日本のお笑い芸人、くっきーこと肉糞太郎が海を渡る。最上のマスターベーションはボーダーを越えるのか?2019年4月5日より米国ニューヨークでおこなわれるアートエキスポに、クッキーこと肉糞太郎の絵が出展される。日本のファンにはお馴染みの日本の〈笑〉は、アートに酔いしれようとする、成金野郎に、通じるのか?
まずはじめにくっきーランドを始めたきっかけを教えてください。
もともとは似顔絵をインスタにあげてたやつをまとめてやりませんか? みたいな。2017年に渋谷区のファッションショーがあって、それでラフォーレで、なにかやれないかといことで。そしたら、初日なんか、会場から地下まで行列ができてたんです。コラボでソフビを出したんですけど、それが値打ちあるやろって。転売屋のホームレスがいっぱい発動してもうて、ラフォーレ前が、めちゃめちゃ臭なったんですよ(笑)。そんなふうに、えげつない人がきっちゃって。それで多分吉本がいけんちゃうかって。(笑)
それが、ついにニューヨークですね。アートエキスポに出展されるんですよね?どの作品を出展するんですか?
これも会社に言われて(笑)。出展するのは全部新作なんす。もともと描いてたやつってなんか愛着がこもっててあんま売りたくない。というか、ま、売ってもええやつを描こうという。だから全部愛着ないやつばっかりです(笑)
じゃあホームページで上がってるやつが売る作品ですね? また、1枚1枚人物設定をしてますよね。どういう発想で人物設定をしてるんですか?
一応ね、これジャンルがあるんですよ。下に紹介している4つの作品が欲望系ですね。上から下にかけて徐々に綺麗になりたいという欲が目覚めていくさまを現してるんです。立体の薔薇で飾ってるやつは、もう全部一緒で肉味噌貴族のやつですね。
イザベラ(トップの作品)だけがちょっと例外なんですよね。
このシリーズは、〈肉糞乙女〉っていうジャンルなんですけど、イザベラは肉糞乙女のルーツなんで。言うたら宇宙を表す、ゼロ、イザベラビックバン(笑)。で、これが1番思入れが強いし、1番丁寧に描いてますね。初めて描いた乙女なんで。
どういうきっかけで描こうと思ったんですか?
きっかけ、きっかけ、なんやろな。もともと、チェチェなちゃんていう、自分の頭に花飾りを被ってるキャラがあるんですけど、それを平面に置き換えたっていう感じですけど。ま、汚ねえ顔にきれいなものを飾ったら、きれいに見えんちゃうのと思って飾ったら、なんとも微妙な気持ち悪さになって。やっぱ気持ち悪いのはなかなか消せないですね。
くっきーさんのイメージでは笑いを絵画にするっていう感覚で作ってるんですね?
そうですね。全然アンチな意見じゃないですけど、芸人が絵を描くってなると、意外とまじめに描いたり、ちょっと感動系にいったりとか。僕はそれでけへんというか、そんな脳みそを持ってなかったんで、それやったら、なんかもう笑いというか気持ち悪いというかね。そもそも僕の笑いが気持ち悪い笑いなんで(笑)。こんななっちゃったって感じっすけど。
笑いは、国境を越えて表現しようとすると、どうしても言葉のがネックになってくるのかなと。あと言葉を使った表現っていうのが、なかなか伝わりづらかったりしますよね。絵として抽象的に表現すると、どの世界の人でも笑えるのではないか、とか、手応え感じますか?
手応えはどうなん? なんか芸人的にもそやけど、あんま周りを気にしないタイプなんで、自分がなんとなく、こいつの顔描いて、こんなかわいい感じで、設定つけて、もうオナニーを人に見せてるみたいな。マスタベーション画というか。だから共通でおもろいとか、気持ち悪いとか、おんなじ気持ちになってくれる人もおりゃ、完全に何見せてんねんっていう人もおると思うし。
国境を超える活動って興味あるんですか?
ま、ま、ま、でも。好きは好きですね。1回パリに行かせてもらったんですよ。お仕事で。それこそレオタードとか着て、街歩いたりしたんですけど、僕がやってることって芸風と一緒で嫌いな人は嫌いやし、好きな人は寄ってきて写真撮ったりするんですよ。果物屋のおっさんめっちゃ来たりとか。若い子とかすごい嫌がってるとか。海外いっても同じ反応やなと。ってなったら日本でそこそこ知名度上がってんやったら、海外で売れるどうこう別にして受け入れる人はおるんちゃうかなって。
今回のシリーズでアメリカ人に何を伝えたいですか?
あんま、ほんま何も考えてない。後付け後付け人間なんで、アメリカとかメッセージ性あったほうがいいんでしょ?
現代アートの世界ではそうですね。割と論理的にみんな説明して、客も聞くのが好きみたいですね。
なんか、美術の学校でも説明の仕方を教えたりって聞いたんですけど。マジそれダセエなみたいな。説明受けな、ええと思われへん絵って、ダサく感じて。もし客がきて「この絵はどんな意味なんだ」って訊かれたら、意味なんかねえわって。おめえが考えろって。一応これはこういうジャンルの長女ですよって、これはこういう意味ですよとは説明できるんすけど、そんな政治的な意味とか全くないし。
あとはくっきーっていう名前で英語表記をするのではなく、今回は肉糞太郎でアーティスト活動はされてるんですよね。海外でも同じ肉糞太郎で活躍されるんですか?
そうですね!
くっきーっていう名前をつけた理由ってあるんですか?
くっきーはもともとベッキーに寄せたという。当時、清潔感もあって国民に人気やったんで、そっちに寄せようと思ってつけたんですけど。ものの見事にベッキーが潰れていった(笑)。奈落の底に(笑)
食べるクッキーと同じスペルですか?
そうですね。
ちなみにcookieってスラングでなんて意味か知ってます?
なんすか?
女性器らしい。
そうなんですね(笑)。ああ、ほな良かったです。ま●こっていってるのと一緒でしょ? 危なかったな。それは。(笑)
絵を描くのはネタを作る意識と同じですか?
一緒ちゃいます? 媚びることができない。っていうか2つあって、こっちが俺は好きなお笑いやけど、こっちの方が受けるってラインってあるじゃないですか。それももう明確にわかるっていうか。なんかこっちやんの恥ずいんですよ。かっこ悪いとかなんかそういうことダッセーみたいな。
ずっとやり続けてたら、周りが喜びだしたみたいな?
そう。だから、ずっとひん曲がってたら正常なところへいったみたいな。
お笑いだけじゃなくて、アートもバンドもやっているんですか?
なんか好きなんですよ。ま、お笑いは好きなんかどうか、1番金稼ぐとこやからメインにあって。元々は好きやったんでしょうね。ほんで、バンドと絵描くっていうのは完全趣味レベル。趣味の一環。でも趣味も草野球すんのも、うまくなかったらおもろないじゃないですか。だからある程度うまくなろうとしてるしって感じですかね。
もともとどういう絵が好きだったんですか?
ピカソとか聞いたことない(笑)。何の興味もない。うーんなんかそう、『キン肉マン』とか『特攻の拓』です。
殴られて顔がボコボコになってる顔ととか。
そうそう『グラップラー刃牙』とかね。
なるほどね。漫画からの影響って言ったらアメリカ人は喜ぶじゃないですかね(笑)
なるほど。『ワンピース』とかね。(笑)
絵を見てるとちょっとスミが入ったような色が特徴ですね。一見ピンクだったり水色だったり黄緑だったりするけど、ちょっと毒っけが感じられると思ったんですけど。
よく、お気付きで。実は赤でも絶対色混ぜてるんですよ。だから普通の赤はないんですよ。
笑いだけじゃなく、カラーについても王道の赤じゃなくて濁った赤がいいってことですね。
そうなんですよね。お笑いと一緒で王道の赤ダサいと思ってますね。ダサい以外が好きっていうことじゃないですけど。でも、絶対白はうっすら混ぜます。ほんまにどの色にも白は絶対混ぜます。あと絵の具を水で溶いた汚い水を利用して色混ぜたり、秘伝のタレみたいな感じなんですよね(笑)。あれ5枚くらい描かな、色変えない感じなんですけど。
どれくらいの時間で1枚描くんですか?
ほんまにこれ言いたくないんやけど、値打ち下がるから。ほんまめちゃめちゃ早いんですよ。25センチのやつとか大きいのは時間かかったんですけど、それこそ小さいこの肉糞乙女(上の文字の絵)とか一気に描いたんですけど。繋がってるんですよ全部リボンがね。肉糞乙女でいうとほんま3時間で4枚とか。めっちゃ速描きなんです。値打ちないでしょ?
いやいや、時間は関係ないですよ。写真家なんて、押せば一瞬で撮れますからね(笑)
Assistant Editor: Yuria Ishibashi