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自ら鳴らした警鐘を無視する石油会社

大手石油企業〈ロイヤルダッチシェル〉は、1991年、短編ドキュメンタリー『Climate of Concern』を製作した。この作品を観ると、およそ四半世紀前の石油業界のほうが、気候変動に危機感を抱いていたようだ。

誰もが地球の未来を悲観せずにはいられないご時勢だ。特に気候変動は、深刻な問題だ。気候変動否定派が米国閣僚に名を連ね、世界最大級の石油企業〈エクソンモービル〉の元CEOレックス・ティラーソン(Rex Tillerson)が大統領の右腕である国務長官を務めているのだ。

大手石油企業〈ロイヤルダッチシェル(Royal Dutch Shell)〉は、1991年、短編ドキュメンタリー『Climate of Concern』を製作した。この作品を観ると、およそ四半世紀前の石油業界のほうが、気候変動に危機感を抱いていたようだ。

この28分の作品は、2017年5月1日、オランダのメディア『The Correspondent』で取り上げられ、再び注目を集めた。ダッチ・シェルが作成した、1986年来の気候変動についての社外秘報告書を入手した『The Guardian』によると、同作品における気候変動の未来予測は非常に正確で、警告内容について、「科学者たちがほぼ満場一致で合意し、1990年末、国連に報告書が提出された」という。

作品の終盤、希望に満ちた問いが投げかけられる。「地球温暖化の脅威が科学者たちの予想どおり致命的だとしても、その懸念が技術協力、経済協力を促すきっかけや推進力となるかもしれない、と期待してはいけないのでしょうか?」

残念ながら、答えは「ノー」だ。ダッチ・シェルは、このときすでに、海面上昇、温暖化、発展途上地域における資源不足を予想していたにもかかわらず、その後、自ら発した警告に、まったく留意していない。『The Guardian』によると、同社は、この四半世紀、環境に深刻な影響を与えるオイルサンド事業、北極圏調査に巨額を投資した。気候変動を否定するロビー活動にも2000万ドル(約22億円)を費やし、さらに、水圧破砕法に可能性を見出そうとしている。しかし、同社の1998年の報告書によると、いくら非在来型オイルやガスを開発したところで、問題解決のための目標には達しないという。

ダッチ・シェルに何らかのアクションを期待したところで、同社が25年前に「気候変動の問題やジレンマは、人類みんなの課題です」と認識していたとすると、何をしようと無神経さが際立つだけだろう。