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ネットの無意識が作り出すアニメーション

意識を介入させずにアニメーションを制作することは出来るか?20世紀初頭のシュールレアリストたちが目指していたものを、最新テクノロジーを駆使しアニメーターが実現。

生々しいという感覚はどこから来るのか。内蔵や血や吐瀉物を見て、思わず目を背けたくなるのは、それが身体の中にあったものだから?デザイナー兼アニメーターであるThomas Eberweinが率いるアニメーションスタジオ「Thomas Traum」は、その生っぽさをすべて機械仕掛けで作り出した。

Thomasは作品のために、Thumblerやニュースサイトなど、ネット上に転がっている画像を拾い集めるソフトを開発した。そこから好みのものをピックアップし、映像の中でレーザーを通していく。赤いレーザーはレコードの針のようにイメージの質感を読み取ると、音を生成しながらイメージを歪めていく。猫の顔やキスするレズビアンのカップルなど、妙に暴力的でグロテスクな感じがするが、すべては機械が生成したもの。

20世紀初頭に「シュールレアリスム宣言」(※1)をした詩人アンドレ・ブルトンは、意識のはっきりしていない状態で記述をするオートマティスム(※2)にこだわっていたが、共通するものがあるだろう。ネットの空間と人間の無意識に転がるイメージのグロテスクさは、どこか似ているのかもしれない。

脚注

(※1)シュールレアリスム:理性の支配を排し、夢や幻想などの潜在意識に注目した思想または芸術運動。1924年フランスの詩人アンドレ・ブルトンがシュールレアリスム宣言をしている。画家ではダリ、キリコ、エルンストなどが含まれる。無意識を「発見」したフロイトの影響が大きい。

(※2)オートマティスム:自動記述と訳されているが、ブルトンは「理性によって行使されるどんな統制もなく、美学上ないし道徳上のどんな気づかいからも離れた思考の書き取り」と定義している。