新たなタトゥーで再誕する 元ギャングと人種差別主義者

〈リダンプション・インク〉は、人種差別、ギャングにまつわるタトゥーを除去する非営利団体だ。活動理念に賛同する世界中のパーラーを集め、そのネットワークを築こうとしている。「このサービスを、タトゥー・ショップ間の協定にしたいんです。まずは国内で広め、そのうち海外にも展開したいです」

by Luke Winkie; illustrated by Lia Kantrowitz
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24 November 2017, 9:01am

デイヴ・カトリップ (Dave Cutlip)は、世間のタトゥー・アーティストの例に漏れず、何らかの〈憎悪〉に苛まれた顧客には決して施術しない。彼のモラルに反するだけでなく、良い商売にもならない。〈汚れ仕事〉は、ガレージや刑務所のアマチュア・アーティストに委ねる。それが〈憎悪〉に対する彼の抗議でもあった。しかし、ボルティモアにある〈サウスサイド・タトゥー(Southside Tattoo)〉に訪れた男性に、顔に入ったギャングのサインを隠してほしいと懇願されたとき、カトリップの胸は痛んだ。「タトゥーの大きさや位置から、彼の力にはなれないと判断しました」とカトリップ。「そう伝えたときの彼の表情を見て、妻と私は、できる限りたくさんの人を助けようと決めたんです」

2017年1月、カトリップは、Facebook上で人種差別主義やギャングに関わるタトゥーを隠そうとしている人を探した。タトゥーの除去には通常500ドル(約5万6000円)ほどかかるところを、彼は、無料で引き受ける。「判断を誤るときもあります。けれど、人は変われます」。彼の投稿は瞬く間に拡散され、〈いいね!〉の数は3万5000、シェア数は2万6000を超えた。このメッセージがボルティモアの外まで広がるのは予想外だった、というカトリップだが、今やタトゥー業界における慈善活動の中心人物になった。

今では、サウスサイドと同様の社会復帰サービスを提供するタトゥー・ショップも増えた。エリック・ローナー(Erik Rohner)は、ウィスコンシン州南西部にある人口5万人の町、プラットビル (Platteville)で、〈イー・オールド・タトゥー・ショップ(Ye Old Tattoo Shop)〉を経営している。彼は、このサービスを始める前は、クライアントは月に1人か2人だろうと予想していたという。しかし、開始から2週間で4人が来店し、問い合わせも相次いだ。「この仕事を始めた20年前には、かぎ十字や南部連合旗を壁に飾り、人種差別主義者を相手に商売していた店もたくさんありました」とローナー。「でも時代は変わりつつあります。私たちも変わりたいんです」

ローナーは、想像を超える反響に、少し圧倒されているものの、必要不可欠でやりがいのある仕事だ、と語った。クライアントの羞恥心と真正面から向き合えば、同情せずにはいられないという。

「最近相談を受けた女性は、ギャング関係者の徴である〈〜の所有物(Property of)〉というタトゥーが首にありました」とローナー。「普段ならクライアントには公平に接し、順番を守ってもらいますが、彼女は最優先しました。できるだけ早く施術してあげたかったんです。若い頃にギャングに取り込まれてしまった彼女を見て、心が痛みました。彼女は人間です。誰の〈所有物〉でもありません」

このサービスを通じて、〈烙印〉を押された体の呪縛に、大勢が悩んでいる、とカトリップとローナーは知った。そこまで大きな反響は予想していなかったそうだが、彼らは偶然にも重大なニーズに遭遇したのだ。カトリップのクライアントのひとり、ランディ(苗字は伏せるよう頼まれた)は、ナチ親衛隊の髑髏部隊、鉄十字、アーリアン・ブラザーフッド(Aryan Brotherhood)のマークを隠したい、と切望していた。

「〈ヘルスケア・フォー・ザ・ホームレス(Healthcare for the Homeless)〉のケースワーカーを通じて、このサービスを知りました」とランディ。「毎朝、鉄十字を見なくて済むようになり、ホッとしました。これで生き方を変えて、前に進める気がしたんです」

カトリップの慈善活動を知った当時、まだホームレスだったランディは、サウスサイドによって運命を変えられた。今では、肌を〈浄化〉してくれた人物の下で、見習いとして働いている。「以前は公営住宅のすぐ隣にある麻薬を売買する隠れ家に住んでいました」とランディ。「デイヴとベス(デイヴの妻)は私を心配してくれました。私がタトゥーや絵に興味があると知り、店に迎えてくれたんです。今はここで仕事を学んでいます。良い機会に恵まれて感謝しています」

大きな反響を受け、カトリップは〈リダンプション・インク(Redemption Ink)〉という非営利団体を立ち上げた。人種差別、ギャングにまつわるタトゥーを除去する活動の正式名称だ。ゆくゆくは、活動理念に賛同する世界中のパーラーを集めて、ネットワークを築こうとしている。「このサービスを、タトゥー・ショップ間の協定にしたいんです」とカトリップ。「それがいちばんの目標です。まずは国内で広め、そのうち海外にも展開したいです。ニュージーランドからファンレターをもらったこともありますが、世界にはまだ憎悪があふれていますから」

タトゥー業界に、いわゆる〈社会正義〉はない。多くの店は、早朝に、酔っ払った勢いで来店する盛場の乱暴者たちを当て込んで、朝の4時頃まで営業している。彼らのビジネスモデルは確固たる中立性に基づいている。リクエスト次第では、顧客の肌に邪悪な印を彫り込まざるを得ない仕事を続けるには、必要な態度なのだろう。しかし、カトリップや彼に続くアーティストたちは、そのような風潮を変えようとしている。リダンプション・インクのホームページに掲載された紹介文によると、「デイヴ・カトリップ氏が愛するタトゥーの技術を通じて世の中に貢献する、という夢」を叶えるサービスだという。

タトゥー・アーティストたちは、世界平和を実現したり、飢えている子どもたちに食事を提供したりはできないかもしれない。しかし彼らは、タトゥーの施術によって、世の中に巣食う〈憎悪〉を除去し、その原因を葬り去るべく尽力している。

「タトゥー・パーラーの活動が地域社会に還元され、コミュニティのいち員になれたら嬉しいです」とローナー。「今までたくさん、誰かの下で働いてきましたが、みんな、地域から奪うばかりで、何も還元しようとはしませんでした。これからも私たちの活動を広め、タトゥー・ショップを地域社会に不可欠な存在にしたいです」