
Facebookへの対抗勢力登場?
今やFacebookなしでの生活は考えにくい。今年1月、あと3年でFacebookがユーザの80%を失うという予測が発表され話題となった。「SNSは感染症のようなもの。誰かが飽きれば一斉に熱が引いていくだろう。」と主張の信憑性は定かではないが、Facebookがいずれ消滅するという噂は、既にアメリカで周知のものとなっている。イスラム国が広報の一環で使っているとされ話題となった Diaspora(脚注①)のように、Facebookの独壇場を崩そうとするサービスはこれまでも存在したが、成功を収めたサービスは未だない。そんな中、打倒Facebook掲げる新興SNS、Elloが注目を集めている。
創業者ポール・バドニッツ氏が語る、Elloの特徴
創始者の一人であるポール・バドニッツ(Paul Budnitz)氏は、数人のアーティストや技術者と、その友人らのために立ち上げたプライベート・ネットワークとして立ち上げた。その理由として「広告やガラクタみたいな情報だらけの他のSNSに飽き飽きしてたんだ。憤りさえ感じていたし、そうした企業に操られ、惑わされている気がしていたんだ」と語っている。立ち上げから1年後の今年3月、プラットフォームを大幅に開発し直した上で、既存のユーザーからの招待制へと移行。今年9月からは、申請すれば誰でも無料で登録出来るようになった。今後有料のプレミアムサービスを提供する可能性はあるが、サービスにいくら支払うかはユーザー自身が決められるようにするという。パドニッツ氏は「リスナーによる価格一任性のフリーダウンロードで話題になった、Radioheadの 『In Rainvows』(脚注②)からインスピレーションを得た」と述べている。
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パドニッツ氏は「FacebookとTumblrは単なる広告プラットフォームで、本当の意味でSNSとは言えない。彼らのミッションは広告を売ることで、ユーザーを幸せにすることでも、アートを表現することでも、ネットワークを通して人とつながることでもない。」と考え、「クリエイティブなユーザーに特化し、価値のあるコンテンツと意義のある対話が繰広げられる」よう、必要最低限の機能を持ったデザインにしたという。
ユーザー数増加の背景に、Facebookの実名主義
申請制となった9月以降、Elloは爆発的にユーザー数を延ばしている。Facebookの実名主義を嫌ったユーザーが、Elloへ流れ込んできたという。それを象徴する事件が起きたのは、今年9月のことだった。Facebookは、サンフランシスコで芸名で活動するドラァグクイーン(女装家)に対し、実名を使用しない限りアカウントを削除すると宣言し、コミュニティの怒りを買った。Facebook側は「個人の自由は認めたい。しかし、実名を隠す事で起きる弊害がある」と主張したが、ドラァグクイーンを中心に36000人以上の署名が集まり、最終的にはFacebook側が折れる形となった。
Elloでは、好きな名前で登録が可能だ。生年月日、性別、配偶者の有無や職業といった情報をプロフィールに入力する必要もない。「 NSFW(脚注③)コンテンツに対して開かれている」「ポルノ・フレンドリー」と謳っており、誰でも自由に性的なコンテンツを投稿することができる。他のSNSに比べ規制の少ないElloが、セクシュアル・マイノリティのユーザーや自由な表現を求めるユーザーから支持を集めることになるかもしれない。
インビテーションがeBayで5万?
招待制だったころ、ElloのインビテーションがeBayで売買され、2ドル(約200円)から最高で500ドル(約5万円)の値が付いたという。これに対し、Elloの広報担当であるレイチェル・フカヤ(Rachel Fukaya)氏は、「誰が始めたのかは分かりませんが、Elloのサイトでユーザ登録さえすれば、いずれはインビテーションが届くのですから。ただ、バドニッツが以前設立したブランド Kidrobot(脚注④)で販売していた限定版商品にもプレミアが付いたりしています。異様な現象だと思います。」と答えている。
Elloの収益モデル
これまで主にメリットばかりを並べてきたが、もちろんデメリットもある。専門家によれば、決定的なのは収益モデルの脆弱さだ。広告なし、登録費無料を掲げるElloは現在、主な収益を資金提供で得ている。今年、ベンチャーキャピタルFreshTracks Capitalから43万5000ドル(約4770万円)の資金提供を受けたとされているが、それも長くは続かないだろう。Ello側は「ユーザデータを第三者に売却することはない」と明言しているが、果たしてどうなるだろうか。Facebook、Twitter、Tumblrも、初めは広告無しでスタートしたが、サイトの成長に伴って広告費で収入を得るようになったのも事実。Elloが広告・ユーザーデータ利用無しのポリシーを貫き通せるのか、今後も注目したい。
Translated & Edited by Rieko Matsui
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