VICEがコーヒー豆、ブリューイング、最高の道具について徹底的に解説する
Collage: Cathryn Virginia | Photos: Getty Images

極上なコーヒーの淹れ方ガイド

VICEがコーヒー豆、ブリューイング、最高の道具について徹底的に解説する。

コーヒーを淹れる手順には、思わず尻込みしてしまうようなものがたくさんある。ワインの全成分をくまなく分析するソムリエのように、あなたが普段口にする一杯を淹れる専門家は、美味しいコーヒーをつくる、もしくは台なしにするあらゆる要素に気を配るよう教育されている。しかし、世界の大手コーヒー企業が長年ひた隠しにしてきた秘密がひとつある。それは、最高の一杯を淹れるのはそこまで難しくないということだ。確かに、あなたの行きつけのカフェのバリスタはエスプレッソとクリームの正確な割合やコーヒーの濃度の計算方法、複雑なフレーバープロファイルの読み方を知っているかもしれない。しかし、正直に言って、自分好みの美味しい一杯を淹れるのにそんなものは必要はない。

では、何から始めるべきか? まずはいくつかのキーアイテムを揃え、良い豆の見分け方と保管方法について学び、新しいことを受け入れて挑戦する心の準備をしよう。実は、誰でもそこまでお金をかけずに美味しいコーヒーを淹れることができる。もちろん、オフィスなどによくある安価なコーヒーマシンと一緒に、スーパーで3ヶ月前に挽かれた豆を買ってもいい。〈豆ジュース〉と真っ黒なコーヒーのカスが半々になる、怪しげな中古のフレンチプレスでも何の問題もない。

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このようなツールを使っても構わないし、そうするひとは少なくない。シカゴでピザが食べたくなったら、高級イタリアンに行く代わりにチェーン店のピザを注文するのと同じだ。ただ、僕が言いたいのは、美味しいコーヒーを淹れたいなら、まずはもう少し目標を高く設定することから始めるべきだということだ。そうすれば、もう9割は成功したも同然だ。

今これを読んでいるひとのなかには、20年近く前の僕(僕の初恋、フラペチーノ万歳!)のように完全な初心者もいれば、そこそこなスキルを向上させたいというひともいるだろう。この記事は、そんなあなたにぴったりだ。僕の狙いは、レベルに関係なく、自分も毎日最高のコーヒーを淹れられるという自信を持ってもらうことだ。では、さっそく始めよう。

完璧なコーヒーの条件とは?

これはある意味、人を惑わせる質問かもしれない。なぜなら、完璧なコーヒーなどというものは存在しないのだから。理想としては、クリーンな味わいで風味豊かな香りを感じられることだ。コーヒー豆が焦げておらず、豆がきちんと挽かれ、正しい時間で焙煎され、湯が適温ならば、豆のテロワールが最大限に引き出される。言い換えれば、コーヒーの風味から豆が育った場所の特徴がはっきりと感じられるということだ。例えば、グァテマラ産の豆は土やチョコレートの風味が強く、エチオピア産の豆はよりフルーティーでフローラルだ。そういう意味では、コーヒーはワインに似ている。

ここまで読んで余計に混乱したというあなたのために説明すると、つまりこういうことだ。〈完璧な〉コーヒーとは、飲むひとと豆のエッセンスを隔てる障壁をできるだけ排除した1杯なのだ。

A French press, a Hario V60, a mug, a gooseneck kettle and a perfect little espresso cup.

フレンチプレス、HARIO V60、マグカップ、グースネックケトル、小さなエスプレッソカップ。

道具は何を買うべき?

まずは豆に直接湯を注ぐハンドドリップか、ドリップ式コーヒーメーカーのどちらかを選ぼう。多くのドリップ式コーヒーメーカーは、高品質なコーヒーをつくるためのマシンではないので、ブリューイングはあまり得意ではない。それでも、かなり性能のいい製品もあるにはある。

それでもやはり、ほとんどのコーヒーマニアは自宅でのハンドドリップを好む。その方が調節が利くからだ。ポットやマグの上に置き、フィルターを敷いて豆を入れたあと、計量した湯を特定の間を置いて注ぎ入れる(理想的なのはコーヒー1グラムにつき水15〜17グラムを100グラムずつ注ぐこと)。ポットとドリッパーが合体しているため、複数人で飲むのに十分な量を簡単につくれる。底が平らなので、粉を均等に抽出できる(つまり、コーヒーの粉に水分が均等に行き渡る)商品を好むひともいる。なかにはフィルターを通したコーヒー(ハンドドリップ式)の方が健康的だという主張もある。

もしくはシリンダーでコーヒーを淹り、そのあと手でカップに移し替えるタイプを試してみてもいい。個人的には使っていない(最近はカフェでもほとんど見かけない)が、素晴らしいコーヒーが淹れられて、いまだにファンからの信頼も厚い。

フレンチプレスってどうなの?

フレンチプレスは場所をあまり取らず、時間も節約でき、美味しいコーヒーを淹れられる。このような理由から、自宅用コーヒーメーカーブランドから熱い支持を得ている。フレンチプレスを使う場合は、ハンドドリップよりも荒く挽いた豆を用意するが、豆と水の割合はハンドドリップの場合とほぼ同じだ。

抽出の時間については、4分ほど置けばいいというひともいれば、6〜7分置くべきだという声もある。実際は他の多くの料理や飲み物と同様、フレンチプレスのコーヒーの淹れ方にも〈正解〉は存在しない。まずは20グラムのコーヒーと300グラムの水を用意し、4分ほど蒸らしてプレスしよう。豆の風味が十分に感じられないと思ったら、もう少し蒸らす時間を長くするか、水の量を280グラム程に減らすといい。

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豆の選び方や挽き方も関係ある?

端的に言えば、答えはイエスだ。コーヒー粉の挽き具合は、コーヒーの出来栄えに大きな影響を与える。エスプレッソのような素早く淹れるパワフルな味わいのコーヒーには細挽きを、ハンドドリップのような時間をかけて淹れるコーヒーには中挽きを、フレンチプレスやコールドブリューのようなさらに長い時間をかけるコーヒーには粗挽きの豆を使う。ここから先は読まなくてもいいが、挽き具合は豆がマシンを通った後の粒の表面積と、水と触れ合う時間に関係するのだ。

オススメは円すい型のコーヒーミルだ。このようなタイプのミルは粉の粒のサイズを正確にし、豆が熱を持って淹れる前に旨味が抜けてしまわないように、豆をゆっくりプレスする。刃のついたミルの場合は、粒の大きさを揃えることはほぼ不可能だ。このようなミルは豆を切り刻み、〈料理〉を始めてしまう。

スーパーのコーヒーコーナーにミルが置いてあるから、それを使ってもいいかって? 申し訳ないが、そんなことをするのは大バカだ。なぜなら豆は挽いた瞬間から酸化が始まり、香りが損なわれていく。豆を挽いたらできるだけ早く使うようにしよう。ここで美味しいコーヒーを淹れるための鉄則であり、この記事の中で最も重要なアドバイスを伝授する。それは〈良い豆を買い、家で挽く〉ことだ。 

さらに、豆がいつどこで焙煎されたかを知るのも大切だ。焙煎日が明記されているものがおすすめだ。ブリューイングに最適な期間は1週間とする店もあれば、2週間以内に使い切るのがいいという店もある。個人的には、焙煎から2週間以内に飲み切れたらすばらしい。3週間以内でも悪くはないが、豆の質は落ちる。1ヶ月以上が過ぎているなら、僕なら新しいものを買うだろう。

水の質や温度はどのくらい重要なの?

水に関しては、多くのひとがろ過したものを好んで使う(逆浸透膜/ROフィルターを使うカフェもある)。よりクリーンな味わいになるので、僕はろ過した水を使っているが、必ずしもそうする必要はない。僕も以前は何年間も普通の水を使っていた。温度に関しては、一般的には90.5〜96℃がブリューイングに最適だとされている。注ぎ入れる際は正確に入れられるグースネックケトルを使おう。コーヒーに最適な温度に温められる電子ケトルもある。

コーヒーだけじゃなくてエスプレッソのことも知りたいんだけど?

これからちょうど話そうとしていたところだ。実際のところ、エスプレッソの決め手は豆だ。専用のマシンを使い、コーヒーとは異なるエスプレッソ専用の豆の挽き方、時間、温度、割合を守ることが重要だ。もちろんエスプレッソもコーヒーの一種だが、サワードウもピザも小麦粉を使った料理だが下ごしらえや焼く手順が異なるように、この2つは全くの別物だ。

それでも、エスプレッソを追いかけてこのページを離れようとしているひとのために説明すると、主な選択肢は2つある。ひとつめは、楽しく美味しいが、膨大な手間と知識を必要とする手動のエスプレッソマシンを買うことだ。もしくは根強い人気を誇る直火式エスプレッソメーカーを使う手もある。

もうひとつは、よりクラシックな電気式。全自動、半自動ともにさまざまな種類があるが、まずは財布に無理なくタンピングやショットの淹れ方を学べるように、高品質だがハードコア過ぎないものから始めることを勧めたい。

スキルを上げるコツや裏技はある?

もちろんだ。まずはコーヒースケールを手に入れよう。豆や水の計量から、割合や入れる時間の計算まで、たくさんの機能を果たしてくれるものを選ぶのがおすすめだ。それからいいマグを買おう! もちろん、義理の姉が作ってくれた姪っ子の写真入りマグで飲むのも悪くはないが、素朴で美しい陶器のマグで飲むと、人生が変わると言っても過言ではない。

情報が多すぎる……。ひと言でまとめると?

最高の材料を使い、正確に計量し、必要なら後で調整できるように自分が何をしたか覚えておく(または記録しておく)ことだ。それから、本物のバリスタに積極的にアドバイスを求めること。バリスタはみんなコーヒーについて話すのが大好きだ。すぐにあなたも、カフェ(もしくは自宅のキッチン)で初心者にコーヒーの濃度のうんちくを語る面倒な人になるだろう。