夏といえば盆踊り。近所の神社では、某体育大学の学生さんによる裸踊りコーナーもあります。躍動感&筋肉美溢れるその舞に、あの子のお母さんも、この子のお母さんも、そしてうちの奥さんも、キラキラと瞳を輝かせています。体脂肪率一桁の男ダンス。ああ、でも残念ながら相撲部のみなさんは寮から出てきていませんね。KONISHIKIは踊っているのに。名曲「ドスコイ・ダンシング」知ってます?グレート・ディスコ・チューンなんですよ!というワケで、「Who Are You? 特別篇:Shall We Dancehall?」のラストです。ピコピコ動くスーパー人間のみなさんが登場します。
日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません?そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。
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EMICA(えみか)さん(25歳):ダンサー
「Who Are You? 特別篇:Shall We Dancehall?」の大トリでございます。よろしくお願いします。
お願いしまーす!
スミノフのCM、拝見しました。ウマそうなお酒ですね! 周りの反応はいかがですか?
まじスゲー!!! とひたすら驚きの声をいただいてます(笑)。電話やらメールがたくさん来て、パワーをもらっているよー! なんて。家族も喜んでくれましたし、本当に嬉しかったです。
テレビでご自分を観た感想は? セクシーですよねぇ。
最初はまったく実感がなかったです(笑)。母もいっていましたが、ダンスのDVDを観ているみたいで。
チガイを楽しみました?
楽しんだというか、すべてが最高で、すべてが勉強でした!!
EMICAさん、ダンス歴は長いんですか?
小学校6年生からなので13年くらいです。元々はヒップホップだったんですけど、現場でレゲエダンスを見て「やりたい!」と。そこからはレゲエ…ダンスホールです。
ericamaiさん同様、EMICAさんも宇都宮を拠点にしてらっしゃるんですね?
はい。
やっぱり宇都宮で、スクールの先生をやっているんですか?
はい、そうです。前はericamaiと同じスタジオだったんですけど、ジャマイカに行くときにやめて、現在は別のスタジオで教えています。
EMICAさんはレゲエクラスの担当?
はい。2クラス持ってまして、女の子の動きと男の子の動きで分けて、2レッスンやっています。
ん? 女の子の動きと男の子の動き? 女と男でクラスを別々にしてるんですか?
男の子の動きは男も女もできるのですが、ワイニークラスは女の子だけですね。
はい! 今日も早速ワイニー頂きましたー。
はい(笑)。腰を使う動きは女の子だけなで、そこは女子だけ! って、やっています。
保健体育の授業みたいですね。
あははは! 確かに。
ワイニー練習のときは、男子は入れないと。
入れないですね。
何人くらい女性の生徒さんはいらっしゃるんですか?
トータル20人くらいかな?
一番下の子はおいくつくらい?
19歳ですね。
ああ、よかった。小学生の女の子がワイニーしてたら、どうしようかと。
あははは(笑)。
一列になって、みなさんピコピコ、ピコピコしてるんですか?
一列ピコピコはしてないですね(笑)。一人ひとりの動きが見られるように踊ってもらって、指導しています。慣れてきたら、軽いフォーメーションなどで動いてみることはありますが。
「そろそろ実践に入りましょう! 男の子いらっしゃ〜い!!」みたいなのもあるんですか?
やるとしたら、男の子クラスでステップを男の子に教えつつ、「女の子はこう動きましょう〜」って、ペアでやります。Couple danceと言うのですが、今New styleで流行っていて、この前JAKENとビデオをつくったんですよ。
ああ、ステキ…。
でも、ワイニーしないっていう男の人もいるんですよ。
えっ? なんで? 超もったいない。
わかんないです。プライドですかね(笑)。俺はワイニーしないって。だから、無理やりしようとしたんですけど。
アハハハ! おケツ向けたんですか!?
拒否られました(笑)。「いいじゃーん! 初ワイニー奪ってやる!」って向かったんですけど。「いや、俺は絶対にしないから!」みたいな。
私の初ワイニーは捧げますね! EMICAさんは、男の子クラスの担当もされているということは、男ダンスもできると。
はい。でも元々は、まったくレゲエダンスに興味はなかったんです。聞くのは好きだったんですけど、ダンスに関しては…ただ露出して、お尻振ってるだけでしょって。でもある日、クラブに遊びに行ったら、たまたまレゲエをやっていて、そのときは関西のメンズダンサーも来ていたんですね。男の人のダンスは、そのときが初めてだったんです。むしろ男の人がレゲエダンスやるのも知らなかったんですが、それにすごい衝撃を受けたんです。これだ! と思って、その後ちゃんと学びたくてジャマイカに行きました。ジャマイカでもほとんどメンズダンサーのレッスンだけ受けてたんですよ。
レゲエのダンス歴はどれくらいですか?
5年くらいですかね。まだまだ勉強中です。
では、これまでのレゲエ道を教えてください。ご出身も宇都宮ですか?
いえ、栃木県の壬生っていうド田舎です。宇都宮と小山の真ん中あたり。今も住んでいるのは壬生なんです。畑ばっかり(笑)。静かで良いんですけど。
失礼ですけど、そんな静かなところからダンスホールまでの道のりって、結構遠いと思うんです。周りにダンスホールやってる方っていらしゃいます?
さすがにダンスホールはいないですね。でも、レゲエ好きな人はいるんですよ。歌をやってる人とかも。私の地元のダンサーだとヒップホップをやっている人はいますね。
EMICAさんも小学校の頃はヒップホップだったんですものね。
はい。でももっと小さい頃は、ディズニーランドの人になりたくて。ディズニーランドで踊りたくて。ディズニーランドで働きたくて。
本当に好きだったんですね(笑)。
はい(笑)。特にパレードを見るのが大好きだったんです。年に1回家族で行って、パレードの場所取りはお父さんを座らせて「ちょっと場所取りしといて♪」とか(笑)。
やっぱお父さんって大変よねぇ。
パレードを一番前で見たいし、参加したかったんです。踊れるコーナーがあるんですよ。「レジャーシート敷いて座ってて」って。
その間EMICAさんたちは?
遊んでました(笑)。「パパにゴハンかってきたよ!」って、一応渡しに戻ったり。今考えたら酷いし、かわいそうでした。パパ、ありがとう(笑)。
どういたしまして。ディズニーのどこ好きだったんですか? あの鼠?
キャラクターも好きだったんですけど、下で踊っているダンサーさんにすごく惹かれて、すごくなりたくて。ビデオとかもあったんですよ。あれを全部借りてきて、紙皿に絵を描いて、それをくっつけて家でパレードしていました。
紙皿パレード? 意味わかんないんですけど。
あははー。
紙皿に絵を描く?
まず、紙皿にミッキーの顔を描きます。耳が付いてる帽子とか売ってるじゃないですか? あれを被って自分がミッキーになって、パレードを家でやるっていう。
紙皿が耳ですか?
(カメラマン:宮本さん)いや、違います。
顔です(笑)。
(カメラマン:宮本さん)耳が付いてるカチューシャみたいなのを付けて、お皿でミッキーの絵を。
宮本さん、急に出てきましたね。どうしたんですか?
(カメラマン:宮本さん)いえ、ちょっと説明を。
自分の顔でいいんじゃないですか?
ダメです。ミッキーになりたいから。
そのミッキーの顔は誰が描くんですか?
自分で描いてました。
ちゃんと描けてるんですか? ちゃんとミッキーの顔になってるんですか?
それは記憶にないです(笑)。なんでも良かったのでは。爪楊枝で穴を開けてたのは覚えていますけど。点、点、点って。見えなくなっちゃうので。
ああ、目ね。似てなさそうですね。
夜のパレードあるじゃないですか? あれの真似をするためにクリスマスの電飾を体に巻いて踊ってたら、すごいお母さんに怒られて(笑)。「感電するからやめなさい!」って。
ericamaiさんはTLCっておっしゃってましてけど、EMICAさんのダンスのルーツはディズニーだったと。
はい! ディズニーです! 友達が遊びに来たときも見せてましたから(笑)。
紙皿ミッキー踊りを?
そう(笑)。
強引ですね。お友達はどうしてました?
手拍子してくれてました(笑)。ごめんね〜って思いながら踊ってたんですけど、やっぱ止められない。すごく満足していましたね。
続いて中学入学。 部活とか入りました?
バレー部に入りました。でも小学校6年生からダンスを始めていたので、水曜日だけは、早く部活を上がってダンススクールに行ってました。
ああ、ヒップホップ時代ですね。バレー部っていうのは、何でまた?
元々バスケ部に1週間だけ入ったんですけど、私、高い声が出ないんですよ。
は? 高い声?
部活のときの「ハァ〜イ」みたいな返事をするんですよ。
イクラちゃんみたいな?
その声が高いんです。それもすごくキャピキャピしていて。その女子感に混れないのでやめました。
「ハァ〜イ」ができなかったから、バレー部ですか。
バレー部はサバサバ、キビキビばっかりいたので。
元々キャピキャピはダメなんですか?
ダメなんです。私、おっさんなので。
そんなことないですよ。だからセクシーじゃないですか。
ありがとうございます。(笑)
じゃ、バレー部に入って、水曜以外はリベロやらセッターやらをやってたんですね。
いえ、親に内緒で1年間サボってました。
「ハァ〜イ」から離れた意味無いじゃないですか。サボって何をやってたんですか?
友達と近くの公園で遊んでましたね。サボってることをごまかすために、水道で頭を濡らして帰ったり。
具体的に何をして遊んでたんですか?
すっごいアスレチックがあったんですよ。
結局、体動かしてますね(笑)。
ケータイにカメラ付いた頃だったので、ずっと写真を撮ったりとか。逆さまにぶら下がって、その顔をすごいアップで撮ってみたり。
それスゲー楽しいですよね! 絶対、楽しいヤツだ!
でも結局はバレて、2年からはちゃんとバレーもしました。
中学の恋はいかがでしたか? お付き合いしたり、しなかったりは?
ダンスのスクールが同じ子と。一瞬で終わりましたけど。
一瞬ってどのくらい?
1ヶ月くらいです。
お名前は? 何くん?
シュンくん。
アハハ、いい名前だ。一瞬のシュンだ。
ああ、そうですね(笑)。
一瞬のシュンは誰に似てました?
森山未來さん。似てました。目がすごくキツくて。
世界の中心で、愛をさけばれました?
いえ(笑)。映画は観たことありますけど。
一瞬のシュンから告白されたんですか?
はい。
どうして、一瞬のシュンとは1ヶ月でダメになっちゃったんですか?
スクールは同じだったんですけど、学校は違うし、向こうは宇都宮で私は壬生、しかも中学生なんで、そんなに頻繁に会えないじゃないですか。それが嫌になったみたいですよ。
一瞬のシュンって失礼な男ですね。
あはは! いってやってくださいよ、本当に。
じゃ中学時代は、一瞬のシュンもいたスクールでヒップホップダンスをやって…
はい。でもここでジャズも始めました。
お! ジャズは今回のシリーズで初登場です。ジャズダンスってどんなのですか?
ジャズはバレエをベースにした動きが多く…
クラシックバレエですか?
はい。バレエをベースにしていて、基礎練習とかもバレエの動きをやるんです。安室ちゃんとかもジャズの動きありますね。ヒップホップみたいにずっしりした動きより、シュッとした綺麗なターンあるじゃないですか。ちょっと巻くような。
フムフム。
きれい目な感じのヤツ。あれがジャズですね。
安室ちゃんかぁ。その頃から、将来はダンサーになりたいなぁ、なんて?
もちろん。ディズニーランドからですから(笑)。
ああ、そうでした!
中2くらいまでディズニーランドを夢見てましたから。
そのあと変わったんですか?
はい。中3くらいから。
どんな夢になったんですか? USJ? よみうりランド?
テレビに出てるバックダンサーになりたいと。高校に行くつもりもなくて、卒業したらダンスのアクターズスクールに通おうと思っていたんです。
へぇ〜、そういう学校、結構あるんですか?
はい。それで、いろんな学校の話を聞いてみたんですけど、授業の一環でちょっとしたテレビに出られるところもあって。
ラッキーじゃないですか!
でもなんだか、簡単に出られちゃうっていうのが、私の中ですごく嫌だったんですね。
エライのう!
お母さんに相談をしたら、「だったら、自分の実力でダンスをやって、どこまで上がれるかやってみれば?」っていってくれたんです。「じゃ、とりあえず高校行くかぁ!」と、地元の高校に入りました。
どんな高校生活を送ったんでしょう。
その学校にダンス部が無かったんで、ダンス部をつくろうとしました。でもなかなか受け入れてもらえなくて、「じゃあ、同好会でいいのでやらせてください」ってお願いしたら、「顧問をつけなさい」といわれて、担任の先生に相談したんです。その先生は、書道部も見ていたんですけど、「じゃあ、書道室使っていいよ」みたいな。
あらー、じゃ、書道室に踊るスペースをつくっちゃった?
はい。テーブルをバーっとどかして。書道部の人は、小さいスペースで書いてました。
書道部、可哀想。
あはははは!!
笑うところじゃないでしょ(笑)。
一応、謝ったんですよ。書道部の方全員に。そしたら「どうぞ使ってくださ〜い」みたいな。
書道部の方が一生懸命に墨をすってる横で…
ボンスコ、ボンスコ踊ってました(笑)。
墨汁をかけられたりされませんでした?
ないです、ないです(笑)。
同好会員は集まりました?
最初は20人いたんですけど、私がシビアにやり過ぎて、最後は4人になっちゃいました。
厳しい指導だったんですか? スパルタ? 大和龍門?
軽い気持ちで入ってきた子もいたので、私のモチベーションとの差が出てしまって。年に一回学祭があって、それに出ていたんです。だからこっちも真剣だったんですけど、それでもふざけてたりとか、なんか食べててやらなかったり。「もうやる気ないんだったら、出てって!!」とかいってたら次々と(笑)。
出てっちゃったんですね(笑)。じゃ、同好会はそんな感じでしたけど、EMICAさんはダンススクールの方で、メキメキとご自身のスキルをアップさせていたんですか?
そうですね。毎週行ってました。
進路はどのように? 中卒で専門学校に行こうとしてたくらいだから、もうやる気マンマン?
ジャズをやってたスタジオの先生が、「進路どうするの?」って声をかけてきて、「今悩んでるんですよねー」って話を高3の頭くらいにしたんです。そしたらその先生が「よかったら、新しいスクールを始めるから、そこでインストラクターをやらない?」っていってくれて。
スカウトですね!
速攻で進路が決まったので、そこからは遊びまくりです(笑)。
いいっすね! 何して遊んでたんですか?
学校帰りはカラオケばかり。騒ぎまくって機械壊しちゃったり。
なんで? 蹴りまくってたんですか?
そんなことはやらないですよ(笑)。なんでか壊しましたね。
どんなの歌ってました?
その頃はジャパニーズレゲエとか。レゲエ好きの友達もいましたし。
もうレゲエにハマっていたんですね。
クラブは入れなかったので、横浜レゲエ祭には行ってましたね。でもそのときもまだ踊りたいとは思ってませんでした。
そして無事に新しいスクールに就職と。ちなみに当時の初任給を聞いてもいいですか?
これが変動するんです。うちのスクールって月謝じゃなくて、来たらプリペイドカードで払うみたいな感じだったので。
ん? プリペイドカード?? 1回教えるごとにいくらみたいな?
そうです。そのとき来ていた生徒の人数でお給料が変わるんです。
マジですか! まったく知らなかった…。そういうスタイルが当たり前なんですか?
今もそのスタジオはそういうカタチでやってます。
へぇ〜。
生徒からすると、月謝で払って、例えば4週ある中の3週仕事で行けなかったら、その分損してしまうじゃないですか。じゃあ1ヶ月6千円のプリペイドカードを買います。来れるときだけ、好きなレッスンを受けます。それで使い切ることができるから、勿体無くないんですよ。
でも先生にしたら…今日は何人来るとかわからないじゃないですか?例えば2人とかだったら?
それでももちろんやりますよ(笑)。習いたいって気持ちで来てくれてますし。
でも、頭の中でパチパチ…って計算しますよね?
だからその頃は、ドラッグストアでバイトもしながら、掛け持ちでやってましたね。
どうやって生徒さんを集めるんですか?
SNSで拡散したり、スタジオのホームページで宣伝したり。来た人に、ちゃんと細かく教えて、次に繋げられるようにって感じでしたね。
なるほどー。まず学校に来てもらわないといけない。そのあとEMICAさんのクラスに来てもらわないといけないっていう2段階。
そうなんです。
大変ですね。そのスクールには何年くらい?
それは2年くらいかな。最初フリースタイルのクラスをやってて、月ごとにジャズだったり、ヒップホップだったりをやっていたんです。そんな中で、先生が「EMICAのダンスって、すごい土臭いからレゲエもやったら?」っていわれたんです。クラブでレゲエダンスを見て衝撃も受けていたので、独学で教えていたんですけど、これじゃダメだなって思うようになり、それでジャマイカに行って勉強したくなったんです。一度インストラクターをストップさせようと先生に相談したら、「行っておいで」って。
やっぱ勉強しないと無理だって思いました?
そうですね。ヒップホップダンスだったら、テレビでもどこでも見られるけど、レゲエ…ダンスホールとかって、YouTubeくらいでしか観れなくて。DVDを借りて勉強したんですけど、それが合ってるのかもわからない。だったら直接見に行こうと。
いくつのときに行ったんですか?
21のときに初めて行きました。
どうでした? 初ジャマイカは?
もう、衝撃でした。
JAKENさんは空港に着いた途端、「ヤッター!!」みたいな感じだったといってましたが。
景色が違うし、人も違うし、車は傷だらけでボロボロだし。まずそこに食らって、「ウェ〜!!」ってなりましたね。命は自分で守りなさいとか聞いていたから、すごく怖くて、顔も真っ白で、気持ち悪かったです。「どうしよう? どうしよう?」みたいな。ホテルのおじさんが迎えにきてくれたんですけど、その人の車に乗ったら、ガソリンのEとかFみたいなメモリとか、スピードのメーターとかあるじゃないですか。あれが全部「0」なんですよ。
アハハハ!!
でも絶対に100キロくらい出てるんです。「やばい! やばい!」って。うわ、これは絶対に死ぬと。前の車のナンバーの横にも銃痕の跡がついてたり。私絶対にもう死ぬ〜! と。でも、いろんなダンサーさんと一緒にパーティーに行ったり、向こうに住んでる日本人の方にも会って話を聞いたり、山の上に行って夜景を見たりしているうちに、これはダンスを知る以前に、ジャマイカを知らないとダメだって気付いたんです。それで帰国してからさらに勉強を始めました。
どんなお勉強をしたんですか?
それこそジャマイカの歴史だったり、言葉だったり。
あ、パトワ語?
はい。今でも勉強中です。
わかるようになりました?
早く話されるとわからない場合もありますが、なんとかチョコチョコと。
帰国されてからお仕事はどうされたんですか?
ダンスのインストラクターもやめていたので、バイトをしてました。合間に自分のショーをやったり。そしてお金を貯めて、翌年にまたジャマイカへ。そこでメンズたちに教えてもらいました。
おお、本格的に始動ですね。どんなレッスンだったんですか?
ダンスJAっていうスタジオがあって、まずはそこで女性のレッスンを受けたんですけど、やっぱりステップを覚えたいっていうのがあったので、メンズダンサーと集まって、家の庭や道路とかで、夕方から夜にかけて練習していました。
どんどん上達していきました?
そうですね。その子のチームのルーティーンは全部覚えて、パーティーに行ってもそのチームでずっと踊ってました。
いきなり日本人女性が来て、「教えてくれ!頼むー!!」ってお願いしたら、引き受けてくれるものなのですか?
はい。ジャマイカの人のダンサーは、ダンスで食べていこうと必死ですので…
あ、ちゃんとお金! そっか、そっか。
そうです。ちゃんと払って。そこが収入源ですから。
1回おいくらなんですか?
結構アバウトなんです。「1時間800円ね」っていっても、3時間やってくれたり。
時給800円。サイゼリヤの高校生くらいかな? そのメンズチームと恋が芽生えたりはありませんでした?
う〜ん…ありましたね(笑)。
いいですねぇ!! その方のお名前は?
(笑)。
あら。一瞬のシュンは教えてくれたのに。
いえ、まぁ…(笑)。私的にいい思い出が全然なくて。
あら。だめんず? 浮気性?
まぁ…(笑)。元々の文化が一夫多妻だったから、モテるのが当たり前みたいなことを言うんですよ。でも、時代はちょっと変わって、今のジャマイカの男の子は、一途な人もいるみたいです。
なるほどねー。結構亭主関白みたいな感じですか?
例えばワイニーも、他の人とすると怒られましたね。「オレガイルノニナンデヤッテンダー! ホカノヤツトワイニースルノカ! シリガルオンナダトオモワレルゾー!!」って。
やっぱり神聖なものなんですね、ワイニーって。
ダンスですが、もとは求愛のダンスですから。それでもやはり上手い下手があって、結局リズムに合ってなかったり、自分のタイミングじゃないときにワイニーされると、ジャマイカの女の子は男の子を跳ね除けたり、蹴ったりするんですよ。初めて見たときびっくりしました(笑)。
カッケーっすね! ちなみに本場のダンスホールを学んで、なにか変わりましたか?
心底踊ってます! って感じで、爆発している時間が多くなりました。ショーケースやってるときは、記憶がまったく無くなるんですよ。お客さんここにいた、あそこにいた、なんてことも覚えていない。どこで間違えたかも覚えてない。すごくハイになっていて、それぐらい自分を爆発させてくれるダンスって、この世に無いなって思いましたね。最初の頃は、緊張していたんですけど、だんだん学んでいくうちに、歌の意味も文化もわかってくる。「そうか! そういう意味だから、ここはこうなんだ!」って、わかって踊ると、すごく気持ちよくて…確実に記憶が無くなりますね(笑)。
踊っているときのお顔、拝見したいですね! それで現在はスクールで保健体育の先生をやっていると。
(笑)。宇都宮のクラブの中で教えているんです。『STELLA』っていうクラブで、浅草と上野にもあります。
ericamaiさんは週5ペースで東京に来ているといってましたが、EMICAさんも?
多いですが、私はショーがあるときだけ来ています。宇都宮でアパレルもやってまして。
あら!
セレクトショップでも働いています。私仕事を4つやってて。
4つも! 全部教えてくださいー。
ダンスインストラクターとセレクトショップ…
フムフム。
あとネットのモデルをやってて…
ネット! モデル! セクシーモデルなのか?
いえいえ、この体型なので小さいの入らないんですよ(笑)。なので、輸入物のダンス服メインのやつです。茨城に本店があるんですけど。
なんていうお店ですか?
『JUICY SOUL』っていいます。
ほほう〜。で、もう一個のお仕事は?
お母さんと衣装もつくっているんです。お母さん、服をつくるのが好きだし、派手目なのも好きなので(笑)。
ヘェ〜。EMICAさんもお洋服つくれるんですか?
はい。本当はミシン大嫌いだったんですけど、お母さんに、つくったほうが早いよっていわれて、教えてもらいました。でもモデルとデザイナーは、服が入荷したときと、オーダーが来たときだけなので、ベースは、セレクトショップとインストラクターになりますね。
ショーとかイベントって、月に何本くらいあるんですか?
多いときで5、6本でしょうか。やはり週末が多いですね。
ちなみにレゲエのイベントってどんな風に進むのですか?
オープンの時間から大体セレクターが回し始めて、メインタイムに歌とダンスのショーがあります。
あ、ライヴみたいな感じなんですね。
そうですね。DJだけのイベントはあんまり見たことないですけど、レゲエは基本的にダンスがなくても、歌い手がいるときもあるし。
そういうイベントって増えてるんですか?
レゲエイベントは減ってますね。
減ってるんですか?
はい。一般の方からすると、レゲエって入りづらいらしくて。ワイニーされたらどうしたらいいかわからないじゃないですか。
確かに急にされたらビックリする。
じゃなくともレゲエダンスって独特で入りずらいし。
ふむー。
一般の人が現場に来ると、境界線が結構見えてしまうんですね。ダンサーはガツガツ踊ってて、一般の人は塀の外みたいな。
ふむふむ。
それもあって、ericamaiとMO-JOっていうチームを始めたんです。なるべく周りを見て、踊りたいけど、踊れないってお客さんに声をかけて、教えてあげようって。一般の人が足を運んでくれるためには、自分たちが動かなきゃいけないってわかったんです。
なるほど。それもあって、ダンスホールだけじゃなく、ヒップホップのericamaiさんもご一緒されてるんですよね。
そうです。1人、1人が濃いメンバーでやろうと(笑)。
はい(笑)。油濃いめどころじゃありませんよね。
あはは! で、お尻出して、バーってやって、男の子も踊って、っていうのがジャマイカの文化なんですけど、それってレゲエの現場に行けば見られるものじゃないですか。だから私たちができることってなんだろうってときに、クラブだけじゃなくて、老若男女、お客さんが見ていて楽しい、引き寄せられる、私たちもやりたい、って思ってくれるようなショーにしたいんです。
でもまずはイベントに来てくれないと、その楽しさはわからないですよね? 結構高い壁ではありませんか?
ですので、来てくださるようにSNSを使っています。曲を和訳して投稿したり、インスタグラムで『#MOJO_MONDAY』っていうのを毎週月曜日に、動画配信をしたり。
やってますねぇ!!
結構反響があって、大阪遠征に行ったときもすっごく知らない人がいっぱい来てくれたんです。「MO-JO観に来ました!」っていう方々がいっぱい。すごく嬉しかったですね。
今回のEMICAさんで、「Shall We Dancehall?」は終了なのですが、私も本当に何も知らなかったんです。レゲエダンサーさんの役目も、ワイニーも知らなかった。レゲエクラブっていったら、「ンッチャッ、ンッチャッ」って流れてて、セレクターの方がいて、ゆったりと飲んでんのかな? って。
そうですよね、わかりませんよね。だからきちんと楽しいってことを伝えていきたいんです。
JAKENさんも「レゲエを広めたい」っておっしゃっていたんですが、危機感みたいなものも感じていますか?
危機感っていうよりは、寂しい、悲しいに近いですかね。「横浜レゲエ祭」とかって、アリーナに集まるくらい人が来るじゃないですか? それだけレゲエが好きな人がいるのに、なんでクラブには遊びに来ないの? って。そう考えたときに、すごく悔しいし、寂しい。でも、サウンドも歌い手もダンサーもそうなんですけど、お客さんにちゃんと歩み寄ってるのかな? って。ショーをやったら、フロアに行って、踊って、楽しんで、一般のお客さんと交流しないと。こちらから歩み寄らないとなって。それもナシで終わりっていうのはすごく悲しい。そこを繋げなければって強く思っています。MO-JOがいると、一緒に踊れるから楽しい。だからパーティーに行こうっていうお客さんが増えてくれると嬉しいですね。あとは、私もダンサーになりたい、私も歌い手になりたい、サウンドになりたい、なんて方が増えてくれればステキですね。レゲエ人口も増えますし。
本当にレゲエが、ダンスが好きなんですね!! では最後にEMICAさんの未来予想図を教えてください。
とりあえず、将来的に子供はちゃんと欲しいし、結婚も。…幸せになりたいです。はい、とりあえず(笑)。
今、お付き合いされている方はいらっしゃるんですか?
いません。もう4年くらいいない。虫とゴミしか寄ってこないです(笑)。
ゴミって(笑)。
子供が大好きなので。子供は欲しいんですけど、男が面倒臭いんですよね(笑)。
お子さんができたら、ダンスをさせたいって思います?
思うけど、無理矢理にはさせたくないですね。やっぱり好きなことをやらせたいです。
じゃ、書道したいっていわれたら?
やらせます、やらせます、もちろんやらせます! 「筆の上に10円玉乗っけて練習しな!」って。落っことしたらダメだからねって(笑)。
墨汁かけられちゃうかもしれませんよ?
それはないです。書道部の人たち、優しかったんで(笑)。あと、MO-JOでいったら、全国ツアーとかできたら面白いですけどね。
毎日、本当に忙しいそうですね。
忙しいのはいいことなんですよ(笑)。
※「Who Are You?」では、インタビューを受けて下さる方を募集しています。自薦、他薦、構いません。お名前、ご年齢、性別、お住まい、ご職業、応募の動機を明記の上、こちらまでお問い合わせください。(Shall We Dancehallでの募集はしておりません)