも、仮にバンドが富と名声の獲得手段たり得るとしても、ノイズを纏うべきではないだろう。こと日本においては。しかしENDONはノイズを自明としている。その答えを、メンバー全員に結成前夜にまで遡って語っていただいた。

結成から10年くらいですよね。

愛甲太郎(以下 愛甲):去年でちょうど10年。ももいろクローバーと同期だから。

横田 慎(以下 横田):知らんがな(笑)。

その10年の変遷を教えてください。なぜこんなにも風変わりになったのか。

愛甲:音ですか? 人ですか?(笑)。

両方で(笑)。どうして音も人もヘンな5人で、わざわざ〈バンド〉をやっているのか? それが知りたいんですよ。「バンドがやりたい」っていい出したのは愛甲さんだそうですね。

愛甲:タイちゃん(那倉太一)は「太郎がやりたがったから始めたんだ」っていってますが、僕は逆にタイちゃんに誘われて始めたと思ってたんだけど。

横田:早速、話が食い違ってる(笑)。

那倉太一(以下 太一):ガキの頃、一緒にバンドをやっていたっていうのもあるんですけど。

バンド経験があったんですね。ガキの頃って、中高生とか?

太一:中学校2年生のときに「Anarchy in the U.K.」をやりました。僕がヴォーカルで。

愛甲:僕ドラムです。

太一:その頃、太郎くんはノイズとか全然知らなかったよね。

愛甲さんはドラマーだったんですね。そこからどういう経緯でノイズバンドの道に?

愛甲:「Anarchy in the U.K.」のバンドをやめてから、独りでも音楽がやりたくて、パソコンでノイズの偽物みたいなのをつくり始めたんですよ。

先日、Alva Notoのライブで愛甲さんにお会いして、ちょっと意外な気がしたんですけど、ああいうのお好きなんですよね。

愛甲:すっごい好きですよ。元々そういうのが好き。

太一:うん、太郎くんはそういうイメージあるよ。

ドラムはやめちゃったんですか?

愛甲:独りでスタジオ入ってみたりはしたんですけど…ただただ寂しくて。

太一:それで「バンドがやりたい」っていってきたんだよね。太郎くんがちょっと忙しい時期から抜けた2005、6年の頃。ENDONは、太郎くんの人恋しさが起源という(笑)。

愛甲:そうかも(笑)。

(笑)。太一さんと、弟の悦生さんはENDON結成以前に、codomoraというバンドをやっていたんですよね。どんなバンドだったんですか? 恥ずかしながら未聴です。

那倉悦生(以下 悦生):僕は、シンセを変調させたようなのをやっていて。

太一:もうひとりは、昔やっていたバンドのベースですね。だらしない感じですよ。僕らはWOLF EYESみたいなのやろうと考えていたんだけど(笑)。

愛甲:まじで? それ全く感じられなかったな(笑)。

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太一:バックが下手糞なWOLF EYESで、ヴォーカルが日本語でパワエレ、リリックは自意識についてのみ(笑)。

日本語だったんですか。

愛甲:めっちゃ気持ち悪っ!って思いましたもん。

太一:音源には、僕の手書き歌詞カードのコピーを入れてました。超怖い(笑)。

愛甲:開けた途端にウワッ!てなる。本気で投げたから。

太一:(笑)。そこに太郎くんが合流してきたノリもあります。

愛甲:超楽そうだと思って(笑)。

太一:その頃には、慎さん(横田 慎)も幸宜(宮部幸宜)も顔は知ってて。このふたりと、僕らの後輩がバンドをやってたんですよ。self deconstructionのヴォーカルだった島野っていう奴なんですけど。

学校の後輩ですか?

太一:う~んと……。

愛甲:地元の後輩ですね。あの辺り一帯の後輩だよね(笑)。

太一:まあ(笑)。だから慎さんも幸宜も巧いのは知ってたんですよ。僕らは楽譜も読めない。でも贅沢が好きなので「巧い楽器入れなきゃ!」とは思っていて。太郎くんはノイズ担当って決まってましたから。

愛甲:僕はどこかのタイミングでドラムやりたかったよ!

太一:余計なこというな!(笑)。 それで慎さんと幸宜を誘ったんですけど、入ってくれたのは慎さんだけだったんですよ。幸宜には最初、断られて。

愛甲:それは正しい判断だよ(笑)。

宮部:覚えてないですけどね……。

太一:幸宜には断られたけど、その後、太郎くんの弟が入ったんですよ。

愛甲次郎さんですね。

太一:そう。だから、兄弟が2組に、慎さんのドラムがENDONだったんです(笑)。

横田:最初期はそうだったね(笑)。

愛甲:エッくんはギターだったんだよね。ギター弾けないけど。

悦生:ノイズギターですね。

太一:でも次郎はライヴ3本くらいやって辞めて。

横田:次郎は幸宜が入るタイミングで辞めたんだよね。

愛甲:全然ちゃんとやらないから、「お前は絵でも描いてればいいよ!」って。

でもその後、次郎さんは絵で大成されてますもんね。素敵な絵を描かれますよね。

太一:そうですね。BLAHMUZIKさんのジャケとか描かせて頂いてるようです。

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慎さんはENDON加入以前、元UNITEDの稲津信一さんがやっていたUBERでも叩いていらっしゃったんですよね。

横田:そうですね。ヘヴィメタルっぽいバンドをやってました。あとは、今でも頼まれたらやるんですけど、京都のCRANKですね。僕は元々、関西でバンドをやっていたので。東京に出てきて島野、幸宜と組んだバンドは、スタジオには入ったけど、ライヴをやるまでにはならなかったんですよ。でもそれがきっかけでみんなと知り合って。

宮部:慎さんと初めて会ったときは17歳だったわ……。

太一:俺が会ったときは18っていってた。

幸宜さんはENDON加入を断って、その後どうしていたんですか?

横田:1回帰ったんだよね。

宮部:うん。東京には2年しかいなかったから。

広島でしたっけ。

宮部:広島、岡山って感じです。

帰ったのは、パーソナルな理由で?

宮部:いや、東京でやっていたバンドがおもしろくなくて。

太一:気分の話みたいに(笑)。

慎さんとやっていた以外に、どんなバンドをやっていたんですか?

宮部:ギター3本でアンビエントみたいなことをやっていたりとか……。

あまり良い思い出ではないんですか。

横田:まあ、誰でもいいたくないバンドとかは、あるよね。

太一:ギター3本のやつはすごくかっこよかったよね。あれを観たから声をかけたっていうのは当然ある。

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宮部:そうね、あれが1番ノイズっぽかったかな。

でもまた東京に戻ってきたわけですよね。

宮部:1度帰って、やっぱり違うな……と思ってまた戻ってきて。それからまたいくつかバンドをやったんですけど、何か違うな……っていう感じはあったんですよ。

太一:幸宜は今よりもちょっと…なんというか、キャッチーさを1/4くらいにした感じでしたね。

宮部:……。

愛甲:僕が幸宜と会う前にタイちゃんにいわれてたのは、「本当に気が合わないだろうから、気をつけて」って。

太一:僕が幸宜と初めて会ったのは、ShowBoat(東京・高円寺)へ灰野敬二の哀秘謡を観に行ったときで。JOJO広重も出てて。あとDOODLESかな。そのときは、なんかすげー、尖ってた(笑)。その後、KURUUCREWの〈Scum Birthday〉に行った足で、大久保の世界の山ちゃんで太郎くんと会わせたんだよ。

愛甲:俺はなんか、ダメな奴だと思ったね。

宮部:うん、ダメな奴だったのかもしれない(苦)。

でも、東京と地元を行ったり来たりしていたのは、それだけ〈バンド〉に対して熱意があったということですよね。

宮部:そうですね。バンドしかやったことがなかったし、独りでやることを考える頭がなかった。独りで音楽ができるっていうのを知らなかったんです。

愛甲さんとは反対ですね。

愛甲:やっぱ独りは寂しいんすよ~! 孤独で辛くて……。

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川口賢太郎(VICE JAPAN / 元54-71 / 以下 川口):どうもー。みなさん、こんばんはー。

一同:え……。

川口:こんばんはー。私も同席していいですか?

一同:あ、はい。どうもー! ENDONです!

川口:かっこいいっすよね…。ENDON……。

一同:ありがとうございます(笑)。

川口:いやいや、本当に。俺的には、ELECTRIC WIZARDとタメ張ってると思う。

一同:(爆)

愛甲:だいぶ呑んでいらっしゃるんですね?

川口:いやいやいや、呑めば呑むほど本気のことしかいいませんよ。ENDONは、みんながやらないことをやってくれている。

(笑)。たしかにENDONは、他の人がやってくれないことをやってくれるイメージがありますね。

横田:ああ。

太一:そういった意味合いで昔から〈Agent〉って言葉を使ってるっていうのはありますね。

川口:すいません、急に現れて。みなさんのお話、聞きたかったので。

いえいえ、どうぞ! それで、何でしたっけ? 愛甲さんが寂しい話(笑)?

愛甲:そうそう。俺は寂しい(笑)。

愛甲さんは、CORNELIUSやWILCO、APHEX TWINなんかも使っているエフェクターのブランド『M.A.S.F.』を運営されてますけど、ENDON加入時には、既に軌道に乗っていたんですか?

愛甲:全然乗ってないですよ。M.A.S.F.を始めたのはバンドに加入してからなんで。最初はENDONもパソコンでやろうとしていたんですけど、、タイちゃんが「俺はそういうの壊す」っていうから。パソコンがステージにあると壊すんだって。それまでMaxとかすげー勉強してたのに(笑)。

太一:あくまでステージに貴重品持って上がるなって意味ですよ (笑) 。

〈Destroy The Machines〉的な意味ではなくて(笑)。

宮部:なんだよ~、俺そっちを期待しちゃったよ(笑)。

愛甲:(笑)。パソコンが使えないなら、自分の楽器をつくろうと。「エフェクターっていうのがあるらしいぞ? 」っていうところから。

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えっ、そこから勉強を始めたんですか?

愛甲:そうですよ。だって僕、Metal Zoneていうジャンルのなかに、ディストーションていう名前の製品があると思っていたくらいなんで。

宮部:でもまあ、間違ってないよ。MetalのZoneにはディストーション入ってるじゃん(笑)。

愛甲:でしょ? そうだよね?

???……。じゃあ、M.A.S.F.も去年で10周年?

愛甲:そうですね。だいたいそれくらい。

太一:ENDONが始まった半年後くらいだもんね。

10年での成長ぶりがすごくないですか?

愛甲:いや、成長してないですよ。停滞ですよ。ずっと続けてるだけなんで。

しかも、M.A.S.F.はENDONのために始めたってことですよね。

愛甲:そうです。

横田:そうだったんだ。

宮部 : 最初は自分の楽器をつくろうとしてたんだよね?

愛甲:そう、それがつくれたから、最初はENDONの名前で売ろうかな? って考えていたの。物販に置いて。でもタイちゃんに「ダセーからやめろ!」っていわれて、M.A.S.F.っていう名前をつけたんですよ。

太一:いいそう(笑)。今は平然と物販に並んでますけどね。売れるなら置こう、みたいな(笑)。

ENDONとM.A.S.F.のドメインが〈figity〉で共通してるのは、その名残なんですか。

愛甲:まあ、名残ですね。あれは単純に、僕が取っちゃって、以降はお金かからないやつだから共用にしてるだけです。

でも今や、世界の著名ミュージシャンが使用するブランドなわけじゃないですか。そうなってくると、労力の比重的にバンドやるのがしんどくなってきませんか?

愛甲:いや~、どうですかね……。やっぱり、バンドをやるために始めたっていうのは、結構デカいです。幸宜に相談したり、試奏の録音とか頼んだりもするし、むしろバンドがなくなると僕は仕事ができなくなっちゃうんですよ。あと家庭の事情でバンドができなさそうだったから、っていうのもあって。バンドと仕事が一緒になってくれないと、堂々とバンドができなかったんですよ。

悦生:うん、いってた、いってた。

愛甲:「ライヴも仕事なんだコノヤロー!」って、いえる状況にするために。

生々しいっすね(笑)。

愛甲:うん(笑)。そもそもの目的はバンドなんですよ。M.A.S.F.は、気付いたら10年続いてただけだから。

ENDON大事ですね。

愛甲:大事です。だから、まだやってます(笑)。

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幸宜さんも、色々なバンドを経験されてダメだったけど、ENDONは10年続けていらっしゃるわけですよね。

宮部:そうですね……。

それはなぜでしょう。ご自身がバンドのコンポーザーだからということもありますよね?

太一:そりゃそうだ(笑)。

愛甲:そうだね、それじゃない?

宮部:うん、それじゃないすかね!(笑)。でも僕、昔は曲を書いてなかったんですよ。他の人が書いた曲を演奏するのがいいな、って。

プレイヤーとして。

宮部:そうそう。でもどうやら、プレイヤーよりも曲を書くほうが楽しいなと。これも気分の話ですね……。

でもそれは、どのバンドにもフィットできなかったから「自分でやるしかない」ということじゃないんですか?

宮部:ああ~。かもしれないですね(笑)。

横田:自分で書かなきゃ納得できなかったってことでしょ。

曲がつくれるからバンドが続けられる。

宮部:でも最初はつくれなかったんですよ。つくりたくもなかったし。ただただ、思い切り演奏することだけがやりたくて。ENDONは元々、即興みたいなバンドだったから入ったんです。

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太一:そうそう。当初、加入の酒を交わしたときには、思い切りギターが弾けるっていうのが大事だったんだよね。

宮部:それをハードコアよりも速いスピードでやりたくて。そういうフリージャズみたいなのがあるのは知っていたんですけど、あんまりかっこいいとは感じられなくて。

太一:当時のノイズバンドとかフリージャズの演奏って、けっこうタルかったよね。

宮部:うん。もっと速いのがやりたかった。

太一:最初の2、3年くらいはその感じで、とにかく集団即興でしたね。

横田:曲はなくて、ただひたすら全力で10分超えの即興をやるだけ、みたいな。

宮部:あの頃はめっちゃ怪我したもんね。

川口:その傷は、その頃できたものですか?

宮部:これは、仕事で溶接のときに焼けただけです(笑)。

幸宜さんけっこう身体使うお仕事なんですよね。

宮部:モロ現場ですよ。

太一さんも完全インダストリアルでハードなお仕事ですよね。

太一:そうですね、完全インダストリアルですね。

普通に、1日終わってからスタジオに行けるような仕事じゃない気がするんですよ。身体的に。

太一:そんなこともないですよ。自分的には。

愛甲:まじ?

横田:スタジオ以外ではダラダラしてるってこと?

太一:あくせく身体的に動いてはいるんだけど、別に気持ちは入れ替わらないから、あくまで地続き。だらしない人なんで。つか、モードが入れ替わるなんてほぼないすよね。その代償に浮き沈みが酷いですけど(笑)。まあ、続けている仕事の居心地が悪かったら異常事態だから、それは辞めたほうがいいですね(笑)。

音楽家には、「音楽に専念しているのがベスト」っていう考え方がありますが、僕は個人的に、仕事を持った上でやっている人の音楽が好きなんです。仕事が音楽にフィードバックされる部分って、少なからずあると。

太一:音楽に対してくらいは、大も小も意に介さない貴族の様な態度で臨みたいと考えることもありますけど、結局は、客観的に見ても労働者の音楽なのかな、と。

宮部さんもそういう感覚、あります?

宮部:まあ、あんまり考えてなかったですよね。

一同:(笑)

でもリスナーとしては、所謂ワーキングクラスの音楽がお好きですよね。

宮部:好きですね。性に合うんですかね、聴いてて。

以前、木こりのフィールドレコーディング作品の話とかしましたし。

宮部:あれ、すごく好きです。だから仕事も鉄工所みたいなのが好きなのかな。仕事の音を聴いてるのが好きなのかもしれないですね。パソコンのポチポチやってる音より、工場でガシャガシャいってる音のなかのほうが安心できる気がする。

川口:ノイバウテン…。

宮部:そうです。

今までのお仕事は、ずっとそういう感じだったんですか?

宮部:いや、全然違いますよ。前は弁当の配達やってましたね。だから、仕事の環境は関係ないのかもしれないですね。

一同:(爆)

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川口:私事で申し訳ないんですけど、俺がENDONをかっこいいと思うのは、〈音〉なんですよ。音がすごく良い。最近のバンドって、みんな〈曲〉でやり過ぎ。でも良い音楽って、曲と音の絶妙なバランスじゃないですか。ENDONは曲も良いし、音とのバランスが素晴らしい。

悦生:嬉しいですね。

横田:でもたしかに、色んなバンドをやってきたけど、このバンドは音のバランスとかに関しては、特別シビアに設定されている気がします。ノイズふたりなので、バランスが悪いと成立して聴こえないというか。メンバーはそれが当たり前だと考えていて、意識していないような気がするんですけど。あと音量がとにかく馬鹿デカい。

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川口:馬鹿デカいなかで音のバランス取るのって究極じゃないですか。

宮部:それがやりたいことなんですよ。音は小さくしたくないからなあ。

川口:そのなかでのバランスって、奇跡ですよ。

愛甲:最初みんなでワーッ! って音出してたら、デカ過ぎてどんどん音が小さく感じるようになるんです。それでやっと、バランスをとれるようになってきたんじゃないかな。

そういう時期もあったんですね。

宮部:ありましたね。誰も自分たちの音が聴こえてないっていう。

悦生:最初は、全員が最大音量でやってた気がします。何もわかってなかったから、単純にツマミ的に上げてただけなんですよね。

宮部:音量自体は今のほうがデカいよね。アンプの量とかも今は倍以上あるし、たぶん音量は3、4倍あるんじゃない? 最初と比べると。

愛甲:最初は本当に蚊の音量でやってたからね。スカムバンドだったもんね。

川口:今回のレコーディングはどこでやったんですか?

宮部:東村山のスタジオです。

川口:ハウススタジオ?

愛甲:普通の貸スタジオです。近所のリハスタで録ったんですよ。

川口:まじすか。ENDONはそんな人たちじゃないでしょ!

一同:いやいやいや(笑)。

川口:今、一緒にやってみたいエンジニアとかいらっしゃいます? 皆さん。

宮部:友達かな……。

川口:……。

愛甲:友達いいよね!

前作の『Through The Mirror』(2017)は、カート・バルー(Kurt Ballou:CONVERGE)が録音しているんですよね。

宮部:僕は英語が喋れないし、カートはノイズ畑の人ではないから、本当はもっとこうしたかったなあ、っていうのはたくさんありましたけど、そのうまくいかない感じも良いなあ、とも感じていました。

太一:うん。そのとき、そのときの大きいファクターを、なるべくそのまま扱って、上手いようにやる知恵みたいなのはあるかもね。コントロールに関する知恵。

愛甲:きっちりつくっていって、レコーディングで変わっちゃう、みたいなのはある。

宮部:レコーディング、マスタリングしていても気が変わり、音を変えたりもしますし。今回の『BOY MEETS GIRL』も、僕は結構Marshallが好きだから、Marshallの音に拘ってつくったつもりだったんですけど、最後のマスタリングのときになんか邪魔だなあ……と。それでMarshallの音を切ってもらったんですよ。

愛甲:すげー時間かけたのにねえ。

宮部:時間をかけても、気が向かなかったらこういうこともあるんだな、っていうくらいの感じで。

「損した~!」 みたいにならないですか?

宮部:うん、ならないですね。とりあえず録音しておいて、最初は拘りがあるんですけど、あんまり必要じゃなかったな、っていうのがよくある。

川口:ちなみにそのときって、Marshallと何を並べてるんですか?

宮部:MarshallとAmpegのベーアンなんですけど。あとラインの音で。今回のアルバムは最終的に、ラインの音と小さくAmpegです。

愛甲:その話だけだったら、全然良い音じゃないよね。

宮部:聴いたら、汚くて良かったんだよね。何かヘバりついてるみたいな音がして、最低だからこれにしようと。

川口:うん、僕決めました。このアンプをもらってほしいんですよ(ゴソゴソ)。これの歪みは本当にヤバいから。SHELLACのボブ・ウェストン(Bob Weston)にもらったんですよ。

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一同:えー(笑)!

川口:何年も音出してないから、もらった意味ないじゃん、と思っていて。そんなのボブに失礼だから、これ持って帰ってください。ENDONが使ったほうがいい。

宮部:音汚いんですか?

川口:めっちゃ汚いよ。昔は通販で売ってたようなやつだから。

愛甲:これ50wだからギターアンプに繋いだほうがいいね。

そういう、電気のこともバンドを始めてから勉強したんですか?

愛甲:そうです。

すごいですね。

宮部:でも先週のライブのときに、「俺のアンプ繋いでおいて!」って頼んだら、電源入れて1発で飛んじゃうような繋ぎ方をしてて。なんか、ケーブルとか余ってるんすよ。「幸宜のはケーブル余るんだね~」っていわれて。余らねーよ!

愛甲:全然わからなかった。わかることしかわからない(笑)。

川口:まぁ、ちょっとこれ、使ってみてくださいよ。

愛甲:これ、えっくん(那倉悦生)にいいんじゃない?

このアンプ、SHELLACは実際に使ってたんですか?

川口:SHELLACはこれを350wに改造して使ってたんです。「日本人は買い占めるから、俺からもらったって絶対に話すなよ」っていわれたんですけど。

愛甲:話しちゃってるじゃないすか(笑)。

宮部:話してるし、あげちゃってる(笑)。

川口:ボブがNEUROSISのリマスターをやる度に「いいね!」ってメールしてるから、大丈夫だよ。

一同:(笑)

来年、ENDONはNEUROSISと共演するんですもんね。

川口:そうなんですね! じゃあ絶対ENDONのほうが良いでしょ。

一同:ありがとうございます(笑)。

川口:すいません、取材の途中に。大石(映像作家:大石規湖)が「絶対気が合いますよ!」っていうから、お会いできるのをたのしみしてたんですよ。では、引っ込みます(笑)。すいませんでした。

一同:とんでもないです!

愛甲:機材も増えたし(笑)。

宮部:よかったね、えっくんだけちょうどヘッド持ってなかったもんね。

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それで……何でしたっけ(笑)。慎さんは先ほど、音と曲のバランスについて客観的にお話されていましたけど、過去に慎さんが経験したバンドとENDONが決定的に違う部分を教えていただけますか??

横田:全部が違う……編制から何から。全部違いますね。

太一:編制以外は何が違うんですか?

横田:とにかくフツーのバンドの常識とは全てが違う。

愛甲:へえ~。

太一:ほかのバンドはもっと、どんな感じなんですか?

愛甲:ちゃんとしてる?

横田:他のバンドは、良くも悪くもなんですけど、バンドをずっとやってきたような、いわゆる〈バンドマン〉っぽい人が4、5人集まっている感じなんです。ENDONは、さっきの太郎の話とかを聞いてても、やっぱりバンドをやっている理由が、普通のバンドにいる人とは異なるような気がします。だからどうって話ではないんですけど、新鮮でもあり、不思議でもあり。何でそんなバンドを10年続けてるのかも、よくわからないくらい。バンドをやっているっていう感覚とは別の何か、呑み友達くらい違う、別の繋がりのような感じがしますね。

以前だと、バンドはバンドの繋がりっていう感じだったんですか。

横田:そうですね、うん。上手くはいえないんですけど。とにかく不思議です。

一同:(笑)

ENDONを仮に職場として考えたときに、仕事仕事してる感じでもないですよね。

太一:実際お金にはなってないから、仕事とはいえないですよね。

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いえいえ、そういう意味ではなくて。

太一:ああ、タスクっていう意味で。

そうそう。嫌々やるものでもないですよね。

横田:そうですね、そういう感じでもないです。

幸宜さんの好きな音楽で言うと、CRASSとかもそういうイメージがあります。

宮部:うん。音楽以外の人たちもいますしね。

そうそう。様々な種類の人たちが自然と集まって、〈バンド〉という形をつくっているような。幸宜さんに関していえば、やっぱりそういう感じが好きだったんですかね?(笑)。

宮部:そうですね(笑)。なんとなく集まったりしてやるもんだと思ってたのかな。

メン募とかしなそうですもんね(笑)。

宮部:それが、昔はしたんですよ。そしたら、慎さんと島野が来たんですよ。

横田:(笑)。

愛甲:それメン募だったの? ヤバいね(笑)。

宮部:だって東京出てきて……。

愛甲:そっか。何もわからないもんね。

宮部:わからないし、とりあえずバンドやりたかったんだけど、その頃、近くにいる人は嫌だったんだよ。でもそれで慎さんと出会ったんだから、メン募、使えたっすね。ちゃんと機能した。ウェブサイトのメン募だったんですけど、ISISとか、THE DILLINGER ESCAPE PLANとか、それこそCONVERGEとか、書いて……。

愛甲:17歳のガキが、そう書いて募集したわけね。

うん、10代っぽいですね(笑)。

宮部:10代っぽいですよ(笑)。

太一:入らないわ、そのバンド(笑)。

(笑)。今は全然、そういうことしなそうですよね。

宮部:そうですね。

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悦生さんがこのバンドを続けている理由って何ですか?

悦生:僕は元々、高校生のときにハードコアバンドでヴォーカルをやっていたんですよ。だから、ずっとフツーにバンドはやりたかったんです。兄貴と3人でヘンなパワエレはやってたんですけど、元々歌っていたので、バックでBGMをやっているような気分もあって。もっとバンドバンドしていて、フロントにいられるようなのがやりたかったっていうのはあります。ENDONではそういう欲望が実現されている感じですかね。

たしかに、5人が5人、全員がフロントにいるイメージはあります。そういうのもバンドとしては珍しいですよね。

太一:そうですね。どんなバンドでも、名前も顔もわからない、全く光が当たってない人がよくいますよね。

愛甲:僕それじゃない?

太一:比較的そうだけど、でも、まあ、知れてるよ(笑)。タローくん、著名だよ(笑)。

〈全員輝く〉とか〈Everybody's a Winner〉的な発想ではないですよね? バンドとして。

太一:みんな、なんだかんだ目立ちたいんじゃないすかね。

悦生:〈みんなが主役〉みたいなコンセプトを共有してるってことはないですね。

太一:それいってたらすごいよね。〈一億総活躍社会〉って刺青入れて(笑)。

でもまあ、いるんじゃないですか? たぶん。そういうPC的なバンドも。

太一:コンセプトとして掲げると、下品だし、色々なことが矛盾することになりそうですよね。バンドって、公平じゃないことっていっぱいあるだろうから。才覚も違うし。でも僕らは、サオとタイコとヴォーカルで生む調べと、見た目で勝負するバンドと比べたら、フロントにいるという感覚を自分の才覚でなんとか出来る余白はあるのかもしれないですね、やっぱり。そこは、けっこうわざとらしく拡張してきた部分というか。何でも投げ込めるようにはしておいた。ENDONというポケットに。

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以前もお話しましたけど、〈ノイズ〉って、必要のないものを指すじゃないですか。

太一:社会学的な定義の話ですか。〈排除されるべき対象〉っていう。

そうそう。ノイズを前面に用いることによって、そういう視点自体をバンドの方法論で破壊するという意味合いは、ENDONには込められてるんですか?

悦生:言葉で概念としてのノイズを定義すると、やっぱり排除の対象、弱者、被差別者という意味性があるのでしょうが、そうした〈普通は端に隠すか、消去されるもの〉を光の当たる場所や、中心に持ってきてキャッキャいってる、普通はしないことをしてる、という理由で「面白いんだ!」みたいなノリはちょっと古いと思います。そういうのはもう、大前提。僕らの場合はあったらいいな、って鳴らしたい音を鳴らしてるから。それがノイジーな音響だった、っていう〈現象〉とか〈出来事〉の類だと。

なるほど。ENDONのコピーに『エクストリーム・ミュージックの決定的な更新を目論む』っていうのがあるじゃないですか。

太一:ありますね、けっこう昔から使ってるやつです。

〈エクストリーム・ミュージック〉自体がすでにエクストリームではない現在においても、ENDONに限っては、その内容も確かなことではありますよね。でも、普段何気なく太一さんと話していると、エクストリーム・ミュージックのみならず、非常にアブストラクトにいえば、アートの扱い方を更新しようとしているとも。

太一:エクストリーム・ミュージックは、アートっぽい場所に着地しやすいんですよ。源流にはイタリア未来派の美学が流れてるわけですし。まあ、とにかくそういう欲はあって、どう置くのが良いかみたいなことはよく考えます。どう売るか、みたいな意味ではなくて。それに対する触角の向き方が、さっきの幸宜がいうような〈気分〉だと。本当にただの〈気分〉なわけではなくて、やっぱり何かを読むでしょ。それはある。何が良くて、何が悪いか。気分って、知らずにそうじゃないですか。それを全体的に捉えてるわけで。まあ、ただ居心地が悪いからとにかく移動したい、っていう場合もあるかもしれないですけどね。昔はけっこうそういう気分の内実についての話しをしたね……。

宮部:したね。

太一:アートだなんだ、難しい話もよくしたけど、最近はもうそんな話あまりしない。する必要がないっていうか。友達っていうか、周りにいてほしくない人とはバンドやれないですからね。「わかるでしょ?」みたいなのはある。昔はバンドをつくってる途中だったから、これ好き、これ嫌い、とか、デュシャンの話とかしたけど。あれは必要だったのかな? 今は、新しいものについての話をすると、なんか僕はよくわからなくなっちゃう。自分たちが抱えてるものをどうにかしなきゃいけないから。でもまあ、さっきいったようなものにカブれた、っていうのは多いにありますよ。真っ黒いTシャツだけを着て、うるさい音楽しか聴かないバンドマンになりたいなんて思ったことは1度もありません。ダセーつか、通り越して気持悪い。

ココは使うのやめておこう(笑)。

太一:いや、いいですよ(笑)。僕がなりたかったかどうかの話ですから。

それから、ポケットに入っているもののひとつとして、秀でた文筆家としての悦生さんがいらっしゃいます。それ1本でやっていく道もありますよね?

愛甲:あるね…。

悦生:そうですね…なくはないんですけど、自分の可能性、選択肢のなかにはあんまりないですね。それはできないだろうな、っていう感じです。バンドをやめたら、たぶん、文章を一生懸命書くとか、そういうもの一般への興味がなくなるんじゃないかな……。なってみないとわからないですけど。予感ですね。

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う~ん……。

太一:救いようのないバンドですね…。バンドをやることによって、生きながら死んでる感じになっちゃってる(笑)。ゾンビですね。

愛甲:僕はポジティヴだよ!

太一:ゾンビにポジティヴもネガティヴもないっしょ!(笑)。

でもそれは、とてもオールドスクールにいえば、バンドに賭けてるってことですよね。

悦生:そうですね、オールドスクールにいえばそうなるでしょう。でも、賭けてるっていうポジティヴないい方じゃなくて、もし最悪、バンドがなくなった状態を考えたら、やめちゃいそうだな、っていう感じなんですけど……。

ENDONに悦生さんの文章が含まれているというよりも、文章を書く環境がバンドになっているという感じですか。

悦生:はい。物理的な環境ではなくて。書くことに、気持ち良いから嫌なことを忘れられるっていう自浄作用は全くないので。よっぽど余裕がないと書けない。バンドが問題なく存在し続けていて、プライベートの問題もなく、心身ともに健康な……(笑)、そういう余裕もあるときに書けるっていう感じです。

なんか辛いですね……。

一同:(笑)

悦生:もし、書く夢の負荷が大きかったら、そのほうが辛いと思います。たぶん。文章を書くことにもっと憧れていたら、そっちが上手くいかない不全感で、またダメになるでしょうし。それ単独で独立して持っている〈やりたいこと〉、〈夢〉っていう感じはあんまりないです。

う~ん…書くこと自体は、好きですか?

悦生:調子が良いときに、調子良いのが書けるといいんですけど、ダメなときに、ちょっとやってみるか、みたいな感じでやると、本当に酷いものが出てきて、やらなきゃよかった……っていうことはすごくよくあります。

……聞いていたら、本当に辛くなってしまった。

一同:(笑)

世のなかには、書くのが好きで好きでたまらん人々もいるわけじゃないですか。

悦生:いますよね。僕は全然違います。

太一:地獄の窯が開いた音がしたね(笑)。

ENDONは好きでやっていて、そのおかげでいくばくかの余裕ができる、っていうことですよね。

悦生:おそらくそういうことでしょうね。正直、現況と違う状態で自分が何をしているか、全くわかりませんし、そういうことを考えることがないです…。

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ENDON、頼む……。もはや生きる理由みたいになってますよね。だから、その切り口でエクストリームに突き詰めると、音楽をやらなくなっても存在している状態のENDONも考えられそうです。ENDONに限ってはそんなことないでしょうけど。

太一:……居酒屋をやる、とか。

一同:(笑)

太一:それはよくツアーの車のなかで暇つぶしに話しました。その場合も、幸宜がつくって、俺が給仕するという(笑)。

愛甲:僕は金の計算して……まじ(笑)?

太一:まあ、合理的に考えて、ないでしょうね。音楽をつくって出していく以外に、この5人でわざわざ顔を合わせるっていうのは、ENDONの同窓会以外にはないんじゃないですか?(笑)。一番合理的なのは、やっぱりこれをやることなんですよ。僕が思う頭が良い人ベスト4でツルんでるから、「会社起こそう!」みたいなのも、全然ない。そんなの。それは互いにそう。

うん、そうですよね。でも、集合体としてのENDONが、今後どうなっていくのかは気になります。

愛甲:みんなけっこう、同じ方向は見てないからね。

太一:手のひら見てる人もいれば、譜面を見てる人もいるし、遠く見てる人もいるし、それくらい遠近法的な焦点は違うから。俺が願うのは、死なないってこと。死なないの大事。死なない、怪我しない、病気しない(笑)。

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横田:昔は逆のこといってたのにね(笑)。

太一:危険に気づいて願うようにしたの(笑)。

太一さん、音楽が消失した状態のことと合わせて、よくいってますよね。

愛甲:そういうことよくいうのヤメテ! 恥ずかしいから(笑)。

太一:すいません(笑)。でもまあそういう感じはあるよ、やっぱり。他の人から客観的にジャッジされたら何ともいえないセリフになっちゃいますけど。音楽をやるっていうことなのか、聴くっていうことなのか、僕はけっこう境目がない感じで。聴いてるときにもう、イメージの声が出てるんですよ(笑)。だから、実際やろうとしたときに、できないことが多い。身体の限界を知るわけですよね。そうなると、ループのように、またさっきみたいに健康を願ってしまう(笑)。できなくなるっていうことも含めて、やっぱり叫ぶヤツやりたいんで。喉が壊れなきゃいいな、って。あとは、バンドが続けばいいな。少なくとも、今終わるのは良くない。まだやれることがあると思う。

愛甲:短期目標はあるけど、長期目標はないからなあ。

太一:長期目標はなかなかねえ。

宮部:考えたことなかったなあ。

太一:イメージとしてデカいものにしたいっていうのはありますけどね。デカいっていうのは、容積として。ただし、意識的に柱とする主張がなく、デザインだけというか。何かしらのデザインの複合体として、なるべく大きい固有名詞になればいいな、と考えながらやってきたので。かつ、曲と音が最も高位に置いてある。それ以外は、あくまで出来た音楽のイメージでもあるので。そこの相乗効果はもはや、10年もやってると、卵が先か、ヒヨコが先か、の問題で、どこからどこまでが音でイメージなのかわからないところもあるんですけど。

横田:目標みたいな話でいうと、音楽をつくる、っていう認識くらいしかないです。やっぱり、良い曲をつくって演奏するのが目標なんですよ。その先にどうなりたいとか、そういうのはあんまり考えてないです。音楽は音楽でしかないので、ライフスタイルとかと音楽を結び付ける話もあまりピンとこなくて。それが自然に音に滲み出るとかって話なら、まあ、わかるんですけど。ENDONは普通のバンド編成ではないので、既存のものとは違って、かつメンバー全員が納得して楽しめる音楽をつくるっていうのが、目標だとしか思ってないです。音楽をやるってことだから、普通、そうじゃないとおかしいんじゃないかな。

太一:それはそうだよね。間違いないです。