しかしほどなくして教授は、実はこの反乱は「静か」でも、非暴力的でもなかったと知ることとなる。教授は自らが発見した真実を、最近上梓した『Azad Nagar: The Story of a 21st Century Slave Revolt』に記録している。本書によると、この奴隷反乱の起源は多くの点で、あらゆる奴隷反乱において極めて重要な特徴、すなわちゴシップによる組織化に端を発することができるとされる。ソンバーサの反乱では、ウデイ・プラタップ・シング(Uday Pratap Singh)という農民によってその種が撒かれた。彼は近隣の村の出身で非常に貧しかったが、カースト上位であったために債務労働者となることは免れていた。シングは頻繁に異性装の道化師を演じていたため、「カンチュキ(Kanchuki)」というあだ名で呼ばれていた。カンチュキとは、サンスクリット文学に登場するトランスジェンダーの人物の名前だ。シングはこのあだ名を名誉の証として受け入れていた。このあだ名は、彼の上位カーストのアイデンティティを覆い隠すものでもあった。愉快な道化師の仮面に加え、カーストを感じさせないあだ名をつけることで、彼は何の疑いも持たれずにコル人が暮らす貧しい農村地帯を訪れることができた。
革命に必要なのは英雄だけじゃない。悪役も必要だ。ソンバーサでの反乱において悪役となったのは、ヴィレンドラ・パル・シング(Virendra Pal Singh)。彼はその残忍さから、一部の地元民に「奴隷主の長」と呼ばれていた。ある女性がマーフィー教授に話した証言によると、あるとき彼女が労働を拒否すると、パル・シングは彼女の髪を掴んで引っ張り、彼のために石を砕くよう強要したそうだ。「ある夜マントゥア(Mantua)という少女が仕事現場から帰宅していると、パル・シングに後を付けられ、レイプされかけた。少女が抵抗すると彼は彼女の家に火をつけ、彼女を殺害した」とマーフィー教授は前述の著書で述べている。ソンバーサの奴隷主の残忍さについて国際機関に訴えるために弁護士のアマル・サランがしたためた手紙では、パル・シングの恐ろしい逸話が強調されていたとマーフィー教授は語る。しかし、コルのひとびとに火をつけたきっかけは、いつもの抗議運動の最中、パル・シングがカンチュキの顔を殴ったことだった。「お前はヤツらを自由にすべきだと言うが、そしたら誰が俺の土地で働き、誰が俺の石を砕くんだ?」とパル・シングは言ったという。マーフィー教授の説明によると、「パル・シングと彼のいとこたちはコル人をレイプしたり、さらには殺害することもあった」が、コルのひとびとが許せなかったのは、パル・シングが「この心優しく穏やかな男に暴力を振るった」ことだった。彼の唯一の過ちが、村人たちの士気を高めたのだ。