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ミシェル・ゴンドリーが哲学者ノーム・チョムスキーの人生をアニメで描く

フランスのイラストレーター、映画監督・作家ミシェル・ゴンドリーの最新作、ノーム・チョムスキーの思想と人生をアニメーション化した『Is the Man Who is Tall Happy?』の制作の裏側に迫る。
15.5.14

チョムスキーの人生を描いたアニメーション映画

アクティビスト、作家、哲学者、マサチューセッツ工科大学教授、そして偉大な思想家であるノーム・チョムスキー(US)の人生は、興味深く、変化に富んでいる。フランスのイラストレーターで映画監督のミシェル・ゴンドリーは、最新作『Is the Man Who is Tall Happy?』においてチョムスキーの思想の核に迫り、その多面的な知性を、ストップモーション・アニメーション(※1)を使って表現した。The Creators Projectは今回、ゴンドリーのニューヨーク、ブルックリンの自宅を訪ね、彼がどのようにしてチョムスキーの理論と見解を、色鮮やかなアニメーションに仕立て上げたのかを探った。

チョムスキーとゴンドリーの対話

チョムスキーの並外れた知性と彼のメッセージに深く感銘を受けたゴンドリーは、自分にできる何らかの方法で貢献したいと思った。『Is the Man Who is Tall Happy?』のためのイラストは、長年にわたる幾度ものインタビューを通して語られた、ゴンドリー本人とチョムスキーの対話に基づいて描かれた。大学院生が最高の恩師から講義を受けているかのような調子でゆっくりと展開する、哲学、言語、人生、そして愛についての黙想だ。ゴンドリーはこう語る。「彼の人間らしい一面を描きたかったんだ。そうすることによってより多くの人が、彼の政治論に耳を傾けるだろう。政治や環境についてのノームの考え方は、よりよい世界を作るのに重要なものだ。」

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ゴンドリーにとってのイラストレーション

ゴンドリーを世に知らしめた代表的な例として、ビョークやザ・ローリング・ストーンズ、ケミカル・ブラザーズやレディオヘッドなどの数多くのMVや、『恋愛睡眠のすすめ』(2006)、『エターナル・サンシャイン』(2004)と、過去の映画作品とは異なり、イラストレーションは、ゴンドリーにとって極めて流動的な創造手法だ。そして同時に、おそらく書き言葉より本質的な、自己表現の最たる手段でもある。ゴンドリーは、新作映画『ムード・インディゴ うたかたの日々』(2013年)の出演依頼をフランスの女優オドレイ・トトゥ(※2)にした際に、単純にEメールを送る代わりに、ゴンドリー自らが空を飛んで彼女に手紙を届けるという、心の込もったアニメーションを作ったそうだ。その結果、ゴンドリーの願い通り彼女がキャストへ加わることに成功した。

手描きと16ミリカメラによる制作手法

撮影は、伝統的なストップモーションの手法を採った。ゴンドリーは、全ての原画を描き始める一番はじめにまず、錨の中心となる小さな点を描くことからスタートした。3年という歳月をかけ、自らのブルックリンのアパートで夜な夜な画板と向かい合い、ひとコマひとコマ丹精に描き続けた。そして、16ミリカメラを使って静止画の撮影を重ねた。CGやVFXなどは一切使わず、撮影後の過程で使用したシンプルなブルーバック以外は、斬新かつ堅実なカメラの技法だけを用いて全編が撮影された。

こうして、チョムスキーの言葉が少しずつアニメーションとなっていきき、ついに映画が完成した。「抽象アニメーションを使った理由は、それが唯一の方法だと思ったからだ。単純化しすぎることなく、科学を描きたかった。」と、ゴンドリーは語る。

昔の映画のような艶消しの質感を出すため、あえて骨の折れる方法をとって丁寧に作られたこの作品は、ある最高の支持者から観た、ある類まれな人物の深遠なポートレイトだ。

脚注:

(※1)ストップモーション・アニメーション:静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしカメラで撮影し、あたかもそれ自身が連続して動いているかのように見せる映画の撮影技術、技法。

(※2)オドレイ・トトゥ:フランスの女優。映画『アメリ』の主演女優として有名。