カイロのゲトーを彩るエル・シードのカリグラフィティ

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カイロのゲトーを彩るエル・シードのカリグラフィティ

チュニジア系フランス人アーティスト、エル・シードは、自ら「カリグラフィティ」と称す、希望を謳うストリート・アートで知られている。これまでにもリオデジャネイロのファベーラから、ケープタウンのシャンティ・タウンまで、あらゆる街を塗りつぶしてきた。彼は、このプロジェクトがザバリーンに対する偏見を打ち壊し、「誤った考えをいっ掃」するのを望んでいる。
6.5.16

エル・シード(eL Seed)は、カイロ郊外、マンシーヤ・ナーセル(Manshiyat Nasr)の建物50棟にアラビア文字のカリグラフィを描いた。このプロジェクト「Perception」は、4世紀のアレクサンドリア大主教、アタナシオスの箴言、「陽の光をはっきりと捉えたくば、まず、己の眼を浄めよ」を基にかたち創られた。

チュニジア系フランス人アーティスト、エル・シードは、自ら「カリグラフィティ(calligraffiti)」と称す、希望を謳うストリート・アートで知られている。これまでにもリオデジャネイロのファベーラから、ケープタウンのシャンティ・タウンまで、あらゆる街を塗りつぶしてきた。彼は、このプロジェクトがザバリーンに対する偏見を打ち壊し、「誤った考えをいっ掃」するのを望んでいる。ザバリーンが永らくカイロ社会の隅に追いやられているのは、大勢がムスリムの国のなかで少数派のコプト教徒である、という理由に加え、彼らの生業がゴミ収集、分別だからだ。

All images courtesy eL Seed

2015年3月、バンクーバーで開催されたTEDに登壇したエル・シードは、「アラビア語のカリグラフィを通じて人々、文化、世代をひとつにするのが私の取り組みです」と公言した。希望に満ちた言葉、詩をアートに昇華させる彼の「カリグラフィティ」は普遍的意義を内包しており、社会から見て見ぬ振りをされ、疎外され、誤解されているコミュニティを団結させるのにひと役買っている。

「私たちは、『差異』が紐帯を引き裂いてしまう時代に生きています。自らと異なる個人、外のコミュニティを、間違って捉え、誤解しています。この事実を世間に知らせたいんです」とエル・シード。

エル・シードは、住民の信頼を得るために、地元の宗教指導者たちと活動をともにした。その結果、住民たちは彼を自宅に招待するようになり、プロジェクトにも関心を抱くようになった。このプロジェクトは、エジプト政府に無許可で進められた、勇敢で見事な試みであった。この自腹のプロジェクトは、3週間以上の制作期間を要し、描き、プロジェクトを運営したクルーは21名を数えた。彼らは、毎日、朝8時から夜7時まで、レンガの壁に作品を描き続けた。

エル・シードは、「まず、作品にしようとしたエリアを写真に収めて、次に、ピースを紙にスケッチしました。そして、先に撮影した写真をPhotoshopで拡大し、作品を描く予定の建物をプリントアウトし、その上にカリグラフィを描いたんです」

その結果、カイロ南東部に位置する洞窟教会「聖サイモン修道院」から眺めると、全貌がわかる素晴らしい芸術的パズルが完成した。この教会は、コプト教徒にとって重要な信仰の象徴であり、コミュニティ内では矜持を地域の各家庭に植え付け、コミュニティ外には、歴史的文脈における教会の政治的ポジションを認知させる役割を果たしているのだろう。

2009年に公開されたドキュメンタリー映画『Garbage Dreams』は、ザバリーンのコミュニティを、「どこの近代的な『グリーン』イニシアチブよりも先を行っており、彼らは収集したゴミの80%をリサイクルすることを生業にしている」と説明し、「それとは対照的に、欧米のゴミ収集企業のほとんどは、集めたゴミの20~25%しかリサイクルできていない」と強調している。ザバリーンのゴミ収集システムは、世界中の固形廃棄物のリサイクル・システムを専門的に研究し、それを改善するために世界銀行(World Bank)、フォード財団(Ford Foundation)、オックスファム(Oxfam International)から資金援助されている。

エル・シードは、彼の作品がコミュニティを前向きに盛り上げられれば、と期待している。「このプロジェクトが、ザバリーンの暮らしにスポットライトを当て、カイロの日常における彼らのポジションがいかに意義深いか、それが世間に広まれば幸いです。それと、プロジェクトに触れたみんなが、誰かを安易にジャッジしなくなれば尚良しです」