2000台をリスト化したビデオゲーム内飲料自販機プロジェクト

マーシャル大学のジェイソン・モリセット教授は、『バットマン:アーカム・ナイト』をプレイしていた。暗がりをさまよっていた彼は、ある飲料自動販売機に目を留めた。それは架空のジュース〈Sparkle Fizz〉の自販機だった。そして教授は思いつく。「ビデオゲーム内の様々な自販機をリストアップするべきだ」

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mar 28 2018, 6:00pm

Image courtesy of Jason Morrissette

2016年のある日、マーシャル大学のジェイソン・モリセット(Jason Morrissette)教授は、『バットマン:アーカム・ナイト』(Batman: Arkham Knight, 2015)をプレイしていた。暗がりをさまよっていた彼は、偶然、飲料自動販売機を見つけた。多くのゲームと同様に、『アーカム・ナイト』にも、実在する商品は登場しない。余計なコストがかかるからだ。その代わりに開発者は、架空のジュース〈Sparkle Fizz〉をつくった。

「ゴッサム・シティの薄暗いところにあったカラフルな自販機は、とても目立ちました」と教授はメール取材に応じた。

あるとき、モリセット教授は、ビデオゲーム内の様々な自販機を誰かがリストアップするべきだ、と冗談交じりにツイートしたが、その後、自らリスト作成に取り掛かった。こうして始まった〈the Video Game Soda Machine Project (ビデオゲーム内飲料自販機プロジェクト)〉は、3月5日、大きな節目を迎えた。リストの2000台目に、麻薬カルテルを追う米麻薬取締局の捜査官が主人公の、知る人ぞ知る2006年発売の3人称シューティングゲーム『El Matador』に登場する自販機が追加されたのだ。

同じく麻薬捜査官が主人公のシューティングゲーム『Max Payne』(2001)をお粗末にしたような作品だが、『El Matador』の世界で大人気なのが、〈Cola Fria〉という飲料だ。

「自販機など、ゲーム内に繰り返し登場する小道具が、細部まで現実に忠実に再現されている点は、注目に値します」と教授。「プレイヤーの没入感を生み出すうえで、地下鉄駅構内の自販機などは、とても重要な役割を果たします」

モリセット教授は、自力でリストを作成しているわけではない。このプロジェクトには、ファンから多くの情報が寄せられている。特に、すでに終了したMMO(Massively Multiplayer Online:多人数同時参加型オンラインゲーム)などのデータを集める場合は、根強いファンからの情報が役に立つ。このようなファンの熱意によって、過去のゲームが復活する可能性もある。あるひとりの熱狂的なファンは、10年近く前から、2009年にサービス終了した『The Matrix Online』(2005)を復活させるプロジェクトに取り組んでいる。

「こういう、ファンによるプロジェクトがない限り、ビデオゲームの歴史における重要な部分も、自販機のような瑣末な部分も、ゲーム会社が公式サーバーをシャットダウンした途端に失われてしまいます」とモリセット教授。

ロビー活動を行なうビデオゲーム業界団体、〈エンターテインメント・ソフトウェア協会(Entertainment Software Association)〉は2018年2月、過去のオンラインゲームを保存する必要はない、と見解を発表した。

モリセット教授の調査は、ゲーム機に搭載されたGPSによってプレイヤーの位置を把握し、それに基づいてゲームが進行する、携帯型ゲーム機〈Gizmodo〉用のシューティングゲーム『Colors』など、未発表作品にまで及ぶ。結局、このゲームは発売には至らなかったため、内容を知るには、数枚のスクリーンショットに頼るほかない。

モリセット教授のいちばんのお気に入りは、「あまりにも時代錯誤で笑ってしまった」という、『The Secret of Monkey Island』(1990)に登場する〈Grog〉の自販機だ。その次に、『バイオハザード オペレーション・ラクーンシティ』(Resident Evil: Opera-tion Raccoon City, 2012)の〈Juicy Raccoon〉、『killer7』(2005)の〈Handsomeman Executive Cola〉が気に入っているそうだ。

興味深いことに、『バイオハザード2』(Resident Evil 2, 1998)のお蔵入りになったプロトタイプには、本物のペプシ自販機が設置されていた。もし、カプコン社がそのまま制作を進めていたら変更されただろうが、実在する商品の自販機が登場するゲームも、ないわけではない。例えば、アルカイダのプロパガンダ団体が開発した、2006年のシューティングゲーム『Quest for Bush』には、ペプシのマークが頻繁に出てくる。

「このゲームをダウンロードしてプレイしていたら、どんなリストになっていたか、想像するのも恐ろしいです」と教授。

〈ソフトドリンク〉という表現を好むモリセット教授は、ファンとしてこうした画像を集めているわけではない。このプロジェクトは、彼の研究にも関わっている。教授は、近く開催される学会で、〈I’d Like to Buy the World a Nuka-Cola: The Purposes and Meanings of Video Game Soda Machines(直訳:世界のみんなに〈Nuka-Cola〉をおごりたい:ビデオゲームにおける飲料自動販売機の目的と意義)〉という論文を発表する予定だ。

論文要旨:
ビデオゲームに相当の時間を費やしてきたプレイヤーであれば、ゲーム内の飲料自販機を目にしたことがあるはずだ。『Fallout』シリーズの〈Nuka-Cola〉、『Monkey Is-land』シリーズの〈Grog〉など、ゲームには驚くほどの頻度で飲料自販機が登場する。なぜ飲料自販機がこれほど頻繁にビデオゲームに登場するのか? その目的や価値は? 本論文ではこうした疑問を解くため、ビデオゲームに登場する飲料自販機の特徴を明らかにし、自販機が果たす様々な役割を、美術、滑稽さ、作品の主題などの観点から分析し、定性的な批評を試みる。その結果、自販機は、われわれの世界に近しい仮想空間を舞台にしたビデオゲームの現実感を演出するために重要な役割を果たしつつ、現代資本主義の消費主義的価値観を強化している、とわかるだろう。本論文執筆に際し、著者が管理するウェブサイト〈the Video Game Soda Machine Project〉に掲載した、ゲームの主要なプラットフォーム、主要なジャンルに登場する飲料自販機2000台のリストを参照した。

リストに掲載されていない自販機をご存知の方は、モリセット教授のTwitterまでご連絡を。

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