All Photos:Hit the Road
〈Hit the Road〉は、パリに暮らす4人の若いフリーランナーたちが結成したパルクール* 集団だ。2014年夏、彼らは、原子力発電所の文字どおりの〈中心〉に向かう旅に出た。「自然が市街地を侵食するさまを確かめたかったんだ。本や写真でしか知らなかったから」。グループのメンバー、クレメント・デュメー(Clément Dumais)は、パリのパブで話してくれた。デュメーは、フリーランニング集団〈Hit the Road〉をニコ・マシュー(Nico Mathieux)、そしてポール・RBD(Paul RBD)と共に2012年に結成。2年後に、もうひとりのフリーランナーであるレオ・アーバン(Leo Urban)がチームに参加した。グループを結成すると、最初の目標もすぐに決まった。まず、エッフェル塔を制覇した。「チェルノブイリにいけて、本当によかった」とレオ。「どうなってるのか全く想像できなかったし、見たところで言葉にできない」。ゴーストタウンに車で向かう前に、Hit the Roadはウクライナのキエフを訪ね、現地でパルクール、フリーランを実践する〈トレーサー〉たちに会った。彼らはキエフで、都市探索に通じた人物と合流した。その人物は、GPSを利用して3〜4回ほどチェルノブイリを探索した経験があるそうだ。「彼は、ルートも警察のチェックポイントも知っていた。なにより、どうやって警察を避ければいいかわかっていた」とポールは説明する。原子力発電所の周囲には、軍のチェックポイントがあって、立入禁止区域への侵入を厳重に警戒している。法を犯せば、裁判なしに収監される可能性もある。国際放射線防護委員会(ICRP)が提唱する年線量限度は、1ミリシーベルト。短い時間だったとはいえ、彼らは、森のなかで、最大5.20ミリシーベルトの放射線を浴びた。寝るさいも、線量限度を越えない場所を選んだが、それでも十分に注意しなければならなかった。「自分たちが目にした数値にとても驚いた。家へ帰りたくなったよ」とレオは振り返る。
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