Who Are You?:成瀬大さん(27歳) 鞄職人

電車の前の席に、野茂英雄にそっくりな人が座ってました。「うわぁ!そっくり!!」って思ってたんですが、あまりにも似ていたので、ホンモノじゃないか? と考えました。でも前にいる野茂英雄は、ドジャース時代くらいの年齢だったので、ニセモノだなと確定しながらも、いや、やっぱホンモノじゃないか? なんて。クルクル回転するくらい似てたんです。ジロジロ見てたら、野茂に気付かれました。おそらく「ああ、またか」と思っていたと思います。電車降りてコンビニに寄ったら、またさっきの野茂がいました。さっきは気付かなかったのですが、耳にピアスを付けていたので、やっぱりこの野茂はニセモノだと確定しました。でもホンモノの野茂が現在はピアスを付けている可能性もあるしなぁ、なんて考えていたら、ホン野茂っていう駄洒落が浮かびました。すいません、どうでしょうか?

日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません?そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。

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成瀬大(なるせ だい)さん(27歳):鞄職人

成瀬さん、こんにちは。

こんにちは、どうぞよろしくお願い致します。

えっと、今回はお友達の鈴木さんからの他薦です。本日は鈴木さんにもご同席いただいています。鈴木さん、よろしくお願いします。

(お友達:鈴木さん)よろしくお願いします。

せっかくなので、鈴木さんから推薦された理由を教えてください。

(お友達:鈴木さん)はい。彼とは長い付き合いなのですが、最近ちょっとつまらない人間になってきたと思っています。

そうなんですか? 成瀬さん。

いや、そんな…。元々面白い人間ではありませんし…。

おふたりは、いつ頃からのお知り合いなんですか?

高校からです。

鈴木さん、高校時代の成瀬さんは爆笑王だったんですか?

(お友達:鈴木さん)専門学校も同じだったんですけど、そのときが一番壊れてました。

あの頃の成瀬さんに戻って欲しい?

(お友達:鈴木さん)はい。このインタビューをきっかけにして、いろいろ思い出して欲しいです。

わかりました。じゃ、成瀬さん、いろいろ思い出してくださいね。

はい。えっと、すごく緊張してます。

お仕事が鞄職人さんだと聞いております。独立されたとも。

はい。鞄をつくらせていただいております。

どういう鞄をつくってらっしゃるんですか?

本当にそこら辺に売ってるような鞄です。お客さんから「こんな鞄つくって売りたいんだけど」ってご注文をいただきます。1回サンプルをつくって、OKだったものを大量につくっていきます。

革の鞄ですか?

そうです!! 革の鞄です。茶色っぽいやつが多いです。

ハーレーダビッドソンの横に付いているようなヤツですか? なんかヒラヒラが付いてるような。

いえ…そういうのではなく…。もっと柔らかい系の鞄です。

鈴木さん、ここまでの成瀬さんはどうですか?

(お友達:鈴木さん)いえ、まだ始まったばかりなので(笑)。

独立される前は、鞄の会社にいたんですか?

はい。足立区にある鞄会社です。今はランドセルをメインにつくっています。

おお! 私の子も来年小学生なんで、この前足立区でランドセル買いましたよ!

本当ですか! 繋がりがあって嬉しいです(笑)。

7月くらいに行ったんですけど、店内ギュウギュウで。最近のランドセル事情ってすごいですよね。何年くらい前からあんな感じになったんですか?

私は新卒で入社してから丸6年働いたんですが、そのときは既に盛り上がっていました。会社に入る2年前までは小さな工房だったらしいのですが、倍々に売上が伸びていったと聞いております。

そのとき成瀬さんはランドセルの何係だったんですか?

僕はランドセルではなくて、普通の鞄のサンプルをつくる係でした。お客さんからの要望に沿ったものをつくっていました。

もともと鞄職人になりたいと思っていたんですか?

はい。専門学校が文化服装学院だったんですけど、バッグデザイン科というところがありまして。

西新宿のバカデカいオシャレなビルですよね?

いえ、バッグデザイン科は、あのビルの外れにあるすごく汚い建物でした。デカいビルはアパレル系というか、服装関係です。僕らはハジかれものみたいな感じでした(笑)。

鈴木さんも同じ科だったんですか?

(お友達:鈴木さん)はい。現在私もまったく同じ仕事をしています。

ああ、鈴木さんも鞄職人なんですね。

(お友達:鈴木さん)はい。今は、お互いフリーで、アトリエをシェアして仕事してるんです。

なるほど! 今もずっとご一緒だから、成瀬さんがつまらない人間になったとわかるんですね!

(お友達:鈴木さん)そうですね。

そうですね。

文化服装学院のバッグデザイン科を卒業したら、やはり鞄会社の職人さんになるパターンが多いんですか?

はい。職人さんだったり、デザイナーさんだったり、あとは販売だったり。基本はバッグ関係が多いです。

なんか成瀬さん、落ち着いてらして、ぶっ壊れた感じは全然ありませんね。ツルツルして清潔だし。

すごく緊張してます。

ツルツルは緊張と関係ないでしょ。ご出身はどちらですか?

東京の練馬…上石神井です。

ずっと上石神井ですか?

ごめんなさい。生まれは世田谷です。

あやまらなくていいですよ。

小学校に上がるくらいに上石神井に引っ越しました。正確には上石神井と石神井公園と大泉学園の中間みたいなところです。

ご兄弟は?

おります。下にふたりいるんです。弟がふたり。

じゃあ男の子3人で何してました? わんぱく兄弟?

『遊戯王』とかやってましたね。

カードゲームでしたっけ? すいません、まったく詳しくないんですけど、『ガンバライジング』みたいな感じですか?

ガンバライジングってなんですか?

子供がやってるんですけど、ゲーセンにある仮面ライダーのカードゲームです。

ゲーセンではなくて、カードを並べてどいつが強いかみたいな感じのやつです。遊戯王のモンスターみたいのがいるんです。モンスターを5体くらい並べて、攻撃したりして相手を倒していくんです。

なんでもいいので、遊戯王の名前を教えてください。

「青眼の白龍<ブルーアイズホワイトドラゴン>」とか。

(お友達:鈴木さん)ブルーアイズホワイトドラゴン! いたいた!

ブルーアイズのホワイトドラゴンなんですか?

ブルーアイズのホワイトドラゴンなんです。

そいつが強いんですか?

そいつが一番強いんですよ。

そこに人間のカタチをした、モンスターみたいのはいないんですか?

ああ〜…いないですね。ちょっと説明すると長くなります。すみません。申し訳ないです。

もうちょっと教えてください。遊戯王のカードはどこで買うんですか?

石神井公園の近くに大成堂っていうおもちゃ屋さんがありまして、そこでよく買ってました。でもそういうのって、カードそれぞれの強さもあるんですけど、家庭の経済力もあるじゃないですか。1パック150円くらいなんですけど。

ああ、そうですね。その頃ってお小遣いっていくらでした?

月500円くらいですね。

じゃあ3パック買ったら…

アウトですね。

ですよね。

で、まぁ、その…パクリ合うのが流行ってて…

ええ(笑)。

別のおもちゃ屋さんに持っていくと、カードを買い取ってくれるんです。強いヤツだと500円とか1000円とか。それでまた買ったりしていました。

やりくり上手ですね! 先ほど「家庭の経済力…」とおっしゃってましたが、ご両親はどんなお仕事をやってらしたんですか?

父親は鳶職をやってました。でも小5の頃に離婚したんです。

その頃のことって、子供ながらに覚えてます?

えっと…そのときは一軒家に住んでたんですが、父親が庭で…なんか…その…植物を育て始めてまして…。

あの植物ですか(笑)!

まぁ、その(笑)。それをやり始めてから、父と母がすごく仲が悪くなって。それがすごく嫌でした。

「お父さん、何か変な物育ててるんだ…」って?

もちろん全然わからなくて、ただ大事に育てているのはわかってまして。僕も親父のことが苦手で、嫌いだったんです。大事にしてる植物を全部ダメにしちゃおうと思って、全部バキバキに折ったんです。

やりましたね(笑)。

全部折って普通に外に遊びに行って。それで家に帰ったら、親父が暴れてまして、家の中がめちゃくちゃになっていたのを覚えています。大事にしていたファミコンとかも失くなっていて、結局売られていたんですけど(笑)。

そして離婚されたと。

結局それが元凶だったとは思うんですけど、その後、親父はどうして目覚めたのかわからないのですが、暗黒舞踏に走り出しまして。

すごい展開ですね(笑)。お父さんは今も暗黒舞踏をやってらっしゃるんですか?

今もやってます。YouTubeにもあげてるんですけど、再生回数は200回くらいですね(笑)。

元々お父さんは、そっちの道の方なんですか?

暗黒舞踏まではいかないんですけど、寺山修司関連の人たちの影響をすごく受けていたらしくて。インドに行ったりとかもしていたようです。

それだったら全部繋がりますね。お庭のお話も。

母親ともアングラな会で繋がったと聞いています。

アングラな会…っていいですね! 大堀さんは、寿司屋で離婚発表があったらしいのですが、成瀬さんはご両親からそういうのありました?

いえ、無かったです。離婚が決まって、すぐ引っ越したので。とうとう来たんだなーって思いました。

どちらに引っ越したんですか?

やはり上石神井です。

(お友達:鈴木さん)あたご荘だよね。

あたご荘?

はい。住んでいたアパートの名前です。母と弟ふたりで住んでました。

お母さんは、お仕事始めたんですか?

はい。薬局か何かで働いてましたね。死ぬほど大変だったと思いますよ。

ですよね。ご飯とかどうしてたんですか? 兄弟で「チン」したり?

そうですね。一品料理とか。スパゲッティとかが多かったような(笑)。

でも食べ盛りでしょう? 足りなかったのではありませんか?

そうですね。でも貧乏なのはわかってるので、友達の家に行って夕飯だけ食べて帰ってきたり。貧乏だからどうのこうのっていうのはありませんでした。しょうがないなって。

ちょっと、しんみり系思い出させちゃってすいません。

いえいえ(笑)。

中学校も上石神井ですか? 部活に入ったりとかは?

はい。部活も水泳部に入ったんですけど、一年で廃部になって(笑)。

中学で廃部って珍しいですね。

人数が少なすぎて廃部になりました。その後、陸上部に移ったんですけど、走るのは好きじゃないって気付いて。そこからは結局帰宅部みたいな感じになりました。

家で何してたんですか? さすがに遊戯王じゃないですよね?

じゃないですね(笑)。実は、知り合いにも…鈴木にも話してないんですけど、中学が一番の暗黒時代でして…。

暗黒!お父さんと一緒ですね! …あ、すいません。

いえいえ(笑)。いじめまではいかないんですけど、いじられて…いじめに近い…

すいません、なんか思い出したくない思い出ばかりではありませんか?

いえ、大丈夫です。…えっとモリちゃんとか。

(お友達:鈴木さん)モリちゃんか…。超わかる。

誰ですか? モリちゃんって?

モリちゃんっていうのにいじられていました。モリちゃんは、中流階級の人間で家が近くて。僕はあたご荘の人間じゃないですか?

あたご荘の人間(笑)。やっぱり、あたご荘が気になるんですけど、最近「荘」って、あまり無いですよね? 成瀬さんが中学の頃でも珍しかったのでは?

でもあったんです(笑)。

間取りとか訊いてもいいですか?

はい。リビングがあって、キッチンダイニングがあって、1部屋あって、もう3畳がひとつ。割と大きかったんですよ。2階建てのアパートで。

そんなあたご荘での暗黒時代を教えてください。

あたご荘ではゲームばっかりやってました。『クロノ・トリガー』とか『ファイナルファンタジー』とか。中古で買った『ファイナルファンタジーⅦ』とか。頑張って買ったのは『ドラゴンクエストⅦ エデンの戦士たち』ですね。

頑張って買う、というのはどういう意味ですか?

高いんです(笑)。でも頑張って買ったということです。ひたすら家でやってましたね。

放課後はずっとあたご荘にいると。

外でも遊びましたけど、やはりいじられるんです。いじられから、いじめに発展するのって容易いじゃないですか? ですから嫌なことがあると家に帰ってずっとゲームをやって。友達が来ても居留守してゲームをやってました。

居留守(笑)!

カーテンを閉めて、電気も消して(笑)。

でも弟さんがいるでしょ?

「いないっていって!」とか「もう出るな!」とか。

アハハ!!

僕がいない体で。電気がついてても何もいわなければ、諦めて帰るから(笑)。

でも思春期じゃないですか?

はい。

あたご荘に成瀬さんのプライベート空間はあったんですか?

一応、三畳のところに僕はいたんですよ。

良かったですね! 悶々としたものを3畳の中で解消していたんですね!

はい。

好きな子とか、付き合った子とかはいませんでしたか?

いやあ、もちろん好きな子はいたんですけど、付き合うとかは皆無でした。そのとき坊主だったんです。坊主で傷ハゲみたいなのがあって、「J」って呼ばれてたんです。

「J」? どういうことですか?

傷ハゲがJに見えるから(笑)。

超格好いいじゃないですか! 『HiGH & LOW』みたい! でも、髪伸ばせばよかったんじゃないですか?

髪を伸ばすと整髪料が必要になってくるじゃないですか? 整髪料で自分をキメていくまでの自信が持てなかったんです。

なるほどー。でも今はシュッとしてツルツルでねぇ。

ありがとうございます(笑)。でも本当に中学のときは相当ヤバかったですよ。「早くこの時間終わらないかな」っていつも思っていました。

はい(笑)。

授業のキンコンカンコンが鳴った瞬間にダッシュで帰ってましたもん。

昼休みとかは、どうしてたんですか?

悲惨でしたね。毎日じゃないですけど、「ヤバそうだな」ってときは、ひたすらトイレに隠れてたり。でもトイレって、同時にやんちゃな子たちの場でもあるんです。やんちゃしてる子たちは、授業が始まった瞬間にトイレに集まるんですよ。そこでタバコを吸ったりして。えげつなかったのが、ヒエラルキーみたいのがあって、そこでボスみたいなやつがノリで、「お前とお前、悪口言いあってるらしいじゃん。ここでやりあっちゃえよ」って。そこでコロシアムみたいな感じで殴り合いが始まるんですよ。

ウフフ!!

僕も最初はそういうのにも参加するようにしてたんですけど、

してたんですけど…ですか(笑)。

はい。自分もやられる側になったりして。もう嫌だなあと思って、ひとつランクの下の人たちに接触し始めたり…

すいません、スゲエ面白いんですけど、思い出インタビュー、辛くなってませんか?

大丈夫です(笑)。でもランクが下の子たちに「仲良くして」っていっても、彼らも出来上がっちゃってるので…

はい(笑)。

そこにも溶け込めなくて、結局パシリ役みたいな感じで。

鈴木さん、どうですか? 成瀬さんの知られざる過去ですよ。

(お友達:鈴木さん)あたご荘のことしか知りませんでした。

その頃のパシリってどんな感じなんですか?

「パン買って来いよ」みたいのではなくて、とにかく何かやらされるやつなんですよね。「お前面白いことやれよ」みたいな。体を張る役ですね(笑)。

具体的に訊いてもよろしいですか?

「池に入って面白芸を一発やれよ」とか。

成瀬さん、苦労されたんですね。じゃあ早く高校卒業したかった?

はい。それで、だいたい悪いやつって頭の悪い学校に行くじゃないですか? だから絶対に頭のいい学校に行こうと思って、3年のときにめっちゃ勉強したんです。そのときの通信簿は4と5しかなかったくらい勉強したんですよ。それで推薦で井草高校に行きました。

よかったですね!

でも、まさかのモリちゃんが同じ学校だったんですよ。

まだ続きますか(笑)。

俺の過去を知ってる人間がいるのはやべえなと。

モリちゃんも勉強はしていたんですね(笑)。

僕とモリちゃんの関係ってボスとパシリみたいな関係だったんです。学校にも一緒に行ってたんです。ひたすら俺がなじられながらですが。「高校になったらコイツともおさらばだ」って我慢してたんですけど、結局あいつも推薦で入って。それを知った瞬間は絶望しまくりました。

井草高校でのモリちゃんとの御関係は?

あんまり関わらないようにしてたんですけど、結局中盤くらいですごく仲良くなるんですよ(笑)。

モリちゃん、変わったんですか?

いやあ、どうなんですかね? なんでなんだろう。

(お友達:鈴木さん)モリちゃんが道徳を学んだ。

確かにそうだ。あいつが大人になったんだ。あとモリちゃんって、エレクトロミュージックとかも中学時代から好きだったんですよ。それを僕にも「いいから聴け!」って(笑)。

モリちゃんのこと知りませんが、モリちゃんっぽくないですね。

ケミカル・ブラザーズとかアンダーワールドとか。あいつは金を持ってたので、ガンガンCDを買って、僕に通学のときだけ聴かせてきて。「お前もイイっていえよ!」みたいな感じでした(笑)。でも結局そういう音楽の繋がりが高校時代にもありました。

モリちゃんの影響で成瀬さんも音楽が好きになったんですか?

そうですね、僕もケミカル・ブラザーズとかが好きになりました。でも高校になるとカラオケって文化が入って来たので、そこからポップスに走るようになりました。

カラオケ用に? どんなポップスなんですか?

Mr.ChildrenとかBUMP OF CHICKENとかGOING STEADYとかですね。あと銀杏BOYZも。

お友達とカラオケに行ったとき用みたいな?

入りはそんな感じだったんですけど、銀杏BOYZとかはいいなって。

銀杏BOYZって、結構このコーナーに出てくるんですよ。ハイスタ、モーニング娘。、そして第3位が銀杏BOYZくらいかな。銀杏BOYZってどこがいいんですか?

なんていうんでしょう。初期衝動みたいな…

どんな歌詞なんですか? 等身大系?

なんだろう? 日本!日本!

それって長渕剛じゃないですか?

(お友達:鈴木さん)何かさらけ出してくれてたので。

当時の自分たちの気持ちを?

そうですね。

モリちゃんはどうでしたか?

モリちゃんはハマってないです。彼はそこからプログレに行って、キング・クリムゾンとかCANとかTOOLですね。

モリちゃんっぽくないですね。成瀬さんは部活とかには入ってなかったんですか?

心機一転しようと思って、テニス部に入りました。

暗黒時代から心機一転。いいですね! 似合ってますよ。

一応3年間やったんですが、一度もレギュラーにはなれませんでした。

でも、テニス、カラオケ、銀杏BOYZと、完全に暗黒から抜け出したのでは? 「J」は、女の子もゲットしたんですか?

はい、まあ(笑)。

マジで良かった! 詳しく教えてください。

その当時仲が良かった友達の元カノみたいな子と付き合いました。僕は童貞を卒業したと思ってるんですけど、半分しか入りませんでした。半分しか入らなかったパターンなんですよ。

童貞とか半分とか、暗黒時代からは考えられないワードですね。それは高校何年生のとき?

高校2年のときです。

その子とは長かったんですか?

いや3ヶ月くらいでフラれました。結局、半童貞で終わりました。

そして井草高校で鈴木さんとも出会うんですよね?

はい。クラスは別々で、そんなに仲良くはなかったですね。こいつはパンクスだったんですよ。ピアスをガンガン開けて、緑のモヒカンでした。

(お友達:鈴木さん)モリちゃんを介して知り合いました。

モリちゃん、完全にキーマンになってますね(笑)。アルバイトはしていました?

はい。ずっとピザハットでピザをつくってました。

バイト代は何に使ってましたか?

裏原系が好きな友達とかがいて、そこら辺の影響でファッションに興味が出てきたんです。TUNEっていう雑誌があるんですけど、あとCHOK! CHOK!とか。ああいうのにハマって、服を買ってました。でも全然似合ってなかったと思います。

では、ファッションに興味が出てきたこともあって、文化服装学院への進学を決めたんですか?

そうですね。

でもファッションとかアパレルとかがある中で、なぜ鞄の道を選んだのですか?

いろいろ考えたんですけど、アパレルでやっていける自信がなかったんですよね。きっとイケイケな連中ばっかりじゃないですか。

そうなんですか(笑)。

なんか、怖いなーって。それに、服よりバッグの方が金になりそうだなって。高校のときに革のバッグとか欲しかったんですけど、平気で3万円とか5万円とするじゃないですか。これだったらユザワヤで買った革でつくれるんじゃないのかな?って。それで3千円くらいの革の端切れを買って来て、家のミシンでバッグをつくったんです。「こりゃ楽勝だな」なんて感じで。

で、鈴木さんも同じバッグデザイン科に。

(お友達:鈴木さん)成瀬が「文化決まったよ!」って。「あんなところ絶対に行かない」って、斜に構えていたんですけど、バッグデザイン科の存在を知りまして。「あ、僕も行こう」と決めました。

そして、遂に「爆笑王」、「ブッ壊れ王」が誕生したんですね。

いえ、そんなでもないのですが…。

その前に学校のことも教えてください。サクッといきますので。バッグデザイン科には女の子もいたんですか?

すごく多かったです。8割くらいが女の子です。

学校は2年間ですか?

3年間です。1年生のときに、バッグとシューズとジュエリーと帽子、全部学べるんです。その後の2年、3年で好きなものに。

成瀬さんは1年のときから、鞄の方に行こうって決めてたんですか?

そうですね。「バッグかな〜?」って。

わかりました! では、「ブッ壊れ王」の話にしましょう。

もういいんですか?

も大丈夫です! で、どんな風にブッ壊れてたんですか? 精神的に病んでたとか?

いや、違います(笑)。そういう訳じゃなくて。楽しくてしょうがなかったんだと思います。

何が一番楽しかったんですか?

周りの男たちがどうしようもない人間ばかりだったので、冗談の歯止めがきかない。

ああー、チンチン出すとかそういう感じですか?

そういう感じです!

ゲロ吐くとか?

本当にそういう感じです!

一番楽しいヤツですよね。もっとお願いします。

修学旅行みたいのがあったんですけど、部屋についたらうわー!、服を脱いでうわー!、お風呂でもうわー!って。小便とかするじゃないですか? それをうわー!ってやりながら口でがーっ!ってやったり、ケツの穴に指を突っ込んだり、走ってゲロを吐いたりです!!

なるほど、なるほど。鈴木さんもおしっこ飲んでたんですか?

(お友達:鈴木さん)自分は横で見てました。

鈴木さんは、そんな成瀬さんに戻って欲しいとメールをくれたんですね。

(お友達:鈴木さん)はい。

3年間ひたすらバカなことをやっていたんですか?

やりつつ、課題もやって。黄金期ですね。黄金期ですよ。黄金期。

彼女はいたんですか?

1年のときに付き合った彼女がいました。結局その人と結婚したんですけど。

奥様は、チンコ出してる成瀬さんのどこが良かったんでしょうか?

ちょっとグループは違ったんです。女の子グループみたいな感じで。だからバカやってたのをうちの奥さんはあまり見ていません。

何をしてるときが楽しかったですか? やっぱりチンコを出してるときですか?

なんでしょうか。えげつない話をしているときでしょうか。結局そこから行動に移るので。

お喋りからチンコに流れるパターンなんですね。身体が欲して、動きだすんですね。

(お友達:鈴木さん)やっぱり、お父さんの血を継いでる。

お、鈴木さん、ウマイ! ちなみに、お父さんの御活動はチェックしてたんですか?

僕はしてなかったんですけど、モリちゃんがよく掘っていたので、たまに教えてくれたりしてました。

モリちゃん、どんどん良くなるなぁ(笑)。ちなみにモリちゃんはどこに行ったんですか?

モリちゃんは大学に行きました。そのときは親友に近い感じになってました。

完全にモリちゃん越えしてますね。チンチン出して。

あいつもやるときはやるからなあ。

あいつ、ですか。偉くなりましたね(笑)。じゃあ彼女もいて、スカトロもやって、相当な黄金期だったと思いますが、就職活動とか始まりますよね?

するんですけど、ぶっちゃけ僕は3社くらいしか受けていないんです。入社した会社には、インターンで行ってたんですけど、そのまま受けて内定を貰ったんです。

(お友達:鈴木さん)私は、そこ落ちました。

モリちゃんだけでなく、鈴木さん越えもしたと! 居留守時代からは考えられませんね。でもいよいよ社会に出たら、もうスカトロできませんよね? もちろんチンコもしまわなくてはならない。

いえ、それが社会人になってもクズだったんですよ(笑)。

成瀬さんが?

その会社もクズだったんです(笑)。

どういうことですか? 会社の人たちが?

やっぱり、元々職人さんが集まっている会社で、小さいところから倍々で大きくなっているので、昔からのノリがすごいんですよ。

大酒飲みの職人とか?

そうですね。あと聞いた話ですけど、昔いた職人さんとかは、平気でミシン踏みながら小便垂らしちゃったり(笑)。

ここでも(笑)!

話が通じないような人ばっかりなんです。そこから徐々に会社らしくなっていったような感じで(笑)。

飲み会とかもやばいんですか?

やばかったです。素っ裸になったり、ゲロも吐いたりは普通で。

黄金期そのままじゃないですか。

当時の僕の上司とかは、酔っ払うと駅の非常停止ボタンを押したり。「ボタンがあったから、押してみたくなっちゃったんだよ」って遠い目をしながら。本当にそういう感じの人ばかりでした。

成瀬さんは楽しかったんですか?

超楽しかったです(笑)。

鈴木さんは、そんな成瀬さんに戻って欲しいとメールをくれたんですね。

(お友達:鈴木さん)はい。

鈴木さん的には、今の成瀬さんのどこが物足りないのでしょうか?

(お友達:鈴木さん)やっぱり、独立してから安パイになってるような気がするんです。

なるほどー。独立はいつされたんですか?

約半年前です。

ご結婚はいつされたんですか?

結婚は去年の夏です。

奥様は、独立することになにか言ってましたか? 心配だとか?

いや、それはなかったです。給料が安いの知ってましたから、逆に「しなさい」って感じで。

今はどちらに住んでるんですか?

王子です。嫁さんの実家に住んでるんです(笑)。

では、結婚を機に独立を考え始めていたんですか?

そうですね。それに鈴木は既に独立してたんですよ。ガンガン稼いでいて、すごいなって思いながら。鈴木からも独立を勧められていました。

心配とか、不安とかはなかったんですか?

ありましたけど、最悪バイトとかすればなんとかなるかなって思ってました。

アトリエはどちらにあるんですか?

蔵前です。ショップも兼ねています。 BOREDっていいます。

でも独立といっても、最初はどうやってお客さんを集めたのですか?

前の会社の繋がりとか、既に独立している先輩からの紹介とかですね。

儲かってるんですか?

ぼちぼちですね。

あら、順調?

始めた頃よりかは、なんとかなりました。

でもそんな成瀬さんが不満だと鈴木さんはいっています。鈴木さん、ブチまけてやりましょう!

(お友達:鈴木さん)はい。独立するとき、彼は貯金とかは一切なかったんですけど、「俺は自分のブランドをつくって、それ一本で食ってく」みたいな、すげえ気合いが入っていたんです。こいつカッケーって。でも今は、お客さんから仕事をもらって納品してるだけなので、すごい安パイなんですよ。下請けもしてますしね(笑)。

鈴木さん、お寂しいんですか?

(お友達:鈴木さん)ああ、寂しいのかなぁ?

鈴木さんはご結婚されているんですか?

(お友達:鈴木さん)してません。

ヤキモチ焼いてたり。

(お友達:鈴木さん)これってヤキモチなんですかね?

わかりません。

(お友達:鈴木さん)そうですよね。

成瀬さんは「俺は変わってない」と思ってるんですか?

僕はそんなに面白い人間だと思ってないので(笑)。

でも「あの頃はパワーあったよなぁ」みたいなのは思ったり?

あの頃のパワーは、今違うカタチになっているのかもしれないです。

仕事の中で?

そうですね。

確かに、安パイするのにもやっぱりパワーが必要ですからね。もしかしたらチンチンとかよりも必要なパワーかもしれません。

ありがとうございます。

じゃあ、今はブランドをやってないんですか?

一応やってることはやってるんですけど、全然手がつけられてないんですよ(笑)。

自分を消してるってことですか?

そうですね。目先の欲に走ってます(笑)。

でも鈴木さんとずっと一緒で、叱咤激励もしてくれて、良い御関係ですよね。喧嘩とかしないんですか?

ないですねえ。飲みに行きますし。

楽しそうですね。

楽しいです。

(お友達:鈴木さん)楽しいです。

今度は鈴木さんがオシッコ飲んだらいいんじゃないですか?

それも楽しそうですね。

これからもおふたりで仲良く暮らしてくださいね。最後になりますけど、言い残した思い出はありませんか?

小学校のときに、友達んちに遊びに行って、飼われてたセキセインコをドアに挟んで死なせてしまったことを思い出しました。ピーちゃんだったかな。そこにはゴハン食べに行けなくなりました。

あたご荘時代の話はもういいです。

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