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細胞の「美しさ」だけを追求する

ハーバード大学で研究を行うヴィム・ノードウィンと科学者のジョアンナ・アイゼンバーグは、顕微鏡でしか見えない世界で物質の結晶を変形し、神の業とも思える、美しく複雑な構造体を作り出した。

ハーバード大学で研究を行う科学者のヴィム・ノードウィンと化学者のジョアンナ・アイゼンバーグが作っているのは花ではない、ナノミクロのスケールでしか見えない結晶だ。薬品を用い化学反応を起こすことで、物質の結晶を変形させている。ノードウィンは実験を繰り返す中であることに気がついたのだという。「美しい構造体はどれも花に見えるんだ。こんなに美しくて複雑な構造体を自然がどうやって作り出したのか、そのすごさを少しずつ学んでいるよ。」

以下はヴィム・ノードウィン氏が作り出した細胞たち。

新薬開発も画期的な治療も発明せず、細胞の美しさだけを追求する彼の研究は、「神の業」という言葉について考えさせてくれる。科学と信仰は相容れない、そう考える人も多いだろうが、歴史を遡ると、自然の成り立ちを知りたいという欲求が、信仰心と深く結びついていたようだ。旧約聖書の1ページ目には「初めに、神は天地を創造された」と書いてある。神が創造した世界を理解することは、神の意志を理解すること、また精密な被造物を創造した神の偉大さを讃えることだと考えられており、万有引力の法則を発見したニュートン(※1)も、天体の運行法則に関する法則を発見したヨハネス・ケプラー(※2)も、研究の背景には宗教的な情熱があったと言われている。これらの少々不気味な細胞たちは、紛れもなく科学の産物だが …

脚注 (※1)アイザック・ニュートン(1642年~1727年):イギリスの物理学者および数学者。万有引力だけでなく、微積分、光のスペクトル等を発見し、その後の物理学の基礎を築いた。

(※2)ヨハネス・ケプラー(1571年~1630年):ドイツの天文学者。惑星の軌道が円ではなく楕円であること、太陽が円の中心にはないことなどを明らかにした「ケプラーの法則」を唱えた。これにより地動説の理論的な根拠が確かになった。さらに、天体の運行の幾何学的な美しさの中に音楽的調和があると考える「天体音楽論」を唱えた。