「暮れ(年末)の忙しさを超えてるよ」「〈ターレー〉の人たちは、みんな、ブチギレてるよ」引越し準備のため休業している仲卸業者や飲食店などがあったにも関わらず、そんな声が方々から聞こえてくるほど、築地市場の最終営業日は、混乱していた。市場が4連休に入る前ということもあり、多くの物量をさばくため、忙しなく働く人々やターレーがあらゆる場所で交差する。また、最終営業日の模様を報じようと、54社142名にも及ぶ報道陣、さらには、名残惜しむように大勢の観光客が場内の飲食店に押し寄せ、長蛇の列を成している。歩道からは、人が溢れ、渋滞に次ぐ渋滞で、働く人々からは、思うように仕事がはかどらず、焦っているのが、取材しているこちらまで伝わってくるようだった。いつもの景色とは程遠い、異様な雰囲気で盛り上がっていた築地が少し落ち着きを取り戻したのは、場内の営業が終了し、観光客の入場が規制されたお昼12時を過ぎたころ。
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2018年10月6日、築地市場の営業が終了した。卸売業者や仲卸業者、築地の場内で営業していた飲食店などは、11日の豊洲市場が開場するまでに、引越し作業を終えなければならない。もちろん、この移転をキッカケに店じまいを決断し、後片付けに追われたり、コーヒーショップから天ぷら屋に業種を鞍替えするための準備をする店など、築地での、それぞれの最後の仕事に取りかかっていた。つまり、関係者以外の入場が規制されてからも、まだまだ築地市場は停止していなかった。そこで、疑問が浮かぶ。「では、築地市場の、最後の最後は、いつなのか?」営業最終日の翌日、10月7日午前4時ごろ、場外の店にターレーで魚を運ぶ仲卸業者の姿を、ちらほらと見かけた。もちろん、まだまだ築地市場は動いている。メディア向のプレスツアーが組まれているから、それも当然だろう。その後も、なんとか、築地の最後の最後を見届けたいと、待ち構えていたのだが、10月10日午前7時になっても、まだまだ、引越し作業が終わることなく続いており、市場が稼働している様子が漏れ伝わってくる。さらには、本当かどうかわからないが、どうやら、営業している仲卸業者もいる、なんて噂が聞こえてくるほどだ。83年間にも及ぶ長い歴史、そして、独特の建物の景観など、築地市場で働いてきた人々のなかには、この場所に惹かれ続ける人も、相当数いる。彼らの願いが、どこまでも続くかのように、築地市場は、いつまで稼働し続けるのだろうか?2018年10月11日、この日、豊洲市場が開場したのを機に、築地市場の解体工事が始まる。「えっ?」つまりは、解体工事を担当する業者にとっては、築地市場は、まだ終わっていない。おそらく、築地を愛する人々にとっても、建物が残る限り、市場は終わらないだろう。もっと言えば、築地市場を記憶している人々がいる限り、本当の終わりは訪れないのかもしれない。よく聞く話だが、誰も教えてくれない謎の話。さて、築地市場は、いつ最後を迎えるのだろうか?