Advertisement
LGBTQ

エレン・ペイジとイアン・ダニエルが語る、世界におけるホモフォビアと希望

女優のエレン・ペイジと彼女の親友、イアン・ダニエルが、世界各地のゲイカルチャーを追う『ゲイケーション ―世界のLGBTQ事情―』。Vice on Huluでの配信を記念して、米国での番組放送開始時のインタビューを公開。

by Jamie Lee Curtis Taete
30 August 2019, 9:45am

エレン・ペイジとイアン・ダニエルは、『ゲイケーション ―世界のLGBTQ事情―』で世界各地を巡り、現地のLGBTを取り巻く状況を伝えてきた。日本、ブラジル、ジャマイカ、カナダ、米国のLGBTコミュニティで、それぞれのカルチャーに触れたふたりに話を聞いた。

ふたりは知り合って何年ですか?
エレン・ペイジ(以下エレン):今年で8年です。


ふたりにとって、この番組に出演する意義とは?
エレン:まず、私は旅行番組が大好きなんです。LGBTコミュニティのメンバーが旅行をするさい、彼らにとって危険かもしれない地域にいくときには、注意すべきことがたくさんあります。それから、世界のさまざまな場所で、同性愛者であることの意味を探り、彼らと話がしたかった。特に、もっとも弱い立場にあり、彼らが置かれている現状や物の見方、意見をシェアする機会が少ないひとたちと。それが私にとって重要だと思ったんです。

そのようなコミュニティを撮影するのは大変でしたか? 私は1シーズンを1日で一気に観たんですが、観終わる頃にはかなりぐったりしていました。彼らが抱える困難や問題があまりにも多くて…。それを直接目にするのはつらくありませんでした?
エレン:もちろん、私もつらかったです。でも、今まででいちばん勇気づけられた瞬間にも立ち会いました。ジャマイカ初のプライドパレードは、自分が立ち会えることが信じられないような体験でしたし、その場にいるのも恐れ多いくらいでした。もちろん、あまりにも衝撃的で目を背けたくなるような瞬間もありました。この番組で得たものは、勇気に満ち溢れた、すばらしいひとたちとの出会いです。こういうひとたちと直接話ができる機会に恵まれることは、滅多にありません。とても感動的な瞬間でした。心が痛むこともありますが、実際に問題に立ち向かっているのは私たちじゃない。私たちが出会ったひとびとは、毎日の生活のなかで想像を絶するような障壁に立ち向かっている。イアンと私はそういう風に考えています。


実際に現地を訪ねて、彼らが直面している現実に驚きましたか? それとも、この番組をつくるうえで想定していたことなんでしょうか?
イアン・ダニエル(以下イアン):こういう番組にはバランスが求められます。楽しくて、感動的で、勇気を与えられて、リアルで、誠実なものでないと。だから総合的に考えると、僕たちは、抑圧され、社会から見放されたひとびと、苦しい生活を送るひとびとに会いにいくことになる。それから自らの性的指向をカミングアウトしている、誇りを持ったひとびとや、自国で闘うアクティビストも。ですが、そういうひとに会うことを想定していたとしても、その場で起きることに心の準備をしておくことはできません。実際にジャマイカのホームレスの若者に会って、彼らの生活環境や傷跡、いまだに身体に撃ちこまれたままの銃弾、木造の掘っ建て小屋に火をつけられたあと屋根代わりになっている防水シートなどを直接目の当たりにする、そのための心の準備なんてできるはずがないんです。面と向かっての対話で何が起きるのかを、完璧に予想できるひとなんていません。でも、こういうことに対して〈難しい〉という言葉は、使いたくありません。僕たちにとって〈光栄〉というべきかな。あなたたちの場所に僕たちを招き入れてくれて本当にありがとう、って。社会から見放され、弱い立場に置かれている彼らは、カメラに映ったり、僕たちに会うことで、さらに危険に晒されるかもしれないのに。

米国のエピソードにも、観ていてかなりつらいシーンがありました。LGBTの権利について、近年大きな進展があったのは確かですが、同時にヘイトクライムが増加し、トランスジェンダーが公共トイレを使用する権利を制限しようとした州もありました。米国が前進すると同時に後退しているのはなぜだと思いますか?
エレン:LGBTにとって重要な節目となった、最高裁判所が同性婚を認めたのもつい最近の出来事で、それに不満を持つ国民が一定数います。彼らはあらゆる手段を使ってこのような流れを阻止しようとしているんです。
イアン:別の見方をすると、時代とともに変化することを嫌うひとは、どの国にもいます。彼らは国全体の状況や国民が感じていることを直視しようとしない。でも、大半のひとは、「もっと心を開き、愛情を持ち、素直に受け入れよう」って考えているんじゃないかな。

時代とともに変化しようとしないひとといえば、エレンはこの番組の撮影中にテッド・クルーズ上院議員と言い合いになりましたね。議員はかなりトンチンカンなことをいっていました。
エレン:そうですね。多くのひとが聞いていましたが、誰もこの議論を完全に理解してなかったと思います。「バカだな」と思っただけかもしれない。彼らは、ホモフォビア、トランスフォビア、人種差別、ゼノフォビア(外国人嫌悪)に何の注意も払わない。私たちの社会にはそういう空気が蔓延していて、本当に破滅的な状況です。
イアン:こういうイメージや言葉は、長年メディアで取り上げられ、後押しされてきました。それが社会に、そして僕たちの考えかたに、悪影響を及ぼしているんです。自分たちが暮らす町で苦労している子どもたちや、米国に馴染もうと必死なマイノリティにも。こういったイメージや言葉の影響は、僕たちが気づかないうちに、恐ろしい勢いで広まっていく。僕たちが何もせずにただ傍観しているあいだに、無意識にメディアからそういうイメージや言葉を取りこんでいる。とても危険なことだと思います。この番組がそういうものへの反論になれば、と願っています。

インタビュー内容は編集しています。

『ゲイケーション ―世界のLGBTQ事情―』は、現在Vice on Huluで配信中。