10月19日〜10月21日の夜、VICE Japanとi-D Japanは、渋谷の〈hotel koé Tokyo〉を占拠した。クール&エレガント&ラグジュアリー&インテリジェンスな乱痴気3daysをレポート。

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VICE Japanと i-D Japanの三夜 in 渋谷

10月19日〜10月21日の夜、VICE Japanとi-D Japanは、渋谷の〈hotel koé Tokyo〉を占拠した。クール&エレガント&ラグジュアリー&インテリジェンスな乱痴気3daysをレポート。
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Photo by Nobuko Baba

10月19日(金)20:00〜
i-D Japan no.6』フィメール・ゲイズ号出版記念パーティ

開場を待たずして、会場のhotel koé Tokyoにはファッションキッズたちが大挙して押し寄せた。東京とLAを拠点にした多国籍ヒップホップクルーCIRRRCLEのライブが始まるころには、フロントの床が見えないほどに。

i-D最新号の出演者とコントリビューターに加え、i-Dの読者も自由に参加できた本イベントには、最終的に1000人以上が参加した。なかには、これまでi-Dに参加してきたモデルのUTAや中田圭祐、Kendall Elena、女優の紅甘、ミュージシャンDAOKOの姿も。

集まったユースたちは、それぞれの友人を紹介しあい、和気あいあいと音楽やおしゃべりを楽しんでいた。ドリンクを手に入れるまでに15分以上並ばなければならなかったが、そのあいだにも新たな出会いが生まれていただろう。

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Photo by Nobuko Baba

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Photo by Nobuko Baba

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Photo by Nobuko Baba

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Photo by Nobuko Baba

イベントの大トリは、『i-D Japan no.6』にも書き下ろしのエッセイを寄稿しているラッパー、あっこゴリラによるライブ・パフォーマンス。性の超越を歌ったクラシック「ウルトラジェンダー」から数日前にMVが公開されたばかりの新曲「グランマ」など数曲を披露した。ジャンルや世代を超えた祝祭空間の熱気は最高潮に達し、ホテル全体が揺れんばかりに盛り上がった。

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10月20日(土)19:30〜
VICE MEDIA presents 「真実と情熱が創る新たな常識 - Free Your Mind… and Your Ass Will Follow -」VOL.1

続いて土日は、VICEによる『真実と情熱が創る新たな常識 - Free Your Mind… and Your Ass Will Follow -』。VICE MEDIA創設者のひとりであるスルーシュ・アルヴィ(Suroosh Alvi)と、VICE MEDIA アジア・パシフィックCEOであるホシ・サイモン(Hosi Simon)が、日本人ゲストを迎えて、トーク・セッションを敢行した。i-Dのパーティとは打って変わり、大人の男たちがステージに。

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第一夜の登壇者は、現代美術家、ポップアーティスト、そして映画監督である村上隆氏と、ミュージシャン、プロデューサー、ファッションデザイナーであり、京都精華大学ポピュラーカルチャー学部客員教授も務める藤原ヒロシ氏。両者とも、世界を股にかけて活躍する、日本を代表するクリエイターだ。好奇心と探究心と自らの感情のままに動き、多方面に大きな影響を与え続けている。彼らは、フリーマガジンとしてスタートし、インディペンデント〜DIYスタイルをベースに成長してきたVICE MEDIAとも大きな共通点がある。それは〈パンク〉だ。

「間違いなく、そこが僕の原点です。でもそれは、音楽だけのパンクとは違うんですね。パンクをきっかけに、アンダーグラウンドで起こっている状況やメッセージ、カルチャー、そしてジャーナリズムを学んだわけです」。ジョー・ストラマーがニカラグア情勢を教えてくれた時代にパンク科の学生だった藤原ヒロシは語る。「アナーキーって言葉も、そのときに覚えました。どんな意味かは知りませんでしたけど(笑)」

「学生の頃、常に私の頭のなかを占めていたのは、パンク、そしてDIYシーンです」とスルーシュも語る。パンク、DIYのヴァイヴスを吸い込み、オルタナティブなライフスタイルを選んだ彼だが、自らのライフスタイルが現在のビジネスに繋がるとは思ってもみなかったハズだ。「私を満足させるメディアが周りに存在しなかったんです。だったら、自分でやってみようと。その立ち位置は今も変わっていません。やっちゃいけないことなんかありません」

髪を逆立て、鋲ジャンを着用し、中指を立てるのではなく、私たちの日常のなかに存在するパンク。知りたいこと、やりたいこと、声に出すべきこと。すべてを自らで決断する行動こそがパンクである。その結果、たくさんの新しい感性が共感し、彼らの元に集ってきた。そして、そこで新しい世界を築いてきた。いつの時代になっても世の中の常識に疑問を持つ新しい世代が主役だ、と四人は口を揃える。

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「私は、常に18歳の頃を思い出して、世界の情勢に目を向けようと考えています」。ホシ・サイモンは、これからの世の中を動かす可能性を持ったオーディエンスにコンテンツを届けてこそVICEだ、と意気込みを語る。「明確な意図とメインストリームのメディアとは異なる視点を持って、世界のニュースを届ける」。若い世代のニュース離れを年寄りが嘆く状況を「若者はニュースなんて観ない、といわれていますが、それはそのニュース番組に問題があるのであって、彼らには関係のない話なんですよ」と彼は分析する。

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「若い人は適当にやればいいんです」と我が道を歩むことの重要さを説いたのは村上隆だ。「私は56歳ですが、16歳のキッズがやっていることに対して『んん?』なんて思うこともあるわけですよ。でもそれが世界を変えていくかもしれない。それこそが本質なんです」。若い頃の彼が上の世代に抱いていたであろう疑問の矛先を下の世代に向けるかのように、若者を突き放す。「ですから、ゆったり生きていけばいんですよ」と彼はいうが、ゆったり生きているだけでは世界は変わらないだろう。村上隆流の煽りだったのかもしれない。

4人の男たちは、次の世代がなにをつくるのか、どのように行動していくのかを楽しみにしているようでもあった。

10月21日(日)18:30〜
VICE MEDIA presents 「真実と情熱が創る新たな常識 - Free Your Mind… and Your Ass Will Follow -」VOL.2

第二夜のゲストは、、元NHKアナウンサー、現在は市民投稿型ニュースサイト〈8bitNews〉を主宰するジャーナリスト/キャスターの堀潤氏と、『ダウンタウンDX』などを手がけた讀賣テレビ編成局チーフプロデューサーであり、一般社団法人〈未来のテレビを考える会〉代表理事の西田二郎氏だ。

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〈テレビの終わり〉が呪文のように唱えられる今日この頃だが、果たしてそれは本当なのだろうか。TVの内情を知り尽くした両人を迎えた第二夜では、プラットフォーム云々ではなく、どんなコンテンツをオーディエンスに届けるかについて、前向きな意見が積極的に交わされた。

「ジャーナリズムは、100人いれば100通りあると思っています。怖いのは、『ジャーナリズムとはこういうことだ』という式ができてしまうことですね。自分が思うジャーナリズムを発信すればいいんです」。NHK時代は、生々しさを失うことに違和感を感じていた、という堀潤。コンテンツ制作にコストをかければかけるほど、リアルさは失われてしまう。現在の彼は、ひとり、もしくは、ふたり体制で、取材に臨んでいるという。

「2009年にアフガニスタンのカブールで取材したんですが、大手テレビ・メディアは多数のスタッフを抱えているのに関わらず、ずっと建物のなかにいました。しかし、私たちは、たった3人で、外に出て取材しました。真実とリアルな状況を伝えるのが私たちの役目ですから」。スルーシュ・アルヴィは、VICEの役割は誠実に真実を伝えるだけであり「私はジャーナリズムを学んだこともありませんし、自身をジャーナリストだとも思っていません」という。

「今の時代、テレビであろうとスマホであろうと、プラットフォームは関係ありません」とホシ・サイモン。確かに、私たちはいつでも面白いコンテンツを求めている。それがTVだろうとWEBだろうとSNSだろうと関係ない。制作者のエゴよりも、その時その場所で何が起きているのかが知りたいのだ。「重要なのはコンテンツの中身。現地で面白い人に会い、自分たちのストーリーを話してもらう。そして、編集しすぎないようにする。あまりやりすぎると、精神の部分が失われてしまいますからね。コンテンツの中身が大切なんです」

そのプラットフォームの頂点に長く君臨していたのが、テレビ。しかし、〈若者のテレビ離れ〉が囁かれるなか、その未来はどうなるのか。

「テレビの視聴率は、年齢の高い層に支持されたほうが、稼ぎやすいです。同じ10%でも、若者と40〜50代では全くボリュームが違うんです。ビジネスをするには、その方向に打ち込むしかない。でも僕は、若い皆さんが変えられるかも知れない場…テレビを守り続けて、渡さないといけないと考えています。残すべきものを守って、若い人たちに受け渡したい。『そんなの、いらんわ』っていわれたら、ガクってなりますけど(笑)」。関西弁の音量をアップさせて西田二郎は続けた。その声は、来場している次の世代に向けて放たれていた。「今日ここにいるみなさんは、いろんなことを考えていると思います。それが僕は嬉しい。まわりにいる同世代にメッセージを伝えて先導してほしい。ジャーナリズムというのは、気付いたことがあったら同世代にいってあげることだと思いますよ」

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「電波オークションだとか、新規会社の参入を認めようという話もあるので、テレビは絶対に死なないでしょう」と堀潤は予見したが、「今までテレビを背負ってきた人々の総入れ替えはあったほうがいいでしょうね(笑)。やる気のある人たちが、電波を使えたらいいです」とシビアなコメントを続けた。

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トーク後に実施された、質疑応答のコーナーでは、20代であろう来場者から「日本の文化的に、友人と真面目な議論を交わすことがない」という声があがったが、私自身も周りの友人と何かを議論したことはなかった。しかし、2日間のトークで飛び出した来場者からの意見や質問に対するゲストの回答からは、世の中を変革する可能性を持った若い世代への、上の世代からの期待感が垣間見えた。

私は、世の中のできごとを今まで以上に意識し、自分の意見を発信すべきだ、と痛感させられた3日間だった。このような機会を今後も増やせれば幸いだ。

*本文中では、敬称を省略させて頂きました。

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