Tsukiji fish market

市場移転後も築地を支える若者たち

築地市場移転後も築地場外市場はそのままの形で残り続ける。築地場外の海鮮丼店『築次郎』の店主、佐藤正太郎氏に築地について話を訊いた。平成生まれの若き店主は築地にどのような想いを抱いているのだろうか。

by Photos by Yasuhito Yamaguchi Text by Kuwa Kuwat
09 October 2018, 1:20am

2018年10月6日をもって、築地市場は83年の歴史に幕を下ろした。10月11日に、場内市場は豊洲に移転するが、場外市場は現在地にそのままの形で残り続ける。場外市場は、プロの料理人だけでなく、一般客も気軽に買い物を楽しめる観光スポットとして、訪日外国人からも人気が高い。2016年にプレオープンした築地魚河岸も、今年10月に正式オープンし、市場移転後も築地と海産物の歴史は続いていく。

築地場外市場に店舗を構える海鮮丼店『築次郎』は2017年4月にオープンした。店を切り盛りするのは、平成生まれ築地育ちの佐藤三兄弟と、母親を含めた数名の従業員だ。三兄弟の長男であり『築次郎』の店主を務める、佐藤正太郎氏は築地市場最終日に「やっぱりさびしいですよ」とこぼした。生粋の築地っ子であり、平成生まれの若き店主は、市場移転後の新たな築地の幕開けに何を感じているのだろうか。

ついに築地市場が移転してしまいますね。

単純にさびしいですね。

市場移転について何か意見はありましたか?

僕は賛成も反対もありませんでした。豊洲市場の、土壌汚染や地盤沈下問題もありますし、心配ではありましたけど、魚にとっては豊洲市場のほうがいいんじゃないですかね。今までと違って、魚も出しっ放しではないですし、エアコンも効かせられますから、魚の鮮度は高い状態で保たれるのではないでしょうか。でも、豊洲市場は市場という感じがしません(笑)。市場というより、物流センターと呼んだほうが近いイメージがありますね。観光客のかたは、豊洲市場を見ても面白くないでしょうし、これからも多くのかたが築地に足を運ぶと予想しています。やはり、市場は築地に残すべきだったのかもしれないですよね。

市場移転は仕事に影響しますか?

影響はありますね。今までは、魚屋さんが毎朝6時に魚を届けてくれましたが、市場移転後は8時、9時になってしまうかもしれないんです。市場移転後も店の営業時間は変更したくありませんので、これからは豊洲市場までバイクで通うことになりそうです。

築地場外に『築次郎』がオープンしたのは、2017年ですよね。市場移転で不安は感じませんでしたか?

正直、今だって不安ですよ(笑)。市場移転後、お客さんの流れがどう変わるのか読めない部分はありますからね。市場移転が決まってから、うちの近辺だけでも、5軒は閉店したお店があります。だんだん物販も売れなくなっているうえに、市場移転ですから、不安は感じてしまいます。

それでも、新たに築地場外に出店されたのはどうしてですか?

何を考えてたんでしょうね。まあ、何とかなると思ってました(笑)。築地は海外でも注目されていますし、これからもお店同士で団結して、盛り上げていきたいですよね。

築地以外の場所で飲食店をやる気にはなりませんでしたか?

最初から築地でやらないと意味がないと思ってました。僕たちは魚を扱った商売をしています。魚といえば築地、築地といえば魚。やはり、美味しい魚は築地で食べてもらいたいですし、何より自分が生まれ育った町ですから、そこは強く意識しています。

『築次郎』では平成生まれの三兄弟が働いています。他の飲食店や市場にも若者は多いですか?

他のお店にも若い人はいますが、ほとんどアルバイトですね。お店を経営する若者は少ないですし、市場でも20代はなかなかいませんよ。これからも築地から若者は減ってしまうでしょうし、若い僕らからフレンドリーさを感じてもらえたら嬉しいですね。

正太郎さんは、築地の小学校、中学校に通っていたんですよね。同級生で飲食店や市場で働かれているかたはいないんですか?

僕の同級生だと2、3人なので、若者は本当に珍しいんですよ。築地には、地元文化が根付いていますし、取っ付きにくい町ではありますからね。これから築地を盛り上げていくには、若いエネルギーが必要なんですけど、全然足りないんですよね(笑)。市場移転後も場外をもっと魅力的にしたいという気持ちは強いです。

具体的に場外を魅力的にするアイディアはあるんですか?

どうしても、築地は朝の町というイメージが強いですよね。そのイメージを変えるために、これからは夜もお店を営業していく方針です。うちだけではなく、飲食店は全体的に夜も盛り上げようという、雰囲気になっていますね。築地を新宿や渋谷のように、眠らない町にするんです(笑)。あとは、魚を使ったイベントもやりたいと考えているんですよ。今は若者の魚離れといわれています。魚は調理するのも面倒くさいし、スーパーでも魚を売り場は狭くなっていて、水産業界は下火なんですよ。だから、僕たち飲食業の人間が魚を調理して振舞って、本当の魚の美味しさを伝えたいですね。

これからの築地がどうなることを望んでいますか?

今までのように世界の人が知っている、築地であり続けてほしいです。観光客のかたに限らず、東京に住んでいるかたが、新宿や渋谷に行く感覚で美味しいものを食べに足を運んでくれたら嬉しいですね。一番美味しい魚は築地に揃っていますから。

市場が移転したら、場外も移転すると勘違いしてるかたが、とても多いんです。うちに来るお客さんからも「そろそろ豊洲に移転するんでしょう?」と訊かれたりするので、場外は移転しないということが伝わってないのがとても悔しいです。ですので「場外は移転しない」と声を大にしていいたいですね。

築地で生まれ育って良かったと感じることはありますか?

美味しいご飯を食べているときと、義理人情に触れた時ですかね。築地の人ってクセが強いんですけど、頑張っている若手を応援してくれるんです。地域の絆も強いですし、それだけでも築地で生まれて良かったですよね。

これから築地を支えていくために、正太郎さんたち若者ができることは何でしょうか?

今まで通りでいることですかね。僕たちの役割は、美味しい魚をお客さんに食べてもらって、築地と魚の良さを伝えていくことではないでしょうか。

築次郎
東京都中央区築地4-12-6
営業時間:(月)~(土) 6:30~15:00 (日) 8:30~15:00
電話番号:03-6278-7753