ミレニアル世代の経済格差:給料が友情に与える影響

外食代の割り勘からグループ海外旅行まで、自分より高給取りの友人がいるのはラクじゃない。かつてないほどに逼迫している私たちのお財布事情。給料の差によって、友情にヒビが入る可能性も?
ミレニアル世代の経済格差:給料が友情に与える影響
Photo by VICE Staff.

私たちが認めようが認めまいが、お金が友情に与える影響は甚大だ。誰でも割り勘を断りづらいディナープランやグループ海外旅行、仲間全員に1杯ずつ奢るときなど、私たちが持つ(もしくは持たない)金額は、友人との時間の過ごしかたに大きく影響する。統計によると、ミレニアル世代の経済状況は、これまでのどの世代よりも悪化している。大金を稼ぐ友人がいるいっぽうで、他の友人たちは貧困に喘いでおり、その差は歴然だ。さらに、資本主義社会では富=善とみなされ、英国社会にはいまだに階級意識が根強く残る。結果として、仕事から何の喜びも得られなくても、または倫理的に問題があっても、大金を稼いでいれば成功者とみなされる。

2010年平等法のおかげで、英国のミレニアル世代は、過去の世代ほどひどい差別を体験することはないかもしれないが、職務内容や技能レベル以外にも、賃金に影響する要因は枚挙に暇がない。英国におけるアフリカ系、アジア系、その他のエスニックマイノリティの大卒者の賃金は、全体より17%も低く、2018年の男女の賃金格差のデータによると、英国の1万16の企業・公共団体のうち7795の組織で、男性が女性より高い賃金を支払われていることが明らかになった。友人が自分より稼いでいるというだけでも気分が落ち込むが、その原因は、この社会が白人男性の仕事により高い価値を見出しているからだと思うと、余計に気が重くなる。

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「このときはさすがに、『おい、少しは気を使えよ!』って思ったね」

大学を退学したチャーリーが、安定した仕事を見つけるまでに数年かかった。彼は低賃金の派遣労働をこなし、サッカーの試合がある日にバーでのバイトのシフトを入れ、失業手当も申請した。友人たちと5人でルームシェアをしていた彼にとって、お金の悩みは尽きることがなかった。

じり貧状態で暮らしていたある日、ひとりのハウスメイト宛てにカードが届いているのに気づいた。そのハウスメイトの誕生日は数ヶ月先だったので、チャーリーは不思議に思った。後になってわかったことだが、このカードは金融業界で働くハウスメイトへの昇進祝いだった。

「彼が仕事でかなり稼いでいるのは知ってた」とチャーリー。「でも、それがとんでもない大金だって気づいたのは、このときが初めてだった」そのハウスメイトの年収は、10万ポンド(約1400万円)を優に超えていた。それは、自分を含む残り4人の給料を合わせた以上の額だった。

「あのとき自分は本当に金欠で、あいつは翌日ニューヨーク出張に行くことになっていた」とチャーリーは回想する。
「仕事から帰ってくると、あいつはリビングのテーブルに封筒を投げ出して、『何が入ってると思う?』って訊くんだ。
『わからないよ。何?』って訊き返すと、
『1000ドル入ってる。上司が、明日NYに行くんだろ、帰ってくるまでに使い切ってこい、ってくれたんだ』って」
「『へえ』って返したけど」とチャーリーはいう。 「このときはさすがに、『おい、少しは気を使えよ!』って思ったね」

「友だちに合わせようとするから問題になるんだと思う」

裕福な友人といっしょに住んでいなかったとしても、お金は友情に緊張感を生み出す。30歳のエレンは、約半数の友人の給料は6桁(約1400万円)に届くか届かないか程度だが、彼女の5〜6倍稼いでいるだろう友人もいるという。

「ずっと悩んでた」と彼女は電話越しに打ち明けた。「(この友人と)外食するのが本当にイヤで。彼女はいつもサイドディッシュとワインを大量に注文して、しかもいつも割り勘にしたがる。『割り勘はやめない?』ともいいにくいし。最後に食事に行ったときは、自分が食べた分より10ポンド(約1400円)は多く支払ったと思う」

しかし、エレンは自身の経済状況をオープンにすれば、無理にお金を捻出するストレスなしに友人と遊べるということに気づいた。また、そのおかげで食事やアクティビティにいくらかかるか心配する必要もなくなったという。

「友だちに合わせようとするから問題になるんだと思う」と彼女は述べた。「友だちとお金がかかることをしたくても、相手に余裕がないなら、感じ良く、上から目線にならないように、相手の分も出してあげればいい。私も、年収がそれなりの額から1万8000ポンド(約260万円)まで減ってしまった時期があって。その年は、友だちがいろんなことにお金を出してくれた」

「みんなに1杯奢ることもできないから、付き合いを続けられない。」

エレンには支えてくれる仲間がいた。しかし、友人にお金を出してもらうのを気まずく感じるひともいる。ロンドン在住のカラムは、大学卒業後、ジャーナリズムの修士課程に進むことを決めた。彼の親しい友人の多くは、金融やテック系の仕事に就いたという。

「友だちと遊びたくても、『入場料がかからない場所だったら、今夜は2杯までなら飲める』っていう感じで。飲み代がなくなったり、家に帰らなきゃいけないこともあった」と彼は語った。「みんなに1杯奢ることもできないから、付き合いを続けられない。そうしなきゃ輪に入れないんだ。それが男のグループ、男の友情だから。いっしょに飲みたくても、飲み代が払えない。その夜は奢ってもらったけど、なんだか気まずかった」

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この出来事によって友人と不仲になったわけではない、とカラムは説明するが、彼は自分の選択に疑問を覚えるようになったという。「俺はこの人生でいったい何をやってるんだ、これが本当に正しい道だったのか、って自分に問いかけてる」と彼は吐露する。「俺はこんなもんじゃないだろう、って。自分が信じられなくなった。みんなに遠慮してほしくない」

「利用されてるような気がした」

しかし、逆の立場ならどうだろう。仲間より給料が少ないというのも不快だが、仲間うちでいちばん高給取りというのもそれなりに居心地が悪いものだ。イングランド北部で育ったアブドゥルは、金融関係の仕事に就き、きょうだいや幼馴染の給料を4万ポンド(約570万円)以上上回る額を稼ぐようになったことで、家族と口論になり、苦い思いをしたという。

「(家族よりも)仕事に集中することにした。そうすれば、お金のこととか、試験に受かったとか職場で何をしたとか、自分の小さな成功について話さずにすむ」とアブドゥルはいう。「あまり家族には話したくない。みんな自信をなくしたり、妬んだりするかもしれないから」

アブドゥルが仕事でロンドンに引っ越すことになったとき、家族に家賃の仕送りを続けてほしいと頼まれたことで、口論に発展した。「利用されてるような気がした」とアブドゥルはいう。「僕は自分の居場所を守るために必死に働いてきた。そんな僕の金を当てにするなんて、みんな僕につけ込んでるだけだ。そりゃあ怒りたくもなる」

家族とのいざこざと同時に、アブドゥルは就職によって、昔馴染みの友人とも疎遠になっていったという。「全然成長していなくて、大人になろうとしないヤツもいる。会うたびに同じことをしてるんだ」と彼は説明する。「新しい店に食事に行くとか、どこかに出かけるとか、もっと楽しい体験をしようっていう意欲がまったくない。会話の内容も時事問題とかじゃなくてゴシップとかサッカーとか、いつも似たような感じ」

「友だちをみても、別に彼らみたいな生活がしたいとは思わない」

富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなるように仕組まれた資本主義社会で、友人との経済格差は避けては通れない問題だ。私たちミレニアル世代は、クソみたいな仕事を心から愛し(例:〈好きなことを仕事に〉というスローガン)、自己ブランディングによって稼げるようになることを強要される。しかし、睡眠以外のあらゆる時間を収入源にあてるべき、というプレッシャーが高まるいっぽうで、マイホームを持てる保証もないどころか、老後に働かず暮らせるかすらわからない。そんな世の中では、毎月口座に振り込まれる額を友人と比べて、自分を責めたり、もしくは浮かれたりせずにはいられない。

友人たちより給料は少ないが、エレンは自分のほうが充実した生活を送っていると考えている。「友だちをみても、別に彼らみたいな生活がしたいとは思わない」と彼女は言明する。「ほとんどの子は仕事にまったく愛着がないし、業務の内容にも不満を抱えてるみたいだから」

「それは彼らが決めたことだし、みんなが会社勤めを選んだ理由も理解できる」と彼女は付け加えた。「私自身も経験したから、会社勤めがどんなものかも、そのつらさもわかってる。それで自分には合わないと思っただけ」

@RubyJLL

This article originally appeared on VICE UK.