女性スケーターに聞いた
スケート・シーンのあれこれ

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女性スケーターに聞いた スケート・シーンのあれこれ

2015年10月に開催された、SLSシカゴ大会女性部門で第4位のレイシー・ベイカー(Lacey Baker)は、この機会を待ち望んでいた。彼女は、ストリートで技術的に最も優れている女性スケーターの1人だ。

日本はさておき、アメリカンであれば、スケーターであろうがなかろうが、ストリート・リーグ・スケートボーディング(Street League Skateboarding、以下 SLS)の名前を耳にしたことがあるそうだ。このプロ・スケーターのコンペティションは、2010年、シカゴで始まり、2015年、初の女性部門が開催された。会場内で、観客として、もしくは、スポンサーのバックアップ、給料もなしに大会に参加していた女性スケーターに、ついに、檜舞台が用意されたのだ。

2015年10月に開催された、SLSシカゴ大会女性部門で第4位のレイシー・ベイカー(Lacey Baker)は、この機会を待ち望んでいた。彼女は、ストリートで技術的に最も優れている女性スケーターの1人だ。2013年、『スラッシャー・マガジン(THRASHER MGAZINE)』は、レイシーのビデオを、女性スケーターの最高峰、と絶賛した。彼女は大会に出場する傍ら、現在もフルタイムで仕事をしている。しかし、現在24歳のレイシー・ベイカーは、長年、スケート・シーンに身を置いていたにもかかわらず、疎外感をおぼえいるようだ。

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レイシー・ベイカーに、スケートシーン、スケート業界について話を聞いた。男性中心にならざるを得ない、シーンと業界は女性スケーターのために、今後、どう変化しなければならないのだろう。

あなたを知らない読者のために、スケートボードを始めたきっかけ教えてください。

スケートボードを知ったのは、すごく昔のことです。義理の兄たちが裏庭のランプで遊んでいたのを見て、イースターのプレゼントに、スケートボードをねだりました。それがスケートボードとの初めての出会いです。かれこれ20年以上前の話だから、私はまだ、3歳になるかならないかだったはずです。幼い頃は、スケートボードやローラーブレード、自転車で遊んでいたけれど、7歳になる頃にはキックフリップの練習に夢中になっていました。

グラフィック・デザイナーとして働いていますが、両立は大変ですか。

あえてその道を選びました。仕事をするために学校に行き、スケートは趣味として楽しんでいます。大会の賞金だけで暮らしていける気もしませんでした。以前は、女性が出場できる大会も、活躍する機会もありませんでした。女性が、スケート業界でお金を稼ぐのも、写真を撮るのも、すごくハードルが高いんです。

女子部門の開催で、スケートボード界での女性の立場は変わるでしょうか。

そうなるといいですね。平等になったのは良い変化だけれど、恩着せがましい態度を取られることもあります。「舞台ができてよかったね。俺たちのおかげだな!」なんて傲慢な物言いをされると、うんざりします。ほかにも、「女性スケーターとしてどう思いますか」なんて質問されることもあります。確かに、私は、スケーターで女性器もついているけれど、性転換なんてしなくてもキックフリップだってできます。なぜそんなことを聞かれなければならないのでしょうか?

あなたの動画を見ると、純粋に、滑るのを楽しんでいるように見えますが、わざわざ大会に出場するのはどうしてですか。

確かに、スケートボードは自身のためにやっているし、撮影するのも好きですが、大会には違った楽しさがあります。SLSに女性部門が新設されたのは、すばらしいことですし、変化のきっかけになるでしょう。でも、私たち女性にとって、自力で活躍できる舞台を築くことも大切です。男性主体のスケートボード業界が、私たちに居場所を与えてくれるのを待つだけでなく、自分たちでつくってしまえばいいんです。ミャオ・スケートボード(Meow Skateboards)、ガールズ・スケート・ネットワーク(Girls Skate Network)マーフィアTV(Mahfia TV)など、女性スケーターを応援している団体もたくさんあります。自分たちでつくれたらたら、不満も出ないでしょう。女性の力で既存のスケートボード界を変えられるはずです。残念だけど、今の業界では女性蔑視が当たり前ですから。

スポンサーはいるのですか。

ミャオ・スケートボードがスポンサーで、製品を提供してもらっているけれど、給料は受け取っていません。私の使っているボードの売り上げからロイヤリティーをもらうくらいです。VANSはスニーカーを提供してくれますが、それ以外のものは何も受け取っていません。12歳からずっとボードに乗っているけれど、スケートボードのための資金や、飛行機のチケットは支給されません。

世間は、あなたがスケートボードでかなり稼いでいると信じていますよ。

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いつも破産に近い状態(笑)。

それを聞いて驚く人も多いはずです。この記事のタイトルは「レイシー・ベイカーは『もう、破産しそう』」にするべきかもしれませんね。

みんな、私たちが「女性スケーター全員の賞金を全部足しても、男性スケーター1人の優勝賞金の半分しかもらえない」なんて不平を漏らしてる、と勘違いしています。ふざけるのもたいがいにしてもらいたいです。月曜になったら生活のために、普通に出勤しているんですから。

もっと大きな大会が始まったら、賞金で生活できるようになるかもしれませんね。

問題は賞金の額だけではありません。私のようにボーイッシュだと、この業界ではまったく注目されないんです。

本当ですか!?

ええ、スケート業界は外見で決めつけたがる男が多い気がします。ショートヘアで、タイトなパンツを履かずプッシュアップ・ブラをしていなかったら、男みたいだ、と評価されます。彼らが気にするのは、スケートの技術ではなくて外見だけ。「誰が一番かわいいか、俺たちが選ぶ」って、最悪です。彼らが望む通りにしたら、私に対する態度も変わるのでしょうが、そんなことはしたくありません。私の体験談ですから、この業界の男性全員がそうではないでしょう。彼らに気に入られるために、女の子っぽく振舞ってちやほやされるなんて、私は絶対に嫌です。

確かにそれは最悪ですね。

そういうスケート業界の男性にはうんざりしています。昔からずっとそうです。以前、ブロンドのロングヘアだった頃は対応がまったく違いました。今は業界も変わりつつあるので、否定的な発言は避けたいんですが、男たちは、私たちの髪型がどうのこうの、セクシーか否か、タイトなパンツを履いているか、そんなことばかり気にしています。あなたちは、ヌくために女性スケーターを見にきてるの? それとも私たちのスケートの技を見にきてるの?

そのような男性はスケート業界のほんの一部で、他の観客は、ジェンダーに関係なくあなたを尊敬しています。

ええ、最低なのは、いち部の人たちで、実際にはジェンダーに関係なく私たちを尊敬してくれているはずですが、だからといって、この業界の男性優位を無視してはいけません。たまに、うんざりして「私は何のためにスケートするのか? 本当にスケートボードが好きなのか?」と自問自答します。私がスケートボードを始めたのは、お金のためではなく、楽しむためだったはずですから。

あなたの目的は、SLSに出場する女性スケーターとして、未来の女性スケーターに新しい道を拓き、活躍する基礎を築くことなのですか。

それはとても重要なコトです。男性が、私たち味方になってくれないのであれば、女性同士、お互いを気遣わなければなりません。私たちに憧れてくれる、若い世代を受け入れるために、女性が活躍できるようにしたいです。そのためには、業界内に、女性にとって前向きな雰囲気が流れるよう、私たちがどう対応してほしいのか、伝えなければなりません。