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蜂の巣にされた山村 エル・チャポ狩りの悲劇

2016年1月8日、メキシコの麻薬王「エル・チャポ」が逮捕された。2015年7月の脱獄以来、半年間、メキシコ当局が捜査を続けた結果だ。しかし、その間、多くメキシコ国民が捜査の犠牲になっていた。

2015年7月、アルティプラーノ刑務所から「トンネル堀り」で脱獄した麻薬王ホアキン・グスマン、通称「エル・チャポ」。彼の故郷である北西部シナロア州ロスモチスにおいてメキシコ海兵隊が拘束作戦を開始し、2016年1月8日、遂に、メキシコ警察当局による逮捕の知らせ、ペーニャ・ニエト大統領の公式ツイッターで発表された。

メキシコ当局は、エル・チャポの潜伏先に、シナロア・カルテルの本拠地、ゴールデン・トライアングルの山間部を予想していた。この地域でエル・チャポは絶対であり、一帯の住人は彼を慕って止まない、との通説も、当局の予想に与している。

未だに続くメキシコ麻薬戦争だが、政府は状況を明らかにせず、証拠の捏造など、国民を欺くことも辞さない。今回のエル・チャポ拘束作戦も、同じく、ゴールデン・トライアングルに属するデュランゴ州で、エル・チャポ潜伏の疑いがある山村に、上空からの一斉射撃を加えた。その理由は「住民たちがエル・チャポを守るため武装していた」と発表したものの、住民たちは「チャポの存在すら知らず、町で見かけたこともない」と否定する。

デュランゴ州から避難した住民たちは、今回の作戦により被った損害を法的に訴える準備を進めているが、本当に彼らはエル・チャポと関わりがなかったのか。また、メキシコ政府は何のために大規模な銃撃を行ったのか。銃撃現場を訪れ、住民に話を訊いた。

原題:DISPLACED IN SINALOA THE HUNT FOR EL CHAPO(2015)