弾道ミサイル警報システムアプリ〈JMWS〉

FYI.

This story is over 5 years old.

弾道ミサイル警報システムアプリ〈JMWS〉

アプリケーション開発会社〈Meta Studios Creative Agency〉が、ミサイル警報システムアプリ〈JMWS〉を開発中だ。このアプリは、Jアラート発動以降、私たちが取るべき行動と様々な情報をシンプルかつ的確に教えてくれる。避難場所、大切な人の安否確認、緊急ラジオ放送などの機能がひとつにまとまり、備わっているのだ。

弾道ミサイルが日本に向かって飛来した場合、〈全国瞬時警報システム(Jアラート)〉によって、緊急情報が国民に伝達される。それを確認した私たちは、安全を求めて避難を開始する。もちろんそのためには、自宅及び勤務地近辺の避難場所を、事前に知っておく必要がある。しかし、土地勘がない出先ではいったいどうすればいいのか? 瞬時を争う事態に私たちはどこに避難したらいいのか? そして、そのあとの行動は?

そんなときこそ、的確で、簡単に入手できるガイダンスが欲しい。となれば、やはりスマートフォンが便利だろう。早速〈App Store〉で検索すると、いくつかの〈防災アプリ〉がヒットした。しかし、弾道ミサイルに特化したアプリはひとつもなかった。Jアラートが鳴ったあと、何個かのアプリを立ち上げ、ひとスクロールもふたスクロールもしなければ、安全な場所にも避難できないし、家族の安否も確認できない。国からの大事な情報も入手できないのが現実なのだ。切羽詰まった状況のなか、そんな時間なんて、もちろんない。

Advertisement

アプリケーション開発会社〈Meta Studios Creative Agency〉が、このような問題に応えようとしている。米国人のギリェルモ・アラーコン(Guillermo Alarcon)が創設したこの会社は、ミサイル警報システムアプリ〈Japan Missile Warning System(以下:JMWS)〉を開発中だ。このアプリは、Jアラート発動以降、私たちが取るべき行動と様々な情報をシンプルかつ的確に教えてくれる。避難場所、大切な人の安否確認、緊急ラジオ放送などの機能がひとつにまとまり、備わっているのだ。

現在、彼らは、アプリの実用化を目指し、クラウドファンディングサービス〈Kickstarter〉で、資金を募っている。ギリェルモ・アラーコンに話を訊いた。

§

アプリ開発のきっかけを教えてください。

弾道ミサイルに特化したアプリがなかったからです。Jアラートが鳴ったとしてても、そのあとの行動に対して役立つアプリはありませんでした。自分たちも危機感を感じていたので、これは自ら開発するしかない、と考えました。既に、このようなアプリがあれば、着手していなかったでしょう。

日本に来られてどれくらいなんですか?

まだ半年くらいです。

やはり、日本の現状は怖いですか?

もちろんです。既に北海道の沖に着弾しているのですから。これは紛れもない事実です。また、外国人からすると、Jアラートを受け取っても、どこに逃げたらいいのかわかならい。Jアラートから避難場所の情報は得ることはできません。〈ミサイル発射 ミサイル発射 北朝鮮からミサイルが発射された模様です。建物の中、又は地下に避難してください〉というアラートを見ても、どこにいったらいいのかわからない。どこにあるのかもわからない。このような場面では、さらに危機感を煽られてしまいます。

来日前は、このような状況を予想していましたか?

想像もしていませんでした。しかし、ミサイルが数発着弾したときに、これは現実なんだ、と強く実感しました。専門家のみなさまは、「北朝鮮が日本を標的にすることはありえない」とおっしゃっていますが、北朝鮮の技術者がミスし、ミサイルが飛行途中で日本の本土に着弾してしまう可能性が無いとはいい切れません。大惨事どころか戦争が始まってしまうかもしれません。想像すると、やはり大きな恐怖です。

具体的にアプリの内容をお訊きしていきたいのですが、開発するにあたり、最初に何を重視しましたか?

ユーザー・エクスペリエンスです。どのような機能が利用者の役に立つか? 最悪な事態になった場合、迅速に何ができるだろうか? という部分です。

それでは順を追って教えてください。ミサイル飛んできました。このアプリは、どのように作動するのでしょう?

まずは、メッセージが画面に表示されます。「安全を確保できましたか?」という問いに対して、〈YES〉〈NO〉を選択するボタンが表示されます。ご家族、お知り合いもアプリをインストールしていなければなりませんが、ボタンをタップすれば安否の確認が取れます。そのあとに、避難所マップ、そして現在地の共有という機能に移ります。

このアプリに登録されている避難場所は、どうやって集めたんですか?各都道府県は、公式避難場所の情報を発表しています。それをデータベースに格納し、アクセスできるようにしています。

公式避難場所以外の新しい情報を載せる予定はないんですか?

Advertisement

正直申しまして、独自で探した避難場所を載せるのはリスクが高いです。その情報は本当に正しいのか? 本当に安全なのか? 私たちでは勝手に決められません。みなさんの安全を奪ってしまうかもしれないとなると、現在の状況で載せられるのは公式の避難場所、という判断になります。もちろん、今後のアイディアとして、地下駐車場情報などを集め、カテゴリ分けしたうえで表示する可能性もあり得るでしょう。その際、マップ上で色分けして、公式避難所は赤色、地下駐車場は黄色、あと、病院とかコンビニなどの情報も載せたいですね。

ただ、実際に有事になった場合、おそらくパニック状態になるでしょう。私たちで「ああした方がいい」「こうした方がいい」と詳細な情報を提供しても、どこまでみなさんの助けになるかわからない。開発中は、そのポイントに苦しみました。ですから、まず、安全か否かの確認、そして〈避難場所の表示〉、〈そこまでのルート〉を、パニック状態を切り抜ける初期ステップとして提案しています。

家族の安全を確認し、避難場所にも逃げられました。それ以降は、どのようなことができるのですか?

RSSのニュースを確認できます。リアルタイムの情報を集約しますので、最新情報を取得できます。また、ラジオにもアクセスできるようになっています。日本語での緊急生放送システムと、英語での米国太平洋軍ネットワークラジオです。

それ以外の機能としては、チャットをしたり、待ち合わせをする場合の位置共有ができます。また、使わないで済めばいいんですが、〈行方不明者捜索機能〉というのもありまして、行方がわからない身内、知人の消息が途絶えた場所をGPSが記録し、捜索範囲を絞る機能もあります。あとは、FacebookやTwitterとの連携、電波塔が壊れてWi-Fiが使えなくなった場合のためにBluetoothのチャット機能もついています。また、〈内閣官房 国民保護ポータルサイト〉が発行しているPDFのマニュアルもダウンロードできます。このマニュアルは、いつでも閲覧できる状況にしておきたかったんです。というのも、以前、Jアラートが鳴ったとき、国民保護ポータルサイトにアクセスが集中して、サーバーがダウンしてしまったらしいんです。いちばん大事なときにアクセスできないのでは、どうしようもありません。このアプリで先にダウンロードしておけば、必要なときにすぐ確認できるのです。

現在あなた方は、〈Kickstarter〉で、資金を募っていますが、集まったお金は、どのように使われるのですか?

現状、公的機関からのサポートがないので、開発、サーバー維持を含むランニングコストに使わせていただければ幸いです。やはりこういうアプリは、フリーであるべきですし、そうしたいです。ただそれには、国のサポートがどうしても必要です。資金も含めて国からサポートしていただきたかったんですが、そうなりそうもありません。開発費とサーバーの維持費を計算すると、残念ながらリリースできなくなってしまいます。ですから、みなさまからの出資を募っています。

国に対して、サポートの要請はしたのですか?

はい。実はとある国会議員さんとお話させていただき、官房でミーティングができるところまで話は進んでいたのですが、衆議院が解散したので止まってしまいました。

衆議院解散が決まったときはどう感じられましたか?

みんなに求められているアプリを開発している自負もありましたし、その議員さんが唯一の窓口でもあったので、正直、少しナーバスになりました。

Advertisement

その国会議員の方は、今回の衆議院選挙で再選しましたか?

はい、当選しました。ただ、また最初からやり直し、というわけではないのですが、もう少し時間がかかってしまいそうです。米朝のやりとりは加熱していますし、状況が状況だけに、早くリリースしなければ、という気持ちがありましたので、クラウドファンディングを決めました。

国からのサポートがあった場合、資金面以外のメリットはあったのでしょうか?

〈Lアラート(災害情報共有システム)〉のライセンスの部分ですね。Lアラートの〈L〉は、〈Local〉という意味なのですが、Jアラートは、Lアラートを経由して配信されるんです。Lアラートの情報を扱うライセンスがないと、Jアラートの配信はできません。このライセンスは、テレビ事業者、ラジオ事業者、インターネット事業者、携帯電話事業者などが持っています。ある程度大きな会社で、天気予報や地震情報などを誤りなく流した実績が必要です。実績がない会社だと、誤情報があったり、その情報に負荷がかかってしまう、という説明がありました。ですから、国からのサポートがあれば、このライセンスの部分もクリアできると考えていたんです。

それでは、今ミサイルが飛んできても、このアプリでは、Jアラートは作動しないと?

はい。アラート発報機能は実装できません。ライセンスを取得できたら、アップデートで、アラート機能を実装できるようにする予定です。

クラウドファンディングで集まった資金で、Jアラート機能の実装は難しいのでしょうか?

お金の問題ではありません。ただ、例えば、J-COMさんとか、既にライセンスを持っている会社とタイアップをして、何らかのかたちでのリリースは可能かもしれません。ただ、先ほども申しました通り、待っている時間はないでしょう。ライセンスを取得するよりも、アプリのリリースを急ぐべきだ、と判断しました。

国からのサポートは、もう考えてらっしゃらない?

政府に対応していただけるスピードにもよります。審査や調査などに時間をかけていられません。こちらはこちらで進めながら、政府からのサポートがなくてもリリースする予定です。他の会社とのタイアップもできず、アラートの資格が取得できなくても、他の機能は活用できますので、それ以外の部分で進めていくつもりです。また、先日〈テックインアジア東京2017〉というカンファレンスに、ブースを出展しまして、たくさんの投資をされている会社、個人投資家のみなさまと話をしました。興味を持ってくださる相手もいたので、他の方途も同時に想定しています。ただ、マネタイズの話になると、ほとんどの投資家のみなさまは、「これは国が開発すべきアプリケーションだろう」とおっしゃっていました。やはり、その通りでしょうし、それが私たちの最初のヴィジョンでした。でも、現状をみると、私たちでつくらないといけない。とにかく今は、早くリリースしなければ、と思っています。

Kickstarter:JMWSのページはこちら