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パチモン・レストランをロンドンNO.1レストランに仕立て上げる

デマ情報ばかりが流れるこの世界で、世間は自ら望んで、完全なるデタラメを信じ込もうとしている。ならば、〈偽レストラン〉も不可能ではないのでは?検証しよう。偽レビューと、神秘的な雰囲気と、ナンセンスの力を借りて、実際に挑戦してみよう。トリップアドバイザー上で、自宅の物置スペースを、ロンドンのトップ・レストランに仕立て上げるのだ。

25 December 2017, 11:44amSnap

昔々、VICEでライターとして記事を書き始めるずっと前、私は別の仕事をしていた。そのなかでも、今日の私に大きな影響を与えた仕事は、〈トリップアドバイザーで偽レビューを書く〉という仕事だった。いち度も訪ねたことのないレストランの好意的なレビューを書き、報酬は10ポンド(約1500円)。やっているうちに、レビューしたレストランの評価を監視するのに夢中になった。レビューがきっかけで、評価が上がったりもしたのだ。

2017年4月―レストラン〈The Shed at Dulwich〉設立

10ポンドをチャージし、こうしてレストラン〈The Shed at Dulwich〉はオフィシャルな存在になった。次に、住所を入力しなくてはならないのだが、本当の住所を入れると簡単に事実確認されてしまうし、文字どおり、ここには〈入口〉がない。仕方がないのでストリート名だけ記し、「完全予約制レストラン」と称した。

〈安心感〉
削りベーコンで香り付けしたヨークシャー・ブルー・マカロニ&チーズ 600tcエジプトコットンのボウルで サワードウ・ブレッドとともに

〈幸福〉
タラのシャンパン&ハニーロースト 前菜は〈おばあちゃんのミネストローネ・スープ〉 5-HTP注入のチェーサーとともに

Photo: Chris Bethell

Photo: Chris Bethell

Photo: Chris Bethell

Photo: Chris Bethell

こうしてコンセプト、トリスタン・クロス(Tristan Cross)氏によるロゴ、そしてメニューがそろった。

〈The Shed at Dulwich〉様の弊社サービスの利用を感謝いたします。

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むしろお礼をいいたいのはこちらのほうだ。貴社サービスに〈The Shed at Dulwich〉を載せていただいてありがとう。感謝いたします。

No.1レストランへの道

ところでトリップアドバイザー上の動きに関しては、弊社法務の指示で全てスクリーンショットを撮っている

『Chef’s Table』好きな人にオススメ

〈The Shed in Dulwich〉はトリップアドバイザーで見つけました。ネット予約はできないようなので、電話予約をしました。1週間以上かけ続けてようやくつながって、予約をとることができました。もっと簡単に予約できればいいなとは思いましたが、非常に楽しみでした。

英国人タレントのショーン・ウィリアムソン(Shaun Williamson)とパブで出会ったさいに、今回のプロジェクトのコンセプトをイチから説明し、オシャレなレストランでオシャレな食事をしている写真を撮って送ってくれ、と頼んだのだが、そのあと届いたのは、普通の炒め物みたいなメイン1皿とサイドディッシュにチップス、というこの残念な写真だった。

上がっていくランク

「もしもし? 〈The Shed〉さんでしょうか?」

1晩で、ランキングは1456位になっていた。〈The Shed at Dulwich〉のアピール力は突然増したらしい。どうしてだろう?

手に負えなくなってきた

まず、飲食関連業者などが、Googleマップ上で位置を推定した〈The Shed〉宛てに無料サンプルを送ってくるようになった。さらに、バイト志望者も大勢連絡してきた。ロンドンのブロムリー区再開発を進めている地方議会から、ブロムリーへの移転を勧めるお誘いメールもあった。また、オーストラリアの制作会社からも連絡があり、とある航空会社の機内ビデオで〈The Shed〉を特集し、世界に広めないか、といわれた。

とあるPR会社とSkypeで話す筆者

最終的に、PR会社とのSkypeミーティングまでした。彼らは「結果に貪欲」とのことで、わがレストランを〈Mail Online〉に掲載しよう、バットマンをテーマにしたキャンペーンで、リジー・カンディ(Lizzle Cundy)を200ポンド(約3万円)でブッキングしよう、と提案してきた。担当者は私を「超ステキです」と評してくれて気分がよかったが、結局、自ら宣伝することにした。

最後のひと押し

冬になった。〈The Shed〉のランキングは30位。

道を歩けば、〈The Shed〉はどこですか、と通行人に尋ねられるようになったし、着信の数はとどまるところを知らない。

予約のEメールは世界各国から届くようになった。

バレたわけではなかったようだ。それにしてもどうして? その答えはこれだ。2017年11月1日、掲載から6ヶ月で、ついに〈The Shed at Dulwich〉は…

トップの孤独

「もしもし、〈The Shed at Dulwich〉です」

もはや、このプロジェクトを始めた私に残されているのは、実現させることしかない。4日で、ロンドンいちのレストランを現実にしようではないか。〈The Shed at Dulwich〉開店だ。

ついにその日が

〈The Shed〉が成功できたのは、ひとえに、トリップアドバイザーでうまくやったからにすぎない。だから席の半分を知り合いで埋めて、何がテーブルに出てきても、サクラとして大声で「おいしいおいしい」といってもらうことにした。

そして実際のレストラン独特の雰囲気を演出するために、DJに頼んで、CDJで〈レストランのサウンド〉を流してもらう。

これでOK。
追加の客席は…

そこでジョー(Joe)がやってきた。友人であり、本日のシェフだ。彼はこの10年世界じゅうを旅し、一流レストランで働いてきた。〈The Shed〉のシェフにふさわしい。さあ、次は食材だ。

〈店〉に戻ると、既にフィービー(Phoebe)が来ていた。彼女は直観が鋭いウエイトレスで、私たちのメニューのニュアンスを正しく汲み取ってくれる。プディングをマグカップに入れて提供したい、といえば、われわれの目的は、マグカップに入ったプディングを食べるのがいかなる体験かを〈再現〉することだ、と彼女は理解してくれる。

〈レストランの音〉を流すDJ。

カリフォルニア在住のジョエル(Joel)とマリア(Maria)。今回、休暇で初めてヨーロッパへ来ている。昨夜までパリに滞在しており、今日、ロンドンにやってきた。つまり、ロンドン初日のディナーだ。翌日、街中でポケモン会議があるらしいが、初日の夜は〈The Shed〉で過ごしたいと考えたそうだ。

キッチンへ駆け込み、ジョーからメイン2品を受け取る。DJに指示して、〈チン!〉という音を頻繁に鳴らしてもらった。電子レンジの音を紛らわせるためだ。

彼らを席に案内し、ドリンクをとりに戻ると、キッチンから叫び声が聞こえた。外に出ると、4人客のうちの女性ひとりがギャーギャーいいながら店内を走り回っている。紹介を忘れていたが、鶏の〈雇用主〉のトレヴァー(Trevor)が、バタバタと羽ばたきする鶏をもって彼女を追いかけている。

鶏を抱くトレヴァー

私は友人でコメディアンのローリー・アデフォーペー(Lolly Adefope)に耳打ちし、誕生日のお客さんに向けて、特別にバースデーソングを歌ってもらった。ローリーは歌い始める。いっしょに歌ってくるお客さんたちに向かって、「シーッ」と静かにするよう制すると、アカペラで歌い切った。非常に美しかった。

Tagged:

Oobah Butler, サウス・ロンドン, フード, トリップアドバイザー, パチモンシリーズ, レストラン

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